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女達のはじまり
21 金稼
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リースは現在、王都の大衆食堂でたった一人アルバイトをしていた。日の出とともに仕込みを手伝い、夜遅くまで後片付けと清掃までこなす。最初に来て最後に帰るという生活をほぼ毎日繰り返していたのだった。
なぜなら三人の魔女が借金をこしらえ、その返済に追われることになったからだった。
王都に戻ったアインスが洋服店にツケで大量に買った洋服代、ツヴァイが売った喧嘩での修理費と医療費、フィーアが注意力散漫で破壊した高級茶器の弁償代はリースの所持金を大幅に上回るものだった。
リースにもそれなりの貯えがあったがそれは一瞬にして消し飛んでしまったのだ。魔女と言う台風に貯金と言う名の傘は耐えられなかったのだ。
アインスは既製品の他にもオーダーメイドで七着のドレスもしっかりと頼んでいた。もちろん、オーダーメイドの分はキャンセルしたが、既製品の洋服はセール品ということで返却が不可なものが多かったのだ。
見目麗しい五人組に声を掛ける男どもはとても多く、その男たちにツヴァイは所かまわず喧嘩を売り、大けがを負わせた被害者に慰謝料を払う必要が生じた。怪我した者の中には吹っ飛ばの下敷きになり、無関係な人が腕を骨折してしまったのだ。ついでに破壊した店の壁や家具の修理代も。
フィーアはというといつも注意散漫にふらふらと歩くものだから、店のディスプレイに飾ってあった高級茶器を倒し割ってしまったのだった。頭を下げるリースとルルリアナを真似て、頭を下げるフィーアは親の真似をする子供様でとても愛らしかった。それを見て怒った茶器店の店長が弁償することで許してくれたのだから良しとしようと、リースは言い聞かせていた。
そして、リースは自分以外のものが金を稼ぐには適していないと悟ったのは、五人で大衆食堂で働いた初日のことだった。いや、一時間くらいだったかもしれない。数分?
アインスは手が汚れるのが嫌だと食器洗いの仕事を拒否してホールに出たくせに、注文を頼む客に「なんで私があなたの命令をきかないといけないのかしら」と言い放ち、注文を取るのを断ってしまったのだった。もちろん、女将にバレ即刻クビである。
ツヴァイはというとやはり喧嘩っ早く変に正義感が強いものだから、変な男に絡まれやすいルルリアナを守るために客を威嚇して回った。そして一人のアホな男がルルリアナのお尻を触ろうと手を伸ばした瞬間、男は宙を舞い店の外へと放りだされたのだった。もちろん、客を殴ったとしてクビである。
フィーアはというと運ぶように言われた料理をむしゃむしゃと食べてしまったのだ。それも自分が好きなものだけ。サラダのミニトマトや、お肉、ケーキのイチゴなど。客から文句が出てクビである。
ルルリアナはというと大変優秀な働き手だったが、次の日高熱を出して寝込んでしまったのだった。それでも働こうとしたルルリアナをリースが無理やり布団で寝かせ、仕事を休むように言い、休みすぎだと女将にクビにされてしまったのだった。
そう、リースは今、一人大衆食堂で働き借金の返済を頑張っているのである。自分が作った借金ではないのに。しかし、魔女の主は自分であると無理やり納得させアルバイトを続けているのだった。
アルバイト代はとても安く、リースが労働法基準違反だと店長に言ったらそんな法律はないと言われてしまったのだった。
リースがレオザルトを始めとするエギザベリア神国の王族を嫌う理由が一つ増えたのだった。
体調も良くなったルルリアナも含め、四人は今就活中であった。そう、就活中であったのだが、なぜか四人はルルリアナが働く大衆食堂に集まり優雅にランチを食べていたのだった。
リースは五分で掻っ込むように賄いを食べて、休む間もなく働きだしたというのに。
生活に対する常識が欠落している四人は本当に役に立たなかったのである。
王妃教育を受けていたルルリアナも市民生活にはまだ対応できていなかったのだ。というか、生きていく上での常識は教わってなかったようだ。
アインスは本当に服のセンスは良かったようで、買ってきた服はどれも可愛らしかった。幸い五人は似たような体系なので、服を共有して着られるのが唯一の救いだった。そう言い聞かせて、リースは自分を納得させようとしていたのだ。五人分としてはずいぶん高い洋服代だったが。
リースは今、汚れてもいい服装をしている。そう、マーサの店でフィーアに買った絨毯みたいな黄色のワンピースを着ているのだ。
そのためお洒落な服に身を包んだルルリアナたちが眩しく見えた。
アインスは背中が大きく開いたクリアネイビー色のワンピースを着ており、背中にはお洒落な細いレースがハイネックの襟と繋がっている。そのレースの効果でアインスの綺麗な背骨へと視線が集中する。
ツヴァイのワンピースは、白地にクラッシックな淡いピンクのバラが描かれた可愛らしいボートネックのワンピースで、乙女チックになりすぎないのはツヴァイの野性味がそれを打ち消しているからだろう。ワイルドなツヴァイが乙女系のワンピースを着るとまるでアクション女優みたいにかっこよく見えるから不思議だ。
ルルリアナはVネックのボタニカル模様の繊細なレースのワンピースで、ルルリアナの儚さが強調されている。リースが切り刻んだルルリアナの髪は、アインスによって整えられボーイッシュなテイストが加えられ、とてもおしゃれだ。ルルリアナがその髪型で社交界に登場したら、こぞって貴族尾ご令嬢たちが真似する様子が楽に想像できる。
フィーアは襟がスクエアのノースリーブのワンピースで、レモンイエローの華の幾何学模様をしている。愛らしいフィーアにとてもぴったりだった。
四人にディスられているのではないだろうかとリースは疑心暗鬼となる。リースがマーサの店で買ったイケてるワンピースを彷彿とさせるチョイスだったからだ。
四人は本日のおすすめのビーフシチューに、野菜サラダ、季節の桃のソーダを頼んで楽しそうに、美味しそうに食べていた。
払う金はあるのだろうか?
「ねぇ、仕事見たかったの?」
「仕事?えぇ!もちろん見つかったわ!時給もとてもいいのよ」
そう言ってアインスが私に渡したのは花街のチラシで、チラシには「女性でも簡単に稼げるお仕事~これで私もお金持ちになりました~」と書かれている。
「この仕事、四人でするの?」
「もちろん」
ツヴァイが口に食べ物を入れたまま答える。
「この大衆食堂の十倍の時給なのよ?それにお客が満足すればもっと時給が上がるらしいわ」
そりゃあそうだろうとリースは目をぐるりと回し呆れる。こんな美人が花を売ってるとなったら、王都中の男どもが集まるに違いない。
「三人が一緒なら私でもできそうです」
ルルリアナがぐっと拳を胸の前で握りやる気を見せる。
リースはそのチラシをぐしゃぐしゃにし、アインスへと投げつける。
「これがどんな仕事かわかってるの?」
「どんな仕事って高収入な仕事でしょ?」
「………あなた、本当にわかってないの?」
きょとんとするアイリスにリースは耳元でその仕事がどのようなものなのか、詳細に説明する。それを聞いたアインスは花も恥じらう止めの様に顔を真っ赤にして俯く。
「仕事…断ってくるわ。なんだか私…また間違えてしまったみたいね」
アインスがわかってくれたことに安堵し、リースは客に呼ばれ注文を取りに行く。注文をキッチンに伝えに行くと、違う客が頼んだグラタンができており、リースはその客のテーブルへと料理を運ぶ。それから次々と客が店に入ってきて、仕事がひと段落したころには四人の姿はなかった。
ランチ代はどうやら私のアルバイト代から引かれるらしい。
レジを打った女の子に尋ねると、四人の持ち合わせでは代金が支払えなかったらしい。
帰ったらしっかりお金というものを四人に教えなければと、リースは肩を落としたのだった。
月が一番高いところに上ったころルルリアナの仕事は終わった。
リースは閉店後の後片付けもきっちりと終わらせ、朝の仕込みから働いていた自分の体をねぎらうようにストレッチする。凝った背中が引き延ばされ、心地よい痛みを感じる。
女将の慈悲から店での余り物を携え、リースは重たい足でボロ宿へと向かう。
ボロ宿はとても安く素泊まりのため食事は出ないが、共有のキッチンとお風呂があるのが救いだった。
「ただいま~」と、リースが宿の玄関のドアを開けると、宿屋の女将さんが右手に箒を持ち左手を腰に当て胃鬼の形相でリースの帰りを待っていたのだった。
あ~、これは確実に追い出される奴だとリースは女将さんの表情を見て悟るのだった。
私はいつになったら休めるのだろうか……。
なぜなら三人の魔女が借金をこしらえ、その返済に追われることになったからだった。
王都に戻ったアインスが洋服店にツケで大量に買った洋服代、ツヴァイが売った喧嘩での修理費と医療費、フィーアが注意力散漫で破壊した高級茶器の弁償代はリースの所持金を大幅に上回るものだった。
リースにもそれなりの貯えがあったがそれは一瞬にして消し飛んでしまったのだ。魔女と言う台風に貯金と言う名の傘は耐えられなかったのだ。
アインスは既製品の他にもオーダーメイドで七着のドレスもしっかりと頼んでいた。もちろん、オーダーメイドの分はキャンセルしたが、既製品の洋服はセール品ということで返却が不可なものが多かったのだ。
見目麗しい五人組に声を掛ける男どもはとても多く、その男たちにツヴァイは所かまわず喧嘩を売り、大けがを負わせた被害者に慰謝料を払う必要が生じた。怪我した者の中には吹っ飛ばの下敷きになり、無関係な人が腕を骨折してしまったのだ。ついでに破壊した店の壁や家具の修理代も。
フィーアはというといつも注意散漫にふらふらと歩くものだから、店のディスプレイに飾ってあった高級茶器を倒し割ってしまったのだった。頭を下げるリースとルルリアナを真似て、頭を下げるフィーアは親の真似をする子供様でとても愛らしかった。それを見て怒った茶器店の店長が弁償することで許してくれたのだから良しとしようと、リースは言い聞かせていた。
そして、リースは自分以外のものが金を稼ぐには適していないと悟ったのは、五人で大衆食堂で働いた初日のことだった。いや、一時間くらいだったかもしれない。数分?
アインスは手が汚れるのが嫌だと食器洗いの仕事を拒否してホールに出たくせに、注文を頼む客に「なんで私があなたの命令をきかないといけないのかしら」と言い放ち、注文を取るのを断ってしまったのだった。もちろん、女将にバレ即刻クビである。
ツヴァイはというとやはり喧嘩っ早く変に正義感が強いものだから、変な男に絡まれやすいルルリアナを守るために客を威嚇して回った。そして一人のアホな男がルルリアナのお尻を触ろうと手を伸ばした瞬間、男は宙を舞い店の外へと放りだされたのだった。もちろん、客を殴ったとしてクビである。
フィーアはというと運ぶように言われた料理をむしゃむしゃと食べてしまったのだ。それも自分が好きなものだけ。サラダのミニトマトや、お肉、ケーキのイチゴなど。客から文句が出てクビである。
ルルリアナはというと大変優秀な働き手だったが、次の日高熱を出して寝込んでしまったのだった。それでも働こうとしたルルリアナをリースが無理やり布団で寝かせ、仕事を休むように言い、休みすぎだと女将にクビにされてしまったのだった。
そう、リースは今、一人大衆食堂で働き借金の返済を頑張っているのである。自分が作った借金ではないのに。しかし、魔女の主は自分であると無理やり納得させアルバイトを続けているのだった。
アルバイト代はとても安く、リースが労働法基準違反だと店長に言ったらそんな法律はないと言われてしまったのだった。
リースがレオザルトを始めとするエギザベリア神国の王族を嫌う理由が一つ増えたのだった。
体調も良くなったルルリアナも含め、四人は今就活中であった。そう、就活中であったのだが、なぜか四人はルルリアナが働く大衆食堂に集まり優雅にランチを食べていたのだった。
リースは五分で掻っ込むように賄いを食べて、休む間もなく働きだしたというのに。
生活に対する常識が欠落している四人は本当に役に立たなかったのである。
王妃教育を受けていたルルリアナも市民生活にはまだ対応できていなかったのだ。というか、生きていく上での常識は教わってなかったようだ。
アインスは本当に服のセンスは良かったようで、買ってきた服はどれも可愛らしかった。幸い五人は似たような体系なので、服を共有して着られるのが唯一の救いだった。そう言い聞かせて、リースは自分を納得させようとしていたのだ。五人分としてはずいぶん高い洋服代だったが。
リースは今、汚れてもいい服装をしている。そう、マーサの店でフィーアに買った絨毯みたいな黄色のワンピースを着ているのだ。
そのためお洒落な服に身を包んだルルリアナたちが眩しく見えた。
アインスは背中が大きく開いたクリアネイビー色のワンピースを着ており、背中にはお洒落な細いレースがハイネックの襟と繋がっている。そのレースの効果でアインスの綺麗な背骨へと視線が集中する。
ツヴァイのワンピースは、白地にクラッシックな淡いピンクのバラが描かれた可愛らしいボートネックのワンピースで、乙女チックになりすぎないのはツヴァイの野性味がそれを打ち消しているからだろう。ワイルドなツヴァイが乙女系のワンピースを着るとまるでアクション女優みたいにかっこよく見えるから不思議だ。
ルルリアナはVネックのボタニカル模様の繊細なレースのワンピースで、ルルリアナの儚さが強調されている。リースが切り刻んだルルリアナの髪は、アインスによって整えられボーイッシュなテイストが加えられ、とてもおしゃれだ。ルルリアナがその髪型で社交界に登場したら、こぞって貴族尾ご令嬢たちが真似する様子が楽に想像できる。
フィーアは襟がスクエアのノースリーブのワンピースで、レモンイエローの華の幾何学模様をしている。愛らしいフィーアにとてもぴったりだった。
四人にディスられているのではないだろうかとリースは疑心暗鬼となる。リースがマーサの店で買ったイケてるワンピースを彷彿とさせるチョイスだったからだ。
四人は本日のおすすめのビーフシチューに、野菜サラダ、季節の桃のソーダを頼んで楽しそうに、美味しそうに食べていた。
払う金はあるのだろうか?
「ねぇ、仕事見たかったの?」
「仕事?えぇ!もちろん見つかったわ!時給もとてもいいのよ」
そう言ってアインスが私に渡したのは花街のチラシで、チラシには「女性でも簡単に稼げるお仕事~これで私もお金持ちになりました~」と書かれている。
「この仕事、四人でするの?」
「もちろん」
ツヴァイが口に食べ物を入れたまま答える。
「この大衆食堂の十倍の時給なのよ?それにお客が満足すればもっと時給が上がるらしいわ」
そりゃあそうだろうとリースは目をぐるりと回し呆れる。こんな美人が花を売ってるとなったら、王都中の男どもが集まるに違いない。
「三人が一緒なら私でもできそうです」
ルルリアナがぐっと拳を胸の前で握りやる気を見せる。
リースはそのチラシをぐしゃぐしゃにし、アインスへと投げつける。
「これがどんな仕事かわかってるの?」
「どんな仕事って高収入な仕事でしょ?」
「………あなた、本当にわかってないの?」
きょとんとするアイリスにリースは耳元でその仕事がどのようなものなのか、詳細に説明する。それを聞いたアインスは花も恥じらう止めの様に顔を真っ赤にして俯く。
「仕事…断ってくるわ。なんだか私…また間違えてしまったみたいね」
アインスがわかってくれたことに安堵し、リースは客に呼ばれ注文を取りに行く。注文をキッチンに伝えに行くと、違う客が頼んだグラタンができており、リースはその客のテーブルへと料理を運ぶ。それから次々と客が店に入ってきて、仕事がひと段落したころには四人の姿はなかった。
ランチ代はどうやら私のアルバイト代から引かれるらしい。
レジを打った女の子に尋ねると、四人の持ち合わせでは代金が支払えなかったらしい。
帰ったらしっかりお金というものを四人に教えなければと、リースは肩を落としたのだった。
月が一番高いところに上ったころルルリアナの仕事は終わった。
リースは閉店後の後片付けもきっちりと終わらせ、朝の仕込みから働いていた自分の体をねぎらうようにストレッチする。凝った背中が引き延ばされ、心地よい痛みを感じる。
女将の慈悲から店での余り物を携え、リースは重たい足でボロ宿へと向かう。
ボロ宿はとても安く素泊まりのため食事は出ないが、共有のキッチンとお風呂があるのが救いだった。
「ただいま~」と、リースが宿の玄関のドアを開けると、宿屋の女将さんが右手に箒を持ち左手を腰に当て胃鬼の形相でリースの帰りを待っていたのだった。
あ~、これは確実に追い出される奴だとリースは女将さんの表情を見て悟るのだった。
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