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こうして、麗しい字のような男、新庄 麗一が俺の担当となったのであった。
人の視線が集まる新庄は、初めて会ったその日に、俺の住んでいるアパートにやってきた。
部屋の中に入った彼は、辺りを興味深そうに見ている。
男の一人暮らしなんてだいたい同じだ。
珍しそうにしていることがわからない。
それよりも、女の名前で書いているのに、男が出てきて、文句の一つも言ってこないのは、どういうことだ。
飲み物を用意して、話をするために向きあう。
「改めまして、新庄です。
 書かれているのは、あなたですね。
 今日から、あなたを立派な小説家さんに育てるように、全力を尽くします!」
―あぁ、なんて爽やかな人なのだろう。
この場に、マダムがいないことを今、残念に思っている。
居たら、たぶん、心臓に一突きだ。
救急車で何人も、か弱きマダムを病床の住人にさせるところだった。

けれど、その爽やかさは、初回限定だった。

「え、これですか?
 何ですか、このゴミのような文章は。
 それに何ですか、この設定。
 今時、はやりません。
 たぶん、そこら辺のチラシの見出しの方が読まれるでしょう。
 誰も、読みません」
バッサリ、ぐっさり、俺の心は、血だらけです。
「小説家になると決めたから、こちらの返信に応じたのでしょう。
 こちらも、あなただけではないんです」
―!!!!
別に、俺を特別にしてくれと言っているわけではない。
けれど、せめて、優しくしてほしい。
それでなくても、弱っているのだ。
でも、そんなことは、言えない。
煮詰まった頭をどうにかしたくて、俺は一人、考えを巡らせていた。
新庄の指摘は正しい。
誰かに求められることなど経験したことのない俺が、彼の目の前で色々と書く。
今までの書き溜めた作品を新庄に見てもらう。
書き溜めていた小説は、働いていた時の物だ。
書籍化に伴い、その作品たちを、掘り起こしていく。
過去の物は、新庄にとって、満足するものであったらしい。
いつのも厳しい言葉とは違い、新庄は読んでいる途中、とても楽しそうにしていた。
「…ふぅ。
 とても面白いです。
 けれど、それは、どれもあなたの過去の物です。
 これからのあなたは、何を書くのですか?」
そんなことを言われても困る。
働いていた時は、会社に出勤する時、道を歩いているとき、その景色で物語が生まれてきた。
けれど、その生活を捨てた俺は、家からあまり出ない。
刺激がないこの生活が、もう何か月も続くと、人間、何も生み出すことはできない。

出会って数か月。
毎日毎日、足しげく俺の住んでいるアパートまでやってくる男は、聞けば、俺と同じ歳だという。
麗しいだけでなく、若さも持ち合わせていたのか。
俺のような萎れかけた花ではなく、まさに華やかに咲いている花のようだ。

心の波が揺らいでいる。
このままこの道に進むのか。
それとも、仕事を探してまた、趣味として書き溜めるのか。
もう、このままどこかに行ってみようか。
ふと、そんなことを考えてしまった。

この日、家にずっと置いてあったビールを飲んだ俺は、また、やらかしてしまった。
前回の事、多少、気にしていたのだろう。
勢いで投稿という形はしていない。

何時間、このパソコンの前にいたのだろう。
指が、動かないほど、我を忘れてこの言葉を書き込んでいた。
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