18 / 18
シーズン1
16 ハロウィン③
しおりを挟むケリーの家は正に豪邸だった。現代モダン的な白い大きな豪邸だ。まるで美術館みたいなその家は、大きなプールが二つもある。ハロウィンの飾りも本格的で、たくさんのジャックランタンで作られたトンネルまであった。
そんな豪邸を前にすると、さやえんどうの格好がなんだか呼ばれたピエロのようだ。
「ねぇ。本当にこの格好でケリーのパーティーに行くの?」
「ん?何を不安がってるの?」
「そうだよ。たかがホームパーティーじゃないか」
ダメだ。この二人に何を言っても無駄なのだ。だって、ザックとジェイクはお金持ち、しかもアメリカで有名なお金持ちなのだ。お金持ち中のお金持ち。ザ・金持ち。何度も言うけど、金持ちなのだ。
「だって…」
「大丈夫だって」
頭がつながったままのさやえんどうでは私に分が悪い。私は連行される宇宙人の様にザックとジェイクにケリーの玄関の扉まで連行されてしまったのだった。
ザックが鳴らしたチャイムで、赤毛に黒のボディースーツを着たケリーがお迎えする。顔にはキラキラしたラメでハートが描かれていて、赤いボブのカツラはくるくる巻きのカール付きだ。確か、こんなアニメキャラクターがいたけどなんだったけな?
「よう…こ………」
ケリーの顔が顰め面へと変わる。こんな表情でも美人だなぁと、私は呑気に考えてしまう。
「私のパーティーにそんなダサい恰好で参加するつもり?いくらザックとジェイクでも許さないわよ」
「じゃあ…帰るか」
ザックがくるりと急に体を回すものだから、私の首があらぬ方向へと曲がる。
「グェ」
カエルのような声を出した私にケリーが威圧的に睨む。
「あなたは帰りたくないわよね」
えっ?どちらかと言ったら帰りたいですけど。だって、少し空いたドアから垣間見えたパーティーはまるでクラブみたいで、おしゃれなのだ。そんな中にさやえんどうの私たちは浮きまくるに決まっているもん。
中学生のパーティーなのにDJがいて怪しげな音楽をかけていて、ミラーボールはハロウィンカラーのオレンジと紫だ。様々な形のドラキュラが眠る棺桶までズラリと並べられて入れいる。スタッフは黒タイツに蛍光色の光る骨が描かれていて、暗い室内で見ると骸骨が給仕をしているように見えるのだ。
「えっ、私は…帰りt」ギロリとケリー。「たくありません!ぜひ、参加させてください」
「じゃあ、そんな衣装は無理だから早く着替えてきてね」
ケリーが優雅な仕草で示した先にはずらりと並んだお洒落なハロウィンのコスプレ衣装があった。
「でも、あなた達はこの衣装を着てね。そっちはちょっと…ねぇ!」
グイっと豆を取るようにケリーが私を鞘から引き抜き、ザックたちとは別の部屋へ押し込まれ「着替えて」と冷たく言い放たれ、ドアを閉められてしまったのだった。
ケリーに押し付けられた衣装を着て、会場へと向かう。
そこにはお洒落なアメリカンヒーローの衣装姿のザックとジェイクがいたのだ。ザックはパワースーツで戦う億万長者のアメリカンヒーローで、ジェイクは超人兵士のヒーローだ。
私はというと…ただのクマの着ぐるみだ。さやえんどうとそう変わらない。
「ケリーの奴、何を考えてるんだか」
ジェイクの先にはアメリカンヒーローのコスプレを着た人たちを強制的に着替えさせているようで、ここにいるアメリカンヒーローはザックとジェイクしかいない。もしかしたら、ケリーのコスプレもアメリカンヒーローなのかもしれない。
「まぁ、可愛いクマちゃんを引き連れてパーティーのご飯でも楽しみますか」
ケリーのハロウィンパーティーは飾りだけでなく、料理も豪華だった。しかもハロウィン使用の。
ミイラのホットドック。
様々なモンスターのピザ。
ジャックランタンのホットサンド。
人の指に見立てたニンジンのスティック。
スライスしたリンゴにはマシュマロが挟まっていて人の口に見える。などなど。
見るものすべてがハロウィン使用なのだ。しかも味も一流シェフが作っただけあって美味しかった。
夢中になって料理を食べていると、パーティーに参加している人々の中に双子がいることに気が付いた。
双子はケリーに招待状を貰っていないはずなのに、どうして参加できたのだろうか?
確か、ドラマでこの場面に似たエピソードがあったなぁ…。
ケリーのハロウィンパーティーに呼ばれなかった双子が、ハーティーに紛れ込むといった話だった。そして、パーティーに呼ばれなかった悔しさの仕返しでケリーのハロウィンパーティーのお化け屋敷を本物のお化けがいるお化け屋敷へと変えるという話だったような…。
もぐもぐと食べ物を食べながらドラマの内容を一生懸命思い出していると、大音量の音楽がかかっているにも関わらず絹を裂くような悲鳴が響き渡る。
「ぎゃああああああああああああああああ!」
どうやら双子はドラマのエピソード通りにケリーのお化け屋敷を本物の化け屋敷にしてしまったらしい。
だって、目の前にはいつものクスクスと笑う双子がいたのだから。
0
お気に入りに追加
16
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる