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とうとう、本物の魔女が出現?4

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「…大丈夫?」
俺の問いに、小さく頷くミハルさん。
「そう言えば、白木 はるって言ったかな?
 お前に声が似ているっている女声優」

俺は、あまり詳しくないからミハルさんを見る。
「…あぁ、その子といるところを写真に撮られた」
俺は、簡単に聞いていたから驚かないけど、他のみんなは驚いている。
「…お前さ、指輪を持ってるんだろ?
 なら、明日から、堂々と指輪をすれば?」
―!?
お手伝いさんから出されたお茶を啜っていた俺は、思わずむせてしまった。
ゴフッ!!!
ミハルさんに慌ててお世話をされていると、じっとみんなが見ている。
「…人間、変わるのね…」

お母さんの呟きに、それぞれ、同意をしている。
「…要さん、ミハルはね、小さいころから何でも出来る子どもだったの。
 そのせいか、あまりにも簡単に物事が進むから、感情に疎かったの。
 可愛らしくない子どもだったのよ。

 でも、今、見ていると、あなたの前だと本当に素なのね。
 それを見られるだけで、私たちは嬉しいのよ」
そうだったんだ。
「…あまり恥ずかしいことを話さないでください。
 指輪の事ですが、そうしてみようと思います。
 もしかしたら、何か尋ねて来るかもしれません。
 その時には、たぶん、相手の事を聞いてくるでしょう。
 可愛らしい人だと答えてください」
―!?
…・
本人が横にいるのに、ミハルさんは、まじめな顔で話をしている。
俺、恥ずかしすぎて、顔を隠したい。

「じゃぁ、それで話は終わりかな?」
―?
俺は、まだ何かあるのかと、ミハルさんを見た。
「ついでに、ちょっとお母さんからサプライズ…!」


俺は、お兄さんに連れられて、別室に向かった。
「要君、ミハルを頼んだよ」
そんなことを言われると、俺もかしこまってしまう。
もちろん、
「はい。」
って答えた。

え?
俺、今、結婚式の時に着るような黒五つ紋付き羽織袴を着ている。
お兄さんに何故かお風呂に入るように言われて、急いで出たら、あれ?
あれれ?
と言う間に、着せられている。
「…あの…お兄さん?」
どうしてこんなに着付けがうまいのかも気になるが、一番はなぜ、俺が今着ているのかだ。
先ほどいた座敷に向かうと、様子が変わっていた。
――――!!
これ…

どこかで見たことのある、結婚の準備。
え?
俺、結婚するの?
誰と?
ミハルさんと?
無理だよ?男だもん…
―!!
ハッと気づいた。

―――!!
あ…・

目の前に、同じように着つけられて、かっこよくきまっているミハルさんがいた。
もしかして、仮だけど、他では絶対にできないこと。
つまり、形だけでもってことかな…

そう思ったら、俺は、ミハルさんを直視できなかった。
本当は、カッコイイとか色んな事を話したい。
でも、心臓が急激に動き出して、制御不能だ。

2人を挟むように祝い用のお膳がもう用意されている。
「要、指輪を出して?」
そう言われて、指にしていた指輪をミハルさんに渡す。

自分の指を見ると、薄っすらと指輪の跡が残っている。
そっとその跡を指でなぞる。
―やっぱり、落ち着かない…
俺は、いつもこうして指輪を外している時、指でなぞっているらしい。
自覚はないが、今もこうしてしている。

みんなが席につき、俺もミハルさんも、座る。
「まぁ、身内だけの物だが…
 気持ちの切り替えもつくだろう」
お父さんの言葉で、ミハルさんの顔をやっと見ることができた。
「…驚いた?」
どこか、不安そうなミハルさん。
「…驚いたけど…嬉しい」
俺は、思わず、照れ笑いをしてしまった。
―!!
グイっと彼の元に引き寄せられる。
「よかった…
 僕の暴走で、要君が困っていたら嫌だなって思った。
 着替えているときも、不安で、正直、死刑台に乗る気分だった」
―!
えぇぇぇ。
目を丸くして驚く姿を、お母さんたちが笑う。
「もう、ずっとうるさかったのよ。
 「要の傍に行きたい」だって。
 花嫁には、結婚の前には会ったらダメなのッていったら静かになったけど…」
!!!!!!
―花嫁…
俺、花嫁なの?
嬉しいって喜べない…
でも、それぐらいの気持ちで俺を受け入れてくれると思ったら、嬉しい。

「では、白鳥 ミハルと篠田 要の祝言を挙げる」
お父さんの言葉で始まり、指輪をお互いに交換する。
―!?
あれ?
ミハルさんを見ると、気まずそうにしている。
俺は、流石にちょっと睨んでしまった。
「…ミハルさん、指輪が新しいのになってるんですけど…」
どうして勝手に決めちゃうかなぁ…
ま、いいけどね。
たぶん、ずっと気にしていたんだろうな…
俺は、特に何も欲しがったりしないから、もの足りないのかもしれない。

今、手にしている指輪は、この前の物より、少しデザインがかわっていた。
内側に何かかかれている。
ん?
あ...
俺、たぶん、今、顔が真っ赤だ。
そして、指輪を持った手が震える。
呼吸が乱れてきて堪えきれず涙が零れた。
「...ミハルさん、宜しくお願いします」
   後悔しないように、あなたの幸せを祈ってます。
こんな言葉を隠されたら、胸が一杯だ。
「「「おめでとう」」」
ミハルさんの家族が祝ってくれる。
その事も、俺は嬉しかった。
赦されることなら、もう一度、父や母に会いたかった。
その想いも、ミハルさんは受け止めてくれる。

父からの言葉も、彼から言われるだけで可能だと思える。
後悔しないように生きていこうと思えるようになった。
「...俺、今、すごく幸せだ」
泣きながら、それでも今伝えたくて詰まりながら言った。
ポロポロ
と零れた落ちる涙は、幸せのサイン。
そう思った。
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