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受験生の悩み事・勉強ではなく・・(弟ポジ)
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僕、藤咲 央は今、悩んでます。
同級生で恋人の桐嶋 朔と一緒に過ごして、最近、気づいたこと。
それは、自分の背が伸びていることに気がついた。
自分の部屋にある鏡を見る。
でも、自分ではそんなに変わったように思わないんだけど・・・
毎日の登下校。
電車で朔と向かい合って話をしているときになんとなく、見上げる角度の違いを感じた。
朔が前はよく、央に「かわいい」って言ってたのが、最近言われなくなったような気がする。
・・・もしかして、この身長が影響あるんじゃ・・・
でも、いつも一緒にいる朔は特に変わってない。
ーうーんー…
!!!
もし、この先、自分の姿がとんでもない変容したら・・・
朔に嫌われる…かもしれない
トントントン
《はい》
「今、いい?」
央は妹の部屋をおとずれた。
「・・・どうしたの?」
妹がこちらを見て怪訝そうな顔をする。
「あのさ、僕って前より変わった?」
?!?!
「央くん、もっとわかりやすく」
央は正直に話をした。
「なんだか、背が伸びたように感じて。
それで、最近。
そういえば、朔にいわれてな・・・
ごめん!!なんでもない」
やっぱり全部言えなかった。
自分はどこの乙女だって思ってしまう。
顔を赤くして自分の部屋に帰っていった央を見つめていた妹は鼻で大きくため息をつく。
「・・・恋してんのね。
央くんも、なんで私に言うかな・・・
腐女子に・・・
・・・ふふふ」
そう言って自分のスマホを出し、何かを送っている。
「桐嶋くん、どうするかしら」
この妹と、桐嶋 朔のホットライン。
結構な波乱を回避している。
ピコン!
「【ありがとうございます。この休みに行います。】だって。
何すんだろう・・・気になる。・・・そうだ!!」
「【今度、桐嶋さんの服を作りたいです。コスとか興味ありますか?】送信」
ピコン!
「【2人で楽しむのには興味あります。】って、桐嶋君、かなり入ってるわ」
本当に桐嶋君、独占欲丸出し・・・
央の悩みを実は、知っている朔。
央の妹から教えてもらい、平日の毎日を観察もかねて央を見ている。
朔の興味のあるもので一喜一憂しているところはとても可愛らしい。
本人は可愛らしいと言われるのを気にしているようだったので控えていたのだが、彼は不安に思っているようである。
明日は休みのため、今夜から央は朔のマンションに泊りに行く。
受験生でもこの習慣は続いている。
学校の授業も終わり、生徒会の仕事も済ませ下校中、朔を呼び止める声がする。
「あの、桐嶋 朔さんですよね!
突然の声掛け、失礼します。
僕は、桐嶋さんのファンです。
今度、一緒にお昼ご飯を食べてもらえませんか?」
なんとなく、央の1年の時の雰囲気に似た男の子。
制服が同じなので学校は一緒なのだろう。
ただ、あのころの央と決定的に違うのは、朔と一緒にいる央の存在を気にすることなく、配慮のかけらも持っていないことだ。
央は礼儀として一緒にいる相手にも一言声をかける。
自分の要件だけ勢いで言ってくるのは、若いからまだ許せるが、朔はあまり気分が急激に悪くなっていった。
央は、朔に
「僕、ちょっと先で待ってる・・「いてください」
朔が央の言葉を遮って声をかける。
「ファンと言われましたが、いつも私が一緒にいる人のことも知ってますよね」
男の子は、
ちらっと央を見て、
「あぁ、僕。よく似てるねって言われるんですよ。先生たちに。
だから、よかったら一緒に・・・「お断りします」
言われたことが信じられないと言う表情をしている男の子。
「お断りします」
もう一度、朔が回答した。
「えっ。
でも、その先輩より、今の僕の方が・・・」
朔は鋭い目つきで男の子を見る。
「私はもし、あの頃にあなたと会っても、一緒に居たくありません。
お友達としてもどうかと思います。
勘違いですよ。
なんですか?
先生に彼に似ているから。
見た目の雰囲気だけですね。
見た目。外面。
中身は違いますよ。
魅力なんかありません。
感じません。
話は終わりです。
一緒に食べることもありません。
さようなら。
あぁ・・・気を付けて帰ってくださいね」
一緒に聞いている央ですら、寒気を感じてしまう朔の冷ややかな反応。
こんな朔、見たことがない。
じっと下を見ている男の子に、央はとりあえず、頭を下げ、朔と一緒に帰る。
電車の中で2人は会話もなく窓の外の流れる景色を見ていた。
さっきの男の子、僕に似てるんだ・・・
自分ではわからないけど、彼は自分に自信があるから朔に声をかけたんだろうな。
あの男の子、廊下で時々、すれ違う時に央の様子を見てはなんだか嫌な笑いをしていた。
特に気にすることもないと、思っていたので朔に声をかけた時は、同一人物とは思えなかった。
遠回しに央の存在を意識しているような話で一致したところだ。
朔のファンって言ってた。
今の央よりも、自分の方が朔の隣にふさわしいと思っている人がいるということは、央にとってショックだった。
ぁぁあ。なんだか視界が揺らいでくる。目頭が熱くなる。
我慢。
窓を見ながら少し震えている央の様子を、朔は気づく。
今の央はどちらかというと、消極的な考え方だ。
どう考えているのだろう。
降りる駅までの時間、その各々の感情をまとめる時間となった。
朔と央は2人、マンションに向かう。
央が少しずつ、歩みを遅くなっていくのを朔も気づいた。
立ち止まり、足元をみたまま、央が言う。
「さっきの男の子、かわいかったね。
それに、すごく元気な感じがする。
僕は前はよく、みんなに応援されてたけど。
朔の隣に僕が・・・ふさわしくないとおもっている人がいるってことだよね」
自分で言うこともできないほど、苦しくなる。
声が喉から出すのが苦しい感覚がする。
朔の靴が央の前に止まるのが見えた。
「央」
優しい朔の声。
顔をゆっくり上げて朔の目を見る。
前よりやっぱり近く感じる。
「早く家に帰りましょうね」
ニッコリと笑っている朔の顔が、温度を伴ってない。
そう言って、央の手を力の加減も忘れるほど朔は握りしめながら引っ張っていく。
グイッと体を引っ張られた感覚に央は驚き、声をあげる!
「朔!?痛い!」
ー央の訴えも今の朔には聞こえない。
足早にマンションのエントランスに入り、コンシェルジュの人から声をかけられる前にエレベーターへと入れられる。
靴の音が荒々しい響いて大きく聞こえるーー・・・
エレベーターの中では空気が沈んでいくような感覚を持ちそうなぐらいに沈黙している。
相変わらず、朔は央の手を掴んでる。
流石に、加減をしてくれているようで痛みはないが、央は朔の機嫌が悪くなっているのだけは、分かった。
玄関に入ったら自分がどうなるのか・・・
央は予想できなかった。
気まずいまま朔の誘導で玄関に入る。
扉が閉まり、朔が央の横を通って室内に入っていく。
央は玄関で横を通りすぎる朔を見つめていた。
朔がリビングで荷物を置き、央のいる玄関まで戻る。
「・・・入ってください」
央は、もう一つ一つ、朔に与えられるだけの物になっていた。
リビングに入っても央は自分の荷物を持ったまま。
朔はそんな央を視界にいれながらも、家のことをする。
央は、自分がどうしてこのまま放置されているのか、一生懸命考えた。
やっぱり、怒ってるんだよね。
でも、不安にもなる。
自分には朔を魅了する特別な物は持っていない。
骨格も少しずつ、男って感じになってきている。
朔は、カッコイイ。
彼も身長は高くなり、私服を着ていると高校生とは思えない時がある。
大人の風格もあり、落ち着き、一人暮らしをしているので、しっかりしている。
魅力的な部分は数多く、他のライバルがいるのは仕方がない。
ダメだ。
思考が完全に卑屈になっている。
さっき、おさまった涙が出てしまう。
こんなに僕は弱かったかな・・・
「央、まだ・・・ちょっとこっちに来て」
朔が近くに来て、央の様子に気づく。
そして朔は央の持っている物をその場に置き、手を引っ張っていく。
まだ、2人とも学校の制服だ。
朔は央を寝室に連れて行く。
「朔?」
泣き声のまま央は朔の名を呼ぶ。
くるっと朔が央の方に向いたと思ったら、手を広げてハグを求めている恰好。
?
てっきり、押し倒されたりするのかと思った央は朔の顔を見る。
「央?私のところにきて?」
うん。
と頷き、ゆっくり朔の元に歩いていく。
朔の腕の中で彼を見る。
「央は背が高くなりましたね。
前は少し屈まないとできなかったですから」
そう言って、朔は央の唇にキスを落とす。
「今日の帰りに会った人、ぜんぜん央に似ていませんよ。
それに、私が一緒にいて楽しいのは央です」
そう言って、朔は央と目を合わせるように覗き込む。
額を合わせて朔は聞く。
「何が不安なんですか?」
「なんだか、背が高くなった」
朔はくすりと笑う。
「良かったですね。背が伸びないって気にしてましたよね」
そう言って、チュッと唇にキスを落とす。
躊躇いがちに小さい声で央が
「最近、朔に・・・かわいいって言ってもらってない・・」
!!
「言われるの、嫌でしたよね。
言わないようにしてたんですが、ダメでした?」
央は口をとがらせるようにいう。
「他の人には言われても嫌だけど。
・・・朔に言われると嬉しい」
そう言って央は朔に抱き着いた。
抱き着いた顔の位置も前は彼の胸の辺りだった。
今は、肩より少し上に顔がある。
こうして近くに触れると自分の背が高さが変わったのを実感する。
「こうやって、私に嫌われるんじゃないかってつまらないことを考えているところも。
私には、かわいく見えます。
だって、それだけ、央の心が私を欲しているんですからね」
なんて貪欲なほどの愛情表現だ。
「つまらないこと?」
央のくぐもった声・・・
「えぇ。そうでしょう。
私は央にメロメロなんです。
嫌われると央が考えること自体、皆無です」
!!!
朔の口から・・・メロメロ・・・
「央の背が伸びたということは、私にキスをしやすくなるということです。
いいですね。
嬉しいです。
もし、追い越したとしても、心配はいらないですよ」
うんと頷き、央は顔を上げる。
!!!!
すぐ近くに朔の顔・・・
唇が合わさり、お互い舌をだして絡める。
一度、離れ朔は自分の唇に指を置き、トントン、と示す。
「してください」
ベッドに座り央と向かい合ってキスをする。
唇を離し、目を合わせ、笑う。
そういえば、まだ制服だった。
そう言おうとした央は、覆いかぶさってくる朔を見る。
「だめ。
制服に皺がつく。」
両手で身体を押し返す。
意外とこういう所は央が気にするのを自覚した。
こうして、少しずつ互いの心を近づけ、クリスマスを迎える2人だった。
同級生で恋人の桐嶋 朔と一緒に過ごして、最近、気づいたこと。
それは、自分の背が伸びていることに気がついた。
自分の部屋にある鏡を見る。
でも、自分ではそんなに変わったように思わないんだけど・・・
毎日の登下校。
電車で朔と向かい合って話をしているときになんとなく、見上げる角度の違いを感じた。
朔が前はよく、央に「かわいい」って言ってたのが、最近言われなくなったような気がする。
・・・もしかして、この身長が影響あるんじゃ・・・
でも、いつも一緒にいる朔は特に変わってない。
ーうーんー…
!!!
もし、この先、自分の姿がとんでもない変容したら・・・
朔に嫌われる…かもしれない
トントントン
《はい》
「今、いい?」
央は妹の部屋をおとずれた。
「・・・どうしたの?」
妹がこちらを見て怪訝そうな顔をする。
「あのさ、僕って前より変わった?」
?!?!
「央くん、もっとわかりやすく」
央は正直に話をした。
「なんだか、背が伸びたように感じて。
それで、最近。
そういえば、朔にいわれてな・・・
ごめん!!なんでもない」
やっぱり全部言えなかった。
自分はどこの乙女だって思ってしまう。
顔を赤くして自分の部屋に帰っていった央を見つめていた妹は鼻で大きくため息をつく。
「・・・恋してんのね。
央くんも、なんで私に言うかな・・・
腐女子に・・・
・・・ふふふ」
そう言って自分のスマホを出し、何かを送っている。
「桐嶋くん、どうするかしら」
この妹と、桐嶋 朔のホットライン。
結構な波乱を回避している。
ピコン!
「【ありがとうございます。この休みに行います。】だって。
何すんだろう・・・気になる。・・・そうだ!!」
「【今度、桐嶋さんの服を作りたいです。コスとか興味ありますか?】送信」
ピコン!
「【2人で楽しむのには興味あります。】って、桐嶋君、かなり入ってるわ」
本当に桐嶋君、独占欲丸出し・・・
央の悩みを実は、知っている朔。
央の妹から教えてもらい、平日の毎日を観察もかねて央を見ている。
朔の興味のあるもので一喜一憂しているところはとても可愛らしい。
本人は可愛らしいと言われるのを気にしているようだったので控えていたのだが、彼は不安に思っているようである。
明日は休みのため、今夜から央は朔のマンションに泊りに行く。
受験生でもこの習慣は続いている。
学校の授業も終わり、生徒会の仕事も済ませ下校中、朔を呼び止める声がする。
「あの、桐嶋 朔さんですよね!
突然の声掛け、失礼します。
僕は、桐嶋さんのファンです。
今度、一緒にお昼ご飯を食べてもらえませんか?」
なんとなく、央の1年の時の雰囲気に似た男の子。
制服が同じなので学校は一緒なのだろう。
ただ、あのころの央と決定的に違うのは、朔と一緒にいる央の存在を気にすることなく、配慮のかけらも持っていないことだ。
央は礼儀として一緒にいる相手にも一言声をかける。
自分の要件だけ勢いで言ってくるのは、若いからまだ許せるが、朔はあまり気分が急激に悪くなっていった。
央は、朔に
「僕、ちょっと先で待ってる・・「いてください」
朔が央の言葉を遮って声をかける。
「ファンと言われましたが、いつも私が一緒にいる人のことも知ってますよね」
男の子は、
ちらっと央を見て、
「あぁ、僕。よく似てるねって言われるんですよ。先生たちに。
だから、よかったら一緒に・・・「お断りします」
言われたことが信じられないと言う表情をしている男の子。
「お断りします」
もう一度、朔が回答した。
「えっ。
でも、その先輩より、今の僕の方が・・・」
朔は鋭い目つきで男の子を見る。
「私はもし、あの頃にあなたと会っても、一緒に居たくありません。
お友達としてもどうかと思います。
勘違いですよ。
なんですか?
先生に彼に似ているから。
見た目の雰囲気だけですね。
見た目。外面。
中身は違いますよ。
魅力なんかありません。
感じません。
話は終わりです。
一緒に食べることもありません。
さようなら。
あぁ・・・気を付けて帰ってくださいね」
一緒に聞いている央ですら、寒気を感じてしまう朔の冷ややかな反応。
こんな朔、見たことがない。
じっと下を見ている男の子に、央はとりあえず、頭を下げ、朔と一緒に帰る。
電車の中で2人は会話もなく窓の外の流れる景色を見ていた。
さっきの男の子、僕に似てるんだ・・・
自分ではわからないけど、彼は自分に自信があるから朔に声をかけたんだろうな。
あの男の子、廊下で時々、すれ違う時に央の様子を見てはなんだか嫌な笑いをしていた。
特に気にすることもないと、思っていたので朔に声をかけた時は、同一人物とは思えなかった。
遠回しに央の存在を意識しているような話で一致したところだ。
朔のファンって言ってた。
今の央よりも、自分の方が朔の隣にふさわしいと思っている人がいるということは、央にとってショックだった。
ぁぁあ。なんだか視界が揺らいでくる。目頭が熱くなる。
我慢。
窓を見ながら少し震えている央の様子を、朔は気づく。
今の央はどちらかというと、消極的な考え方だ。
どう考えているのだろう。
降りる駅までの時間、その各々の感情をまとめる時間となった。
朔と央は2人、マンションに向かう。
央が少しずつ、歩みを遅くなっていくのを朔も気づいた。
立ち止まり、足元をみたまま、央が言う。
「さっきの男の子、かわいかったね。
それに、すごく元気な感じがする。
僕は前はよく、みんなに応援されてたけど。
朔の隣に僕が・・・ふさわしくないとおもっている人がいるってことだよね」
自分で言うこともできないほど、苦しくなる。
声が喉から出すのが苦しい感覚がする。
朔の靴が央の前に止まるのが見えた。
「央」
優しい朔の声。
顔をゆっくり上げて朔の目を見る。
前よりやっぱり近く感じる。
「早く家に帰りましょうね」
ニッコリと笑っている朔の顔が、温度を伴ってない。
そう言って、央の手を力の加減も忘れるほど朔は握りしめながら引っ張っていく。
グイッと体を引っ張られた感覚に央は驚き、声をあげる!
「朔!?痛い!」
ー央の訴えも今の朔には聞こえない。
足早にマンションのエントランスに入り、コンシェルジュの人から声をかけられる前にエレベーターへと入れられる。
靴の音が荒々しい響いて大きく聞こえるーー・・・
エレベーターの中では空気が沈んでいくような感覚を持ちそうなぐらいに沈黙している。
相変わらず、朔は央の手を掴んでる。
流石に、加減をしてくれているようで痛みはないが、央は朔の機嫌が悪くなっているのだけは、分かった。
玄関に入ったら自分がどうなるのか・・・
央は予想できなかった。
気まずいまま朔の誘導で玄関に入る。
扉が閉まり、朔が央の横を通って室内に入っていく。
央は玄関で横を通りすぎる朔を見つめていた。
朔がリビングで荷物を置き、央のいる玄関まで戻る。
「・・・入ってください」
央は、もう一つ一つ、朔に与えられるだけの物になっていた。
リビングに入っても央は自分の荷物を持ったまま。
朔はそんな央を視界にいれながらも、家のことをする。
央は、自分がどうしてこのまま放置されているのか、一生懸命考えた。
やっぱり、怒ってるんだよね。
でも、不安にもなる。
自分には朔を魅了する特別な物は持っていない。
骨格も少しずつ、男って感じになってきている。
朔は、カッコイイ。
彼も身長は高くなり、私服を着ていると高校生とは思えない時がある。
大人の風格もあり、落ち着き、一人暮らしをしているので、しっかりしている。
魅力的な部分は数多く、他のライバルがいるのは仕方がない。
ダメだ。
思考が完全に卑屈になっている。
さっき、おさまった涙が出てしまう。
こんなに僕は弱かったかな・・・
「央、まだ・・・ちょっとこっちに来て」
朔が近くに来て、央の様子に気づく。
そして朔は央の持っている物をその場に置き、手を引っ張っていく。
まだ、2人とも学校の制服だ。
朔は央を寝室に連れて行く。
「朔?」
泣き声のまま央は朔の名を呼ぶ。
くるっと朔が央の方に向いたと思ったら、手を広げてハグを求めている恰好。
?
てっきり、押し倒されたりするのかと思った央は朔の顔を見る。
「央?私のところにきて?」
うん。
と頷き、ゆっくり朔の元に歩いていく。
朔の腕の中で彼を見る。
「央は背が高くなりましたね。
前は少し屈まないとできなかったですから」
そう言って、朔は央の唇にキスを落とす。
「今日の帰りに会った人、ぜんぜん央に似ていませんよ。
それに、私が一緒にいて楽しいのは央です」
そう言って、朔は央と目を合わせるように覗き込む。
額を合わせて朔は聞く。
「何が不安なんですか?」
「なんだか、背が高くなった」
朔はくすりと笑う。
「良かったですね。背が伸びないって気にしてましたよね」
そう言って、チュッと唇にキスを落とす。
躊躇いがちに小さい声で央が
「最近、朔に・・・かわいいって言ってもらってない・・」
!!
「言われるの、嫌でしたよね。
言わないようにしてたんですが、ダメでした?」
央は口をとがらせるようにいう。
「他の人には言われても嫌だけど。
・・・朔に言われると嬉しい」
そう言って央は朔に抱き着いた。
抱き着いた顔の位置も前は彼の胸の辺りだった。
今は、肩より少し上に顔がある。
こうして近くに触れると自分の背が高さが変わったのを実感する。
「こうやって、私に嫌われるんじゃないかってつまらないことを考えているところも。
私には、かわいく見えます。
だって、それだけ、央の心が私を欲しているんですからね」
なんて貪欲なほどの愛情表現だ。
「つまらないこと?」
央のくぐもった声・・・
「えぇ。そうでしょう。
私は央にメロメロなんです。
嫌われると央が考えること自体、皆無です」
!!!
朔の口から・・・メロメロ・・・
「央の背が伸びたということは、私にキスをしやすくなるということです。
いいですね。
嬉しいです。
もし、追い越したとしても、心配はいらないですよ」
うんと頷き、央は顔を上げる。
!!!!
すぐ近くに朔の顔・・・
唇が合わさり、お互い舌をだして絡める。
一度、離れ朔は自分の唇に指を置き、トントン、と示す。
「してください」
ベッドに座り央と向かい合ってキスをする。
唇を離し、目を合わせ、笑う。
そういえば、まだ制服だった。
そう言おうとした央は、覆いかぶさってくる朔を見る。
「だめ。
制服に皺がつく。」
両手で身体を押し返す。
意外とこういう所は央が気にするのを自覚した。
こうして、少しずつ互いの心を近づけ、クリスマスを迎える2人だった。
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