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番外編
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「ぅわぁぁぁ……!!!!!」
グルンっ!と一回転した俺は、視界も定まらないままにぐんぐんと奥へと引きずり込まれているらしく、周りには蔦、蔦、蔦、蔦。
俺の指くらいのものから、腕くらいのものまで、さらにはそこら辺に蔦が生えていて、どれがモンスターのものか分からないし、そもそも本体と言うべき胴が何処だかも分からない。
とにかく、俺はひたすらに水砲を撃ちまくるが、揺れる不安定な体制からではまともに照準も合わず、あったとしても1本1本やっていくのでは次から次へと絡みつかれてキリがない。
俺の腕が邪魔だと思ったのか、腕にも蔦が絡みついて完全に身動きが取れなくなり、さらにズボッと口に触手が入ってきて、声が出せなくなった。
うぇ!!!!!気持ち悪い!!!!!
その間にも、どんどん茂みの中をくぐり抜けていく。
「んーーーーーー!!!!!」
みんなの方に必死に声を出してみるが、騎士たちはゴリラ型のモンスターとの戦闘で気づいていない。
ジルは俺に背を向けて、最後の1匹をはじき飛ばしたところだった。
あ、と思った時には、完全に茂みに隠れて誰の姿も見えなくなった。
気づいたら洞穴のようなところに、俺は引きずり込まれていた。
そこら中の岩に蔦が絡みついていて、もはやなんだか分からない。
中央には地面の土か岩か、よく分からないところから生えるようにして、大きな胴のようなものがある。
これが本体か!?
「っ、!!」
びっくりしたのは、その横だ。
女性と思われる人が、白目を向いて蔦に巻き付かれていた。
下にはその人の装備と思われる服や杖が、無惨にもボロボロの姿で落ちており、本人も意識がなく腕は力なく垂れ下がっている。
いや、、死んでいる……?
体はピクリとも動かず、胸も上下していない……つまり、息をしていない。
その下腹部が異様に膨らんでいて、嫌な予感にゾッとした。
まさか、と思った途端、服の隙間から触手が入り込み、内側から服を破り割いた。
ビリビリっ!という音に、思い出したかのように本体に向かって何とか水砲を打ち続けるが、ブヨっと歪んで受け流す本体には傷さえつかない。
しかも、打てば打つほど体から力が抜けるような感覚がして、呼吸が荒くなっていく。
ジルに補充してもらった魔力が、どんどん抜けていっているのだ。
「っ、!!!!!んぅ、!っふぅ!???!!!!!」
ついに俺の下半身を辿り始めた触手に、俺は絶望を感じた。
ーーーーーージルside
気色の悪い芋虫を蹴り飛ばして、ゴリラの方は加勢は必要なさそうだとユウの方を見ると、そこには森が広がるだけで誰の姿もなかった。
「……っ!?」
「ジルさん、ユウさんは?!」
ちょうどゴリラも倒し終わったらしく、俺と同様ユウが居ないことに気がついたアルバートが、慌ててあたりを見渡しているが、どこにも見当たらない。
なりふり構ってられるかと、俺が茂みに駆け出そうとすると、ガシッと後ろから肩を掴まれた。
「おい、離せ」
ギロっと俺の方を掴んでいたアルバートを睨むと、真剣な顔で何かを思案していた。
「ユウさんは、なんの魔法を使うのですか?」
「……炎と水だ」
「2属性ですか。だとすると、ここでは水しか使えませんね……希少種の一種ですが、魔法がききにくい蔦系のモンスターがいたはずです」
今この瞬間にも、ユウが襲われているかもしれない。
何やらじっくり考え込んでいる男に、段々といらだちが募ってくる。
レオンとフィンも、じっと黙って命令を待っていた。
「で、どうしろと?」
「……手分けして探しましょう。それぞれ見つけたら、上に向かって目立つ魔法を放ってください。レオンとフィンは、2人で行動。ジルさんは相当強そうなので1人でも大丈夫でしょうが、何かあった場合は迷わず離脱してください。どうしても見つからなかったら2時間後、下層への入口に集合でどうでしょう」
「わかった」
俺はそれを聞いて、掴まれていた肩を振りほどいてすぐに走り出した。
触手系モンスターの中には、人を苗床にするやつもいたはずだ、すぐに殺さないだけましだが、一刻も早く見つけ出さなければいけない。
俺はやり場のない自分への怒りに身を任せて、足に力を込めた。
グルンっ!と一回転した俺は、視界も定まらないままにぐんぐんと奥へと引きずり込まれているらしく、周りには蔦、蔦、蔦、蔦。
俺の指くらいのものから、腕くらいのものまで、さらにはそこら辺に蔦が生えていて、どれがモンスターのものか分からないし、そもそも本体と言うべき胴が何処だかも分からない。
とにかく、俺はひたすらに水砲を撃ちまくるが、揺れる不安定な体制からではまともに照準も合わず、あったとしても1本1本やっていくのでは次から次へと絡みつかれてキリがない。
俺の腕が邪魔だと思ったのか、腕にも蔦が絡みついて完全に身動きが取れなくなり、さらにズボッと口に触手が入ってきて、声が出せなくなった。
うぇ!!!!!気持ち悪い!!!!!
その間にも、どんどん茂みの中をくぐり抜けていく。
「んーーーーーー!!!!!」
みんなの方に必死に声を出してみるが、騎士たちはゴリラ型のモンスターとの戦闘で気づいていない。
ジルは俺に背を向けて、最後の1匹をはじき飛ばしたところだった。
あ、と思った時には、完全に茂みに隠れて誰の姿も見えなくなった。
気づいたら洞穴のようなところに、俺は引きずり込まれていた。
そこら中の岩に蔦が絡みついていて、もはやなんだか分からない。
中央には地面の土か岩か、よく分からないところから生えるようにして、大きな胴のようなものがある。
これが本体か!?
「っ、!!」
びっくりしたのは、その横だ。
女性と思われる人が、白目を向いて蔦に巻き付かれていた。
下にはその人の装備と思われる服や杖が、無惨にもボロボロの姿で落ちており、本人も意識がなく腕は力なく垂れ下がっている。
いや、、死んでいる……?
体はピクリとも動かず、胸も上下していない……つまり、息をしていない。
その下腹部が異様に膨らんでいて、嫌な予感にゾッとした。
まさか、と思った途端、服の隙間から触手が入り込み、内側から服を破り割いた。
ビリビリっ!という音に、思い出したかのように本体に向かって何とか水砲を打ち続けるが、ブヨっと歪んで受け流す本体には傷さえつかない。
しかも、打てば打つほど体から力が抜けるような感覚がして、呼吸が荒くなっていく。
ジルに補充してもらった魔力が、どんどん抜けていっているのだ。
「っ、!!!!!んぅ、!っふぅ!???!!!!!」
ついに俺の下半身を辿り始めた触手に、俺は絶望を感じた。
ーーーーーージルside
気色の悪い芋虫を蹴り飛ばして、ゴリラの方は加勢は必要なさそうだとユウの方を見ると、そこには森が広がるだけで誰の姿もなかった。
「……っ!?」
「ジルさん、ユウさんは?!」
ちょうどゴリラも倒し終わったらしく、俺と同様ユウが居ないことに気がついたアルバートが、慌ててあたりを見渡しているが、どこにも見当たらない。
なりふり構ってられるかと、俺が茂みに駆け出そうとすると、ガシッと後ろから肩を掴まれた。
「おい、離せ」
ギロっと俺の方を掴んでいたアルバートを睨むと、真剣な顔で何かを思案していた。
「ユウさんは、なんの魔法を使うのですか?」
「……炎と水だ」
「2属性ですか。だとすると、ここでは水しか使えませんね……希少種の一種ですが、魔法がききにくい蔦系のモンスターがいたはずです」
今この瞬間にも、ユウが襲われているかもしれない。
何やらじっくり考え込んでいる男に、段々といらだちが募ってくる。
レオンとフィンも、じっと黙って命令を待っていた。
「で、どうしろと?」
「……手分けして探しましょう。それぞれ見つけたら、上に向かって目立つ魔法を放ってください。レオンとフィンは、2人で行動。ジルさんは相当強そうなので1人でも大丈夫でしょうが、何かあった場合は迷わず離脱してください。どうしても見つからなかったら2時間後、下層への入口に集合でどうでしょう」
「わかった」
俺はそれを聞いて、掴まれていた肩を振りほどいてすぐに走り出した。
触手系モンスターの中には、人を苗床にするやつもいたはずだ、すぐに殺さないだけましだが、一刻も早く見つけ出さなければいけない。
俺はやり場のない自分への怒りに身を任せて、足に力を込めた。
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