真っ黒でごめんなさい。

香野ジャスミン

文字の大きさ
上 下
1 / 1

真っ黒でごめんなさい。

しおりを挟む
嫌だなぁ...。
そう思ったけれど、自分がすごく小さい人間のように思えた。
それを誤魔化すように、強がる僕の中は、ドロドロ真っ黒な塊だ。

「信也、今日、一緒に帰れなくなった、スマンっ!」

すまなさそうな顔で言ってくる彼の背後で、こっちの様子をチラチラと伺ている人たち。自分たちを優先した彼だから、お前より自分たちの事が大切なんだって言っているようで、あまりいい印象はもてなかった。
でも、僕はそんなことを彼に告げるつもりはない。

「いいよ、別に約束していたわけじゃないし…。」

笑って言ったけど、彼は僕の顔を見て機嫌を伺ってくる。
見て欲しくない。
こんな僕を好きな君に見て欲しくない。
ー!

「ほら、待ってるんでしょ?行ってきなよ」

そう言って、僕はとりあえず彼のいない場所に行きたかった。
こんな醜い感情を持っている僕をこれ以上見て欲しくなかった、ただそれだけだった。
ー!!

「待ってっ、信也っ」
グイっと引き寄せられ、彼の腕の中にいた。
いきなりの事で頭が働かない。
彼は、わざわざ、僕の顔を覗き込むようにしてきて、じーっと見つめた後、ふわりと笑ったんだ。

「...やっぱり、やーめた。信也と家に帰るね」

ワザと彼らに聞こえるように大きめの声で。
彼の言葉に慌てている彼らと僕。
それでも、彼は、僕の肩を抱いたまま歩き出していた。
背後で「ふざけんなー」と怒っている声も聞こえる。

「...いきなり何?今からでもいいから早く行きなって。怒ってるじゃん。」

僕は彼に向けてもう1度言った。

「...ヤダ。
 今の信也を一人にしたくないって思ったの。」

ー!?
そんなこと、言われたら...嬉しいじゃん。
真っ黒な自分がどんどん小さくなっていく。

「...友達、減っちゃうよ?」

彼の腕に顔を埋めながら真っ赤な顔を隠す僕。
口から出るのは、かわいげのない言葉ばかりだ。
でも、彼が僕を優先してくれただけで、僕の中の真っ黒のモヤモヤは、いつの間にか消えていた。


信也 …素直になれない大学生。人気者の彼に気に入られているので、周囲の友人から距離を置かれている。恋人あり。
彼  …大学生、人気者。信也の恋人。信也を観察し、気付くことを楽しみにしている。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

アンダー・ウォーター・サイレンス

煉瓦
BL
夏休みに友人の佳樹から告白されて付き合うことになった陽平だが、二学期になってから佳樹はデートの約束を何度も破るようになった。今日も自分との約束を反故にして佳樹は女子校の生徒たちとカラオケに行くという。そんな佳樹に対して陽平は別れる決意をするが……という、付き合ったばかりの高校生カップルがすれ違う話です。

ストロボ

煉瓦
BL
攻めの想い人に自分が似ていたから、自分は攻めと恋人同士になれたのでは? と悩む受けの話です。

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

去りし桜の片隅に

香野ジャスミン
BL
年季あけ間近の陰間の桜。胸には、彼に貰った簪。 でも、彼はもういない・・・ 悲しい想いの桜が幸せを掴んでいく・・・・ 「ムーンライトノベルズ」で公開している物です。

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

勘違いしちゃってお付き合いはじめることになりました

よしゆき
BL
誤解から付き合う事になった男子高校生がイチャイチャするだけの話。

司祭様!掘らせてください!!

ミクリ21
BL
司祭が信者に掘られる話。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

処理中です...