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第45話 夜の雑踏
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闇の中に灯りが揺れる夜の市場は幻想的で、まるで知らない異国のお祭りにきてるみたい。
ランプに照らされるアイザックの横顔がかっこよくて、恋人繋ぎした手も嬉しくて、私は一人夜の雑踏ではしゃいでしまう。
「ねえ、こうしてると、まるで恋人みたいだね」
嬉しくてつい走り出した私は、後ろから不意に強く腕を引かれた。そして気がついた時には、逞しい腕の中に囚われていた。
「おい、どうした」
「んー……なんか、急に、身体がふわふわして」
服の上から感じるアイザックの体温に、私の心臓がうるさいくらいドキドキする。それを誤魔化したくて、ぴたりと顔を分厚い胸板に押しつける。
「お前、そりゃあ酔いが回ったんじゃねえか?」
「うー、酔ってないし」
「酔っ払いはみんなそう言うんだ。おら、ちょっと上を向いてみろ」
「ん……なに……?」
閉じ込められた腕の中で上を向かされて、蒼い瞳が覗き込む。
甘い視線にその次を期待して瞼を閉じた私は、唇になにか固いものが触れる感触に思わず目を開けた。
「アイザック……?」
「ククッ、どうしたセリ、そんな顔してよ。キスでもして欲しいのか?」
ゆっくり開いた目に映ったのは、私の唇をなぞる節が目立つ長い指と、どこか意地悪な笑み。
恥ずかしいとか悔しいとかじゃなくて、なぜか悲しくなってしまう。
「キス……してくれないの?」
ポロリと零れた言葉に、アイザックは驚いたように目を瞠った。でも次の瞬間、返事を待たないで私の唇を奪い、何度も角度を変えて自分の唇を押しつけた。
「ン、……ん、ふ……」
「……今日は嫌がらねえんだな」
「だって、アイ、ザッ……ん……」
「なあセリ、本当に嫌なら嫌って言わねえと、このまま俺が食っちまうぞ?」
キスの合間に低くて掠れた声で囁かれて、背中がゾクゾクしてしまう。そんな乱暴な言葉遣いとは裏腹に、キスはすごく甘くて優しい。
どうしてアイザックのキスはこんなに気持ちよくて、ふわふわするんだろう。
キスが気持ちいいなんて、私、知らなかった……
続きをせがむようにぎゅっと服を掴んだら、私の腰を抱く手に力が入った。
「……いいのか?」
「……うん。あのね、アイザックに、食べて欲しい」
そう呟いた途端、私の唇をこじ開けて侵入した舌が、口の中のあちこちを這い回る。
歯の裏をチロチロと擽られて、舌先を食まれて、舌の裏まで丹念に舐められる。
どんどん深くなるキスにクラクラして、足に力が入らなくなった私は、堪らず逞しい胸に縋り付く。すると、背中を支えていた腕が私を上に掬い上げた。
「しっかり掴まってろ」
「……うん」
突然の浮遊感に、ぎゅっと目の前の首にしがみつく。唇をきつく結んだアイザックの横顔は、真剣で怖いくらい。
私は逞しい腕の中から、鮮やかな灯りに照らされる夜の街を、じっと目に焼き付けていた。
ランプに照らされるアイザックの横顔がかっこよくて、恋人繋ぎした手も嬉しくて、私は一人夜の雑踏ではしゃいでしまう。
「ねえ、こうしてると、まるで恋人みたいだね」
嬉しくてつい走り出した私は、後ろから不意に強く腕を引かれた。そして気がついた時には、逞しい腕の中に囚われていた。
「おい、どうした」
「んー……なんか、急に、身体がふわふわして」
服の上から感じるアイザックの体温に、私の心臓がうるさいくらいドキドキする。それを誤魔化したくて、ぴたりと顔を分厚い胸板に押しつける。
「お前、そりゃあ酔いが回ったんじゃねえか?」
「うー、酔ってないし」
「酔っ払いはみんなそう言うんだ。おら、ちょっと上を向いてみろ」
「ん……なに……?」
閉じ込められた腕の中で上を向かされて、蒼い瞳が覗き込む。
甘い視線にその次を期待して瞼を閉じた私は、唇になにか固いものが触れる感触に思わず目を開けた。
「アイザック……?」
「ククッ、どうしたセリ、そんな顔してよ。キスでもして欲しいのか?」
ゆっくり開いた目に映ったのは、私の唇をなぞる節が目立つ長い指と、どこか意地悪な笑み。
恥ずかしいとか悔しいとかじゃなくて、なぜか悲しくなってしまう。
「キス……してくれないの?」
ポロリと零れた言葉に、アイザックは驚いたように目を瞠った。でも次の瞬間、返事を待たないで私の唇を奪い、何度も角度を変えて自分の唇を押しつけた。
「ン、……ん、ふ……」
「……今日は嫌がらねえんだな」
「だって、アイ、ザッ……ん……」
「なあセリ、本当に嫌なら嫌って言わねえと、このまま俺が食っちまうぞ?」
キスの合間に低くて掠れた声で囁かれて、背中がゾクゾクしてしまう。そんな乱暴な言葉遣いとは裏腹に、キスはすごく甘くて優しい。
どうしてアイザックのキスはこんなに気持ちよくて、ふわふわするんだろう。
キスが気持ちいいなんて、私、知らなかった……
続きをせがむようにぎゅっと服を掴んだら、私の腰を抱く手に力が入った。
「……いいのか?」
「……うん。あのね、アイザックに、食べて欲しい」
そう呟いた途端、私の唇をこじ開けて侵入した舌が、口の中のあちこちを這い回る。
歯の裏をチロチロと擽られて、舌先を食まれて、舌の裏まで丹念に舐められる。
どんどん深くなるキスにクラクラして、足に力が入らなくなった私は、堪らず逞しい胸に縋り付く。すると、背中を支えていた腕が私を上に掬い上げた。
「しっかり掴まってろ」
「……うん」
突然の浮遊感に、ぎゅっと目の前の首にしがみつく。唇をきつく結んだアイザックの横顔は、真剣で怖いくらい。
私は逞しい腕の中から、鮮やかな灯りに照らされる夜の街を、じっと目に焼き付けていた。
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