薄の売子〜ゲームの世界に転生したけどモブだった女の話〜

エピローグ

　私は絶対に山火事でザカリアを死なせたりしない。

　「アイス・エンド・ワールド」のシリーズ知識を持つ私が、この世界で救える命がザカリアの命一つでも構わない。

　だって、ザカリアは私にとって世界で一番大切な命なのだから。

　ザカリアが亡くなる時は世界が破滅するときだけだ。そして、私も一緒だ。

　それに、たとえ世界が滅びたとしても私は幸せだ。

　世界が滅びるその日まで、私はザカリアとかけがえのない時間を一緒に過ごせるのだから。

　ザカリアと一緒ならどんな運命が待ち構えていようと怖くないと思えたのだから。

　ザカリアの腕の中にいれば私はただのナオミでいられる。

　私とザカリアが出会ってまだ九日だったけれど、私はザカリアがしてくれたプロポーズに「イエス」と頷いていた。

　世界が滅びると諦めるよりも、自分がルルリアナ様におまけした苺と、黒髪の少女リースがきっと世界を変えてくれると信じよう。

　そして彼そっくりな子供を三人授かるのだ。

　これからも増えるかもしれないけれど、十二人いる兄弟たちの将来も楽しみだ。

　私もまだ十六歳だから、何か夢に向かって動き出してもいいかもしれない。

　世界は滅びず、ザカリアと一緒にいられる希望が持てたのだから。