10 / 21
番外編
7
しおりを挟む
そのまま俺をテーブルに押し付けて、唇にがっついてくる男の背中に、腕を回した。
「んっ、ふぁ、……」
正直テーブルは固くてあまりいいものでは無いが、ジルに上顎を擽られると、途端に甘い痺れが駆け上がり、上擦ったかのような声が漏れてしまう。
「っ……ん゛ぁ」
ぐりっと俺の下半身にジルの膝が擦り付けられて体がはねた。
俺の唇を湿らせるようにひと舐めしてから、ジルの唇が離れるのを眺めて、色っぽい仕草に体から力が抜けていくのを感じる。
するりとワイシャツの隙間から、地肌を撫で上げる手に息を吐き出して、こくりと唾を飲み込んだ時だった。
コンコンというノックの音が響いて、俺はびっくりしてまた転げ落ちそうになった。
……ちゃんとジルが引き上げてくれたが。
「お二人共~いる~?」
そうだ、夕飯。
すっかり忘れていた。
多分、呼びに来てくれたのだろう。
すっかりその気になって雰囲気に流されていた自分に、いたたまれなくなった。
うわぁ……何やってんだ俺。
ジルは「チッ」っと舌打ちをしてから、俺の服を整えると扉を開いた。
ありがたいことに、俺の反応しかけていた下半身は分からないくらいだったので俺はほっとした。
「あれ?もしかして邪魔しちゃった?」
不機嫌そうなジルと、苦笑いする俺を交互に見るロイターさんは、やっぱり夕食に俺らを呼びに来てくれたらしかった。
「いっ、いえ!今から行こうとしてたんですよ!さぁさぁ、行きましょう!」
俺の態度に何かしら感じたのか、ロイターさんはそれ以上何も言わなかった。
食堂へ着くと、思ったよりもたくさんの隊服の人や、冒険者であろう人達が沢山いてびっくりした。
ざっと、60人くらいいるんじゃないか?
それぞれ4~6人ほどのグループに別れて座っているみたいで、どの机にも騎士の人がいた。
多分、騎士と冒険者の混合グループを作っているのだろう。
俺とジルは、ロイターさんと別れた班になっていたらしく、言われた机へ向かった。
「ん?お前らがジルとユウってやつか?」
俺らの姿を視界に収めて、顔を上げた男を見て俺は固まった。
うぉわ、……犬耳が生えてらっしゃる……!!!
茶色いウルフカットの頭に、髪の毛と同じ色の犬耳がはえている。
時折ピクっと動く耳は、どう見ても本物、、、!!!!!
紫紺の隊服の上からも、鍛えていることが伺える立派な筋肉。
魔人がいれば獣人もいる……なんでその事に気づかなかったのか。
もしかしたら、エルフとかドワーフとかもいるのかもしれない。
俺が動く犬耳をじっと眺めていると、その後ろから腕が伸びてそのまま犬耳頭に振り下ろされた。
「アダッ……!」
「こら、レオン!その粗雑な口聞きをどうにか出来ないのかと、いつも言っているだろう!……すみません、こいついつもこんな感じで……」
「大丈夫ですよ、こっちもそんな感じなんで……」
ははっとジルをチラ見する。
こやつも敬語とか知らないんで。
「申し遅れましたが、私はフィンと申します。この荒くれ者は、レオンです」
フィンさんと名乗った肩までの白髪の青年は、騎士の中では少し低い背と整った顔が相まって、一瞬女性と間違えそうになる。
だが、一見穏やかそうな雰囲気なのに、その顔でじろりとレオンさんの方に視線をやる姿は、そのか弱そうなイメージとは真逆だ。
その視線を受けたレオンさんはというと、サッと後ろに下がって視線を避けていた。
なるほど、レオンさんはフィンさんにあまり強くは出られないらしい。
フィンさんは、怒らせると怖いタイプとみた。
絶対に怒らせないようにしよう。
俺らも自己紹介をして席に着くと、円卓の俺の横の席が未だに空席なことに気づいた。
「あの、もう1人このチームの人がいるんですか?」
「ええ、ここは5人チームになっています。もうすぐ来ると……」
「悪かったね、おそくなって」
俺の後ろから聞こえた声に、「あ」っと振り返ると、やはりそこに居たのはアルバートさんだった。
アルバートさんは「さっきぶりだね。よろしく」とさわやかに俺に笑いかけたが、その言葉を聞いてジルが俺に視線をよこす。
ジルには、街でアルバートさんにあったことを話していないのだった。
なんにもやましい事などない俺だが、何故かソワソワしてしまう。
アルバートさんも席に着いたところで、明日の希少種調査についての打ち合わせ……という名の夕食会が始まった。
もちろん取り仕切るのは、一番偉いであろうアルバートさんだ。
「まず、希少種の目撃情報があった階層なんだが、それが厄介なことに何体か報告がされていて、そのうちの一体が深層だったんだ。だから、今回集められているのは近隣のS、Aランクの冒険者。まぁ、ユウさんは飛び入りということですね。本当はこのチームは団長である俺がいることから、4人チームになる予定でした」
ほんと、すみません。
なんだかこの話を聞いていると、自分が本当に魔法が使えるのか怖くなってくるな、、。
もしも使えなかったら、それこそ終わりだと思う。
ジルが全力でカバーしてくれるとはいえ、限度はあるだろうし。
「それで、各チームそれぞれの階層が振り分けられているのだが、私たちのチームは深層になった」
まじか、
団長がいることから薄々感じていたが、やはりというか。
難易度の高いところが振り分けられてしまったのか。
「希少種は、可能であればその実態の調査、驚異であるとみなされれば討伐するようにということだ。質問はあるかい?」
「1つ質問なんだが」
今まで黙っていたジルが声を上げた。
「ここの迷宮の深層は、どんなモンスターが出るんだ?」
「主には昆虫のようなもの達ばかりだな。何回か深層に潜ったことはあるが、あまり狼や猪などといったモンスターは見なかったよ」
ジルは「わかった」と涼しい顔をしているが、俺の頭は「昆虫」というワードでいっぱいだった。
まじかよ、虫!?
無理無理無理無理
田舎から出て都会の大学へ進学した俺の理由の一つが、田舎の虫の多さから逃げ出すためだったと言うくらいに、俺は大の虫嫌いなのだ。
あの足の本数、顔、色、どれをとっても永遠と相入れることの無い存在。
小さいだけでもかなりの精神的ダメージを与えるというのに、あのクモもどきに追いかけられた時を思い出して、ゾワッと鳥肌が立った。
勘弁して欲しい。
ようやく手をつけた夕食の肉の味にも集中できず、気づいたら食べ終わっていた。
何やらジルが俺に話しかけていた気もしなくもないが、ジルに手を引かれてそのままフラフラと部屋に戻ってきていたらしい。
ふと我に返ると、ジルが微妙な顔をして俺を覗き込んでいた。
「んっ、ふぁ、……」
正直テーブルは固くてあまりいいものでは無いが、ジルに上顎を擽られると、途端に甘い痺れが駆け上がり、上擦ったかのような声が漏れてしまう。
「っ……ん゛ぁ」
ぐりっと俺の下半身にジルの膝が擦り付けられて体がはねた。
俺の唇を湿らせるようにひと舐めしてから、ジルの唇が離れるのを眺めて、色っぽい仕草に体から力が抜けていくのを感じる。
するりとワイシャツの隙間から、地肌を撫で上げる手に息を吐き出して、こくりと唾を飲み込んだ時だった。
コンコンというノックの音が響いて、俺はびっくりしてまた転げ落ちそうになった。
……ちゃんとジルが引き上げてくれたが。
「お二人共~いる~?」
そうだ、夕飯。
すっかり忘れていた。
多分、呼びに来てくれたのだろう。
すっかりその気になって雰囲気に流されていた自分に、いたたまれなくなった。
うわぁ……何やってんだ俺。
ジルは「チッ」っと舌打ちをしてから、俺の服を整えると扉を開いた。
ありがたいことに、俺の反応しかけていた下半身は分からないくらいだったので俺はほっとした。
「あれ?もしかして邪魔しちゃった?」
不機嫌そうなジルと、苦笑いする俺を交互に見るロイターさんは、やっぱり夕食に俺らを呼びに来てくれたらしかった。
「いっ、いえ!今から行こうとしてたんですよ!さぁさぁ、行きましょう!」
俺の態度に何かしら感じたのか、ロイターさんはそれ以上何も言わなかった。
食堂へ着くと、思ったよりもたくさんの隊服の人や、冒険者であろう人達が沢山いてびっくりした。
ざっと、60人くらいいるんじゃないか?
それぞれ4~6人ほどのグループに別れて座っているみたいで、どの机にも騎士の人がいた。
多分、騎士と冒険者の混合グループを作っているのだろう。
俺とジルは、ロイターさんと別れた班になっていたらしく、言われた机へ向かった。
「ん?お前らがジルとユウってやつか?」
俺らの姿を視界に収めて、顔を上げた男を見て俺は固まった。
うぉわ、……犬耳が生えてらっしゃる……!!!
茶色いウルフカットの頭に、髪の毛と同じ色の犬耳がはえている。
時折ピクっと動く耳は、どう見ても本物、、、!!!!!
紫紺の隊服の上からも、鍛えていることが伺える立派な筋肉。
魔人がいれば獣人もいる……なんでその事に気づかなかったのか。
もしかしたら、エルフとかドワーフとかもいるのかもしれない。
俺が動く犬耳をじっと眺めていると、その後ろから腕が伸びてそのまま犬耳頭に振り下ろされた。
「アダッ……!」
「こら、レオン!その粗雑な口聞きをどうにか出来ないのかと、いつも言っているだろう!……すみません、こいついつもこんな感じで……」
「大丈夫ですよ、こっちもそんな感じなんで……」
ははっとジルをチラ見する。
こやつも敬語とか知らないんで。
「申し遅れましたが、私はフィンと申します。この荒くれ者は、レオンです」
フィンさんと名乗った肩までの白髪の青年は、騎士の中では少し低い背と整った顔が相まって、一瞬女性と間違えそうになる。
だが、一見穏やかそうな雰囲気なのに、その顔でじろりとレオンさんの方に視線をやる姿は、そのか弱そうなイメージとは真逆だ。
その視線を受けたレオンさんはというと、サッと後ろに下がって視線を避けていた。
なるほど、レオンさんはフィンさんにあまり強くは出られないらしい。
フィンさんは、怒らせると怖いタイプとみた。
絶対に怒らせないようにしよう。
俺らも自己紹介をして席に着くと、円卓の俺の横の席が未だに空席なことに気づいた。
「あの、もう1人このチームの人がいるんですか?」
「ええ、ここは5人チームになっています。もうすぐ来ると……」
「悪かったね、おそくなって」
俺の後ろから聞こえた声に、「あ」っと振り返ると、やはりそこに居たのはアルバートさんだった。
アルバートさんは「さっきぶりだね。よろしく」とさわやかに俺に笑いかけたが、その言葉を聞いてジルが俺に視線をよこす。
ジルには、街でアルバートさんにあったことを話していないのだった。
なんにもやましい事などない俺だが、何故かソワソワしてしまう。
アルバートさんも席に着いたところで、明日の希少種調査についての打ち合わせ……という名の夕食会が始まった。
もちろん取り仕切るのは、一番偉いであろうアルバートさんだ。
「まず、希少種の目撃情報があった階層なんだが、それが厄介なことに何体か報告がされていて、そのうちの一体が深層だったんだ。だから、今回集められているのは近隣のS、Aランクの冒険者。まぁ、ユウさんは飛び入りということですね。本当はこのチームは団長である俺がいることから、4人チームになる予定でした」
ほんと、すみません。
なんだかこの話を聞いていると、自分が本当に魔法が使えるのか怖くなってくるな、、。
もしも使えなかったら、それこそ終わりだと思う。
ジルが全力でカバーしてくれるとはいえ、限度はあるだろうし。
「それで、各チームそれぞれの階層が振り分けられているのだが、私たちのチームは深層になった」
まじか、
団長がいることから薄々感じていたが、やはりというか。
難易度の高いところが振り分けられてしまったのか。
「希少種は、可能であればその実態の調査、驚異であるとみなされれば討伐するようにということだ。質問はあるかい?」
「1つ質問なんだが」
今まで黙っていたジルが声を上げた。
「ここの迷宮の深層は、どんなモンスターが出るんだ?」
「主には昆虫のようなもの達ばかりだな。何回か深層に潜ったことはあるが、あまり狼や猪などといったモンスターは見なかったよ」
ジルは「わかった」と涼しい顔をしているが、俺の頭は「昆虫」というワードでいっぱいだった。
まじかよ、虫!?
無理無理無理無理
田舎から出て都会の大学へ進学した俺の理由の一つが、田舎の虫の多さから逃げ出すためだったと言うくらいに、俺は大の虫嫌いなのだ。
あの足の本数、顔、色、どれをとっても永遠と相入れることの無い存在。
小さいだけでもかなりの精神的ダメージを与えるというのに、あのクモもどきに追いかけられた時を思い出して、ゾワッと鳥肌が立った。
勘弁して欲しい。
ようやく手をつけた夕食の肉の味にも集中できず、気づいたら食べ終わっていた。
何やらジルが俺に話しかけていた気もしなくもないが、ジルに手を引かれてそのままフラフラと部屋に戻ってきていたらしい。
ふと我に返ると、ジルが微妙な顔をして俺を覗き込んでいた。
11
お気に入りに追加
1,182
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。
櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。
次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!?
俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。
そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──?
【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
妻を寝取られた童貞が18禁ゲームの世界に転生する話
西楓
BL
妻の不倫現場を見た後足を滑らせ死んでしまった俺は、異世界に転生していた。この世界は前世持ちの巨根が、前世の知識を活かしてヒロインを攻略する18禁ゲームの世界だった。
でも、俺はゲームの設定と違って、エッチに自信なんかなくて…
※一部女性とのエッチがあります。
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる