13 / 21
番外編
10
しおりを挟む
遠くで誰かが自分の名前を呼ぶ声がして、無意識下で夢だと思って無視したのだが……。
ふと、これは夢ではないと気づいて意識が浮上した。
目を開けると、清々しい朝とは言い難く。
目はしょぼしょぼするし喉は痛いしで、目の前の男をぶすっと睨んだ。
くそぉ、相変わらずイケメンだな。
窓から差し込む光が後光のように男を縁どって、まるで人智を超えた神のように見える。
寝ていた俺を起こしに来たのだろう。
ジルが俺の顔を覗き込んで、たっていた。
「すまん、、」
「……水」
困ったように、しゅんとこう垂れるような雰囲気を出して、すぐに水差しからコップに水を注ぐ姿に、少しスッキリする。
水を受け取って、時計を見れば集合時間の1時間前だった。
コップの水をごくごくと勢いよく飲んで、いざ!と床に足を下ろして力を入れると、思ったよりも痛みはなく立ち上がれた。
「……?」
「ユウ」
ジルが手渡してくれた濡れた布で顔を拭いたり、甲斐甲斐しく世話をされてすぐに支度を終わらせる。
俺の様子を伺いながら、じっとそばにたっているジルが、少し可愛くて段々とおかしくなってきた。
「もう怒ってないよ」
あからさまにほっとした顔をしたジルに、「でも」と付け加える。
「次はもっと……優しく、して欲しい」
少し恥ずかしかったが、要は抱き潰されなければいいわけで。
そしたら、お互い円満に生活していくことが出来るというものだ。
「はぁ~~~」
「んむっ、!?」
何故かジルが、大きくため息をはいたかと思えば、ガバっと抱きしめられて間抜けな声が出た。
「ちょっ、ジル」
「お前のそういうとこ、ほんと、……直した方がいいぞ」
「は?」
「まぁ、そのままが可愛いんだけどな」
「意味わかんないんだけど……」
「分からなくていい」と俺の髪をわしゃわしゃと撫でてくる手から逃れて、ジルの腕に昨日俺があげた髪紐がまきつけてあるのに気がついた。
寝る時に外して、ずっと身につけていてくれたのだろう。
その事に、たまらなく嬉しくなった。
ジルの前に、ぱっと手を広げて差し出す。
きょとんと不思議そうに俺の手を眺めるジルに「髪紐、結うから」と声をかけると、少し嬉しそうにいそいそと腕にまきつけてあった髪紐を解いて差し出してきた。
まぁ、他の人から見たらジル表情の変化はあまり分からないだろうが。
それを受け取って、バッグから串を取り出して昨日と同じようにポニーテールに結った。
サラサラと流れる黒髪を、満足して眺める。
「ユウ、ありがとな」
「どういたしまして」
確認するように後頭部を撫でるジルを急かして、朝食を食べに食堂へと降りるため部屋を出ると、ちょうどロイターさんとアデルさんも部屋から出てきたのか、ばったりと出くわした。
「お!おはようお二人さん!」
「おはようございます。今から朝食ですか?」
「そうなんだよね、お二人も朝食でしょ?良かったら一緒に食べない?」
俺は別に構わないけど……とジルをみると、嫌そうではなかったので了承して食堂へ向かう。
食堂へ着くと、昨日よりは少ないがそれなりの人がいたので、カウンターから朝食を受け取って、端の席に座った。
「それにしても、今回はやばそうだよね」
朝食に手をつけ始めるなり、ロイターさんは少し嫌そうな顔で呟いた。
「やばそう、とは?」
「ジルさんとユウさんは初めてだからあまり分からなかったと思いますが、今回の件には騎士団に、S、Aランク冒険者をかなりの数。相当な金額が動いているはずですし、それだけ希少種は強いと思われます」
俺の問いに、ロイターさんが丁寧に答えてくれた。
そこら辺のことはよく分からないが、S、Aランクの冒険者が少なく、報酬も高くなるということくらいは容易に想像がつく。
つまり、それだけの人数を導入するだけの何かが今日の調査にはあるのだろう。
「オマケに、氷鬼だぜ?」
「氷鬼?」
「あれ?ユウくん知らないの?……あの、騎士団長のことだよ。氷魔法を使った剣術で有名で、アホみたいに強いし訓練は鬼みたいにしんどいらしい、そらで氷鬼ってあだ名がついたんだって」
鬼、、とは無縁そうな見た目だが、氷は何となくわかる気がする。
ジルやロイターさんのような、炎って感じはしないしな。
「まぁ、俺自体はその戦いぶりを見たことは無いんだが、Sランク冒険者より強いって噂だ。もしかしたらジルよりも強いかもな~」
アルバートさんは人間だろうし、それは無いと思うけれど……ジルは興味が無いかのようにもぐもぐと朝食のパンを食べてるし。
「多分だがジル、この依頼終わったらSランクになると思うぜ」
「そうか」
「そうかって、嬉しくないのかよ?」
「あまり興味無いな」
「つまらないやつだなぁ~、もうちょっと喜べよ」
「当然のこと」とばかりに、依然として表情を変えないジルに、ロイターさんはからかうようにして言葉をかぶせる。
ジルにとっては別に、肩書きなどどうでもいいのだろう。
それはそれで、俺はいいと思うけれど。
ふと、これは夢ではないと気づいて意識が浮上した。
目を開けると、清々しい朝とは言い難く。
目はしょぼしょぼするし喉は痛いしで、目の前の男をぶすっと睨んだ。
くそぉ、相変わらずイケメンだな。
窓から差し込む光が後光のように男を縁どって、まるで人智を超えた神のように見える。
寝ていた俺を起こしに来たのだろう。
ジルが俺の顔を覗き込んで、たっていた。
「すまん、、」
「……水」
困ったように、しゅんとこう垂れるような雰囲気を出して、すぐに水差しからコップに水を注ぐ姿に、少しスッキリする。
水を受け取って、時計を見れば集合時間の1時間前だった。
コップの水をごくごくと勢いよく飲んで、いざ!と床に足を下ろして力を入れると、思ったよりも痛みはなく立ち上がれた。
「……?」
「ユウ」
ジルが手渡してくれた濡れた布で顔を拭いたり、甲斐甲斐しく世話をされてすぐに支度を終わらせる。
俺の様子を伺いながら、じっとそばにたっているジルが、少し可愛くて段々とおかしくなってきた。
「もう怒ってないよ」
あからさまにほっとした顔をしたジルに、「でも」と付け加える。
「次はもっと……優しく、して欲しい」
少し恥ずかしかったが、要は抱き潰されなければいいわけで。
そしたら、お互い円満に生活していくことが出来るというものだ。
「はぁ~~~」
「んむっ、!?」
何故かジルが、大きくため息をはいたかと思えば、ガバっと抱きしめられて間抜けな声が出た。
「ちょっ、ジル」
「お前のそういうとこ、ほんと、……直した方がいいぞ」
「は?」
「まぁ、そのままが可愛いんだけどな」
「意味わかんないんだけど……」
「分からなくていい」と俺の髪をわしゃわしゃと撫でてくる手から逃れて、ジルの腕に昨日俺があげた髪紐がまきつけてあるのに気がついた。
寝る時に外して、ずっと身につけていてくれたのだろう。
その事に、たまらなく嬉しくなった。
ジルの前に、ぱっと手を広げて差し出す。
きょとんと不思議そうに俺の手を眺めるジルに「髪紐、結うから」と声をかけると、少し嬉しそうにいそいそと腕にまきつけてあった髪紐を解いて差し出してきた。
まぁ、他の人から見たらジル表情の変化はあまり分からないだろうが。
それを受け取って、バッグから串を取り出して昨日と同じようにポニーテールに結った。
サラサラと流れる黒髪を、満足して眺める。
「ユウ、ありがとな」
「どういたしまして」
確認するように後頭部を撫でるジルを急かして、朝食を食べに食堂へと降りるため部屋を出ると、ちょうどロイターさんとアデルさんも部屋から出てきたのか、ばったりと出くわした。
「お!おはようお二人さん!」
「おはようございます。今から朝食ですか?」
「そうなんだよね、お二人も朝食でしょ?良かったら一緒に食べない?」
俺は別に構わないけど……とジルをみると、嫌そうではなかったので了承して食堂へ向かう。
食堂へ着くと、昨日よりは少ないがそれなりの人がいたので、カウンターから朝食を受け取って、端の席に座った。
「それにしても、今回はやばそうだよね」
朝食に手をつけ始めるなり、ロイターさんは少し嫌そうな顔で呟いた。
「やばそう、とは?」
「ジルさんとユウさんは初めてだからあまり分からなかったと思いますが、今回の件には騎士団に、S、Aランク冒険者をかなりの数。相当な金額が動いているはずですし、それだけ希少種は強いと思われます」
俺の問いに、ロイターさんが丁寧に答えてくれた。
そこら辺のことはよく分からないが、S、Aランクの冒険者が少なく、報酬も高くなるということくらいは容易に想像がつく。
つまり、それだけの人数を導入するだけの何かが今日の調査にはあるのだろう。
「オマケに、氷鬼だぜ?」
「氷鬼?」
「あれ?ユウくん知らないの?……あの、騎士団長のことだよ。氷魔法を使った剣術で有名で、アホみたいに強いし訓練は鬼みたいにしんどいらしい、そらで氷鬼ってあだ名がついたんだって」
鬼、、とは無縁そうな見た目だが、氷は何となくわかる気がする。
ジルやロイターさんのような、炎って感じはしないしな。
「まぁ、俺自体はその戦いぶりを見たことは無いんだが、Sランク冒険者より強いって噂だ。もしかしたらジルよりも強いかもな~」
アルバートさんは人間だろうし、それは無いと思うけれど……ジルは興味が無いかのようにもぐもぐと朝食のパンを食べてるし。
「多分だがジル、この依頼終わったらSランクになると思うぜ」
「そうか」
「そうかって、嬉しくないのかよ?」
「あまり興味無いな」
「つまらないやつだなぁ~、もうちょっと喜べよ」
「当然のこと」とばかりに、依然として表情を変えないジルに、ロイターさんはからかうようにして言葉をかぶせる。
ジルにとっては別に、肩書きなどどうでもいいのだろう。
それはそれで、俺はいいと思うけれど。
11
お気に入りに追加
1,182
あなたにおすすめの小説
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
優等生の弟に引きこもりのダメ兄の俺が毎日レイプされている
匿名希望ショタ
BL
優等生の弟に引きこもりのダメ兄が毎日レイプされる。
いじめで引きこもりになってしまった兄は義父の海外出張により弟とマンションで二人暮しを始めることになる。中学1年生から3年外に触れてなかった兄は外の変化に驚きつつも弟との二人暮しが平和に進んでいく...はずだった。
悪役の弟に転生した僕はフラグをへし折る為に頑張ったけど監禁エンドにたどり着いた
霧乃ふー 短編
BL
「シーア兄さまぁ♡だいすきぃ♡ぎゅってして♡♡」
絶賛誘拐され、目隠しされながら無理矢理に誘拐犯にヤられている真っ最中の僕。
僕を唯一家族として扱ってくれる大好きなシーア兄様も助けに来てはくれないらしい。
だから、僕は思ったのだ。
僕を犯している誘拐犯をシーア兄様だと思いこめばいいと。
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
執着系義兄の溺愛セックスで魔力を補給される話
Laxia
BL
元々魔力が少ない体質の弟──ルークは、誰かに魔力を補給してもらわなければ生きていけなかった。だから今日も、他の男と魔力供給という名の気持ちいいセックスをしていたその時──。
「何をしてる?お前は俺のものだ」
2023.11.20. 内容が一部抜けており、11.09更新分の文章を修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる