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25囚われる言葉

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ミハルは、要をベッドに沈めるように、手首を抑える。
「あの…・ミハルさん?」
今、要は自分の状況を的確に判断できている。

―確実に、抱かれる

抱かれる覚悟は、できるのかもしれない。
でも、なんで俺、手首を拘束されてんの?
チャラ・・
足元は自由にできるが、腰にミハルが座っていて、動けない。
ミハルは、楽しそうに要の手首の拘束具を見ている。
手首を傷つけないように配慮をされているあたり、こういう行為などに使用するためのものだろう。

にしても‥‥
「…ミハルさん?
 あの、なんで?俺、こんなことに?」
要の質問を聞き、嬉しそうに、自分がまさに尻に敷いている要を見下ろす。
あれ?
あれれ?

要は、ミハルの雰囲気が先ほどとは違うように見えた。
何か企んでいるような、そして、妖艶な雰囲気…
「要君…
 すごく似合ってる!!」
!?
要は、ミハルを改めてみる。
妖艶な雰囲気?違う…なんとなく、想像を膨らませて興奮している…
企んでいる?…妄想してんのか?

要は、顔を引き攣りながら、不穏な答えしか戻ってこないであろう質問を投げかける。
「もしかして…縛ったりするのが好き?」
彼は、正解!という表情ではなく、少し違う…
「縛ったりするのは、好きじゃないよ?
 でもね。

 快感で苦しくなっている余裕のない顔を見るのが好き…」
―・・・・・!!!
要は、その意味を一生懸命、考えた。
―快感で苦しくなる?余裕のない顔?

いまいち、よくわからない…
今まで、経験をとことん避けていた要にとって、未知の世界だ。
学生までの知識しかしらない。

ただひとつ。
その言葉には、Sの要素がたっぷりと詰まっていることだけ。
そのことだけは、要にわかった。

―えぇぇぇ?
要は、自分の状況がかなり危機に迫っていると感じた。
『もう、遅いぜ』
そんな誰かの声が聞こえてくる。
要は、拘束具から逃れようと動く。
しかし、その完璧なミハルの手順により、絶妙な具合で外せない。

「ほら、要君、逃げるでしょう?
 だから、逃げないためにもね」
とても素晴らしい笑顔でございます。
ミハルのその笑顔が、要をより困らせた。

ううううぅと、涙が溜まりそうになる要を彼は見下ろし、顔を近づける。
「この前、メモに書いた言葉、覚えてる?」
ミハルの言葉に、要が小さく頷く。
「『ありがとうございました。 幸せでした』って書いてあったよね。
 読んだとき、腹が立ったのは、本当。
 でも、それ以上に、自分のした事が要君には嬉しいと思ってくれたんだと思ったら。
 もう要君を手に入れるしかないでしょ?

 後輩に頼み事なんてしたくはなかったけど、したよ。

 して君が手に入れれるなら、どんなこともできる。
 僕の声を聴いて感じるんだったら感じて?
 もちろん、君の声も聞かせて?

 あ、この手錠は、お仕置きね。
 連絡先をかえたこと。

 みんな心配した」
そう彼に言われ、唇にキスを貰う。
上半身は、パジャマが開けて、完璧に腹やら胸のあたりも丸見えだ。

部屋の灯りは、あの日と同じように要の心を落ち着かせる。
そのアンバランスな状況が、要の心に隙を作っていく。

手を伸ばして彼に触れたいのに触れれない‥
拘束された腕を伸ばしたくてもできないもどかしさが、要の涙腺を崩壊させていく。
それでも、基本的に要は素直だ。
気持ちを伝えることをここ数年で身につけた。
「俺、ミハルさんに触れたい…」
顔を歪めて、想いを伝えても、ミハルは、それを受け入れない。
「ダメだよ。
 どんだけ、僕が君を探したか…
 後輩と高木に、君を逃したのを知られて、一切連絡をとる手段を教えてくれなかった。
 君の様子も、少しでも教えてもらえたらどんだけ違っただろう。

 さすがに、仕事でも、ミスを増やすし、重症だなって思った。
 僕はあれから何度か、スタジオの横の練習ブースにも何回か行ったよ。
 君が、新しく入ったテストだっているのは聞いてたからね。

 だから、今日、収録が終わってゲンタに頼んだ。
 一度でいいから、要君と会いたいって。

 仕事に支障が出るかもしれないから、ゲンタはもちろん、断ったよ。
 でも、それでも、諦めなかった。
 扉の向こうには、君がいるんだと思ったら、限界だった。
 方法は他にもあるよ。
 会社の出入り口で待ったりとかしてもいいし、下の事務所でもよかったんだ。
 でも、それでは、要君が困るだろ?
 これでも、僕は、商品だからね?」
じっと見上げて彼の話を聞いている要は、表情をころころと変えて聞いている。
「商品…でも、ミハルさんは、俺にとってミハルさんだよ?」
要の素朴な言葉に、ミハルは微笑む。
「そう。
 この素直で真っ直ぐな要君がいいんだ」
ミハルは、その言葉を要の諦めさせる呪文のように言い、要の耳元で囁く。
「もう、諦めた?」
要は、真っ直ぐに彼を見て、まだ戸惑いのある様子だ。
それでも、最後にはミハルを見る。
「…俺、本当に…あまり知らなくて、自慰もしないから…
 どんなことになるか…怖い…」
戸惑いの中にあるモノ。
外したことのないその見えない囲いを外す時。
勇気がいる。

ミハルは、怯えを隠せてない要に優しく落ち着かせる。
「大丈夫。

 もう、限界って言うぐらいまで、君を連れて行くよ」

―!
え?
ミハルは、ベッドの布団が汚れるのも構わず、どこから取り出したのか、透明の液体が入った物を取りだす。
そして、要に見えるように、中身が零れ落ちる様子を見せる。
―っ!
要の腹に冷たい感覚が走る。
注ぎ口からは、まだ透明の物もが流れている。
その様子が、とても卑猥に見えた。

絶えることなく、落とされる物が、要の肌に落ちていく。
「…-っひゃっ」
―!
思わず出た言葉に、要は驚く。
じわりじわりと、要の心の中で、あの言葉が蘇ってくる。
『汚らわしい…』
―!!
「…嫌だ…
 汚さないで…っ!!」
母の言葉を思い出し、要は首を振って抵抗する。

ミハルは、その様子に興奮を感じた。
要の中で、ずっと捕えてきた物が、自分の所まで姿を見せたように思えた。
垂らしていた潤滑剤を横に置き、彼の言葉を無視して掌で肌に広げていく。
緊張を解せれるよう、媚薬入りの物は、人の体温で、温かさを伴う。

要のへその周りから、次第に脇腹、胸の辺りへと広げていく。
首を振って、
「嫌だ…やめて…汚れる…・」
溢れるように要の口からは出てくる。

ぞわりぞわりと走って上がってくる、この感覚が恐ろしいと思った。
もっとしてほしいと思う気持ちがある、そんな自分が怖かった。

ミハルは、触れるたびに、ビクビクと反応する要の様子を見る。
ただ、口からは、快感ではない…
快感を感じている自分を否定する要の言葉に、冷ややかに受け止める。

息遣いも徐々に荒くなっている。
上下に動く胸元に、潤滑剤を足す。
胸の小さな突起に、その潤滑剤を塗り込んでいく。
―っ!!
「…だめっ」
目を閉じて、首を振る要に、ミハルは言葉で徐々に攻めていく。
「…だめ?違うでしょ?
 気持ちがいいんだよ?」
―!!!
要は、そのミハルの言葉に、カッとなった。
―何が気持ちがいいんだよっ!
要は、そう、ミハルに返そうとした。
―!?
「や…っあっンっ!」
目をギュッと閉じて、感覚の変化に耐える。
口を閉じるが、未知の感覚に要は、涎が零れ落ちている。
それも気にならないほど、身体に走る感覚に染まっていく。
「ほら…どう?」
問いかけながら、ミハルが指でピンっと乳首を弾く。
―!!
「痛いっ!」
感覚を育てられていない乳首など、弾かれれば痛みがある。
ミハルは、それを知った上で実行した。
「じゃぁ…これは?」
爪で、コリコリと突起を刺激する。
―痛いよっ!
「痛いって…・っ!?」
―なに?
要は、自分の身体の変化に気付く。
刺激されたその胸の先は、ジンジンと熱が籠っていく。
「…っぁっヤっんンっ!」
口からは、拒否の言葉から、快感を得た声に変わっていく。
身体を動かしたくて、腰の辺りに力を入れるにも、ミハルに乗られたまま動けない。

―どんどん、汚れていく…
 汚らわしい人間になっていく…

要は、その言葉で溢れてくる。
涙腺が緩み、要はミハルを見ても、朧気にしか浮かんでこない。
足を動かそうとしても、効力はすくない。

泣き声を抑えようと、要は口をギュッと閉じる。
それぐらいしか、自分にはできなかった。
チャランっと拘束具の音で、要は我に返る。
ミハルは、拘束具の一部を外し、動かせるようにした。
ただ、まだ両手は一つにつながったまま。
ミハルを潤んだ目で睨んでいる要。
その効果は、意味をなさない。

要は、両手を前に出し、膝をつき、尻を突き出した状態にされる。
衣類は脱がされ、裸。
足にカチャリと拘束具をつけられた。
―?!
「なんで?」
要は、そう言葉を出す。
どうしてこの姿に。
足を閉じられないように両端から広げられている。
「本当は、こんなことをしたくないんだよ?
 でも、要君はさせてくれないからね」
ミハルの言葉が、要の心を満たしていく。
行為をやめてくれと言ってもやめない強引なミハル。
そのミハルの本当に望んでいる物はなに?

心を許してもいいと思ったのに…

要の心に、後悔の想いが広がっていく。
本当に、自分は汚れる…

要は、それだけは、自分でわかる瞬間だった。
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