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番外編

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そのまま俺をテーブルに押し付けて、唇にがっついてくる男の背中に、腕を回した。

「んっ、ふぁ、……」

正直テーブルは固くてあまりいいものでは無いが、ジルに上顎を擽られると、途端に甘い痺れが駆け上がり、上擦ったかのような声が漏れてしまう。

「っ……ん゛ぁ」

ぐりっと俺の下半身にジルの膝が擦り付けられて体がはねた。

俺の唇を湿らせるようにひと舐めしてから、ジルの唇が離れるのを眺めて、色っぽい仕草に体から力が抜けていくのを感じる。

するりとワイシャツの隙間から、地肌を撫で上げる手に息を吐き出して、こくりと唾を飲み込んだ時だった。

コンコンというノックの音が響いて、俺はびっくりしてまた転げ落ちそうになった。

……ちゃんとジルが引き上げてくれたが。

「お二人共~いる~?」

そうだ、夕飯。
すっかり忘れていた。

多分、呼びに来てくれたのだろう。

すっかりその気になって雰囲気に流されていた自分に、いたたまれなくなった。

うわぁ……何やってんだ俺。

ジルは「チッ」っと舌打ちをしてから、俺の服を整えると扉を開いた。

ありがたいことに、俺の反応しかけていた下半身は分からないくらいだったので俺はほっとした。

「あれ?もしかして邪魔しちゃった?」

不機嫌そうなジルと、苦笑いする俺を交互に見るロイターさんは、やっぱり夕食に俺らを呼びに来てくれたらしかった。

「いっ、いえ!今から行こうとしてたんですよ!さぁさぁ、行きましょう!」

俺の態度に何かしら感じたのか、ロイターさんはそれ以上何も言わなかった。

食堂へ着くと、思ったよりもたくさんの隊服の人や、冒険者であろう人達が沢山いてびっくりした。

ざっと、60人くらいいるんじゃないか?

それぞれ4~6人ほどのグループに別れて座っているみたいで、どの机にも騎士の人がいた。
多分、騎士と冒険者の混合グループを作っているのだろう。

俺とジルは、ロイターさんと別れた班になっていたらしく、言われた机へ向かった。

「ん?お前らがジルとユウってやつか?」

俺らの姿を視界に収めて、顔を上げた男を見て俺は固まった。

うぉわ、……犬耳が生えてらっしゃる……!!!

茶色いウルフカットの頭に、髪の毛と同じ色の犬耳がはえている。
時折ピクっと動く耳は、どう見ても本物、、、!!!!!

紫紺の隊服の上からも、鍛えていることが伺える立派な筋肉。

魔人がいれば獣人もいる……なんでその事に気づかなかったのか。
もしかしたら、エルフとかドワーフとかもいるのかもしれない。

俺が動く犬耳をじっと眺めていると、その後ろから腕が伸びてそのまま犬耳頭に振り下ろされた。

「アダッ……!」
「こら、レオン!その粗雑な口聞きをどうにか出来ないのかと、いつも言っているだろう!……すみません、こいついつもこんな感じで……」
「大丈夫ですよ、こっちもそんな感じなんで……」

ははっとジルをチラ見する。
こやつも敬語とか知らないんで。

「申し遅れましたが、私はフィンと申します。この荒くれ者は、レオンです」

フィンさんと名乗った肩までの白髪の青年は、騎士の中では少し低い背と整った顔が相まって、一瞬女性と間違えそうになる。

だが、一見穏やかそうな雰囲気なのに、その顔でじろりとレオンさんの方に視線をやる姿は、そのか弱そうなイメージとは真逆だ。
その視線を受けたレオンさんはというと、サッと後ろに下がって視線を避けていた。

なるほど、レオンさんはフィンさんにあまり強くは出られないらしい。

フィンさんは、怒らせると怖いタイプとみた。
絶対に怒らせないようにしよう。

俺らも自己紹介をして席に着くと、円卓の俺の横の席が未だに空席なことに気づいた。

「あの、もう1人このチームの人がいるんですか?」
「ええ、ここは5人チームになっています。もうすぐ来ると……」
「悪かったね、おそくなって」

俺の後ろから聞こえた声に、「あ」っと振り返ると、やはりそこに居たのはアルバートさんだった。

アルバートさんは「さっきぶりだね。よろしく」とさわやかに俺に笑いかけたが、その言葉を聞いてジルが俺に視線をよこす。

ジルには、街でアルバートさんにあったことを話していないのだった。
なんにもやましい事などない俺だが、何故かソワソワしてしまう。

アルバートさんも席に着いたところで、明日の希少種調査についての打ち合わせ……という名の夕食会が始まった。

もちろん取り仕切るのは、一番偉いであろうアルバートさんだ。

「まず、希少種の目撃情報があった階層なんだが、それが厄介なことに何体か報告がされていて、そのうちの一体が深層だったんだ。だから、今回集められているのは近隣のS、Aランクの冒険者。まぁ、ユウさんは飛び入りということですね。本当はこのチームは団長である俺がいることから、4人チームになる予定でした」

ほんと、すみません。
なんだかこの話を聞いていると、自分が本当に魔法が使えるのか怖くなってくるな、、。
もしも使えなかったら、それこそ終わりだと思う。
ジルが全力でカバーしてくれるとはいえ、限度はあるだろうし。

「それで、各チームそれぞれの階層が振り分けられているのだが、私たちのチームは深層になった」

まじか、
団長がいることから薄々感じていたが、やはりというか。
難易度の高いところが振り分けられてしまったのか。

「希少種は、可能であればその実態の調査、驚異であるとみなされれば討伐するようにということだ。質問はあるかい?」
「1つ質問なんだが」

今まで黙っていたジルが声を上げた。

「ここの迷宮の深層は、どんなモンスターが出るんだ?」
「主には昆虫のようなもの達ばかりだな。何回か深層に潜ったことはあるが、あまり狼や猪などといったモンスターは見なかったよ」

ジルは「わかった」と涼しい顔をしているが、俺の頭は「昆虫」というワードでいっぱいだった。

まじかよ、虫!?
無理無理無理無理

田舎から出て都会の大学へ進学した俺の理由の一つが、田舎の虫の多さから逃げ出すためだったと言うくらいに、俺は大の虫嫌いなのだ。

あの足の本数、顔、色、どれをとっても永遠と相入れることの無い存在。
小さいだけでもかなりの精神的ダメージを与えるというのに、あのクモもどきに追いかけられた時を思い出して、ゾワッと鳥肌が立った。

勘弁して欲しい。

ようやく手をつけた夕食の肉の味にも集中できず、気づいたら食べ終わっていた。

何やらジルが俺に話しかけていた気もしなくもないが、ジルに手を引かれてそのままフラフラと部屋に戻ってきていたらしい。

ふと我に返ると、ジルが微妙な顔をして俺を覗き込んでいた。
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