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41海外に行くあなたに
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結局、俺はミハルさんと一緒のベッドで寝ることはしなかった。
寝れないとは思っていたし、彼に少しでも休んでもらいたかったからだ。
ま、結果、ソファで寝ても、眠ることができずに、悶々と考え事をしていた。
カチャリ
寝室のドアが開く音がして、俺は、寝たふりをする。
耳は、すんごくでかくなってる。
小さい音を聞き逃さないようにしている。
照明を落としたリビングはとても暗い。
足元のライトをつけられてなんとなく、弱い明るさを感じる。
俺の様子を確認したのか、空気が動いたのを感じた。
外ほどではないが、夜は何かを被って寝たい時期。
俺は、ソファに備えているクッションを身体に乗せて温かさを取っていた。
足元には、大きめのタオル。
それでも、やはり公園で芯まで冷えた身体は、飲み物を飲んでも温もりが戻ってこなかった。
小さく小さく身体を丸めていた。
寝室に戻り、何かを持って再び、リビングにきたミハルさんは、静かに、俺にブランケットをかけてくれた。
―やっぱり優しい…
「…要君、寝てる?」
ミハルさんの、小さな問いかけ。
俺は、何かしら声を掛けられるかもしれないと身構えていたので、身体を反応させることはなかった。
「寝てる…かな…」
俺の寝ている顔を見るように、床に膝をついているのかな?
俺の顔を見て、髪の毛を彼の手が流す。
現れた額に、そっとキスをした。
ちゅっ
静かな部屋に、その音はとても大きく聞こえた。
「…ごめんね、僕は君のことになると、ダメになるんだ。
余裕がなくなる。
少しでも、君の心を離したくなくって、本当の自分を見せれなかった。
声に反応する君を見て、その声に嫉妬もしたよ。
その声は誰の声だって。
虜になっている声優を聞き出して、潰そうとも思った。
…君に寂しい想いをさせてしまってたんだね。
…はぁ…
君を置いて仕事になんて行きたくない。
ずっと、君の傍にいたい。
…でも、それをしてしまうと、君がまた気にするから…
僕は行くよ。
待っていて…
それで、僕に「おかえり」って言って欲しい。
今度は、絶対に自分の声で言うから。
自分の…白鳥 ミハルで答えるから…
要、いってきます」
そう言って、ミハルさんは、俺の唇に静かに自分の唇を重ねた。
ミハルさんは、用意していた荷物を持って、静かに玄関を出た。
閉められた鍵の音が大きく聞こえた。
はぁぁぁ
俺は、詰めていた息を大きくゆっくりと吐いていく。
彼の気持ちを聴けて嬉しい。
でも、途中で恐ろしいことを言ってたけど、どうするんだろう。
俺は、もうミハルさんの白鳥 三春の演じる声だから反応するようになってきた。
信号待ちをしているとき、大きいビジョンから聞こえるあなたの声を俺は気づくことができるようになったよ。
自分に嫉妬するの?
…なんだか、ちょっとおもしろいかも。
でも、めちゃくちゃ嬉しい。
今度、帰ってきた時には、ミハルさんの声が聴ける。
さっきは、小さくてあまりミハルさんの声を味わえなかった。
足りない…
俺は、貪欲な自分の気持ちに、苦笑してしまった。
―正直すぎるだろう。
ソファの上で、体勢を変える。
―ブランケットをかけてくれた。
―!!
これ、ミハルさんの使っているやつだ。
ほのかに香る柑橘系の匂い。
布を集めて匂いを嗅ぐように縮こまる。
―俺、変態じゃん。
でも、これがあったら…ちょっと寂しさが違うかも…
・・・・・
―!?
俺、今、何かやらしいことを考えようとしたっ!
いやいや、一人だからって、ミハルさんの匂いがするからって…
要は自分が、ソファの上で、一人ゴロンゴロンと転がっているのに気付いていない。
ふと、天井を見上げて考える。
「要って呼んでくれた。
‥‥待てる…かな。
…聞きたいな…「ただいま」って」
電源を切られたままのスマホを起動させる。
あ、メッセージ…
…
―ふふふ。いってらっしゃい
『送れる時には、メッセージを送るからね。
あと、時差はあまりないから、電話もできたらする』
ミハルさんの、素なんだろうね。
「「分かりました。いってらっしゃい」、送信と」
要はまだしらない。
ミハルが帰ってくるまでの間に、自分が、この部屋を出ていくことになることを。
そして、その日から彼の声を遮断するような日々が続くことを…
寝れないとは思っていたし、彼に少しでも休んでもらいたかったからだ。
ま、結果、ソファで寝ても、眠ることができずに、悶々と考え事をしていた。
カチャリ
寝室のドアが開く音がして、俺は、寝たふりをする。
耳は、すんごくでかくなってる。
小さい音を聞き逃さないようにしている。
照明を落としたリビングはとても暗い。
足元のライトをつけられてなんとなく、弱い明るさを感じる。
俺の様子を確認したのか、空気が動いたのを感じた。
外ほどではないが、夜は何かを被って寝たい時期。
俺は、ソファに備えているクッションを身体に乗せて温かさを取っていた。
足元には、大きめのタオル。
それでも、やはり公園で芯まで冷えた身体は、飲み物を飲んでも温もりが戻ってこなかった。
小さく小さく身体を丸めていた。
寝室に戻り、何かを持って再び、リビングにきたミハルさんは、静かに、俺にブランケットをかけてくれた。
―やっぱり優しい…
「…要君、寝てる?」
ミハルさんの、小さな問いかけ。
俺は、何かしら声を掛けられるかもしれないと身構えていたので、身体を反応させることはなかった。
「寝てる…かな…」
俺の寝ている顔を見るように、床に膝をついているのかな?
俺の顔を見て、髪の毛を彼の手が流す。
現れた額に、そっとキスをした。
ちゅっ
静かな部屋に、その音はとても大きく聞こえた。
「…ごめんね、僕は君のことになると、ダメになるんだ。
余裕がなくなる。
少しでも、君の心を離したくなくって、本当の自分を見せれなかった。
声に反応する君を見て、その声に嫉妬もしたよ。
その声は誰の声だって。
虜になっている声優を聞き出して、潰そうとも思った。
…君に寂しい想いをさせてしまってたんだね。
…はぁ…
君を置いて仕事になんて行きたくない。
ずっと、君の傍にいたい。
…でも、それをしてしまうと、君がまた気にするから…
僕は行くよ。
待っていて…
それで、僕に「おかえり」って言って欲しい。
今度は、絶対に自分の声で言うから。
自分の…白鳥 ミハルで答えるから…
要、いってきます」
そう言って、ミハルさんは、俺の唇に静かに自分の唇を重ねた。
ミハルさんは、用意していた荷物を持って、静かに玄関を出た。
閉められた鍵の音が大きく聞こえた。
はぁぁぁ
俺は、詰めていた息を大きくゆっくりと吐いていく。
彼の気持ちを聴けて嬉しい。
でも、途中で恐ろしいことを言ってたけど、どうするんだろう。
俺は、もうミハルさんの白鳥 三春の演じる声だから反応するようになってきた。
信号待ちをしているとき、大きいビジョンから聞こえるあなたの声を俺は気づくことができるようになったよ。
自分に嫉妬するの?
…なんだか、ちょっとおもしろいかも。
でも、めちゃくちゃ嬉しい。
今度、帰ってきた時には、ミハルさんの声が聴ける。
さっきは、小さくてあまりミハルさんの声を味わえなかった。
足りない…
俺は、貪欲な自分の気持ちに、苦笑してしまった。
―正直すぎるだろう。
ソファの上で、体勢を変える。
―ブランケットをかけてくれた。
―!!
これ、ミハルさんの使っているやつだ。
ほのかに香る柑橘系の匂い。
布を集めて匂いを嗅ぐように縮こまる。
―俺、変態じゃん。
でも、これがあったら…ちょっと寂しさが違うかも…
・・・・・
―!?
俺、今、何かやらしいことを考えようとしたっ!
いやいや、一人だからって、ミハルさんの匂いがするからって…
要は自分が、ソファの上で、一人ゴロンゴロンと転がっているのに気付いていない。
ふと、天井を見上げて考える。
「要って呼んでくれた。
‥‥待てる…かな。
…聞きたいな…「ただいま」って」
電源を切られたままのスマホを起動させる。
あ、メッセージ…
…
―ふふふ。いってらっしゃい
『送れる時には、メッセージを送るからね。
あと、時差はあまりないから、電話もできたらする』
ミハルさんの、素なんだろうね。
「「分かりました。いってらっしゃい」、送信と」
要はまだしらない。
ミハルが帰ってくるまでの間に、自分が、この部屋を出ていくことになることを。
そして、その日から彼の声を遮断するような日々が続くことを…
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