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番外編
獣人下着事情
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その日、いつもより早めに帰宅したロルフは、目の前に広がる衝撃的な光景に思わずグゥと喉を鳴らした。
(ああミミナ、なんてことだ……!)
ミミナと新居で暮らすようになってから、ロルフは充実した日々を送っている。
仕事から帰ると、出迎えてくれるのは可愛いミミナと美味しいご飯。食事を済ませ一緒に風呂に入り、夜はベッドを共にする。朝は無理をさせたミミナに代わり、ロルフが食事を作るのだ。
いつも通り族長代理執務室で机に向かっていたロルフは、ふと朝の光景を思い出して頬を緩めた。
(一緒に暮らすまで料理などしたことがなかったが、あれはいい。うん。すごくいいものだ)
ロルフが作った料理を、ミミナはそれは嬉しそうに食べる。
栗色の瞳をキラキラさせながら耳をピンと立て、小さな口を無心にモグモグと動かすさまは、筆舌に尽くせぬほど可愛いのだ。ロルフはしみじみそう思った。
(あんなに喜んでくれるなら、これからは夕飯も俺が作っても……いや駄目だ。ミミナの作る食事は絶品だからな。それは却下だ。だが……そうか、俺も一緒に料理を作ればいいんじゃないか? そうすればより長い時間一緒にもいられるし、あわよくば……。よし、そうと決まったら)
突然ガタンと席を立ったロルフに、嫌な予感を感じて補佐のクリスは書きかけの書類から顔を上げた。
「ロルフ、どうかしたのか?」
「急用ができた。今日はこのまま帰宅する」
「は? ちょ、待てよ。急用ってなんだ。帰宅するってありえないだろう。せめて俺が納得できるように説明しろよ」
「説明? そうだな、ミミナ監修による調理技術の向上を目的とした実地訓練、といったところかな」
「実地訓練?」
「ああ。しかもとても重要な任務だ」
牙を見せニヤリと笑ったロルフは、緩やかに尾を振りながら颯爽と執務室を後にする。残されたクリスは、誰もいない空間に向かってぼそりと呟いた。
「……調理技術って、もしかしてあいつが料理するのか? あのプライドの高い、孤高の狼と呼ばれたロルフが? しかもミミナちゃんに教わって? 嘘だろう……?」
普段より早く帰宅したロルフは、ミミナを驚かせようと足音を忍ばせて家に入った。
キッチンからは肉の焼ける香ばしい匂いが漂い、微かにミミナの鼻歌も聞こえてくる。
込み上げる笑いを噛み殺しながら廊下からそっと様子を窺ったロルフは、ミミナの後ろ姿を見てピシリと固まった。
(ミミナ、なんてことだ……!)
今日のミミナの服装は、淡いピンク地に小花柄が散ったワンピース。一緒に買いにいった際に、いつもよりスカートの丈が短いことを気にするミミナに、ロルフがよく似合うと太鼓判を押した服だった。それが……
(ミ、ミミナの大事な部分が剥き出しに……!)
あろうことかスカートが小さな尾に引っかかり、ミミナのお尻の一部が丸見えになっていたのだ。
ここファルルッカでは、獣人女性の下着は尾の形状や大きさによって種類が分かれる。
尾を出せるよう臀部に丸く尻尾穴が空いている、通称「尾バック」。二本の紐で尾を固定する「尾紐パン」。尾の部分に深いスリットの入った「尾ープン」が一般的である。
そしてこの日のミミナは、淡い水色の尾紐パンを履いていた。
ロルフに見られていることに気づかず、ミミナは料理を続ける。リズミカルになにかを刻んでいたかと思えば鍋をかき混ぜ、オーブンを覗き、次の瞬間にはシンクで野菜を洗う。その間もずっとミミナの尾はご機嫌にピコピコと揺れている。
(ミミナ……あんなに尾を揺らして……まさか俺を誘っているのか……?)
その時、鍋の味見をしたミミナの尻尾がピコンッと上を向いた。
「ん、美味しい! ふふ、ロルフ、いっぱい食べてくれるといいな」
それを聞いた瞬間、ロルフの金色の瞳がスッと細くなった。逆に黒い瞳孔は開き、ヒタと獲物──ミミナの尾を見据える。そして次の瞬間──
「キャアッ、ロ、ロルフ? どうしたの? え、あ、やだっ、だめっ、こんなところで挿れちゃ……あああぁぁぁんっ」
……ちなみに、その日の夕食は次の日の朝食になったとか。
※補足説明
細くしなやかな尾を持つ獣人は「尾バック」
毛のボリュームのある尾や巻尾を持つ獣人は「尾紐パン」「尾ープン」が一般的に好まれる。
ちなみにミミナは、尻尾穴に自分の尾を通すのが苦手なので、尾紐パンと尾ープンの愛用者。そしてロルフの好みは尾-プンだったりする。
(ああミミナ、なんてことだ……!)
ミミナと新居で暮らすようになってから、ロルフは充実した日々を送っている。
仕事から帰ると、出迎えてくれるのは可愛いミミナと美味しいご飯。食事を済ませ一緒に風呂に入り、夜はベッドを共にする。朝は無理をさせたミミナに代わり、ロルフが食事を作るのだ。
いつも通り族長代理執務室で机に向かっていたロルフは、ふと朝の光景を思い出して頬を緩めた。
(一緒に暮らすまで料理などしたことがなかったが、あれはいい。うん。すごくいいものだ)
ロルフが作った料理を、ミミナはそれは嬉しそうに食べる。
栗色の瞳をキラキラさせながら耳をピンと立て、小さな口を無心にモグモグと動かすさまは、筆舌に尽くせぬほど可愛いのだ。ロルフはしみじみそう思った。
(あんなに喜んでくれるなら、これからは夕飯も俺が作っても……いや駄目だ。ミミナの作る食事は絶品だからな。それは却下だ。だが……そうか、俺も一緒に料理を作ればいいんじゃないか? そうすればより長い時間一緒にもいられるし、あわよくば……。よし、そうと決まったら)
突然ガタンと席を立ったロルフに、嫌な予感を感じて補佐のクリスは書きかけの書類から顔を上げた。
「ロルフ、どうかしたのか?」
「急用ができた。今日はこのまま帰宅する」
「は? ちょ、待てよ。急用ってなんだ。帰宅するってありえないだろう。せめて俺が納得できるように説明しろよ」
「説明? そうだな、ミミナ監修による調理技術の向上を目的とした実地訓練、といったところかな」
「実地訓練?」
「ああ。しかもとても重要な任務だ」
牙を見せニヤリと笑ったロルフは、緩やかに尾を振りながら颯爽と執務室を後にする。残されたクリスは、誰もいない空間に向かってぼそりと呟いた。
「……調理技術って、もしかしてあいつが料理するのか? あのプライドの高い、孤高の狼と呼ばれたロルフが? しかもミミナちゃんに教わって? 嘘だろう……?」
普段より早く帰宅したロルフは、ミミナを驚かせようと足音を忍ばせて家に入った。
キッチンからは肉の焼ける香ばしい匂いが漂い、微かにミミナの鼻歌も聞こえてくる。
込み上げる笑いを噛み殺しながら廊下からそっと様子を窺ったロルフは、ミミナの後ろ姿を見てピシリと固まった。
(ミミナ、なんてことだ……!)
今日のミミナの服装は、淡いピンク地に小花柄が散ったワンピース。一緒に買いにいった際に、いつもよりスカートの丈が短いことを気にするミミナに、ロルフがよく似合うと太鼓判を押した服だった。それが……
(ミ、ミミナの大事な部分が剥き出しに……!)
あろうことかスカートが小さな尾に引っかかり、ミミナのお尻の一部が丸見えになっていたのだ。
ここファルルッカでは、獣人女性の下着は尾の形状や大きさによって種類が分かれる。
尾を出せるよう臀部に丸く尻尾穴が空いている、通称「尾バック」。二本の紐で尾を固定する「尾紐パン」。尾の部分に深いスリットの入った「尾ープン」が一般的である。
そしてこの日のミミナは、淡い水色の尾紐パンを履いていた。
ロルフに見られていることに気づかず、ミミナは料理を続ける。リズミカルになにかを刻んでいたかと思えば鍋をかき混ぜ、オーブンを覗き、次の瞬間にはシンクで野菜を洗う。その間もずっとミミナの尾はご機嫌にピコピコと揺れている。
(ミミナ……あんなに尾を揺らして……まさか俺を誘っているのか……?)
その時、鍋の味見をしたミミナの尻尾がピコンッと上を向いた。
「ん、美味しい! ふふ、ロルフ、いっぱい食べてくれるといいな」
それを聞いた瞬間、ロルフの金色の瞳がスッと細くなった。逆に黒い瞳孔は開き、ヒタと獲物──ミミナの尾を見据える。そして次の瞬間──
「キャアッ、ロ、ロルフ? どうしたの? え、あ、やだっ、だめっ、こんなところで挿れちゃ……あああぁぁぁんっ」
……ちなみに、その日の夕食は次の日の朝食になったとか。
※補足説明
細くしなやかな尾を持つ獣人は「尾バック」
毛のボリュームのある尾や巻尾を持つ獣人は「尾紐パン」「尾ープン」が一般的に好まれる。
ちなみにミミナは、尻尾穴に自分の尾を通すのが苦手なので、尾紐パンと尾ープンの愛用者。そしてロルフの好みは尾-プンだったりする。
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