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56彼の罠
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マンションを出る前に、俺はCDに触れたことがあったかな?
俺は、自分の行動を振り返ってみる。
日常的に聴いていた新しいCDは聞き終わったら、ミハルさんが用意してくれている棚に収納をしている。
…
俺、マンションに越す時、CDなど、自分で片付けていない…っ!!
―!!!!
俺が気づいたその事実。
それは、ミハルさんと出会い、そして彼から逃げて、見つかった時だ。
あの時は、グチャグチャになってドロドロになった後で…
ぼんやりとしか覚えていない。
でも、あの時、ミハルさんと後輩たちが以前、住んでいた家具を無理やり運んできて、片付けていた。
―っ!!
「…えっ?!
あの時…?」
俺は、信じられない思い、そしてその行動をとった彼に驚きを隠せなかった。
だって、一年も経ってるんだよ?
あの時、ミハルさんは俺のCDを棚に片付けていた。
それだけは、確かに俺も憶えている。
「僕もね、本当はしたくなかったんだよ?
…でも、一度逃げられたからね」
―!!
そうだ…
俺は、まだ驚きで頭の中が付いて行っていない。
でも、確実に…悟った。
「偶然、宝物が一緒だったんだ。
それに、君は僕のことが好きだ。
なら、どんな理由であれ、君は僕の傍にいるべきだ。
…いや、帰っておいで。…要」
―!!!!
身体が勝手に動いていた。
彼に思いっきり抱き着く。
「…ごめんなさぃ…ごめんなさい…」
俺は心の底から訴えた。
また、涙が出てくる。
そんな俺を彼も、うんうんっと、背中を擦ってくれる。
「…もう逃げない?」
俺は、ミハルさんに顔を覗かれながら問われる。
「…逃げない‥」
答えてすぐに、彼の懐に顔を埋める。
―柑橘系の匂い…
彼の匂いと、彼の体温、そしてなによりも彼の声の傍に、俺は帰ることができたのだった。
泣きやみ、落ち着きを取り戻して、ここは仕事場だと我に返る。
―!!!
ハッとして、恐る恐る後ろをみた。
―?
絶対に、俺とミハルさんの今の状況は、腐女子の大好物なものだ。
でも、彼女はいない。
「ふふふ、言ったでしょ?
条件を受け入れてくれたって」
?
― 条件…
「要君が泣きだしたら、慰めるので、見ないで欲しい。
誰でも、慰められるのを他の人に覗かれると、嫌ですよねって。
あ、あと、サインをしたよ」
彼が指さしたのは、壁にかけている時計。
「本当は壁に書いてほしいって言われたんだけど、内装を変えるときに消えるからって」
・・・
俺は、その腐女子精神を貫く彼女の、その判断力に感心した。
俺は、ミハルさんを見て、ちょっと照れるけど、伝えた。
「ありがとう」
その言葉を彼はどう、受け止めたのか、わからない。
彼は、嬉しそうに笑ってくれた。
―ッドキッっ!
あ、また…
やっぱり、ミハルさんの笑顔…好きだな…
こうして俺は、ミハルさんの元に戻ることとなった。
仕事の方は…
「おねがいですっ!
篠田くんにはいてもらいたいんですっ!」
ミハルさんに訴えている彼女を俺はみて複雑だ。
だって、ミハルさんの手を握りしめながら言ってるんだ。
どうみても、ミハルさんや、声優仲間を引き込もうとしている。
「ダメです。
…すぐに篠田くんのことを教えてくれていれば、考えていたんですが…
隠しましたよね」
的確なミハルさんの指摘に言葉がでない彼女。
ミハルさんの判断で、俺はカフェの仕事を辞めることになりそうだった。
「あのっ!
出来たら、店が開く前だけでも、その準備を手伝いたいです」
俺の言葉に、一瞬、ミハルさんは驚いた。
「…もう、遅くまで働かなくてもいいんだよ?」
ミハルさんの心配する言葉に、俺は嬉しくなる。
彼の方をみて、気持ちを伝える。
「うん、わかってる。
だから、お店を開けるまでの時間で終わる。
…それでも、いいですか?」
話を聞いていた彼女に、確認をする。
―人手が足りないって言っていたんだ。
せめて、準備をすることぐらいしてもいいと思う。
「とっても助かるっ!
だって、材料を切ったりするだけでも、大変なのよ」
話は、まとまった。
この辺りは、繁華街だから、ミハルさんは治安が悪いって心配してるのだと思う。
まだ明るいうちに帰れることだったら、彼の心配もなくなるだろう。
チラッと彼を見る。
眉間に皺を寄せている彼は、まだ、受け入れないのかもしれない。
俺は、彼の眉間に指をあてる。
―!!?
驚いた彼の顔は、珍しい。
自然と俺も顔が緩んでくる。
「…ちゃんと、家に帰るよ?」
その言葉で、彼の不安も少しとれたみたいだ。
難しい顔が、変わっていく。
俺は、自分の行動を振り返ってみる。
日常的に聴いていた新しいCDは聞き終わったら、ミハルさんが用意してくれている棚に収納をしている。
…
俺、マンションに越す時、CDなど、自分で片付けていない…っ!!
―!!!!
俺が気づいたその事実。
それは、ミハルさんと出会い、そして彼から逃げて、見つかった時だ。
あの時は、グチャグチャになってドロドロになった後で…
ぼんやりとしか覚えていない。
でも、あの時、ミハルさんと後輩たちが以前、住んでいた家具を無理やり運んできて、片付けていた。
―っ!!
「…えっ?!
あの時…?」
俺は、信じられない思い、そしてその行動をとった彼に驚きを隠せなかった。
だって、一年も経ってるんだよ?
あの時、ミハルさんは俺のCDを棚に片付けていた。
それだけは、確かに俺も憶えている。
「僕もね、本当はしたくなかったんだよ?
…でも、一度逃げられたからね」
―!!
そうだ…
俺は、まだ驚きで頭の中が付いて行っていない。
でも、確実に…悟った。
「偶然、宝物が一緒だったんだ。
それに、君は僕のことが好きだ。
なら、どんな理由であれ、君は僕の傍にいるべきだ。
…いや、帰っておいで。…要」
―!!!!
身体が勝手に動いていた。
彼に思いっきり抱き着く。
「…ごめんなさぃ…ごめんなさい…」
俺は心の底から訴えた。
また、涙が出てくる。
そんな俺を彼も、うんうんっと、背中を擦ってくれる。
「…もう逃げない?」
俺は、ミハルさんに顔を覗かれながら問われる。
「…逃げない‥」
答えてすぐに、彼の懐に顔を埋める。
―柑橘系の匂い…
彼の匂いと、彼の体温、そしてなによりも彼の声の傍に、俺は帰ることができたのだった。
泣きやみ、落ち着きを取り戻して、ここは仕事場だと我に返る。
―!!!
ハッとして、恐る恐る後ろをみた。
―?
絶対に、俺とミハルさんの今の状況は、腐女子の大好物なものだ。
でも、彼女はいない。
「ふふふ、言ったでしょ?
条件を受け入れてくれたって」
?
― 条件…
「要君が泣きだしたら、慰めるので、見ないで欲しい。
誰でも、慰められるのを他の人に覗かれると、嫌ですよねって。
あ、あと、サインをしたよ」
彼が指さしたのは、壁にかけている時計。
「本当は壁に書いてほしいって言われたんだけど、内装を変えるときに消えるからって」
・・・
俺は、その腐女子精神を貫く彼女の、その判断力に感心した。
俺は、ミハルさんを見て、ちょっと照れるけど、伝えた。
「ありがとう」
その言葉を彼はどう、受け止めたのか、わからない。
彼は、嬉しそうに笑ってくれた。
―ッドキッっ!
あ、また…
やっぱり、ミハルさんの笑顔…好きだな…
こうして俺は、ミハルさんの元に戻ることとなった。
仕事の方は…
「おねがいですっ!
篠田くんにはいてもらいたいんですっ!」
ミハルさんに訴えている彼女を俺はみて複雑だ。
だって、ミハルさんの手を握りしめながら言ってるんだ。
どうみても、ミハルさんや、声優仲間を引き込もうとしている。
「ダメです。
…すぐに篠田くんのことを教えてくれていれば、考えていたんですが…
隠しましたよね」
的確なミハルさんの指摘に言葉がでない彼女。
ミハルさんの判断で、俺はカフェの仕事を辞めることになりそうだった。
「あのっ!
出来たら、店が開く前だけでも、その準備を手伝いたいです」
俺の言葉に、一瞬、ミハルさんは驚いた。
「…もう、遅くまで働かなくてもいいんだよ?」
ミハルさんの心配する言葉に、俺は嬉しくなる。
彼の方をみて、気持ちを伝える。
「うん、わかってる。
だから、お店を開けるまでの時間で終わる。
…それでも、いいですか?」
話を聞いていた彼女に、確認をする。
―人手が足りないって言っていたんだ。
せめて、準備をすることぐらいしてもいいと思う。
「とっても助かるっ!
だって、材料を切ったりするだけでも、大変なのよ」
話は、まとまった。
この辺りは、繁華街だから、ミハルさんは治安が悪いって心配してるのだと思う。
まだ明るいうちに帰れることだったら、彼の心配もなくなるだろう。
チラッと彼を見る。
眉間に皺を寄せている彼は、まだ、受け入れないのかもしれない。
俺は、彼の眉間に指をあてる。
―!!?
驚いた彼の顔は、珍しい。
自然と俺も顔が緩んでくる。
「…ちゃんと、家に帰るよ?」
その言葉で、彼の不安も少しとれたみたいだ。
難しい顔が、変わっていく。
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