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苦手克服を失敗しちゃった4
しおりを挟むそうだ。
俺は、高校時代から友人を何度も家族に紹介している。
でも、一人だけ。一人だけしていない。
それが、目の前にいる男だ。
立花たちばな 倉一そういちだ。
この男、少し前に紹介をしたが、高校時代からの親友だ。
そして…
俺の想い人だ。
助けてもらってその英姿にときめきを覚えた。
ありがちな展開だけど恋におちたんだ。
不毛な恋だと自覚している。
だから、想いを殺して友人として関わってきたんだ。
他の友人は、姉達に少しでも気に入られようと必死だった。
もちろん姉もそれはわかっている。
揶揄って、遊びまくって、捨て去る。
そうやって、非道なことをして、二度と、俺の近くに寄らないようにしてくれていた。
大体の人間はそれで手を引く。
でも、中にはすごい執念を抱えている奴がいる。
そんな奴には、姉の素晴らしいぐらいの持ち上げ方によって、有頂天と化す。
そして、突き落とされる。
目の前の男、倉一は姉に興味を一切持つことなく、俺を一人の友人として扱ってくれた。
だから、家にも招くことはしなかったし、彼の存在を姉には知られないようにしてきたつもりだ。
普通の事を普通じゃないことばかり経験してきた俺は、それがとても嬉しかった。
近寄ってくる女からは庇ってくれる。
守ってくれる。
そして、誰から見ても、逞しく、そして何に対しても真面目で、このままだと、どんな世界でも有力株になることは予想されていた。
社会人になり、倉一は弁護士になった。
その輝かしい彼の人生の、ほんのわずかな時間に俺は携われることができるだけで俺は満足していたのだ。
秘めた恋。
どこまで俺の想いを押し殺していたか自分でもわからない。
そんな俺に母は何を言ったのか…
倉一が兄?
「…母さん、彼は俺の友達です」
俺の苦しい言葉にも母は優しさを差し出してくれる。
『あなた以上に、彼はあなたの事が好きよ。
高校生の時、彼が私のところに来たの。
あなたを守りたいってね。
そりゃ、男が男に狙われているって知ったときは驚いたわ。
…でも、その考え方もすぐに改めたわ。
あなたが、苦しみながら女性と関わろうとしていることも、彼から教えてもらったの。
…あなたは家の事をかんがえてくれているのだと、彼も気づいていたし、私も気づいたの。
だから、彼にあなたのお兄さんになってもらったのよ』
俺…なんだか涙が出てきそうだ…
俺の苦しみは、俺だけの物だと思っていた。
でも、倉一も理解をしてくれていたし、母も気づいてくれていた。
心が軽くなったように、俺はその時、倉一の顔を見た。
―!
グッ
と握りこぶしを作り、感情を抑えている。
どうして、そこまで俺の事を大切に思ってくれるのか…
俺は、尋ねたくなった。
でも…
『あなたの傍で、あなたを大切にしてくれるのなら、養子として迎えると彼に条件をだしたの。
誕生日が一日違うだけだけれど、正式にお兄さんよ。
それは、彼のご両親も、了解しているわ。
彼が弁護士になったのも、あなたのため。
女性の罠に、かかってしまったあなたの力に少しでも力になれるのならと、選んだわ。
じゃぁ、後は倉一君に任せなさい』
そう言って母は通話を終了させていた。
スマホを置き、俺はじっと倉一を見る。
部屋の中はとても静かで、そして重く感じた。
「…いつ、養子になったんだ」
俺の問いに、倉一が小さい声で
「大学卒業してすぐに」
―!
そんなときに…
俺の気持ちをこの男はどこまで気づいているのだろう…
「そんなに、俺の事、好きなのか?
姉たちとじゃなく?
青葉家の関りを持ちたいとかではなく?」
それが聞きたかった。
「…お前が、俺の事をどう思っているのか…わからない。
でも、高校の時、他の奴らは家族に紹介をしているのに、俺はされていない。
そんなに、俺は足りなかったか?
何が足りなかったのか、わからない。
一生懸命、心当たりのあることは試した。
それでも、お前は家族に俺を紹介することをしなかった…
だから、俺はお前のお母さんに頼んだんだ。
お前を守れる男になる方法を…
そして、お前の傍にずっと居れる方法を…!」
いつものカッコイイ男が、今は必死に顔を赤らめながら俺の事を訴えている。
それは、そこらへんに転がっている恋愛小説よりも重く、そして深かった。
「…いつから…」
俺の事をいつから好きだったのか。
それを聞くことぐらい、今はいいだろう。
「…高校の時、お前、先輩に襲われそうになっていただろう?
それよりも前に、噂は知っていたんだ。
綺麗な顔をしている。
女も近寄ってくるのに、困惑しているお前の姿に、興味を持った。
普通は、あの年代は、ヤリたい盛りだ。
でも、それを避けているのは、なぜだろうと思った。
たまたま、助けて気が合ったし、それなりにバカをやってお互い心も許せるようになってきた。
お前、ずっと女に慣れようと努力していただろう。
それを見ていて、心が動いたっていうのかな。
相手を想ってしたことも、お前は裏切られて生きてきた。
そんなことは、これ以上、経験してほしくなかった。
…
もう、俺の感情は、好きを超えてしまった。
…なのに…なのに…お前っ!!」
―!!!
ふ、雰囲気が変わった…っ!
ひいいいいっ!
目の前の男の背後から、ゴゴゴゴっと、どす黒い物が立ち上ってくるようだ。
「何が、偽装結婚でもしようかなっ!っだっ!
ふざけんなっ!
俺は、もう無理やりでもお前を俺の物にする」
キュン
ってしてしまった。
だって、羞恥心など、どこかに置いてきてしまった、告白だ。
倉一は、何を思ったのか、俺の返事も聞くことなく、強行手段を取り出した。
「服を脱げっ!」
―おいおいっ!!
あれよあれよという間に、丸裸。
「やだっ!」
俺は、高校時代から友人を何度も家族に紹介している。
でも、一人だけ。一人だけしていない。
それが、目の前にいる男だ。
立花たちばな 倉一そういちだ。
この男、少し前に紹介をしたが、高校時代からの親友だ。
そして…
俺の想い人だ。
助けてもらってその英姿にときめきを覚えた。
ありがちな展開だけど恋におちたんだ。
不毛な恋だと自覚している。
だから、想いを殺して友人として関わってきたんだ。
他の友人は、姉達に少しでも気に入られようと必死だった。
もちろん姉もそれはわかっている。
揶揄って、遊びまくって、捨て去る。
そうやって、非道なことをして、二度と、俺の近くに寄らないようにしてくれていた。
大体の人間はそれで手を引く。
でも、中にはすごい執念を抱えている奴がいる。
そんな奴には、姉の素晴らしいぐらいの持ち上げ方によって、有頂天と化す。
そして、突き落とされる。
目の前の男、倉一は姉に興味を一切持つことなく、俺を一人の友人として扱ってくれた。
だから、家にも招くことはしなかったし、彼の存在を姉には知られないようにしてきたつもりだ。
普通の事を普通じゃないことばかり経験してきた俺は、それがとても嬉しかった。
近寄ってくる女からは庇ってくれる。
守ってくれる。
そして、誰から見ても、逞しく、そして何に対しても真面目で、このままだと、どんな世界でも有力株になることは予想されていた。
社会人になり、倉一は弁護士になった。
その輝かしい彼の人生の、ほんのわずかな時間に俺は携われることができるだけで俺は満足していたのだ。
秘めた恋。
どこまで俺の想いを押し殺していたか自分でもわからない。
そんな俺に母は何を言ったのか…
倉一が兄?
「…母さん、彼は俺の友達です」
俺の苦しい言葉にも母は優しさを差し出してくれる。
『あなた以上に、彼はあなたの事が好きよ。
高校生の時、彼が私のところに来たの。
あなたを守りたいってね。
そりゃ、男が男に狙われているって知ったときは驚いたわ。
…でも、その考え方もすぐに改めたわ。
あなたが、苦しみながら女性と関わろうとしていることも、彼から教えてもらったの。
…あなたは家の事をかんがえてくれているのだと、彼も気づいていたし、私も気づいたの。
だから、彼にあなたのお兄さんになってもらったのよ』
俺…なんだか涙が出てきそうだ…
俺の苦しみは、俺だけの物だと思っていた。
でも、倉一も理解をしてくれていたし、母も気づいてくれていた。
心が軽くなったように、俺はその時、倉一の顔を見た。
―!
グッ
と握りこぶしを作り、感情を抑えている。
どうして、そこまで俺の事を大切に思ってくれるのか…
俺は、尋ねたくなった。
でも…
『あなたの傍で、あなたを大切にしてくれるのなら、養子として迎えると彼に条件をだしたの。
誕生日が一日違うだけだけれど、正式にお兄さんよ。
それは、彼のご両親も、了解しているわ。
彼が弁護士になったのも、あなたのため。
女性の罠に、かかってしまったあなたの力に少しでも力になれるのならと、選んだわ。
じゃぁ、後は倉一君に任せなさい』
そう言って母は通話を終了させていた。
スマホを置き、俺はじっと倉一を見る。
部屋の中はとても静かで、そして重く感じた。
「…いつ、養子になったんだ」
俺の問いに、倉一が小さい声で
「大学卒業してすぐに」
―!
そんなときに…
俺の気持ちをこの男はどこまで気づいているのだろう…
「そんなに、俺の事、好きなのか?
姉たちとじゃなく?
青葉家の関りを持ちたいとかではなく?」
それが聞きたかった。
「…お前が、俺の事をどう思っているのか…わからない。
でも、高校の時、他の奴らは家族に紹介をしているのに、俺はされていない。
そんなに、俺は足りなかったか?
何が足りなかったのか、わからない。
一生懸命、心当たりのあることは試した。
それでも、お前は家族に俺を紹介することをしなかった…
だから、俺はお前のお母さんに頼んだんだ。
お前を守れる男になる方法を…
そして、お前の傍にずっと居れる方法を…!」
いつものカッコイイ男が、今は必死に顔を赤らめながら俺の事を訴えている。
それは、そこらへんに転がっている恋愛小説よりも重く、そして深かった。
「…いつから…」
俺の事をいつから好きだったのか。
それを聞くことぐらい、今はいいだろう。
「…高校の時、お前、先輩に襲われそうになっていただろう?
それよりも前に、噂は知っていたんだ。
綺麗な顔をしている。
女も近寄ってくるのに、困惑しているお前の姿に、興味を持った。
普通は、あの年代は、ヤリたい盛りだ。
でも、それを避けているのは、なぜだろうと思った。
たまたま、助けて気が合ったし、それなりにバカをやってお互い心も許せるようになってきた。
お前、ずっと女に慣れようと努力していただろう。
それを見ていて、心が動いたっていうのかな。
相手を想ってしたことも、お前は裏切られて生きてきた。
そんなことは、これ以上、経験してほしくなかった。
…
もう、俺の感情は、好きを超えてしまった。
…なのに…なのに…お前っ!!」
―!!!
ふ、雰囲気が変わった…っ!
ひいいいいっ!
目の前の男の背後から、ゴゴゴゴっと、どす黒い物が立ち上ってくるようだ。
「何が、偽装結婚でもしようかなっ!っだっ!
ふざけんなっ!
俺は、もう無理やりでもお前を俺の物にする」
キュン
ってしてしまった。
だって、羞恥心など、どこかに置いてきてしまった、告白だ。
倉一は、何を思ったのか、俺の返事も聞くことなく、強行手段を取り出した。
「服を脱げっ!」
―おいおいっ!!
あれよあれよという間に、丸裸。
「やだっ!」
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