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プロローグ
しおりを挟む私の名前はナオミ、貴族ではないため姓を持たないただのナオミだ。
生まれ変わったこの世界が「アイス・エンド・ワールド」の世界だと気が付いたのは、私が十三歳の時だった。
それは、私が初めて恋をした日のことだった。
私の初恋の相手は白馬の王子様だった。
透き通るように白い馬で野を駆けていたその少年は、髪を風になびかせ、汗がキラキラと空に舞いとても美しかった。彼の髪も日の光に照らされて、まるで黄金のように輝いていた。
私は吸い寄せられたようにその少年に視線を奪われていた。
その少年に見惚れていた私は、弟とキャッチボール中だったのを忘れていて、弟が投げたまるで硬式野球ボールのように固い木の実に頭をぶつけてしまったのだ。
そして木の実がぶつかった私の頭は、ガツンと前世の記憶を思い出したのだった。
――❅・❅―――・―・-❅――
この世界は魔法が存在する。
流行りの小説や漫画みたいに、私はチートを授かって転生したわけではなかった。
生まれ変わる前に神様や女神みたいな存在との会話もなかった。
まぁ、魔法を使える人自体が貴重なのだが、私が使えた魔法と言えば少量の水を凍らせろといったささやかなもので、世界を魔王から救うといった強力な魔力も能力も授かってはいなかった。
しかも、産まれも王族や公爵など高い身分ではなく、王都でもそこそこ貧しい暮らしをしている平民の家だったのだ。貧乏子沢山とはよく言ったもので一番上の私を筆頭に、両親は九人もの子供を作っていて、それは今も現在進行形で行われている。母親は今、十人目を妊娠中だ。
容姿も絶世の美女でもなかった。神の色だけは珍しい薄色の髪だったが、どうせ紫色にするならこんな薄い色なんかではなく鮮やかな菫色が良かった。毛質も硬く太い、最悪だ。
顔だって鼻も少し低いし、目だって理想の位置よりも少し離れている。
能力も身分も平凡なら、容姿も平凡だ。
そう、私は異世界転生を果たしたとしてもただの市民、ここが乙女ゲームの世界だとしてもただのモブにしかすぎないのだ。しかも、チートも身分も美しい容姿も何一つ授かっていない、正真正銘のモブなのだ。逆転することもできない。
神様?ロクストシティリ神様?異世界転生をするならチートな能力とか、せめて高い身分を授けてくださればよかったのに。お約束が違うと思いますけれども?
そして、その日たまたま見かけたレオザルト殿下を見て、この世界がよりにもよってモブには全く優しくない「アイス・エンド・ワールド」のゲームの世界だと知ったのだ。なぜならこの世界は、主要キャラの身近にいるモブしか生き残れないのだから。
つまり私は、世界が暗黒に包まれたときに命を失う大勢のモブの一人だったのだ。
それとともに私の初恋の相手はなんといつも私を虐めているガキ大将のヘンリーだったのだ。
ヘンリーは近くの貴族の馬屋番をしている体格のいい男の子だ。
陽の光に照らされ黄金に見えた髪も、ありふれた茶髪で、ヘンリーは近くの貴族の馬屋番として働いている。あの日はたまたま馬に運動させるために野を掛けていただけだったのだ。
私は恋にも運命にも敗れたのだ。
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