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episode.11 復讐②
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*
次の日、ロレンツォは風邪をひいて寝込んでいた。雨に濡れたまま何時間もソファで呆然としていたのだから当然だ。
そんなロレンツォの見舞いにベルナルドがやって来る。
彼は言った。見舞いの品の果物を器用に剥きながら、「カルロが追い出されたんだってな」と。
「構成員はみんな知ってるぜ。カリーナに裏切り者だつって追い出されたって。カリーナは殺さなくていいと言ってるが、他の奴らは戸惑ってる。あのカルロがカリーナを裏切ったことにも、カリーナが裏切り者を殺さないことにもな」
「お前はどうなんだ……」
高熱に浮かされながらも尋ねれば、ベルナルドは小さく笑った。ナイフが白熱灯を反射し、妖しく光る。そのナイフを逆手に持つと、剥きかけの林檎に勢いよく突き刺した。
「さあ、どうだろうな」
美しい男が艶美に笑い、果物に八つ当たりをする。
この光景に、ただでさえ熱で痛む頭がよけいに痛くなった。
「カルロが兄貴殺しにまで関わってるってのはまだ決まってないだろう」
「ああ、そうだな。ロレンツォの言う通りだ」
「……変なこと考えんなよ」
「変なことって?」
快活に笑うベルナルドは、「そういえば」と言って懐に手を伸ばす。「食べもんとは別に、お前に見舞いの品があるんだ」
そう言って取り出されたのは、ベルナルドが愛用しているコルト・ガバメントだ。この時代では少々古臭い銃だが、問題なく使えるほど手入れされている。
ロレンツォの手に銃を握らせたベルナルドは、「お前にやる」と短く言った。
「やるって……なんで」
「俺は他にも持ってるし、こっちはもういらねえからな。客船でチェルレッティをボコってくれた礼もしてなかったし、気にせず受け取ってくれ」
「……おい、ベルナルド」
「どう使うかはお前の自由だ。カリーナを殺す為でも、守る為でもいい。スタンフォードを殺してくれたら上出来だ」
ほの暗く笑うベルナルドの目には様々な感情が渦巻いていた。
続けて質問しようとするロレンツォをさえぎり、彼は用事があると言って部屋を出て行った。取り残されたロレンツォは、重く手のひらに沈む拳銃を見つめる。熱で浮かされた体では、彼を追いかけることも、止めることも出来なかった。
カルロが死んだ、というニュースが島中を巡ったのは、次の日の朝のことだ。
寝込んでいたロレンツォが知ったのは、彼の死から実に三日後だった。
*
カルロ・マルディーニが殺された。享年二十九歳である。
ファミリーを追い出された彼の死体は、イルマーレ県インベルの教会で見つかった。そこはカルロの出身地であり、奇しくもカルロの両親と、アルベルト・ゴッティの葬式が行われたのと同じ場所であった。
犯行時刻は二十二時過ぎと思われる。使用された武器は、現場に残った弾丸からコルト・ガバメントであることがわかった。
犯行現場は聖堂だ。神が見守る中で、装弾数八弾全てが彼の胸部に撃ち込まれていた。
その死体には抵抗をした後はなく、原形を留めない程見るも無惨であったらしい。また死体を発見した牧師は、見せしめの死体というより、私怨による殺しに見えたと証言している。
この事件から六時間後、ラクリマ県の県都にある屋敷でも、とある男の死体が見つかった。だがこの死体は、その屋敷の特殊性により世間に公表されることはなかった。
死んだのはベルナルド・スコッティ。享年二十二歳。
彼は地下の拷問部屋で拳銃による自殺をはかった。
その場所もまた、アルベルト・ゴッティが殺された場所であった。
*
体調が回復すると、すぐにカリーナの護衛として連れ回された。今までこの仕事にあたっていたカルロは裏切り者として追い出された上、イルマーレの教会で殺されている。ベルナルドも屋敷の地下で死んだのだから、護衛の人手が足りないのだ。
カリーナは親しかった二人の死にも、一切動揺した様子はなかった。
いつも通り真っ直ぐに背中を伸ばし、ハイヒールを鳴らしながら颯爽と歩く。その後ろをロレンツォがついて回った。
いつもより分厚く塗られたファンデーションにも、島民から向けられる侮蔑の視線に歪められる頬にも、何も言わない。ただ黙って、前と変わらずに彼女を守る。
そんないつも通りの日々を二週間ばかり過ごした夜、カリーナに頼まれていた精神刺激薬とウイスキーを持って執務室を訪れる。
カリーナを殺しかけたあの日から、この部屋が嫌いで堪らなくなった。だがその感情は無表情の下に隠し、平然と部屋の扉を叩く。
「カポ、頼まれていた薬を持ってきました」
だがいくら待とうが返事が返ってこない。ロレンツォは溜め息をつき、ドアノブを捻る。どうせまた、体力が尽きて気絶するように眠っているのだろう。
案の定カリーナは机に突っ伏していた。腕の上に柔らかい髪が広がっている。小さく聞こえる寝息には、呻き声も混じっていた。
うなされているのか、と躊躇った。起こしてやるべきだろうが、ようやく眠れた彼女を起こすのは偲びない。どうしたものかと悩む間に、カリーナが小さく呟いた。
「カルロ……」
悲痛に満ちたその声に、心臓を鷲掴みにされた衝撃を覚える。堪らずワア! と叫び出したくなった。
あの男が死んでも、カリーナの中には相も変わらずカルロの姿が浮かんでいるのか! そうして相も変わらず、あの男は後悔や罪悪感という念でカリーナの心を支配しているというのか!
「カポ、起きてください」
「んッ……」
「起きてください、カポ!」
衝動のまま、乱暴にカリーナの肩を揺らす。刹那カリーナは飛び上がるように上半身を持ち上げた。
唖然とした彼女の顔は蒼白で、大量の脂汗を浮かべている。その中で浮かび上がる、涙で濡れた赤い瞳に心をかき乱された。
「ロレンツォ……?」
「うなされてましたよ。悪い夢でも見ていたんですか?」
我ながら完璧な愛想笑いを浮かべる。そんなロレンツォに答えず、カリーナは額に手のひらを押しつけた。
「悪い、寝ていたか……」
「今日はもう寝られたらどうですか? 急ぎの仕事もないですし、明日でも十分間に合うと思いますが」
「大丈夫だ、私に構うな」
掠れた声はロレンツォを拒絶する色を含んでいた。
この二週間でカリーナは随分とやつれてしまった。睡眠も食事もまともにとらず、何かから逃げるように仕事へ没頭しているのだ。
だがいくら仕事に励もうが、テレジオファミリーを取り巻く環境は何も変わらない。むしろアンダーボスが裏切り者として追放されたこと、人望のあったカポ・レジームが不審な失踪をしたことにより、カリーナが窮地に追いやられている空気があった。
「また、眠れないんですか」
「……」
「それとも悪い夢を見るから寝たくないんですか? 貴方の抱き枕がいなくなってしまったから? 寝酒に付き合ってくれる蟒蛇がいなくなったから?」
「……それ以上何か言えば、お前でも容赦しないぞ」
「ええ、ええ、結構です! 俺のことを追放するでも、殺すでも好きなようにしなさい! そうしたが最後、この屋敷には貴方が心許せる人間は誰一人いなくなりますがね!」
「黙れッ!」
腹の底から叫ぶカリーナは、勢いよく立ち上がるとロレンツォの口を手のひらで抑えた。
泣きそうな目が、精一杯の強がりを偽って睨みあげてくる。弱りきった彼女に心が揺さぶられた。
こんな女、ロレンツォが殺したい女じゃない。こんな女が、兄の仇であるはずがない。
「カポ、もう休んでください」
ロレンツォの口をふさぐ腕を優しく取り払う。それでもカリーナは何も言わなかった。真っ赤になった瞳を揺らし、ロレンツォだけをその双眸に映す。
「俺が一緒に寝ますから。カルロの代わりでも、ベルナルドの代わりでも、なんでも務めますから。貴方を心配させてください」
「……私を殺すことは諦めたのか? 私が弱った方が殺しやすいだろう」
「俺と死んでくれないアンタなんか、殺す価値もありませんよ」
苦しく笑えば、カリーナも喉の奥に言葉を溜め込んだ。
重い空気が二人を包む。息苦しく、ひとつ身じろぐのすら億劫だ。どこで間違えて、こんなことになってしまったのか。
いつかのように、カリーナの部屋に二人で入る。カリーナが寝る支度をする間、ロレンツォは明日のカリーナの為に書類の整理をしていた。
風呂から上がったカリーナが化粧台に向かう後ろで、彼女の髪を乾かしてやる。ベッドに潜る時は、手枷なんかつけはしない。代わりにピッタリと抱きしめ合い、お互いにベッドを分け与えて眠気を待った。
胸に抱えたカリーナが言う。「カルロは」と。またカルロの話だ。だがロレンツォは不快感は示さなかった。
「カルロは、私の唯一の味方だったんだ」
「俺もカポの味方ですよ」
「嫌なことがあって泣いてると、あいつはいつも私を慰めてくれた」
「俺もカポが泣いていたら涙を拭ってあげます」
「ベルナルドも、あれで感情の機微に気づくことに聡い奴だった」
「俺もカポの変化ならどんな小さなことでもすぐに気づけますよ」
「あいつの見つけてくる酒はどれも美味かったな」
「俺もカポの為なら、地球の裏側にまでいい酒を探しに行きます」
この相槌にカリーナがクスリと笑う。
それからロレンツォの胸に額をこすりつけ、ことさらか細い声で囁いた。
「あいつらが死んだのは、私のせいだ」
「……俺は絶対に、貴方を置いて死にませんよ」
それだけ返すと、カリーナの背中を優しく撫でる。
「さあ、もう寝ましょう」と言ってカリーナを抱きしめた。空は随分と、明るみを帯び始めている。
次の日、ロレンツォは風邪をひいて寝込んでいた。雨に濡れたまま何時間もソファで呆然としていたのだから当然だ。
そんなロレンツォの見舞いにベルナルドがやって来る。
彼は言った。見舞いの品の果物を器用に剥きながら、「カルロが追い出されたんだってな」と。
「構成員はみんな知ってるぜ。カリーナに裏切り者だつって追い出されたって。カリーナは殺さなくていいと言ってるが、他の奴らは戸惑ってる。あのカルロがカリーナを裏切ったことにも、カリーナが裏切り者を殺さないことにもな」
「お前はどうなんだ……」
高熱に浮かされながらも尋ねれば、ベルナルドは小さく笑った。ナイフが白熱灯を反射し、妖しく光る。そのナイフを逆手に持つと、剥きかけの林檎に勢いよく突き刺した。
「さあ、どうだろうな」
美しい男が艶美に笑い、果物に八つ当たりをする。
この光景に、ただでさえ熱で痛む頭がよけいに痛くなった。
「カルロが兄貴殺しにまで関わってるってのはまだ決まってないだろう」
「ああ、そうだな。ロレンツォの言う通りだ」
「……変なこと考えんなよ」
「変なことって?」
快活に笑うベルナルドは、「そういえば」と言って懐に手を伸ばす。「食べもんとは別に、お前に見舞いの品があるんだ」
そう言って取り出されたのは、ベルナルドが愛用しているコルト・ガバメントだ。この時代では少々古臭い銃だが、問題なく使えるほど手入れされている。
ロレンツォの手に銃を握らせたベルナルドは、「お前にやる」と短く言った。
「やるって……なんで」
「俺は他にも持ってるし、こっちはもういらねえからな。客船でチェルレッティをボコってくれた礼もしてなかったし、気にせず受け取ってくれ」
「……おい、ベルナルド」
「どう使うかはお前の自由だ。カリーナを殺す為でも、守る為でもいい。スタンフォードを殺してくれたら上出来だ」
ほの暗く笑うベルナルドの目には様々な感情が渦巻いていた。
続けて質問しようとするロレンツォをさえぎり、彼は用事があると言って部屋を出て行った。取り残されたロレンツォは、重く手のひらに沈む拳銃を見つめる。熱で浮かされた体では、彼を追いかけることも、止めることも出来なかった。
カルロが死んだ、というニュースが島中を巡ったのは、次の日の朝のことだ。
寝込んでいたロレンツォが知ったのは、彼の死から実に三日後だった。
*
カルロ・マルディーニが殺された。享年二十九歳である。
ファミリーを追い出された彼の死体は、イルマーレ県インベルの教会で見つかった。そこはカルロの出身地であり、奇しくもカルロの両親と、アルベルト・ゴッティの葬式が行われたのと同じ場所であった。
犯行時刻は二十二時過ぎと思われる。使用された武器は、現場に残った弾丸からコルト・ガバメントであることがわかった。
犯行現場は聖堂だ。神が見守る中で、装弾数八弾全てが彼の胸部に撃ち込まれていた。
その死体には抵抗をした後はなく、原形を留めない程見るも無惨であったらしい。また死体を発見した牧師は、見せしめの死体というより、私怨による殺しに見えたと証言している。
この事件から六時間後、ラクリマ県の県都にある屋敷でも、とある男の死体が見つかった。だがこの死体は、その屋敷の特殊性により世間に公表されることはなかった。
死んだのはベルナルド・スコッティ。享年二十二歳。
彼は地下の拷問部屋で拳銃による自殺をはかった。
その場所もまた、アルベルト・ゴッティが殺された場所であった。
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体調が回復すると、すぐにカリーナの護衛として連れ回された。今までこの仕事にあたっていたカルロは裏切り者として追い出された上、イルマーレの教会で殺されている。ベルナルドも屋敷の地下で死んだのだから、護衛の人手が足りないのだ。
カリーナは親しかった二人の死にも、一切動揺した様子はなかった。
いつも通り真っ直ぐに背中を伸ばし、ハイヒールを鳴らしながら颯爽と歩く。その後ろをロレンツォがついて回った。
いつもより分厚く塗られたファンデーションにも、島民から向けられる侮蔑の視線に歪められる頬にも、何も言わない。ただ黙って、前と変わらずに彼女を守る。
そんないつも通りの日々を二週間ばかり過ごした夜、カリーナに頼まれていた精神刺激薬とウイスキーを持って執務室を訪れる。
カリーナを殺しかけたあの日から、この部屋が嫌いで堪らなくなった。だがその感情は無表情の下に隠し、平然と部屋の扉を叩く。
「カポ、頼まれていた薬を持ってきました」
だがいくら待とうが返事が返ってこない。ロレンツォは溜め息をつき、ドアノブを捻る。どうせまた、体力が尽きて気絶するように眠っているのだろう。
案の定カリーナは机に突っ伏していた。腕の上に柔らかい髪が広がっている。小さく聞こえる寝息には、呻き声も混じっていた。
うなされているのか、と躊躇った。起こしてやるべきだろうが、ようやく眠れた彼女を起こすのは偲びない。どうしたものかと悩む間に、カリーナが小さく呟いた。
「カルロ……」
悲痛に満ちたその声に、心臓を鷲掴みにされた衝撃を覚える。堪らずワア! と叫び出したくなった。
あの男が死んでも、カリーナの中には相も変わらずカルロの姿が浮かんでいるのか! そうして相も変わらず、あの男は後悔や罪悪感という念でカリーナの心を支配しているというのか!
「カポ、起きてください」
「んッ……」
「起きてください、カポ!」
衝動のまま、乱暴にカリーナの肩を揺らす。刹那カリーナは飛び上がるように上半身を持ち上げた。
唖然とした彼女の顔は蒼白で、大量の脂汗を浮かべている。その中で浮かび上がる、涙で濡れた赤い瞳に心をかき乱された。
「ロレンツォ……?」
「うなされてましたよ。悪い夢でも見ていたんですか?」
我ながら完璧な愛想笑いを浮かべる。そんなロレンツォに答えず、カリーナは額に手のひらを押しつけた。
「悪い、寝ていたか……」
「今日はもう寝られたらどうですか? 急ぎの仕事もないですし、明日でも十分間に合うと思いますが」
「大丈夫だ、私に構うな」
掠れた声はロレンツォを拒絶する色を含んでいた。
この二週間でカリーナは随分とやつれてしまった。睡眠も食事もまともにとらず、何かから逃げるように仕事へ没頭しているのだ。
だがいくら仕事に励もうが、テレジオファミリーを取り巻く環境は何も変わらない。むしろアンダーボスが裏切り者として追放されたこと、人望のあったカポ・レジームが不審な失踪をしたことにより、カリーナが窮地に追いやられている空気があった。
「また、眠れないんですか」
「……」
「それとも悪い夢を見るから寝たくないんですか? 貴方の抱き枕がいなくなってしまったから? 寝酒に付き合ってくれる蟒蛇がいなくなったから?」
「……それ以上何か言えば、お前でも容赦しないぞ」
「ええ、ええ、結構です! 俺のことを追放するでも、殺すでも好きなようにしなさい! そうしたが最後、この屋敷には貴方が心許せる人間は誰一人いなくなりますがね!」
「黙れッ!」
腹の底から叫ぶカリーナは、勢いよく立ち上がるとロレンツォの口を手のひらで抑えた。
泣きそうな目が、精一杯の強がりを偽って睨みあげてくる。弱りきった彼女に心が揺さぶられた。
こんな女、ロレンツォが殺したい女じゃない。こんな女が、兄の仇であるはずがない。
「カポ、もう休んでください」
ロレンツォの口をふさぐ腕を優しく取り払う。それでもカリーナは何も言わなかった。真っ赤になった瞳を揺らし、ロレンツォだけをその双眸に映す。
「俺が一緒に寝ますから。カルロの代わりでも、ベルナルドの代わりでも、なんでも務めますから。貴方を心配させてください」
「……私を殺すことは諦めたのか? 私が弱った方が殺しやすいだろう」
「俺と死んでくれないアンタなんか、殺す価値もありませんよ」
苦しく笑えば、カリーナも喉の奥に言葉を溜め込んだ。
重い空気が二人を包む。息苦しく、ひとつ身じろぐのすら億劫だ。どこで間違えて、こんなことになってしまったのか。
いつかのように、カリーナの部屋に二人で入る。カリーナが寝る支度をする間、ロレンツォは明日のカリーナの為に書類の整理をしていた。
風呂から上がったカリーナが化粧台に向かう後ろで、彼女の髪を乾かしてやる。ベッドに潜る時は、手枷なんかつけはしない。代わりにピッタリと抱きしめ合い、お互いにベッドを分け与えて眠気を待った。
胸に抱えたカリーナが言う。「カルロは」と。またカルロの話だ。だがロレンツォは不快感は示さなかった。
「カルロは、私の唯一の味方だったんだ」
「俺もカポの味方ですよ」
「嫌なことがあって泣いてると、あいつはいつも私を慰めてくれた」
「俺もカポが泣いていたら涙を拭ってあげます」
「ベルナルドも、あれで感情の機微に気づくことに聡い奴だった」
「俺もカポの変化ならどんな小さなことでもすぐに気づけますよ」
「あいつの見つけてくる酒はどれも美味かったな」
「俺もカポの為なら、地球の裏側にまでいい酒を探しに行きます」
この相槌にカリーナがクスリと笑う。
それからロレンツォの胸に額をこすりつけ、ことさらか細い声で囁いた。
「あいつらが死んだのは、私のせいだ」
「……俺は絶対に、貴方を置いて死にませんよ」
それだけ返すと、カリーナの背中を優しく撫でる。
「さあ、もう寝ましょう」と言ってカリーナを抱きしめた。空は随分と、明るみを帯び始めている。
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