異世界に落ちたら魔人に嫁認定されました。

おはぎ

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番外編

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大通りに軒を連ねる店の中を覗きながら進んで、やっとお目当てのお店を見つけた。

店の中へはいると、「いらっしゃいませ~」とおさげの女の子の可愛らしい声が響いた。

小さな店内は、綺麗に掃除も行き届いていて好感が持てる。

レジにいる女の子に頭を下げて、品を見渡した。
小洒落たアクセサリー店だ。
女の子がとても好きそうな印象を受ける。

キラキラとかがやくアクセサリー類の中から髪留めや飾り紐のコーナーに足を進めて、ぱっと気に入ったものを手に取った。

シンプルな髪紐だが、紐の中にキラキラとした紐も編み込まれているのか、控えめな感じがとても綺麗だ。

他のも物色してみたが、やっぱりこれが一番しっくり来たので、結構色々な色があったその中から青い紐を選んだ。

ゴムタイプではなかったので、一応ゴムタイプのものも何本かレジへ持っていく。

ゴムで縛った後に、上に巻きつければいいだろうと思ってのことだ。

レジの女の子に手渡すと、「こちらは、プレゼント用に致しますか?」と聞かれたので、ついでだから「はい」と答えた。

「恋人さんですか?」
「、はい」
「ふふっ、きっと喜びますよ」
「だといいんですけどね……」

ははっと笑っている間に、丁寧に包装された品を受け取って、お礼を言ってから店を出た。

少し高かったが、全然俺の所持金で買えない額ではなかったし、別にいいだろう。
いい買い物をしたとおもう。

「あれ?あなたは……」

帰ろう、と思って宿の方向へ足を向けた時、後ろから声がかけられた。

後ろを振り向くと、笑顔の騎士様がいた。

「レイロートさん、でしたよね?」

「アルバートでいいですよ」と街で買い物でもしていたのだろうか?
アルバートさんと偶然であった。

周りに部下であろう騎士さんもいないので、完全に1人だ。
このまま帰る訳にも行かないので、ちょっとした世間話的なことをしていると、思い出したようにアルバートさんは顔をあげた。

「そういえば、疑問に思ったのですがユウさんは冒険者登録は……」
「ぁあ、その事でしたら、していないです。なのでほんとに今回は、ジルの付き添いみたいな感じなんです」

ヘラッと笑っていると、アルバートさんは「ですよね、リストに載っていなかったので、疑問に思ったのですよ」と言った。

冒険者のリストだろうか。
俺も一応冒険者登録とかしたほうがいいのかもしれない。

帰ったら、ジルに聞いてみよう。

「あの、こういってはなんですが、戦い慣れているのでしょうか?とても華奢な方に見えるので」

まぁ、最もだろう。
特にAランクやSランククラスの依頼に、冒険者でもない一般の男がぽんぽん着いてこられては、困ると思う。

それと、弱そうで悪かったな。

「一応、魔法が得意でして」

「そうなのですか」と感心したように俺を見るアルバートさんから、ボロが出そうだと悟った俺はそそくさと「そろそろ、連れが待ってますので……」と逃げるようにして宿へ戻った。

終始、背中に視線を感じたが、無視だ無視。




宿へ戻ると、フロントにある椅子にジルがどっかりと座っていた。
恐る恐る近づくと、「遅い」と一言。
ごめんて。

アルバートさんに捕まってしまったのもあって、外はすっかり暗かった。
約束を破ってしまったことは申し訳なかったが、今回はたまたまである。
大目に見て欲しいなぁ、、。

部屋の場所を知らなかったから、良かったと言えば良かったのだが。

てかジル、ほんとにお父さんみたいになってきているぞ。
俺も一応男なので、過保護はやめてほしい。

部屋に入ってからも、終始不機嫌そうなジルに、俺は椅子をテシトシと叩いて座るように促す。

「なんだ?」
「いーから」

不思議そうにしながらも従ったジルの背後にたって、ちょっとどきどきしながらその長い髪に手を通した。

サラサラと指の間からこぼれおちていく、絹のような手触りの良い黒髪に、世の中の女性が羨ましがりそうだと思う。

俺の髪も黒いが、光を受けると茶色く見えるくせっ毛と違って、どこまでも真っ黒で真っ直ぐな髪は綺麗だ。

「ちょっとじっとしてて」

木でできた櫛で、ジルの髪を丁寧にまとめていく。
そして、少し高い位置で括った。

細い髪が束になって、波打つ姿に心が浮き足立つのを感じる。

仕上げに髪紐を巻きつければ……。

「うん、可愛い」
「おれが、可愛い……?」

なんだか納得のいかないような顔をして頭の後ろをなでているが、いつでも俺にはジルが可愛く見える。

確かに普段、言葉遣いと相まってイケメンの方がしっくりくるのだが、髪の毛を上げたことでおしとやかさがアップした気がする。

ジルにおしとやかとか、似合わなすぎるが。

ジルは鏡を取り出して、自分の頭をうつしてからニヤッと笑った。

「お前の方が、可愛いと思うけどな」
「え、なに、急に?」

急に腕を引っ張られて体制を崩したかと思えば、危うげなくジルの膝に引き上げられた。
お姫様抱っこのような形の体制が、少し恥ずかしい。

お姫様抱っこは何回かされているが、なれることは無い。

いつもは降ってくるジルの髪がないことで、顕になっている顔が近くてどぎまぎしてしまった。
前髪以外は後ろでしばってしまったので、輪郭とか長い首についつい目を奪われてしまう。

「な、何?」
「いや、ありがとな。これ、買ってきてくれたんだろ?」
「まぁ、風で邪魔そうだったから……っん、」

気に入ってくれたのだろうか?
上機嫌で俺の鎖骨に頭を埋めて、舐めたり時たま齧ったりしてじゃれてくるジルが可愛い。

目の前に広がったジルの項に、ちょっとしたお返し気分で柔く歯を立てると、途端にジルは顔を上げてしまった。

「え、ジル、?」

目元を染めて、動揺したように俺を見るジル。

「もしかして、項、ダメなの?」
「いや、、誰かに項噛まれたことなんてねぇし……」

自分の項をさわさわと撫でながら、少し恥ずかしそうにする。
やばいぞ、ジルの弱点を見つけてしまった。

むくむくと起き上がってきた好奇心に、起き上がってジルの項にさらに歯を立てた。

「っ……おい!っこの、っ!!!!!ユウ!」
「はははっ」
「っーーーー!こらっ!」

じゃれつくように何度も噛み付いたり舐めたりしたら、怒ったジルに引き剥がされてしまった。

「うっ」

テーブルに背中が勢いよく着く衝撃で軽く呻くと、ジルは慌てたように「すまん」と謝ってきた。


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