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番外編
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「ジルさん!……ユウさん!!!!!」
茂みを抜けると、開けた場所で騎士達3人が周囲を警戒しながら俺らを出迎えた。
ジルに背負われたまんまの俺を、心配げに見て、ホット息を吐き出したアルバートさんは、一通りの事情を聞くと、一旦他の隊と合流してから、少人数でジルの倒した魔物の骸が転がっているであろう洞窟に向かうことにしたらしい。
「出来ればジルさんが案内……」
「無理だ。ユウを連れて帰る」
「ですよね。まぁ、大まかな位置が分かれば大丈夫だとは思います。早くゆうさんを休ませてあげてください」
何がなんでも帰ると決めているジルの背中から、「すみません」とアルバートさんに謝ると、「いえいえ、今はユウさんを休ませる方が優先ですから」と労いの言葉を頂いた。
ほんと、役立たずですみません。
ぁーあ、どうせならチート特典とかつけてよ、神様……。
ん、……なんか暖かい。
すっかり嗅ぎなれた、人の匂い。
臭いとかじゃなく、甘くもなく、爽やかという訳でもない……安心する優しい匂い。
するりと顔を寄せたら、何故か離れていってしまった。
その事が不満でむっとしていると、誰かの手が俺の頭から眉間をするりと撫でて目じりをなぞられた。
くすぐったい。
「じ、る、もっと」
ふわりふわりと微睡んだまま、素直に不満の言葉を口にしたが、「……おやすみ」という一言と共に、微かな意識も再び眠のそこに沈んでしまった。
ジルside
疲れ果てて眠っているゆうを背負って、俺は地上へ戻った。
ダンジョンの入口から姿を現した俺たちに向かって、地上待機班が駆け寄ってきたが無視して宿への道を急いだ。
やけに軽く感じるゆうの重みは、俺とは違って守るべきものだったのに、俺は。
離れたくない、そんなちっぽけなくだらない欲求のためにわざわざこんなとこまで引っ張り出して。
その上「守る」なんて。
守れてねぇだろ。
自信があった。
俺は強い、だから全てが思い通りにいくなんて。
ゆうは俺の所有物じゃない、守るべきパートナーなのだ。
このまま、どこか遠い所へ行って、ゆうを大切に大切に閉じ込めてしまいたい欲求に駆られるが、きっとゆうはそれを望まないし、そんなことをしたら、嫌われてしまうだろう。
怖い。
宿の部屋のベットにゆうを寝かせ、俺はそっとその上へと覆いかぶさった。
固く閉じられた瞼から伸びるまつ毛の1本1本が愛おしい。
流されやすくて、優しく、美しいゆう。
俺の、ゆう。
そのやわい首筋を撫でて、舐めて、歯を立てて、、噛みちぎってしまいたい。
「汚ねぇな、俺」
こんな欲望、汚い。
この欲望をさらけだしても、ゆうなら笑って受け入れてくれるかもしれないなんて……浅ましい考えも汚い。
「んぅ、、、」
スルッと、ゆうの顔の横についた俺の腕に、ゆうの頬がすり寄せられて、反射的にベットから抜け出した。
心臓が、情けないほど嫌な音を立てた。
情けない、ほんとに情けない。
じわりじわりと黒いものが腹の底に渦巻いて、へその裏側を突き破るような感覚に襲われた。
ゆうは、擦り寄ったものがいなくなって不満なのか、むっと眉間に皺を寄せた。
いつもならば、すぐにでも覆いかぶさって唇を擦り寄せて、細い腰に腕を回して、温もりを享受するところだが。
今日はそんな気にも慣れずに、そっと髪を撫でて、眉間のシワを伸ばしてやる。
「じ、る、もっと」
「っ、」
無理だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジルは人間初心者なので、赤ちゃんです。
欲望に振り回される……という経験が乏しいため、こんな感じで情けなくなっちゃいます。
茂みを抜けると、開けた場所で騎士達3人が周囲を警戒しながら俺らを出迎えた。
ジルに背負われたまんまの俺を、心配げに見て、ホット息を吐き出したアルバートさんは、一通りの事情を聞くと、一旦他の隊と合流してから、少人数でジルの倒した魔物の骸が転がっているであろう洞窟に向かうことにしたらしい。
「出来ればジルさんが案内……」
「無理だ。ユウを連れて帰る」
「ですよね。まぁ、大まかな位置が分かれば大丈夫だとは思います。早くゆうさんを休ませてあげてください」
何がなんでも帰ると決めているジルの背中から、「すみません」とアルバートさんに謝ると、「いえいえ、今はユウさんを休ませる方が優先ですから」と労いの言葉を頂いた。
ほんと、役立たずですみません。
ぁーあ、どうせならチート特典とかつけてよ、神様……。
ん、……なんか暖かい。
すっかり嗅ぎなれた、人の匂い。
臭いとかじゃなく、甘くもなく、爽やかという訳でもない……安心する優しい匂い。
するりと顔を寄せたら、何故か離れていってしまった。
その事が不満でむっとしていると、誰かの手が俺の頭から眉間をするりと撫でて目じりをなぞられた。
くすぐったい。
「じ、る、もっと」
ふわりふわりと微睡んだまま、素直に不満の言葉を口にしたが、「……おやすみ」という一言と共に、微かな意識も再び眠のそこに沈んでしまった。
ジルside
疲れ果てて眠っているゆうを背負って、俺は地上へ戻った。
ダンジョンの入口から姿を現した俺たちに向かって、地上待機班が駆け寄ってきたが無視して宿への道を急いだ。
やけに軽く感じるゆうの重みは、俺とは違って守るべきものだったのに、俺は。
離れたくない、そんなちっぽけなくだらない欲求のためにわざわざこんなとこまで引っ張り出して。
その上「守る」なんて。
守れてねぇだろ。
自信があった。
俺は強い、だから全てが思い通りにいくなんて。
ゆうは俺の所有物じゃない、守るべきパートナーなのだ。
このまま、どこか遠い所へ行って、ゆうを大切に大切に閉じ込めてしまいたい欲求に駆られるが、きっとゆうはそれを望まないし、そんなことをしたら、嫌われてしまうだろう。
怖い。
宿の部屋のベットにゆうを寝かせ、俺はそっとその上へと覆いかぶさった。
固く閉じられた瞼から伸びるまつ毛の1本1本が愛おしい。
流されやすくて、優しく、美しいゆう。
俺の、ゆう。
そのやわい首筋を撫でて、舐めて、歯を立てて、、噛みちぎってしまいたい。
「汚ねぇな、俺」
こんな欲望、汚い。
この欲望をさらけだしても、ゆうなら笑って受け入れてくれるかもしれないなんて……浅ましい考えも汚い。
「んぅ、、、」
スルッと、ゆうの顔の横についた俺の腕に、ゆうの頬がすり寄せられて、反射的にベットから抜け出した。
心臓が、情けないほど嫌な音を立てた。
情けない、ほんとに情けない。
じわりじわりと黒いものが腹の底に渦巻いて、へその裏側を突き破るような感覚に襲われた。
ゆうは、擦り寄ったものがいなくなって不満なのか、むっと眉間に皺を寄せた。
いつもならば、すぐにでも覆いかぶさって唇を擦り寄せて、細い腰に腕を回して、温もりを享受するところだが。
今日はそんな気にも慣れずに、そっと髪を撫でて、眉間のシワを伸ばしてやる。
「じ、る、もっと」
「っ、」
無理だ。
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ジルは人間初心者なので、赤ちゃんです。
欲望に振り回される……という経験が乏しいため、こんな感じで情けなくなっちゃいます。
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