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中編
しおりを挟む夜中にララリアに揺り起こされたボクは、ララリアから馬屋に子犬の赤ちゃんが産まれたとボクに教えてくれた。
一緒に見に行きましょうとララリアと一緒に手をつないで馬屋に行くと、ボロイ荷馬車の中にとっても可愛い子犬が五匹いたんだ。
夢中になって子犬にかけよると、後ろから袋をかぶせられボクは意識を失った。
どれくらい気を失っていたかわからなかったけど、ボクが気が付いたと知ったララリアによってパジャマから服へと乱暴に着替えさせられた。その乱暴な手つきはいつものララリアとかなり違って、ボクは本当にララリアが悪い奴だってわかったんだ。
ボクが着替えさせられた服は、今まで着た中で一番地味で汚い服だった。ゴワゴワしている肌触りがとってもきもち悪かった。手が縛られていたから掻くこともできなかったんだ。
ボクが縛られた縄をほどこうと一生懸命もがくのを見て、ララリアは見たこともないほど醜く意地悪に笑った。
そして、ボクに優しくしたのはボクを誘拐して売るための作戦だったと言ったのだ。
そのララリアの歪んだ笑顔を見たとき、ボクは絶対に逃げ出してやるって決めたんだ。
ララリアに嫌われたくなくていい子ぶっていつも大人しくしていたボクにララリアは油断したのか、ララリアはボクの手を縛らなくなった。
きっと命じられるがまま素直にずっとずっと従っていたから、ボクが逃げ出すとは思ってもいなかったんだと思う。
ララリアが目を離したすきに子犬が入った箱を抱えて、荷馬車からボクは一生懸命走って逃げたんだ。
そして、黒い髪の魔女みたいな意地悪なリースと、ボクのルルリアナ姉さまと同じ名前と髪と眼を持つルルリアナに助けられたんだ。
本当にルルリアナがルルリアナ姉さまだったら良かったのに。
でも、ルルリアナはルルリアナ姉さまではないと思う。だって、マキシミリオン殿下から毎年届けられるルルリアナ姉さまの肖像画は、床に美しい銀髪が付いてしまうほど髪が長かったんだから。
それにルルリアナ姉さまは神殿にいるはずで、こんなカフェにいるわけがないもんね。
あぁ、残念だなぁ…。
でも、ルルリアナは本当にボクの理想のお姉さまだった。
乳母のスワンが「魔女のいとこ」に迎えにやって来るまでの三日間、ルルリアナと過ごせて本当に楽しかったな。
今度会う時までにルルリアナがもっとケーキが上手く作れるようになっているといいな。
お世辞で、ルルリアナがリースに教わりながら作ったケーキを美味しいって言ったけど、少しクリームは水っぽくて、スポンジもちょっと硬かったんだもん。
リースの料理はそこそこ美味しかったけど。
でも、ボクの家のシェフみたいに気取っていないリースの料理は、とっても優しい味だったな。
みんなでがやがやと話しながら食べるのもとっても楽しかった。
でも、アインスに女の子の格好をさせられるのはもう二度とごめんだけど。
ツヴァイには腕相撲で今度こそ勝てるかな?
フィーアの声は今度行ったら聞くことができるかな?
ルードヴィクは「魔女のいとこ」にいるけど、お父さまみたいに本当は偉い人なんだろうな。
マーカスは…うん、マーカスみたいな適当な人間にはなりたくないな。
チャーリーは今度遊びに来たら、手品を教えてくれるって約束したもんね。
ボクはルルリアナから貰った「魔女のいとこ」への道しるべとなるカラフルな折り紙の鶴を大切に握りしめる。
早くもう一度、ルルリアナに会えますように。神様、お願いです。ルルリアナにまた会わせて下さい。
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