永遠の愛~9日間の思い出~

福猫

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最終話

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ー話し部屋ー

狭い部屋の中に入った香と新菜は担当の先生に言われ椅子に座った。

そして担当の先生が向かい合って椅子に座ると香が口を開いた。

「命が助からない程、傷が酷かったんですか?」

「脳と胸が酷かったですね」

「……」

「ご家族に連絡したいのですが」

「俺達がします」

「わかりました、葬儀会館に運ぶ準備をしますから待合室でお待ちください」

「ありがとうございました」

「助けられなくてすみませんでした」

そう言って椅子から立ち上がると担当の先生は先に部屋を出ていった。

隣同士で椅子に座りながら新菜が口を開いた。

「せっかく俺達の愛が紗和に伝わったのに」

「すぐに別れることになるなんてな」

「香、俺、泣いて良いかな」

「……」

無言で香が抱き寄せると新菜は涙を流し香も涙を流した。

ー霊安室ー

紗和の身なりを綺麗にしながら看護婦達が離れない三毛猫について話をした。

「この方の飼い猫ちゃんでしょうかね」

「なれてるみたいだからそうじゃないかな」

「猫ちゃんわかってるんでしょうかね」

「さあね」

準備を終えると看護婦達は線香をあげ参った。

その後、看護婦達は霊安室を出ていき担当の先生の元に向かった。

ー待ち合い室ー

椅子に座りながら無言で香と新菜が待っていると看護婦が現れた。

「支度が終わったので霊安室にお越しください」

「……」

「……」

椅子から立ち上がると香と新菜は無言で看護婦についていき霊安室に向かった。

その後、香と新菜が霊安室の中に入ると看護婦が口を開いた。

「担当の先生が来るのでここでお待ちください」

そう言って看護婦が離れていくと香と新菜は1人ずつ線香をあげ参った。

「ニャー」

紗和の側で三毛猫が鳴くと香と新菜は驚いた。

「何で猫がいるんだ?」

「お前、あの時の」

見覚えのある三毛猫に香がそう口にすると担当の先生と看護婦達が現れた。

担当の先生と看護婦達は1人ずつ線香をあげ参り香と新菜にお辞儀をした。

「助けられなくてすみませんでした」

「お世話になりました」

「この後は葬儀会館の方達がしてくれますから」

「はい…」

「……」

担当の先生と看護婦達が霊安室から出ていって1時間後、葬儀会館の人達が現れた。

「……」

葬儀会館の人達は香と新菜にお辞儀をし綺麗になった紗和を棺に入れふたを閉めようとしたその時、三毛猫が棺の中に入った。

「ニャー」

「何で猫が」

「すみません」

三毛猫を抱っこし香が離れると葬儀会館の人達は車に棺を運び後部座席に乗せた。

「今から葬儀会館に行きます、車にお乗りください」

「猫も良いでしょうか?」

「良いですよ」

「ありがとうございます」

そう言って三毛猫を抱っこしながら香と新菜は車に乗り込み葬儀会館の人も運転席に乗り込んだ。

担当の先生と看護婦達に見送られながら車は総合病院を離れ葬儀会館に向かった。

ー葬儀会館ー

無事に葬儀会館の前に着いた香と新菜は先に車からおり部屋に向かった。

その後、棺は車からおろされ香と新菜がいる部屋に運ばれ紗和は布団の上に寝かされた。 

「……」

香と新菜にお辞儀をすると葬儀会館の人達は棺を持って部屋を出ていった。

香がおろすと三毛猫は紗和の側に近づき座った。

「あの猫、紗和が好きだったんだな」

「そうだな」

香と新菜が座ろうとしたその時、紗和の両親が現れた。

両親は悲しみ香と新菜もそんな両親を見て悲しい気持ちになった。

翌日、葬儀会館で葬儀が行われ香と新菜は紗和に別れを告げた。

それから何時間か過ぎ葬儀は無事に終わった。

「香君、新菜君、紗和の分まで幸せに生きてね」

「おじさんとおばさんも元気で暮らしてください」

「ありがとう」

「……」

紗和の両親にお辞儀をすると香と新菜は三毛猫を連れて葬儀会館を離れていった。

「……」

「……」

三毛猫を抱っこしながら香と新菜は無言で歩き続けた。

そして5分後、新菜が口を開いた。

「今の仕事辞めてお前のところで働かせてくれないかな」

「良いよ」

「ありがとう、明日から頼むは」

「わかった」

「じゃあ俺、仕事辞めること百々太に言ってくるは」

「言い終えたら俺の家に来いよ」

「わかった」

「……」

新菜と別れると香は三毛猫を抱っこしながら家に向かった。

ーホストクラブ幸ー

オーナー室で百々太が椅子に座って仕事をしているとドアをノックする音がした。

「どうぞ」

「……」

ドアが開き新菜が中に入りドアを閉めると百々太は「新菜」と言って椅子から立ち上がり新菜に近づいた。

「仕事辞めて香のところで働きます」

「そうか」

「それと紗和が交通事故で亡くなりました」

「……」

驚いた顔で百々太が見つめると新菜は背を向け口を開いた。

「紗和が死んだのはあんたのせいだ俺はそう思ってる、俺はあんたを永遠に許さない」

口にした後、新菜はオーナー室を出ていき香の家に向かった。

ー香の家ー

三毛猫をリビングにおろすと香はソファーに座り口を開いた。

「今日からここがお前の家だからな」

「ニャー」

「お腹空いてないか」

「ニャー」

「キャットフードないんだよな、新菜に頼むか」

そう言って香は新菜のスマホに電話をかけキャットフードを頼んだ。

「新菜が来るまで待ってような」

「ニャー」

香に向かって鳴くと三毛猫は香の膝の上に座り眠りについた。

「……」

香は無言で三毛猫を優しく撫でた。

1時間後、新菜がキャットフードと弁当が入った袋を持ってリビングに現れた。

「買ってきたぞ、キャットフードと2人分の弁当」

そう言って新菜が袋からキャットフードと2人分の弁当を出しテーブルに置くと三毛猫が目を覚まし「ニャー」と鳴きながら香から離れた。

「皿、借りるぞ」

「あぁ」

「ちょっと待ってろよ」

そう言って新菜が皿を取りに行き戻るとキャットフードを皿に盛り三毛猫の前に置いた。

「ニャー」

三毛猫がキャットフードを食べ始めると香と新菜もテーブルの前に座り弁当を食べ始めた。

翌日、新菜は香の家で一緒に住みながら香がオーナーのホストクラブ輝きで働き始めた。

ー2年後ー

紗和の死からようやく立ち直った香と新菜は仕事が休みの日、花を持ってお墓に向かった。

「紗和、去年は来れなくてゴメンな」

「お前の死が立ち直れなくて、ゴメンな」

花と線香をあげ参ると突然、風が吹いた。

「風が吹いたな、線香、大丈夫かな」

「大丈夫だろ」

そう言って新菜に目線を向けた香は微笑みながら近づいてくる紗和に驚いた。

「紗和!」

「何、言ってんだ」

そう言って香が向ける目線に目を向けた新菜も驚いた。

「紗和が生きてる」

「そんなわけないだろ、あれは幽霊だ」

「三毛猫のことが気になって香と新菜の前に現れたんだ」

「心配しなくても俺と新菜で育ててるから」

「良かった」

香の言葉に安堵した幽霊の紗和は最後に香と新菜に向かって口を開いた。

「あの世から香と新菜の幸せを願ってるから」

「紗和、俺達も紗和に言いたいことがあるんだ」

「何?」

「俺と新菜は永遠に紗和を愛することを誓います」

「永遠って俺は死んでるんだよ」

「俺と新菜は決めたんだ、紗和がいるあの世に逝くまで誰とも付き合わないと」

「そこまで俺のことを…」

幽霊の紗和の目から涙が流れると香と新菜が口を開いた。

「紗和、愛してる」

「紗和、愛してる」

同時に香と新菜が愛の告白をすると右は香から左は新菜から同時に紗和の頬に唇を重ねた。

同時に香と新菜が唇を離すと紗和が返事をした。

「俺も香と新菜のこと愛してる」

香の唇に唇を重ねその後、新菜の唇にも唇を重ねると紗和は優しく微笑みながら手を振り消えていった。

香と新菜は紗和の唇の感触を感じながら上空を見つめた。

その後、吹いていた風は静まり香と新菜はお墓から離れていった。

       完結
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