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弟ポジション9
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それから慣れないことを慣れるように頑張っている毎日と勉強などに時間をとられ、学校関係は冬休みまでのところまでは追いついた。
日頃、予習をする習慣をつけていてよかったとこのとき、思った。
そしてこの数日、少し違和感を感じる。
寝るときに慣れましょうと一日置きでベッドと布団で寝るようにしていたはずなのに、朔にいろいろと理由をつけられ、結局ベッドで一緒に寝ている。
それから持ってきている服とは少し違うような服が、洗濯して服を片付けようとしたら増えているのだ。
部屋にいるのだからと朔からリラックスできる服をと渡された服は央が自分では選ばないようなものだ。
たしかにリラックスできているが触り心地もいいので、朔も寄ってくる。
気づいたらお腹のあたりを触っているのだ。
落ち着かない。
それに、触ってくるのが眠気を誘って気づけば朔に膝枕をされている。
そして、今日、やってしまった。
寝ぼけて甘えてしまった。
「さく…
好き~。
優しくしてくれて嬉しい。
早く朔を見たい。
…うぅぅ…」
寝ぼけてました。
あとで聞いた話だと、ふわりと笑ったと思ったら、だんだん泣き出したそうで全然記憶がありません。
気づいた時にはいつもの膝の上。
朔も時間の過ごし方が上手で本を読んでいる。
でも、この数日で朔の優しい時や怒ったりすることがこんなに嬉しいと思うようになった。
学校ではあまり感情の変化を見せない桐嶋 朔の姿を独占しているのは嬉しい。
ドキッとしたりするときがたくさんあり、そのたびに、朔に
「央、耳と顔が赤いですよ。
どうしましたか?」と、おでこに手を当ててくる。
なんだか甘い・・・甘すぎる。
BLだとこれって溺愛だよね。
やっぱり?まさか自分が体験できるとは…
!!!
BL脳発動してしまいました。
いけません。
現実はそんなにうまくは行きません。
やっと朔の接触に慣れてきているぐらいでBL展開順調すぎるのもどうかと思う。
そして明日はクリスマスイブという日であることに気づいたこの時間から朔には何ができるのだろうといろいろ考えてみる。
料理は目が見えない状態でなれないことはしないほうがいいのはわかる。
この前はお風呂の掃除をしようとして、朔に止められた。
まぁ、ちょっと無理だったかな。
結局、洗濯物をランドリールームに持って行って干して乾いたらそれを分ける。
朔は僕より体が大きいので服も大きい。
サイズはたぶん、メンズのМサイズかLサイズだろう。
僕はSSサイズかSサイズで比べやすい。
いろいろ考えながらできることを探している。
洗濯物を畳んで分けて置いておくぐらいかな。
そして今は朔が藤咲家に行っている。
留守番初体験である。
音に敏感なのは部屋が静かだからだ。
ガラケーのサイドボタンを押して今の時刻を確認する。
出てまだ1時間しか過ぎてない。
朔は学校から帰ってもこの部屋で静かに過ごしているのか…
テレビはあるけど海外のニュースを見ているぐらいで娯楽などは見ていない。
体調を崩したりしたら寂しいだろうな。
朔が帰宅したら玄関に行って「おかえりなさい。」を言おう。
朔ならこれでも喜んでくれる。
ソファに座るがいつもは朔の膝の上である。
落ち着かなくソファから降り床に座り込みソファの上に頭を置いて家の様子を眺めみる。
…が、見えない。
朔の顔を見たい。
ご飯を作って美味しいって言ってもらいたい。
窓のそばだからかなぁ。
ポカポカと暖かい。
寝不足でもないのに、眠たくなる。
でも、帰ってきた時に迎えに出なきゃ。
…
‥
身体を揺らされている。
「央、こんなところで寝ては風邪をひきますよ」
朔の声?
目を開けて視界に布の生地が見える。
ぼんやりとだが見えている。
ガバッと起き上がって周りをみる。
見たことのない部屋。
光の具合で白っぽかったり、暖かな色だったり。
ぼやけているけど見えないとは言わない。
僕の横に様子を見ている朔の姿。
まだ、外から帰って上着も脱いでない姿。
少し、鼻が赤いような気がする。
久しぶりの姿。
でも、少し痩せた?
髪も伸びたかな?
「央?」
ぼんやりとだけど見えている。
…嬉しい。
「朔?お帰りなさいが出来なくてごめんなさい」
両手を広げて朔に抱きつく。
まさか突然、こんなことをするとは思ってなかっただろうな。
朔の驚いた顔が見えた。
態勢を崩して少し尻餅をついたが僕をしっかりと受け止めてくれる。
「…少し痩せたね。
髪も伸びたかな…」
最後の方の言葉は涙で言えなかった。
「え!?
…央?
見えてるんですか?
…顔を見せてください」
人は嬉しいときも震えて涙が出るんだと知った。
抱きついた朔の胸から顔を上げてみる。
朔の瞳の色が好き、でも離れてると見えなかった。
「はっきりとは見えないんだ。
…でも、何もない世界じゃなくなった。
朔の顔も見えるよ。
あまり食べれてなかったんだね。
…ごめんね、気づかないで…」
もっと気付こうと思ったら気づけていたのかもしれない。
この大きな手も少し手首周りが細いように思う。
指と手のひらで確かめるように触っていく。
首もとの辺りも顎の下の辺りも細くなったように思う。
目覚めてから数分、長めのまばたきをしているがはっきりとはせず、そのままである。
朔は相変わらず、僕の様子を見ている。あ、少し瞳の色が見えた。
たぶん、見えていないときは視線は合わなかっただろう。
視線が合うように朔の目をみる。
朔の手が震えてる。
両手で顔を包まれ、指で目元をなぞられる。
僕はじっと朔の目を見ている。手を追いかける朔の瞳は綺麗でそして揺れていた。
視線があってお互いの手の指を絡ませるように結び、僕は涙が零れ落ちるのも構わなくなるぐらい、
自然に笑った。
そのあと、自分で親と病院の先生に連絡をした。
年が明けたら検査をするのでそれまでは、無理をせず刺激の少ないようにと忠告された。
特に、現代の必需品、スマホやタブレットなどは控えるように言われた。
勉強も改善されるまでは今と同じように朔に口頭で伝えてもらうようにしておこう。
央が電話をしている間、朔は藤咲家からもらってきたものなどを片付け、央のそばで会話を聞くようにしていた。
ソファに座り央を膝の上に置いて様子を見る。
1時間半ぐらい出かけて帰ってきたとき、部屋の音が静かで一瞬、央が外出をしたのかと焦った。
玄関には靴もあり、その不安はすぐに消えたが、今度は自分の知らない間に怪我をしていないか心配が膨れていく。
食卓には時に変化はなく、リビングに行くと窓の光が当たるソファに頭を乗せ床に座ったまま寝ている央を見つけた。
朔の懸命なサポートにより食欲も増え、穏やかに過ごせているのだろう。
顔の色もいい。
唇の色もほんのりとした赤みで荒れも目立たない。
頬も少し柔らかみを持っているように思う。
視力の改善は朔にも喜びを運んでくれた。
視線のどこかあっていない央の笑う表情は寂しいものを感じていた。
先ほど、央と視線があい笑いかけてくれた。
完全ではないので、まだ時間はかかるがこの生活を進めていくとまた、いい変化をだしそうに思う。
会話を終えて気を緩ませた央は膝の上に載っている今の自分の状況を戸惑いながら受け入れてる。
見えなかったから気にならなかったのだが、朔の顔が近い。
特に、口元に視線が行ってしまう。
…恥ずかしいけど見てしまう。
慣れてきて緊張しなくなっていた央が膝の上で固まっている。
その割には口元の方をチラチラとみている。
「央?私の目をみてください」
「?ん?わかった」
見上げて朔の瞳を見る。
はっきりと見えないので近づいてもっと見えるようにとしていく。
「・・・央。近すぎです。
鼻が当たってます」
「アハハ。
そうだね。
でも、朔の瞳をもっと見たい」
「では、もっと近づけましょう」
朔の瞳をじっと見ていて徐々に近づいてくる。
窓の光が少し瞳に入ってきていて綺麗。
もし、見えなくなって過ごすとしたらこの色の中ならまだ孤独ではないように思う。
こんなことを朔に言ったら
「冗談でも嫌です。」って言いそう。
「これはなんですか?
央は意地悪ですね。
私は央のことが好きなんです。
愛しいんです。
…それなのに、この今の状況はひどくありませんか?」
「…ひどいね。じゃあ、朔?目を閉じて…」
綺麗な朔の目を閉じてしまうのは残念だけど仕方がない。
気になっていた朔の口元に僕は自分の唇を当てて、キスをした。
そして、
「ありがとう」
言って、恥ずかしくなり急いで朔の膝の上から降りようとしたが、腕で体をホールドされていて無理だった。
「央?
よくわかりません、困りました。
…おかわり」
…食べ物ではないのですが…また、意地悪な朔が出てる。
「目を閉じてね」
僕も目を閉じてチュッとした。
が、後ろ頭を朔の手で押さえられて気づけば唇から朔の温かい舌が入ってくる。
朔の顔の向きが少し斜めになってより深く唇の間を責めるような、でも、確かめるようなゆっくりと
動いて、気持ちがいい…
鼻で息をするって言ってたから苦しくなった時に、してみる。
唇をチュッチュッと啄んだあと、
「央、上手です。
目を開けて…」
ぎゅっと目を閉じていたため、目を開けても慣れるまで時間がかかって朔と視線があう。
朔がほほ笑んでそしてまた、口づけを深く深くすすめていった。
キスとはこんなに力が抜けて体の熱が溜まっていくものなのだと知った。
気がつけばソファに寝かされて朔が上で覆いかぶさるようになっていた。
もう、力は入らず、僕の手は頭の辺りに置いてあるだけであった。
相変わらず、朔は唇を啄むようにしたり、中に入ってきたりとしている。
朔の瞳は僕の様子を伺いながら、手で髪をすいたり、耳を触り反応を見ているようである。
体がピクピクと反応して困る。
敏感に反応してしまうからだが憎らしい。
そして大きな波を感じ取った瞬間、我慢していた声が
「っん」
と出た。
体の奥でゾクゾクとして溜まった熱が弾けていく。
そして、急激に眠たくなり逆らえず深く眠りに落ちた。
央にキスをしていたら軽くイったようで眠ってしまった。
さすがに、下着がどろどろしているのではと、確かめるがほとんど出ていない。
程よい温度で温めたタオルで体を拭き着替えを済ませておく。
こんなに歯止めがきかないぐらいキスをしてしまうと、もう、自分を抑えれない。
今も、横たわる央の唇は赤く色づき、まるで朔を誘っているかのようである。
まさか、央からキスをしてくるとは思っていなかったのだが、それ以上に、受け入れてくれていることに安堵する。
央の今の状態は微妙ではあるが、転校の線は消えていくだろう。
学業の方も問題ないようである。
今の状態、今後のことを考えていた朔は央の将来を考えていた。
視力が改善されていたら一緒にいる可能性は広がる。
この冬休みが明けて朔と央は離れ離れになるかもしれないと知らされた時のショックは大きく、食事もあまりとる気はなかった。
ただ、央が一緒に生活していく中で、徐々に回復していった。
央に驚かれたのに自分の情けなさを感じる。
自分にとって央の存在はこれほどまでに大きいものと改めて感じた。
少しして、央が目覚め、視力はぼやけているが状態は安定してるようである。
自分の状態をみてまた、赤面している様子は可愛らしくでも、これ以上はまだ早い。
「改めて部屋を案内しましょうか?
それとも今日一日はアイマスクをして刺激を抑えますか?」
央は部屋を見て回りたいがまた、元に戻ってしまうとアイマスクをして感覚を残しておきたいように思う。
「今日はアイマスクで目を休めておくよ。
外せば見ようと思えば見えるからね」
「わかりました。
では、昨日と同じように補助をしますね」
それからは翌日のクリスマスイブについて話をしたりして過ごした。
キスの後、また何かをするわけでもなく、央は自分の様子を朔が一番に考えてくれているとひしひしと感じていた。
話を聞いていて、一緒に生活をするようになって食欲もわいてきていると言っていた。
痩せていたのは自分の管理不足って言ってたけど、央に多少非があるように思うのは当然である。
もしこのまま目が改善されたのなら。
同じ学校に引き続き通うことができるのかもしれない。
離れたくないし、朔のそばに少しでも一緒にいてどんなことも支えていけたらいいのに。
そのためにもまだ自分は持っている力が少なすぎる。
もっと、力をつけたい。朔と分かり合っていたい。
夜、休む時にアイマスクを取り、数時間ぶりに朔の顔を見た。
学校や外出の時には髪の毛を少しまとめているようで今は、おろしている。
寝室の灯りは少し暗めの色のため、朔の瞳の色が深いように思う。
じっと見つめていると
「明日のイブは楽しみです。
去年は一人で過ごしていました。
初めて好きな人と過ごせるんです。
寝れるか心配ですね」
「大袈裟だよ。
でも、朔にそう思われたら僕も嬉しい…です。
今日は朔が寝るまで僕が見ているよ」
「では、手をつないでもいいですか?」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
いつもの挨拶だけど、この挨拶も大切な人と交わすとこんなに温かいものなんだと知る。
そんなことを考えていると朔の呼吸の音が聞こえ、僕も安心して眠った。
日頃、予習をする習慣をつけていてよかったとこのとき、思った。
そしてこの数日、少し違和感を感じる。
寝るときに慣れましょうと一日置きでベッドと布団で寝るようにしていたはずなのに、朔にいろいろと理由をつけられ、結局ベッドで一緒に寝ている。
それから持ってきている服とは少し違うような服が、洗濯して服を片付けようとしたら増えているのだ。
部屋にいるのだからと朔からリラックスできる服をと渡された服は央が自分では選ばないようなものだ。
たしかにリラックスできているが触り心地もいいので、朔も寄ってくる。
気づいたらお腹のあたりを触っているのだ。
落ち着かない。
それに、触ってくるのが眠気を誘って気づけば朔に膝枕をされている。
そして、今日、やってしまった。
寝ぼけて甘えてしまった。
「さく…
好き~。
優しくしてくれて嬉しい。
早く朔を見たい。
…うぅぅ…」
寝ぼけてました。
あとで聞いた話だと、ふわりと笑ったと思ったら、だんだん泣き出したそうで全然記憶がありません。
気づいた時にはいつもの膝の上。
朔も時間の過ごし方が上手で本を読んでいる。
でも、この数日で朔の優しい時や怒ったりすることがこんなに嬉しいと思うようになった。
学校ではあまり感情の変化を見せない桐嶋 朔の姿を独占しているのは嬉しい。
ドキッとしたりするときがたくさんあり、そのたびに、朔に
「央、耳と顔が赤いですよ。
どうしましたか?」と、おでこに手を当ててくる。
なんだか甘い・・・甘すぎる。
BLだとこれって溺愛だよね。
やっぱり?まさか自分が体験できるとは…
!!!
BL脳発動してしまいました。
いけません。
現実はそんなにうまくは行きません。
やっと朔の接触に慣れてきているぐらいでBL展開順調すぎるのもどうかと思う。
そして明日はクリスマスイブという日であることに気づいたこの時間から朔には何ができるのだろうといろいろ考えてみる。
料理は目が見えない状態でなれないことはしないほうがいいのはわかる。
この前はお風呂の掃除をしようとして、朔に止められた。
まぁ、ちょっと無理だったかな。
結局、洗濯物をランドリールームに持って行って干して乾いたらそれを分ける。
朔は僕より体が大きいので服も大きい。
サイズはたぶん、メンズのМサイズかLサイズだろう。
僕はSSサイズかSサイズで比べやすい。
いろいろ考えながらできることを探している。
洗濯物を畳んで分けて置いておくぐらいかな。
そして今は朔が藤咲家に行っている。
留守番初体験である。
音に敏感なのは部屋が静かだからだ。
ガラケーのサイドボタンを押して今の時刻を確認する。
出てまだ1時間しか過ぎてない。
朔は学校から帰ってもこの部屋で静かに過ごしているのか…
テレビはあるけど海外のニュースを見ているぐらいで娯楽などは見ていない。
体調を崩したりしたら寂しいだろうな。
朔が帰宅したら玄関に行って「おかえりなさい。」を言おう。
朔ならこれでも喜んでくれる。
ソファに座るがいつもは朔の膝の上である。
落ち着かなくソファから降り床に座り込みソファの上に頭を置いて家の様子を眺めみる。
…が、見えない。
朔の顔を見たい。
ご飯を作って美味しいって言ってもらいたい。
窓のそばだからかなぁ。
ポカポカと暖かい。
寝不足でもないのに、眠たくなる。
でも、帰ってきた時に迎えに出なきゃ。
…
‥
身体を揺らされている。
「央、こんなところで寝ては風邪をひきますよ」
朔の声?
目を開けて視界に布の生地が見える。
ぼんやりとだが見えている。
ガバッと起き上がって周りをみる。
見たことのない部屋。
光の具合で白っぽかったり、暖かな色だったり。
ぼやけているけど見えないとは言わない。
僕の横に様子を見ている朔の姿。
まだ、外から帰って上着も脱いでない姿。
少し、鼻が赤いような気がする。
久しぶりの姿。
でも、少し痩せた?
髪も伸びたかな?
「央?」
ぼんやりとだけど見えている。
…嬉しい。
「朔?お帰りなさいが出来なくてごめんなさい」
両手を広げて朔に抱きつく。
まさか突然、こんなことをするとは思ってなかっただろうな。
朔の驚いた顔が見えた。
態勢を崩して少し尻餅をついたが僕をしっかりと受け止めてくれる。
「…少し痩せたね。
髪も伸びたかな…」
最後の方の言葉は涙で言えなかった。
「え!?
…央?
見えてるんですか?
…顔を見せてください」
人は嬉しいときも震えて涙が出るんだと知った。
抱きついた朔の胸から顔を上げてみる。
朔の瞳の色が好き、でも離れてると見えなかった。
「はっきりとは見えないんだ。
…でも、何もない世界じゃなくなった。
朔の顔も見えるよ。
あまり食べれてなかったんだね。
…ごめんね、気づかないで…」
もっと気付こうと思ったら気づけていたのかもしれない。
この大きな手も少し手首周りが細いように思う。
指と手のひらで確かめるように触っていく。
首もとの辺りも顎の下の辺りも細くなったように思う。
目覚めてから数分、長めのまばたきをしているがはっきりとはせず、そのままである。
朔は相変わらず、僕の様子を見ている。あ、少し瞳の色が見えた。
たぶん、見えていないときは視線は合わなかっただろう。
視線が合うように朔の目をみる。
朔の手が震えてる。
両手で顔を包まれ、指で目元をなぞられる。
僕はじっと朔の目を見ている。手を追いかける朔の瞳は綺麗でそして揺れていた。
視線があってお互いの手の指を絡ませるように結び、僕は涙が零れ落ちるのも構わなくなるぐらい、
自然に笑った。
そのあと、自分で親と病院の先生に連絡をした。
年が明けたら検査をするのでそれまでは、無理をせず刺激の少ないようにと忠告された。
特に、現代の必需品、スマホやタブレットなどは控えるように言われた。
勉強も改善されるまでは今と同じように朔に口頭で伝えてもらうようにしておこう。
央が電話をしている間、朔は藤咲家からもらってきたものなどを片付け、央のそばで会話を聞くようにしていた。
ソファに座り央を膝の上に置いて様子を見る。
1時間半ぐらい出かけて帰ってきたとき、部屋の音が静かで一瞬、央が外出をしたのかと焦った。
玄関には靴もあり、その不安はすぐに消えたが、今度は自分の知らない間に怪我をしていないか心配が膨れていく。
食卓には時に変化はなく、リビングに行くと窓の光が当たるソファに頭を乗せ床に座ったまま寝ている央を見つけた。
朔の懸命なサポートにより食欲も増え、穏やかに過ごせているのだろう。
顔の色もいい。
唇の色もほんのりとした赤みで荒れも目立たない。
頬も少し柔らかみを持っているように思う。
視力の改善は朔にも喜びを運んでくれた。
視線のどこかあっていない央の笑う表情は寂しいものを感じていた。
先ほど、央と視線があい笑いかけてくれた。
完全ではないので、まだ時間はかかるがこの生活を進めていくとまた、いい変化をだしそうに思う。
会話を終えて気を緩ませた央は膝の上に載っている今の自分の状況を戸惑いながら受け入れてる。
見えなかったから気にならなかったのだが、朔の顔が近い。
特に、口元に視線が行ってしまう。
…恥ずかしいけど見てしまう。
慣れてきて緊張しなくなっていた央が膝の上で固まっている。
その割には口元の方をチラチラとみている。
「央?私の目をみてください」
「?ん?わかった」
見上げて朔の瞳を見る。
はっきりと見えないので近づいてもっと見えるようにとしていく。
「・・・央。近すぎです。
鼻が当たってます」
「アハハ。
そうだね。
でも、朔の瞳をもっと見たい」
「では、もっと近づけましょう」
朔の瞳をじっと見ていて徐々に近づいてくる。
窓の光が少し瞳に入ってきていて綺麗。
もし、見えなくなって過ごすとしたらこの色の中ならまだ孤独ではないように思う。
こんなことを朔に言ったら
「冗談でも嫌です。」って言いそう。
「これはなんですか?
央は意地悪ですね。
私は央のことが好きなんです。
愛しいんです。
…それなのに、この今の状況はひどくありませんか?」
「…ひどいね。じゃあ、朔?目を閉じて…」
綺麗な朔の目を閉じてしまうのは残念だけど仕方がない。
気になっていた朔の口元に僕は自分の唇を当てて、キスをした。
そして、
「ありがとう」
言って、恥ずかしくなり急いで朔の膝の上から降りようとしたが、腕で体をホールドされていて無理だった。
「央?
よくわかりません、困りました。
…おかわり」
…食べ物ではないのですが…また、意地悪な朔が出てる。
「目を閉じてね」
僕も目を閉じてチュッとした。
が、後ろ頭を朔の手で押さえられて気づけば唇から朔の温かい舌が入ってくる。
朔の顔の向きが少し斜めになってより深く唇の間を責めるような、でも、確かめるようなゆっくりと
動いて、気持ちがいい…
鼻で息をするって言ってたから苦しくなった時に、してみる。
唇をチュッチュッと啄んだあと、
「央、上手です。
目を開けて…」
ぎゅっと目を閉じていたため、目を開けても慣れるまで時間がかかって朔と視線があう。
朔がほほ笑んでそしてまた、口づけを深く深くすすめていった。
キスとはこんなに力が抜けて体の熱が溜まっていくものなのだと知った。
気がつけばソファに寝かされて朔が上で覆いかぶさるようになっていた。
もう、力は入らず、僕の手は頭の辺りに置いてあるだけであった。
相変わらず、朔は唇を啄むようにしたり、中に入ってきたりとしている。
朔の瞳は僕の様子を伺いながら、手で髪をすいたり、耳を触り反応を見ているようである。
体がピクピクと反応して困る。
敏感に反応してしまうからだが憎らしい。
そして大きな波を感じ取った瞬間、我慢していた声が
「っん」
と出た。
体の奥でゾクゾクとして溜まった熱が弾けていく。
そして、急激に眠たくなり逆らえず深く眠りに落ちた。
央にキスをしていたら軽くイったようで眠ってしまった。
さすがに、下着がどろどろしているのではと、確かめるがほとんど出ていない。
程よい温度で温めたタオルで体を拭き着替えを済ませておく。
こんなに歯止めがきかないぐらいキスをしてしまうと、もう、自分を抑えれない。
今も、横たわる央の唇は赤く色づき、まるで朔を誘っているかのようである。
まさか、央からキスをしてくるとは思っていなかったのだが、それ以上に、受け入れてくれていることに安堵する。
央の今の状態は微妙ではあるが、転校の線は消えていくだろう。
学業の方も問題ないようである。
今の状態、今後のことを考えていた朔は央の将来を考えていた。
視力が改善されていたら一緒にいる可能性は広がる。
この冬休みが明けて朔と央は離れ離れになるかもしれないと知らされた時のショックは大きく、食事もあまりとる気はなかった。
ただ、央が一緒に生活していく中で、徐々に回復していった。
央に驚かれたのに自分の情けなさを感じる。
自分にとって央の存在はこれほどまでに大きいものと改めて感じた。
少しして、央が目覚め、視力はぼやけているが状態は安定してるようである。
自分の状態をみてまた、赤面している様子は可愛らしくでも、これ以上はまだ早い。
「改めて部屋を案内しましょうか?
それとも今日一日はアイマスクをして刺激を抑えますか?」
央は部屋を見て回りたいがまた、元に戻ってしまうとアイマスクをして感覚を残しておきたいように思う。
「今日はアイマスクで目を休めておくよ。
外せば見ようと思えば見えるからね」
「わかりました。
では、昨日と同じように補助をしますね」
それからは翌日のクリスマスイブについて話をしたりして過ごした。
キスの後、また何かをするわけでもなく、央は自分の様子を朔が一番に考えてくれているとひしひしと感じていた。
話を聞いていて、一緒に生活をするようになって食欲もわいてきていると言っていた。
痩せていたのは自分の管理不足って言ってたけど、央に多少非があるように思うのは当然である。
もしこのまま目が改善されたのなら。
同じ学校に引き続き通うことができるのかもしれない。
離れたくないし、朔のそばに少しでも一緒にいてどんなことも支えていけたらいいのに。
そのためにもまだ自分は持っている力が少なすぎる。
もっと、力をつけたい。朔と分かり合っていたい。
夜、休む時にアイマスクを取り、数時間ぶりに朔の顔を見た。
学校や外出の時には髪の毛を少しまとめているようで今は、おろしている。
寝室の灯りは少し暗めの色のため、朔の瞳の色が深いように思う。
じっと見つめていると
「明日のイブは楽しみです。
去年は一人で過ごしていました。
初めて好きな人と過ごせるんです。
寝れるか心配ですね」
「大袈裟だよ。
でも、朔にそう思われたら僕も嬉しい…です。
今日は朔が寝るまで僕が見ているよ」
「では、手をつないでもいいですか?」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
いつもの挨拶だけど、この挨拶も大切な人と交わすとこんなに温かいものなんだと知る。
そんなことを考えていると朔の呼吸の音が聞こえ、僕も安心して眠った。
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可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け
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