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第42話 パーティ結成!?

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「ようアイザック。こんなとこにいやがったか」
「ああ? ……なんだまたお前か」
「おいおい随分なご挨拶だな。お前さんが逃げるから俺がわざわざ来てやってんじゃねえか」

 聞いたことのある大きな声に振り向くと、そこにいたのは今朝食堂で会ったばかりのガストンさんだった。
 
「何の用だ? もう話は済んでる筈だ」
「はははっ、そう怖い顔すんなや。話が終わったらすぐ消えるからよ。……そんでお前、あんな事言ってどうするつもりだ。向こうさんに喧嘩でも売るつもりか?」

 突然ぐっと低くなった声に、慌てて下を向いた私は黙々と食事を続けた。

「ああ言っときゃあ向こうも諦めるだろう。ギルマスにもそう言っとけ」
「お前本当にその通り伝えていいのか? 依頼人は紫だろうがよ」
「へっ、あいつらお高いプライドの塊だ。そんな奴らがモルデンくんだりまでわざわざ来やしねえよ」
「果たしてそうかな」
「ああ?」
「今この国にいるAランクの冒険者は三人。その内まともに動けるのはアイザック、お前さんだけだ。そのお前をワザワザ指名してんだからよ。それだけの理由があるんじゃねえか?」
「……」
「……ま、相手の出方次第だけどな。万が一来ることがありゃあよ、そん時は俺にも一枚噛ませろや」

 そう言ってガストンさんは意味ありげにニヤリと笑うと、ひらひらと手を振って奥へと消えていった。
 そして再びテーブルを支配する奇妙な沈黙に、私は内心すごく困っていた。
 だってさ、はっきり言って私ってすごく場違いだ。
 アイザックと知り合って間もないし、しかも冒険者としてもランクが違い過ぎるのに、こんなポジションにいていいんだろうか。
 
「ったく、朝から何度も済まねえな。ゆっくり飯も食えやしねえ」
「……ねえアイザック、ガストンさんが話してたのって、もしかしてこの間言ってた指名依頼のこと?」
「セリ、それは却下だ」
「ちょ、まだ何も言ってないし!」
「どうせあれだろ? 変に気い回して『私のことは気にしないで依頼を受けて』だの、『もう治ったから宿に帰る』とか言うつもりだろ?」
「うう、でもさ……」

 だって食堂で誰かが言ってた。「あいつは大斧バトルアックスのガストンだ」って。
 そんな呼び名がついてる有名人がギルマス言われてアイザックを探してるって、よっぽど大事な依頼なんじゃないの?

「セリが気にする必要はねえ。俺が自分で決めたことだ」
「いやでも、どう考えても」
「だから却下だ。……いや待てよ。そうだな……」

 突然何かを考え始めたアイザックに、私はとりあえず食事の続きを口に入れた。
 この挽き肉が載ったピザみたいなやつ、美味しいけどかなり香辛料がきいてて辛い。これは飲み物が欲しくなる味だよね。

「なあセリ、お前王都に行きたいんだろう? だったら俺と一緒に行かねえか?」
「え? アイザックと一緒に王都に?」
「ああ。今回の指名依頼な、依頼人は王都にいるんだ。だから本当は俺もあっちに行かなきゃなんねえんだ」
「アイザック王都に行っちゃうの?」
「行かねえよ。だから断ってんじゃねえか。いや実はさっきセリとパーティを組んでもいいかと考えたんだがよ、現状じゃあそれは不可能だ」
「アイザックとパーティ?」

 そういえばランクが大幅に違う冒険者同士がパーティを組むのは、ギルドで禁止されてたっけ。
 昔はお金持ちが高ランクの冒険者を雇って実力に伴わないランクアップをしたり、逆に新人の冒険者が一方的に利用されて無謀な依頼を受けた挙句、死亡する事案が頻発したんだって。
 だからギルドで一定の制約を設けるようになったって、サリーナが教えてくれた。

「だからよ、セリが俺を王都までの護衛として雇えばいい。そうすりゃ俺も依頼を受けに王都まで行けるし、セリも安全に旅ができる。一石二鳥じゃねえか?」
「……アイザックは私のこと利用するの?」
「……は?」
「いいように利用して、使い道が無くなったらぽいって捨てちゃうの?」
「はあ? なんだよ急にどうした?」
「だってサリーナがそう言ってたから」
「なんで今サリーナが出てくるんだ? っておいセリ、まさかここに置いといた俺の酒全部飲んだのか?」
「ひどいよアイザック……私を捨てるなんて……」
「おい待て、なんで泣くんだ! クソッ!」



 ────結論。異世界のお酒は私には強かったみたいです。


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