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スクナビコナと腰折れスズメ⑤―アマノジャクとドブヒコ!〝懲りる〟という考えは絶対にない地上最低の悪党!!―

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「グハッ!」
『ゲブッ!』

 スクナビコナとチュルヒコがその場を去ってしばらくしてから、アマノジャクとドブヒコは目を覚ます。

「…俺たちなんでこんなところで寝てるんだ?」
『…チュウ、なんでだ?』

 アマノジャクとドブヒコは起き上がると、過去の記憶を必死にたどろうとする。

「…確かスクナビコナとチュルヒコのヤツがここに来て……」
『…つづらの蓋を開けると突然中が強烈に光って……』

 アマノジャクもドブヒコも腕を組みながら必死に考える。

「…アーーーーーーーー!」

 そして一人と一匹は同時に大声で叫ぶ。

「思い出したぞ!俺たちはつづらの中の光を見て気絶しちまったんだ!」
『ククッ、俺たちが気を失っている間にあいつらはどこへ行ったんだ!』

 そうしてスクナビコナとチュルヒコの姿を見つけようと、必死に周囲を探す。

『ククッ、あいつらどこにもいない!』
「クソッ、俺たちが寝てる間に逃げやがったのか!どこまでも汚いやつらだ!」

 アマノジャクたちはスクナビコナとチュルヒコがいなくなったことがわかると、一人と一匹を罵り始める。

『クククッ、アマノジャク様!あいつらつづらの中身を独り占めする気だ!どうしやす?』
「…ふん、安心しろ、ドブヒコ。俺にいい考えがある」

 そう言うと、アマノジャクは相変わらずいきり立っているドブヒコに耳打ちして〝考え〟を伝える。

「ふふん、こんなこともあろうかとスクナのヤツから〝つづらの手に入れ方〟を聞き出しておいたからな!」
『そうか!あいつらのやり方をまねればつづらも手に入るわけだ!』
「そういうことだ。あいつらは一応高天原からやって来たやつらだからな。つづらを奪い取るのは簡単じゃない。だが相手がスズメどもなら……」
『クックックッ、もはやお宝は手に入れたも同然だ!さすがアマノジャク様!この世で一番賢いお方!地上の絶対王者!偉大なる英知!超絶天才!』

 ドブヒコはあらゆる言葉を使ってドブヒコを褒め称える。

「フッハッハッハッ!ドブヒコよ、今さら当たり前のことばかり言うな。さあこれからアマノジャク様の〝勝利の方程式〟を見せつけてやる!スクナビコナとチュルヒコなんぞあっさり超えてやる!」
『クックックッ、こりゃあ楽しみだ!』
「さあ、まずはスズメどもがいる森へと向かうぞ!」
『ヘイッ!』

 こうしてアマノジャクとドブヒコは近くの森へと向かうのだった。


「…確かスクナの話によればこの辺りに大きな木があるはずだが……」
『…ククッ、…あっ、ひょっとしてあれでは……?』

 森の中でスズメたちのすみかを探していたアマノジャクとドブヒコはついに大木を見つける。

「フハハッ、ついに見つけたぞ!」
『アマノジャク様、入り口はここみたいですぜ』

 ドブヒコは目ざとくスズメのすみかへの入り口を見つけてしまう。

「フッハッハッハッ。そうかこの中につづらがあるわけだな。さあ、ドブヒコよ。さっさと中に入るぞ!」

 洞を見つけるとアマノジャクはすぐに中に入り始める。

『ヘイヨッ!クックックッ、ついにお宝が手に入るわけだ』

 ドブヒコもそのあとから続くのだった。


『…これはこれはアマノジャク様、ド……』
「フッハッハッハッ、スズメども!アマノジャク様が来てやったぜ!」
『ドブヒコも来やしたぜ!』

 アマノジャクとドブヒコはスズメヒコのあいさつを遮り、洞の中にずかずかと足を踏み入れる。そのあまりに横柄な態度に中にいるスズメたちは全員閉口する。

『…アマノジャク様、ドブヒコ様、本日は我々のすみかにお越しいただき、まことにありがとうございます……』

 スズメヒコは気を取り直して、一人と一匹に丁寧にあいさつする。

「ハッハッハッ、出迎えご苦労」

 相変わらず偉そうにアマノジャクはあいさつに答える。

『…このスズメヒコ、今朝はあなたの米を勝手に食べてしまい大変申し訳なく……』
「フッハッハッハッ、なんだそんなことか……」

 アマノジャクはスズメヒコの謝罪の言葉を聞き、大笑いする。
「…言っておくが、このアマノジャクはこの世でもっとも寛容な精神を持つ男なのだぞ。そんなことを今さら気にしているはずがないではないか」
『クックックックッ、さすがはアマノジャク様!本当に、ほーんとーうーーーーーに、心が広い!』

 ドブヒコはアマノジャクの白々しい言葉を大げさに称賛する。

『…そうですか、そう言っていただけると私としては助かります……』
「フハハッ、さあ、こっちはお前のふざけた行動を許してやったんだ。当然それ相応の礼ってヤツをしてくれるよな?」

 アマノジャクは早速スズメヒコに〝お礼〟を要求する。

『はい、もちろんでございます。それでは我々の歌と踊りで……』
『テメエ、何抜かしてやがる!』

 スズメヒコの言葉にドブヒコが激怒する。

「お前らのクソみたいな歌と踊りなんぞ必要ねえんだよ!」

 アマノジャクがスズメたちの歌と踊りを罵倒したことに、周囲にいるスズメたちはざわつく。

「俺たちが欲しいのはつづらだけなんだよ!他の物なんぞは一切いらねえ!」
『おい!アマノジャク様はさっさとつづらを持って来いって言ってんだよ!お前らには耳がついてないのか!』

 アマノジャクとドブヒコはもはや脅しと言っていい調子で、つづらを持ってくるようスズメたちに強要する。

『…わかりました。これ、誰かつづらをここに』

 スズメたちの間に不穏な空気が広がる中、スズメヒコはつづらを持ってくるように二羽のスズメに指示をする。命を受けたスズメたちがスズメヒコのすぐそばまで、それぞれ大きいつづらと小さいつづらを持ってきて、置く。

「ケッ、やっと持ってきやがったか!」
『ククッ、頭の悪いやつらだぜ!』

 アマノジャクとチュルヒコは再び周囲のスズメたちに悪態をつく。

『…この二つのつづらのうち、どちらか一つを……』
「はん、決まってるだろ!大きいほうだ!」
『そうだ!』

 またしてもアマノジャクとドブヒコはスズメヒコの言葉を最後まで聞くことなく、大きなつづらのほうを選ぶ。

「ハハッ、もうつづらが手に入った以上お前らには用なしだ!邪魔したな!」
『ククッ、はじめからさっさとつづらを出しゃいいんだよ!余計な手間を取らせやがって!』

 アマノジャクとドブヒコはスズメたちに向かって捨てゼリフを吐く。
 そして自分たちの体よりかなり大きいつづらを背中に背負い、〝スズメのお宿〟を後にするのだった。
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