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シーズン1
13 自由の女神
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歴史のテストで私は「C⁺」を無事貰うことができた!私にしてはなかなかだと思う。
やったね!
そのご褒美と言ってジェイクが私をアメリカの自由の象徴である「自由の女神」に連れていってくれると言ってくれたのだ!
自由の女神があるリバティ島へはフェリーを使う。そのフェリーは午後よりも午前中の方が空いているとのことで、ジェイクに指定されてあたしは朝早く出かける準備をしていた。
少し前に流行ったおじチェックなベージュの七分丈のセットアップを選ぶ。中はシンプルに白のティシャツだ。小物は秋らしく色づき始めた葡萄を思わせる薄紫の物を選ぶ。靴も同じ薄紫色のショートブーツだ。
このフェミニンな服装なら着飾りすぎていなし、男の子と出かけるときの服装でも恥ずかしくないくらいは女性らしいと思う。
家のチャイムが鳴って、トレンパーさんがジェイクが着たことを大声で叫んでいる。
財布、日本のパスポートのコピー、スマホがしっかりとバックに入っていることを確認して部屋を出る。
玄関にはパジャマ姿の双子がいて、ホワイトスモーク色のトレーナにロールアップの六分丈のジーンズに黒のスニーカー姿のジェイクと何か話している。
「おはよう、ジェイク。出かける約束していたかしら?」
「おはよう、リサ、マミ。あ~、約束したのは君たちじゃなくて…ヤヨイの方なんだ。やぁ、おはよう、ヤヨイ」
ジェイクのあいさつで振り返った双子は忌々しげな表情を浮かべて私を睨んでいる。
「おはよう、ジェイク。待たせてごめんなさい」
双子たちの目を意識してジェイクが差し出した腕を取る。
心の中でアッカンベーをしてにこやかにドアを閉める。
悔しがる双子たちに何かされるのでは?と一瞬頭をよぎるが、ちっさい嫌がらせをしてくる双子たちがジェイクと出かける私に嫉妬していると思うとおかしかった。
これくらいはやり返さないとね!
ジェイクの家の車で送迎してくれるとのことだったが、ダメもとでニューヨークの地下鉄に慣れたいと言ったら優しいジェイクも付き合ってくれるとのことだった。
無事、駅にたどり着いて私は券売機でメトロカードを買おうと列に並ぶ。
「ヤヨイ。ニューヨークの地下鉄も最近、スマホで乗れるようになったんだよ」
ジェイクはスマホに「OMNY」をダウンロードしていたらしく、切符を買おうとしていた私に自分のスマホを振りながら教えてくれる。
「へぇ、そうなんだ。でも観光ブックで読んだ黄色のメトロカードが欲しくて。そのうち手に入らなくなりそうだから…」
「メトロカードなんて持ってどうするの?」
「ニューヨークぽっくっていいかなぁって。ほら、ニューヨークのタクシーって黄色でしょ?だから黄色のメトロカードもとってもニューヨークっぽいだもん!」
「そうかな?この最新の乗り方の方がいいと思うけどな」
「スマホ端末で電車に乗るのは日本ではもうとっくに常識だよ?」
「さすが機械大国日本だね」
券売機から吐き出されたメトロカードはペラペラの紙でできていて、日本のしっかりとした造りのICカードと違って、そっちの方が私にしたら目新しかった。
ジェイクが澄まし顔でスマホ端末を小さな檻のような回転ドアの改札に通す。
私だって澄まし顔でメトロカードを改札に通すが、バーが動かず改札を通ることができない。小さな液晶画面に「TOO FAST(早すぎ)」という文字が出ており、後ろの人に舌打ちされながらもう一度ゆっくりとメトロカードを通す。
にやつくジェイクはまるでザックのようで、やはり嫌な奴の親友なのだと実感した瞬間だった。
自由の女神の最寄り駅に到着し、公園内を少し歩きフェリーのチケットブースに到着する。
ジェイクは「Pre paid」と書かれた窓口に行き、印刷した紙をスタッフに見せる。
どうやらジェイクは事前に予約をしてくれていたらしい。
無事にフェリーに乗り込み、リバティ島に向かってフェリーが出発する。
私は徐々に大きくなる自由の女神に夢中になって、写真を撮る。
日本人カップルの写真を撮るのを手伝い、日本人カップルがお礼にと私とジェイクの写真を撮ってくれた。
「恋人ですか?」と、うらやましそうに話しかけられて笑って否定する。
ジェイクはアメリカでできた初めての友人だ。彼氏なんかにしたらもったいない。
フェリーが島に到着し、小さな船に乗っていたとは思えない人がフェリーから吐き出される。
ジェイクの案内で自由の女神の周りを一周する。下から見上げる自由の女神が珍しくて、何枚も写真を撮る。
そんな私をジェイクは笑って見ていた。
すぐに一周回ってしまい、ギフトショップに行こうとしていた私の手をジェイクが掴み、白いテントの中へと連れていかれる。
「えっ?何?」
「自由の女神、登ってみたくない?」
「えっ?登れるの?」
「もちろん」
手にリストバンドを付けられて、スマホ以外の荷物をコインロッカーに預ける。
並んでいる五十人くらいの人々を追い越して私たちは優先的に先に進んでいく。奥には実物大のトーチのオブジェがあって、こんなに大きなものを自由の女神は持っているのだと認識させられた。
エレベーターに乗り自由の女神の台座へと到着する。
台座からはニューヨークの街並みを見ることができ、マンハッタンのビルの大きさを理解する。手にニューヨークのビルを乗せて、写真を撮る。遠近法って素敵だ。
台座を一周し終えると、リストバンドをチェックした係員に他の人たちと別の入口へと案内される。
狭くて急な螺旋階段を登る。そして揺れるためとても怖い。
螺旋階段の先には自由の女神の王冠部分で、小さなスペースがあった。係員にジェイクとの写真を撮ってもらい小さな窓から自由の女神の手を見ることができた。
再び揺れる螺旋階段を怖い気持ちを抑えて降りていく。登る時よりも降りるときの方が下が見えて怖いのだ。
階段を登り削られた体力をカフェで補う。冷たい飲み物が汗ばんだ体に染み渡る。
「どうだった?楽しかった?」
「とっても楽しかった!じゃあ、今日のことを日記にして提出して?僕も日本語で日記に書くから。ヤヨイは自由の女神の歴史とかも一緒に記述すること」
「はい!わかりました、先生っ!」
ジェイクが今日の記念にショップで売っていたマグカップをプレゼントしてくれた。
家に帰ったら今日の疲れを癒してくれる優しいココアを飲もう。ジェイクみたいな優しい味のココアだ。
自宅まで送ってくれたジェイクにお礼を言って、別れる。
双子が腕を組んで部屋の中で待っていて、私を問いただす。
「ジェイクとどこに行ったの?」
マミが私の袋に気が付きリサに教える。
「自由の女神を見に行ったの?」
「そう。行ってみたいって言ったらジェイクが案内してくれたの」
「なんだ、子守か」
急に興味を失い、双子たちは週明けの学校のために爪のネイルを新しく塗りかえることに夢中になる。
クローゼットである自分の部屋へ戻る。
今日の出来事を話したくても話す人が家にもいない。スマホをスクロールしてもやはりいない。…ザックは……いやいやいやいやいや、やめておこう。
私は久しぶりに写真に特化したSNSのアプリを開く。そして、今日取った写真を載せていく。もちろん、ジェイクとの写真は載せなかった。日本の友達に勘違いされたらたまらないから。私と自由の女神の写真、下から見上げた自由の女神の写真、手に載せたマンハッタンのビルの写真、王冠内の写真を投稿する。
投稿を終え、さっきからずっと不満げに鳴くジェムのゲージの蓋を開ける。
ジェムに「ただいま」と言って、少しジェムとのスキンシップを楽しむ。ジェムは迷惑そうに見える表情を浮かべていたけど、逃げようとはしなかった。
ジェムをゲージに戻し、ジェムのお土産に買った自由の女神の小さなフィギュアをゲージ内に置く。
ジェムはさっそく自由の女神に飛びつき、自由の女神を倒してしまった。まるで、ぼくには自由がないと言っているようだ。
「デモ活動しているつもり?」
「そうだ」というようにゲコっと鳴く。
シャワーですっきりして、ジェイクがくれたマグカップにココアを淹れる。
ココアを飲みスマホを確認すると、さっそく投稿した写真に日本の友達からコメントあった。
スクロールして友達がくれたコメントを読んでいく。
“全然更新しないから、どうしたのか心配したんだよ”
“元気そうで安心した”
そういえば、アメリカに来て初めての投稿だったかも。日本の友達に家族に馴染めず、仲のいい友達がいないことを知られたくなくてずっと更新していなかったのだ。
“自由の女神に行ったんだね!クランチまで登るのに数か月まえから予約が必要なんでしょ?”
そのコメントが気になって調べてみると、クランチの部分に上るには2,3か月前からチケットを購入する必要があったみたいだ。
私がジェイクと出会ったのも2,3か月前で、ジェイクは私が「自由の女神に行きたい」と言った頃から予約を取ってくれたのだ。
一口飲んだココアは甘さが少し足りなかった。
やったね!
そのご褒美と言ってジェイクが私をアメリカの自由の象徴である「自由の女神」に連れていってくれると言ってくれたのだ!
自由の女神があるリバティ島へはフェリーを使う。そのフェリーは午後よりも午前中の方が空いているとのことで、ジェイクに指定されてあたしは朝早く出かける準備をしていた。
少し前に流行ったおじチェックなベージュの七分丈のセットアップを選ぶ。中はシンプルに白のティシャツだ。小物は秋らしく色づき始めた葡萄を思わせる薄紫の物を選ぶ。靴も同じ薄紫色のショートブーツだ。
このフェミニンな服装なら着飾りすぎていなし、男の子と出かけるときの服装でも恥ずかしくないくらいは女性らしいと思う。
家のチャイムが鳴って、トレンパーさんがジェイクが着たことを大声で叫んでいる。
財布、日本のパスポートのコピー、スマホがしっかりとバックに入っていることを確認して部屋を出る。
玄関にはパジャマ姿の双子がいて、ホワイトスモーク色のトレーナにロールアップの六分丈のジーンズに黒のスニーカー姿のジェイクと何か話している。
「おはよう、ジェイク。出かける約束していたかしら?」
「おはよう、リサ、マミ。あ~、約束したのは君たちじゃなくて…ヤヨイの方なんだ。やぁ、おはよう、ヤヨイ」
ジェイクのあいさつで振り返った双子は忌々しげな表情を浮かべて私を睨んでいる。
「おはよう、ジェイク。待たせてごめんなさい」
双子たちの目を意識してジェイクが差し出した腕を取る。
心の中でアッカンベーをしてにこやかにドアを閉める。
悔しがる双子たちに何かされるのでは?と一瞬頭をよぎるが、ちっさい嫌がらせをしてくる双子たちがジェイクと出かける私に嫉妬していると思うとおかしかった。
これくらいはやり返さないとね!
ジェイクの家の車で送迎してくれるとのことだったが、ダメもとでニューヨークの地下鉄に慣れたいと言ったら優しいジェイクも付き合ってくれるとのことだった。
無事、駅にたどり着いて私は券売機でメトロカードを買おうと列に並ぶ。
「ヤヨイ。ニューヨークの地下鉄も最近、スマホで乗れるようになったんだよ」
ジェイクはスマホに「OMNY」をダウンロードしていたらしく、切符を買おうとしていた私に自分のスマホを振りながら教えてくれる。
「へぇ、そうなんだ。でも観光ブックで読んだ黄色のメトロカードが欲しくて。そのうち手に入らなくなりそうだから…」
「メトロカードなんて持ってどうするの?」
「ニューヨークぽっくっていいかなぁって。ほら、ニューヨークのタクシーって黄色でしょ?だから黄色のメトロカードもとってもニューヨークっぽいだもん!」
「そうかな?この最新の乗り方の方がいいと思うけどな」
「スマホ端末で電車に乗るのは日本ではもうとっくに常識だよ?」
「さすが機械大国日本だね」
券売機から吐き出されたメトロカードはペラペラの紙でできていて、日本のしっかりとした造りのICカードと違って、そっちの方が私にしたら目新しかった。
ジェイクが澄まし顔でスマホ端末を小さな檻のような回転ドアの改札に通す。
私だって澄まし顔でメトロカードを改札に通すが、バーが動かず改札を通ることができない。小さな液晶画面に「TOO FAST(早すぎ)」という文字が出ており、後ろの人に舌打ちされながらもう一度ゆっくりとメトロカードを通す。
にやつくジェイクはまるでザックのようで、やはり嫌な奴の親友なのだと実感した瞬間だった。
自由の女神の最寄り駅に到着し、公園内を少し歩きフェリーのチケットブースに到着する。
ジェイクは「Pre paid」と書かれた窓口に行き、印刷した紙をスタッフに見せる。
どうやらジェイクは事前に予約をしてくれていたらしい。
無事にフェリーに乗り込み、リバティ島に向かってフェリーが出発する。
私は徐々に大きくなる自由の女神に夢中になって、写真を撮る。
日本人カップルの写真を撮るのを手伝い、日本人カップルがお礼にと私とジェイクの写真を撮ってくれた。
「恋人ですか?」と、うらやましそうに話しかけられて笑って否定する。
ジェイクはアメリカでできた初めての友人だ。彼氏なんかにしたらもったいない。
フェリーが島に到着し、小さな船に乗っていたとは思えない人がフェリーから吐き出される。
ジェイクの案内で自由の女神の周りを一周する。下から見上げる自由の女神が珍しくて、何枚も写真を撮る。
そんな私をジェイクは笑って見ていた。
すぐに一周回ってしまい、ギフトショップに行こうとしていた私の手をジェイクが掴み、白いテントの中へと連れていかれる。
「えっ?何?」
「自由の女神、登ってみたくない?」
「えっ?登れるの?」
「もちろん」
手にリストバンドを付けられて、スマホ以外の荷物をコインロッカーに預ける。
並んでいる五十人くらいの人々を追い越して私たちは優先的に先に進んでいく。奥には実物大のトーチのオブジェがあって、こんなに大きなものを自由の女神は持っているのだと認識させられた。
エレベーターに乗り自由の女神の台座へと到着する。
台座からはニューヨークの街並みを見ることができ、マンハッタンのビルの大きさを理解する。手にニューヨークのビルを乗せて、写真を撮る。遠近法って素敵だ。
台座を一周し終えると、リストバンドをチェックした係員に他の人たちと別の入口へと案内される。
狭くて急な螺旋階段を登る。そして揺れるためとても怖い。
螺旋階段の先には自由の女神の王冠部分で、小さなスペースがあった。係員にジェイクとの写真を撮ってもらい小さな窓から自由の女神の手を見ることができた。
再び揺れる螺旋階段を怖い気持ちを抑えて降りていく。登る時よりも降りるときの方が下が見えて怖いのだ。
階段を登り削られた体力をカフェで補う。冷たい飲み物が汗ばんだ体に染み渡る。
「どうだった?楽しかった?」
「とっても楽しかった!じゃあ、今日のことを日記にして提出して?僕も日本語で日記に書くから。ヤヨイは自由の女神の歴史とかも一緒に記述すること」
「はい!わかりました、先生っ!」
ジェイクが今日の記念にショップで売っていたマグカップをプレゼントしてくれた。
家に帰ったら今日の疲れを癒してくれる優しいココアを飲もう。ジェイクみたいな優しい味のココアだ。
自宅まで送ってくれたジェイクにお礼を言って、別れる。
双子が腕を組んで部屋の中で待っていて、私を問いただす。
「ジェイクとどこに行ったの?」
マミが私の袋に気が付きリサに教える。
「自由の女神を見に行ったの?」
「そう。行ってみたいって言ったらジェイクが案内してくれたの」
「なんだ、子守か」
急に興味を失い、双子たちは週明けの学校のために爪のネイルを新しく塗りかえることに夢中になる。
クローゼットである自分の部屋へ戻る。
今日の出来事を話したくても話す人が家にもいない。スマホをスクロールしてもやはりいない。…ザックは……いやいやいやいやいや、やめておこう。
私は久しぶりに写真に特化したSNSのアプリを開く。そして、今日取った写真を載せていく。もちろん、ジェイクとの写真は載せなかった。日本の友達に勘違いされたらたまらないから。私と自由の女神の写真、下から見上げた自由の女神の写真、手に載せたマンハッタンのビルの写真、王冠内の写真を投稿する。
投稿を終え、さっきからずっと不満げに鳴くジェムのゲージの蓋を開ける。
ジェムに「ただいま」と言って、少しジェムとのスキンシップを楽しむ。ジェムは迷惑そうに見える表情を浮かべていたけど、逃げようとはしなかった。
ジェムをゲージに戻し、ジェムのお土産に買った自由の女神の小さなフィギュアをゲージ内に置く。
ジェムはさっそく自由の女神に飛びつき、自由の女神を倒してしまった。まるで、ぼくには自由がないと言っているようだ。
「デモ活動しているつもり?」
「そうだ」というようにゲコっと鳴く。
シャワーですっきりして、ジェイクがくれたマグカップにココアを淹れる。
ココアを飲みスマホを確認すると、さっそく投稿した写真に日本の友達からコメントあった。
スクロールして友達がくれたコメントを読んでいく。
“全然更新しないから、どうしたのか心配したんだよ”
“元気そうで安心した”
そういえば、アメリカに来て初めての投稿だったかも。日本の友達に家族に馴染めず、仲のいい友達がいないことを知られたくなくてずっと更新していなかったのだ。
“自由の女神に行ったんだね!クランチまで登るのに数か月まえから予約が必要なんでしょ?”
そのコメントが気になって調べてみると、クランチの部分に上るには2,3か月前からチケットを購入する必要があったみたいだ。
私がジェイクと出会ったのも2,3か月前で、ジェイクは私が「自由の女神に行きたい」と言った頃から予約を取ってくれたのだ。
一口飲んだココアは甘さが少し足りなかった。
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