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物語のはじまり
11 双子
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私こと中野里紗は、ついこの間までは日本暮らしていた。
私は双子で、私の片割れはとてつもない美少女と言うのことが私の特別だった。
一卵性双生児だったけど、月菜は私とは正反対だった。
ちなみに私は美少女ではない。月菜みたいに容姿に気を使っていなかったからね。私も頑張れば月菜みたいに綺麗になれるというのが、私の慰めだった。
妹の名前は月菜で、本当に天使みたいな子だった。見た目だけでなく、性格もとても良くて誰からも愛される子だった。
でも、月菜は死んでしまった。
交通事故に巻きこまれて、本当の天使になってしまった。
妹は私に「心臓」を残してくれた。
私は16歳の時に心臓病を患い、心臓移植が必要と診断されていた私に。
それまでの私はフェンシングにのめり込んでいて、死ぬまでフェンシングができると信じていた。オリンピックでメダルも狙えるほど私は強かったのだ。
病気が分かったとき、誰よりも悲しんでくれたのが月菜だったし、支えになってくれたのも月菜だった。
妹は私に心臓だけでなく、その後の人生も残してくれたのだ。
愛しい人との人生も、一人息子を授かるというかけがえのない喜びも。妹が歩むはずだった人生をまるっと私にくれたのだ。
一人息子の一番上の子供がランドセルを背負った年、愛した男性がこの世を去った。
暑い夏の日、私はいつも通り妹の墓参りをした。月菜が大好きだった、白い花束を携えて。
妹の墓には先客がいて、彼は人間離れしたとても美しい男性だった。彼は私と同じような白い花束を、妹の墓にお供えしていた。
「こんにちは」
私はなんの疑いもなく、彼に声を掛けたのだ。
こんな美青年がどうしてうちの墓に花を供えるのか疑問にも思わず。
彼が悪魔だとも知らずに。
彼は私に信じられない話をした。
だが、不思議なことに私にはその話が嘘ではなく、真実だと肌で魂で感じたのだ。
彼の話は、妹が地球とは違った世界に生まれ変わっているという驚くべき内容だった。
妹が私に助けを求めていると。
妹を助けたくないかと囁く悪魔に、私は……妹がくれた魂を売ったのだ。
気が付くと私は高校生くらいの年齢に戻っていて、眼前に広がるのは人であふれる広場だった。
白亜の美しいゴシック調の神殿の前の広大な広場は溢れんばかりの人、人、人で溢れていた。
神殿のバルコニーには、エギザベリア神国の王族たちがずらりと並んでいた。
その王族に混ざりながら、心細そうに笑い民衆に手を振るルルリアナを見たときわかったのだ。
ルルリアナが月菜だと。
月菜と私の距離は本当に遠くて、ルルリアナの瞳の色すらわからなかったのに、米粒大の大きさの彼女を見たとき、まるで鉄が磁石に魅かれるようにわかったのだ。
そしてその場面は、私が大好きだったRPGゲームのオープニングムービーに類似していた。
そう、この世界は「アイス・エンド・ワールド」というゲームの世界だと思い出したのだ。
月菜がラスボスに捧げられる生贄だという記憶とともに。
私は月菜が神殿に幽閉に近い形で保護され、その神殿の敷地内に王立学院が建設されていることを調べ上げた。
月菜に、ルルリアナ様に近づくためにどんな手段を使っても、王立学院の生徒になる必要があった。
王立学院には、魔法科、治療科、騎士科の三つの科があったが、魔法が使えない私が入学できる望みがあったのは騎士科だけだった。だが、騎士科は女人禁制だったため私は性別を偽り、騎士科の入学試験を受験することにしたのだ。
幸い、フェンシングの腕はオリンピック候補生になるほどだったので、私は無事に騎士科に合格することができた。
心臓移植以降、フェンシングを諦めていたこの体は現役時代のように自由に動くことができた。
この世界には戸籍が存在したが管理はずさんで、戸籍を提示できなかった私に学校関係者は孤児出身かと尋ね、私はそれに同意した。
こうして、なんとか王立学院の生徒として紛れ込むことができた。
入学して三か月、私は何とか月菜に近づこうとしたがなかなか叶わなかった。
あの日までは―。
この国には地球でいう中世のヨーロッパよりも厳しい身分制度が存在した。
エギザベリア神国の王族は神と称えられていて、孤児で平民のリースが、次期皇后で雪に華であるルルリアナに近づくことは不可能だった。
だから最初は見ているだけで良かった。ゲームの知識を駆使すれば、ルルリアナに近づかなくても月菜を助けることができたから。
でも、あまりにも一人ぼっちで寂しそうにしているルルリアナを見ているうちに助けなければという、焦燥感に駆られたのだ。
「ここから逃げよう?」
握られた月菜の手を、私は絶対に離さない。
月菜は私に前世ですべてをくれたのだから―。
今度は私がルルリアナに人生と魂を捧げる番だ。
私は双子で、私の片割れはとてつもない美少女と言うのことが私の特別だった。
一卵性双生児だったけど、月菜は私とは正反対だった。
ちなみに私は美少女ではない。月菜みたいに容姿に気を使っていなかったからね。私も頑張れば月菜みたいに綺麗になれるというのが、私の慰めだった。
妹の名前は月菜で、本当に天使みたいな子だった。見た目だけでなく、性格もとても良くて誰からも愛される子だった。
でも、月菜は死んでしまった。
交通事故に巻きこまれて、本当の天使になってしまった。
妹は私に「心臓」を残してくれた。
私は16歳の時に心臓病を患い、心臓移植が必要と診断されていた私に。
それまでの私はフェンシングにのめり込んでいて、死ぬまでフェンシングができると信じていた。オリンピックでメダルも狙えるほど私は強かったのだ。
病気が分かったとき、誰よりも悲しんでくれたのが月菜だったし、支えになってくれたのも月菜だった。
妹は私に心臓だけでなく、その後の人生も残してくれたのだ。
愛しい人との人生も、一人息子を授かるというかけがえのない喜びも。妹が歩むはずだった人生をまるっと私にくれたのだ。
一人息子の一番上の子供がランドセルを背負った年、愛した男性がこの世を去った。
暑い夏の日、私はいつも通り妹の墓参りをした。月菜が大好きだった、白い花束を携えて。
妹の墓には先客がいて、彼は人間離れしたとても美しい男性だった。彼は私と同じような白い花束を、妹の墓にお供えしていた。
「こんにちは」
私はなんの疑いもなく、彼に声を掛けたのだ。
こんな美青年がどうしてうちの墓に花を供えるのか疑問にも思わず。
彼が悪魔だとも知らずに。
彼は私に信じられない話をした。
だが、不思議なことに私にはその話が嘘ではなく、真実だと肌で魂で感じたのだ。
彼の話は、妹が地球とは違った世界に生まれ変わっているという驚くべき内容だった。
妹が私に助けを求めていると。
妹を助けたくないかと囁く悪魔に、私は……妹がくれた魂を売ったのだ。
気が付くと私は高校生くらいの年齢に戻っていて、眼前に広がるのは人であふれる広場だった。
白亜の美しいゴシック調の神殿の前の広大な広場は溢れんばかりの人、人、人で溢れていた。
神殿のバルコニーには、エギザベリア神国の王族たちがずらりと並んでいた。
その王族に混ざりながら、心細そうに笑い民衆に手を振るルルリアナを見たときわかったのだ。
ルルリアナが月菜だと。
月菜と私の距離は本当に遠くて、ルルリアナの瞳の色すらわからなかったのに、米粒大の大きさの彼女を見たとき、まるで鉄が磁石に魅かれるようにわかったのだ。
そしてその場面は、私が大好きだったRPGゲームのオープニングムービーに類似していた。
そう、この世界は「アイス・エンド・ワールド」というゲームの世界だと思い出したのだ。
月菜がラスボスに捧げられる生贄だという記憶とともに。
私は月菜が神殿に幽閉に近い形で保護され、その神殿の敷地内に王立学院が建設されていることを調べ上げた。
月菜に、ルルリアナ様に近づくためにどんな手段を使っても、王立学院の生徒になる必要があった。
王立学院には、魔法科、治療科、騎士科の三つの科があったが、魔法が使えない私が入学できる望みがあったのは騎士科だけだった。だが、騎士科は女人禁制だったため私は性別を偽り、騎士科の入学試験を受験することにしたのだ。
幸い、フェンシングの腕はオリンピック候補生になるほどだったので、私は無事に騎士科に合格することができた。
心臓移植以降、フェンシングを諦めていたこの体は現役時代のように自由に動くことができた。
この世界には戸籍が存在したが管理はずさんで、戸籍を提示できなかった私に学校関係者は孤児出身かと尋ね、私はそれに同意した。
こうして、なんとか王立学院の生徒として紛れ込むことができた。
入学して三か月、私は何とか月菜に近づこうとしたがなかなか叶わなかった。
あの日までは―。
この国には地球でいう中世のヨーロッパよりも厳しい身分制度が存在した。
エギザベリア神国の王族は神と称えられていて、孤児で平民のリースが、次期皇后で雪に華であるルルリアナに近づくことは不可能だった。
だから最初は見ているだけで良かった。ゲームの知識を駆使すれば、ルルリアナに近づかなくても月菜を助けることができたから。
でも、あまりにも一人ぼっちで寂しそうにしているルルリアナを見ているうちに助けなければという、焦燥感に駆られたのだ。
「ここから逃げよう?」
握られた月菜の手を、私は絶対に離さない。
月菜は私に前世ですべてをくれたのだから―。
今度は私がルルリアナに人生と魂を捧げる番だ。
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