ゴーストに恋した兄

福猫

文字の大きさ
上 下
7 / 10

第7話

しおりを挟む
「怜花、遅刻だぞ」

そう言ってソファーから立ち上がるとオーナーは椅子に座り口を開いた。

「今、杉下がスカウトした男性をホストとしての仕事を教えているはずだ、杉下と代わってお前が教えてやれ」

「何で俺が」

「遅刻した罰だ、早く行け」

「はいはい」

そう言って怜花がオーナー室を出ていくとオーナーはパソコンを開き仕事を始めた。

怜花は控え室で私服からタキシードに着替え控え室を出ると杉下の元に向かった。

「杉下さん、代わります」

「お願いします」

「怜花君」

「……」

嬉しそうな顔で女性が目を向けている方向に目を向けた雅也は怜花の姿に驚き立ち上がった。

「雅也さん!」

「どうしてここに」

「俺、ここで働いてるんです」

「杉下さん、別の仕事を探します、オーナーさんにそう伝えてください」

そう言って雅也が控え室に向かうと怜花も控え室に向かった。

脱いだタキシードをロッカーに入れ私服を着ると雅也はロッカーを閉め振り返り立っている怜花に驚いた。

「……」

「帰るんですか?」

「杉下さんに教えてもらったけど俺にはホストはむかないだから別の仕事を探すよ」

そう言って雅也が側を通ると怜花は手首を掴んだ。

「手を離して」

「嫌だ」

そう言って怜花が抱きしめると雅也はもがきながら「何をするんだ、離して」と口にし怜花は雅也の身体を倒し唇を奪った。

「俺には好きな人がいると断ったろ」

「好きな人ってゴーストだよね」

「……」

驚いた顔で雅也が見つめると怜花が口を開いた。

「一度は諦めようと思ったけど相手がゴーストなら俺はあなたを諦めない」

そう言って怜花がもがく雅也の上服を引き裂こうとしたその時、控え室のドアが開き杉下が現れた。

「何をしてるんだ」

怜花を離れさせ雅也の身体を支えながら立たせると口を開いた。

「大丈夫ですか?」

「…大丈夫です…」

「オーナーには俺からうまく断っておきますから」

「杉下さん」

「怜花がすみませんでした」

「……」

「行ってください」

「……」

杉下にお辞儀をし雅也が控え室を出ていくと杉下が怜花に向かって口を開いた。

「怜花、同じことを繰り返すつもりか」

「今度は本気です」

「雅也さんにしようとしたことオーナーに報告するから」

「兄貴に告白したんですか?」

「何のことだ」

「まだ告白してないんですね」

「わからないこと言ってないで仕事に戻れ」

「は~い」

笑みを浮かべながら怜花が控え室を出ていくと杉下は険しい顔で見つめた。

その頃、雅也はホストクラブの店がたくさんある道を落ち込んだ顔で歩いていた。

「ホストクラブの店で再会するとは思わなかった」

雅也が口にしたその時、一台の車が雅也の前に止まり雅也の動きを止めた。

「……」

雅也が避けながら歩いていくと車の中から2人の男が現れ雅也の口を塞ぎながら車の中に押し込み車を走らせた。

━雅也が住むアパート━

「弘子、雅也は?」

人間ゴーストのレイが問いかけると弘子が口を開いた。

「ハローワークじゃない」

「そうか」

返事をし出かけると人間ゴーストのレイはハローワークに向かった。

10分後、人間ゴーストのレイは雅也が乗っている一台の車とすれ違いながらハローワークに急いだ。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゴーストキャット

福猫
BL
ゴーストキャットとなった猫達が人間の力を借りながら敵と戦いマタタビを探す話。 果たしてゴーストキャットはマタタビを手に入れ人間になれるのか…。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...