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27最高で最悪の恋人は、魔女と呼ばれていました
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「いや~、一時はどうなるのかと思ったんすけど、さすが、白鳥さんっス!」
―俺、今、どんな顔をしてるんだろう?
俺が起きた時に、ミハルさんの姿はなく、寝室を出ると、大変な状況だった。
どこの昭和のおばちゃんだと言わんばかりの、割烹着を着た後輩。
眼鏡をかけてマスクをして動きやすい服を着ているミハルさん。
あと一人、知らない人がいた。
俺が姿を見せると、各々の作業をしていた手を止め、近づいてくる。
「せんぱ~いっ!」
後輩の勢いに、思わず戸惑いを感じる。
「…なんで?…俺の物があるの?」
見覚えのある物が至る所に運びこまれている。
箱に詰めたCD達も一緒に来ている。
しかも、ミハルさんが、楽しそうに棚に並べている。
俺は取り残されたかのように、作業はあっと言う間に終わってしまった。
最後に、ミハルさんに処分するものなどを確認させられた。
正直に言うと、自分のお金で全て買ったものだ。一つ一つ悩んで買ったものだ。
いきなり別れをと言われても、決断は簡単にはできない。
「空いている部屋に入れておこうか?」
色々と考えると、それが一番いいのかな?
「お願いします」
そして、始めの会話が落とされる。
後輩は、まぁ、色々と世話を焼いてくれる。
もちろん、俺はそんなつもりはない。
ただ、自分ではキチンと出来ていると思っても、かなり抜けているらしい。
「俺、ずっと先輩のこと、考えてたんすよ。
先輩、もうすぐ魔法使いになるんじゃないかと思うと、俺、もう…」
後輩の意味の分からない会話で、返す言葉も思いつかない。
「は~…。魔法使いになるっていうのは、都市伝説だ」
後輩の言葉にツッコミを入れるこの人は…
じっと見つめていたのに気付かれた。
ニコリと笑って
「まだ、気付かないのかしら。この子、これじゃ、騙されるわよ」
―!?
思わず、立ちあがって驚く。
「高木さん?」
―え?女の人が男に…?
「高木さん、いつ男に?」
要の問いに、悪戯が成功した表情で、
「始めからよ」
―…・気付きませんでした。
事情はあるとは思うけど、完璧なまでに女の人だった。
「では、改めて、僕と要君は、一緒に住むというのを君たちには話しておくから」
ミハルの言葉に、要は色々と恥ずかしくなる。
「凄いわよね、イケボ好きがBLCD界の魔女を捕まえるなんて。
腐女子には、たまらないわ。
新しいシナリオでお話を作っちゃおうかしら。
でも、リアル過ぎて、嫌よね」
・・・・
高木さんの暴走が止まらない。
それよりも、気になる言葉があった。
「BLCD界の魔女?」
その聞きなれない言葉を尋ねてみる。
―!!!?
バン!
と、机を叩き、高木さんと後輩が身を乗り出して
「白鳥さんは、腐女子の中では、神的存在ですっ!」
―!?
横にいるミハルさんを見る。
ニコリと笑い
「知らなかった?」
小さく頷く。
「…全然、声優さんの名前を知らなかったんで」
―そうだったんだ。
「…あなた、正直に言ってみなさい。
今、なんて思った?」
高木の追及に、要は思わず戸惑う。
「…そうだったんだって」
ハーっと後輩と高木が反応をする。
「魔女が、要先輩を人間界に…」
ブツブツと、独り言を言っている後輩。
要は、ミハルを見る。
―この人、本当に…魔女なのかも…
見られていることに気付いたミハルが笑いかけてきてくれた。
なんだか、くすぐったい気持ちになる。
でも、嫌じゃない。
―声はきっかけ。
そう思えるまでにとても時間がかかった。
強引で、少し意地悪なミハルさんだから、俺を掴まえてくれた。
あの成人の日から、俺の心の中は、荒れていた。
でも、もうその荒れた砂漠のような状況ではない。
ミハルさんの声が染み込んでいくように、潤いを与えてくれる。
ゆっくりでいい。
汚れてない。
たくさんの感情の壁をかき分けて、あなたの方に歩いていく俺を…
どうか、どうか…見守っていてください。
―俺、今、どんな顔をしてるんだろう?
俺が起きた時に、ミハルさんの姿はなく、寝室を出ると、大変な状況だった。
どこの昭和のおばちゃんだと言わんばかりの、割烹着を着た後輩。
眼鏡をかけてマスクをして動きやすい服を着ているミハルさん。
あと一人、知らない人がいた。
俺が姿を見せると、各々の作業をしていた手を止め、近づいてくる。
「せんぱ~いっ!」
後輩の勢いに、思わず戸惑いを感じる。
「…なんで?…俺の物があるの?」
見覚えのある物が至る所に運びこまれている。
箱に詰めたCD達も一緒に来ている。
しかも、ミハルさんが、楽しそうに棚に並べている。
俺は取り残されたかのように、作業はあっと言う間に終わってしまった。
最後に、ミハルさんに処分するものなどを確認させられた。
正直に言うと、自分のお金で全て買ったものだ。一つ一つ悩んで買ったものだ。
いきなり別れをと言われても、決断は簡単にはできない。
「空いている部屋に入れておこうか?」
色々と考えると、それが一番いいのかな?
「お願いします」
そして、始めの会話が落とされる。
後輩は、まぁ、色々と世話を焼いてくれる。
もちろん、俺はそんなつもりはない。
ただ、自分ではキチンと出来ていると思っても、かなり抜けているらしい。
「俺、ずっと先輩のこと、考えてたんすよ。
先輩、もうすぐ魔法使いになるんじゃないかと思うと、俺、もう…」
後輩の意味の分からない会話で、返す言葉も思いつかない。
「は~…。魔法使いになるっていうのは、都市伝説だ」
後輩の言葉にツッコミを入れるこの人は…
じっと見つめていたのに気付かれた。
ニコリと笑って
「まだ、気付かないのかしら。この子、これじゃ、騙されるわよ」
―!?
思わず、立ちあがって驚く。
「高木さん?」
―え?女の人が男に…?
「高木さん、いつ男に?」
要の問いに、悪戯が成功した表情で、
「始めからよ」
―…・気付きませんでした。
事情はあるとは思うけど、完璧なまでに女の人だった。
「では、改めて、僕と要君は、一緒に住むというのを君たちには話しておくから」
ミハルの言葉に、要は色々と恥ずかしくなる。
「凄いわよね、イケボ好きがBLCD界の魔女を捕まえるなんて。
腐女子には、たまらないわ。
新しいシナリオでお話を作っちゃおうかしら。
でも、リアル過ぎて、嫌よね」
・・・・
高木さんの暴走が止まらない。
それよりも、気になる言葉があった。
「BLCD界の魔女?」
その聞きなれない言葉を尋ねてみる。
―!!!?
バン!
と、机を叩き、高木さんと後輩が身を乗り出して
「白鳥さんは、腐女子の中では、神的存在ですっ!」
―!?
横にいるミハルさんを見る。
ニコリと笑い
「知らなかった?」
小さく頷く。
「…全然、声優さんの名前を知らなかったんで」
―そうだったんだ。
「…あなた、正直に言ってみなさい。
今、なんて思った?」
高木の追及に、要は思わず戸惑う。
「…そうだったんだって」
ハーっと後輩と高木が反応をする。
「魔女が、要先輩を人間界に…」
ブツブツと、独り言を言っている後輩。
要は、ミハルを見る。
―この人、本当に…魔女なのかも…
見られていることに気付いたミハルが笑いかけてきてくれた。
なんだか、くすぐったい気持ちになる。
でも、嫌じゃない。
―声はきっかけ。
そう思えるまでにとても時間がかかった。
強引で、少し意地悪なミハルさんだから、俺を掴まえてくれた。
あの成人の日から、俺の心の中は、荒れていた。
でも、もうその荒れた砂漠のような状況ではない。
ミハルさんの声が染み込んでいくように、潤いを与えてくれる。
ゆっくりでいい。
汚れてない。
たくさんの感情の壁をかき分けて、あなたの方に歩いていく俺を…
どうか、どうか…見守っていてください。
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