ゴーストに恋した兄

福猫

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第1話

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20歳で独り暮らしを始めた野々山雅也(ののやままさや)は仕事探しに奮闘していた。

「早く仕事を探さないと」

ハローワークで仕事を探していると妹の弘子(ひろこ)が現れた。

「お兄ちゃん」

「弘子!どうしてここに」

驚いた顔で雅也が見つめると弘子が口を開いた。

「お母さんが1人じゃ大変だから仕事が見つかって落ち着くまで側に居てやれって」

「お母さん」

「それとお母さんとお父さんが仕事が見つかるまでこれで頑張れって」

そう言って弘子が袋を差し出すと雅也はその袋を受け取り中を覗き2枚の封筒に目を向けた。

「この封筒何だ?」

「お母さんが20万、お父さんが20万」

雅也の耳元で弘子が口にすると雅也は驚いた。

その時、雅也のスマホが鳴った。

雅也は袋を弘子に預けポケットからスマホを取り出すとメールを見た。

「お母さん、お父さん…」

メールの言葉に雅也は感動し涙を流した。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「辛くなったらいつでも帰っておいでって、俺、両親に愛されてる」

スマホを握りしめながら雅也が涙を流し続けると弘子は視線の感じ雅也を連れてハローワークを出ていった。

「恥ずかしいから泣かないで」

「感動で泣いてんだ」

「人が見てるから恥ずかしいって言ってんの」

「……」

ハンカチで涙を拭い弘子に目を向けた雅也はまわりに視線を感じ口を開いた。

「家に帰ろうか」

そう言って雅也と弘子はアパートに向かって歩き出した。

「大事に使わないとね」

「そうだな」

雅也が返事をした後、弘子はゴーストの気配を感じ立ち止まった。

「家に帰る前に買い物して帰ろうか」

そう言って歩きながら横を見た雅也は弘子の姿がなく立ち止まると後ろに振り返った。

「弘子、どうした」

「お兄ちゃんを見てる…」

「何?」

「用事を思い出したから先に帰ってて」

そう言って弘子が袋を預けその場を離れて行くと雅也もその場を離れスーパーに向かった。

弘子は逃げる黒猫のゴーストを追いかけ廃墟倉庫に着くと中に入り声をかけた。

「あなたお兄ちゃんが可愛がってた黒猫でしょ」

「俺が見えるのか」

「幼い頃は見えなかったけど19歳になって見えるようになったの」

黒猫のゴーストに向かって弘子が口にすると黒猫のゴーストが口を開いた。

「雅也、元気そうで良かった」

「何でお兄ちゃんの前から居なくなったの?」

「雅也と別れた時、俺は交通事故にあったんだ」

「それでお兄ちゃんの前から居なくなったのね」

「成仏する前に雅也の顔が見たくて現れた、元気そうな雅也を見れて良かった、これで成仏できる」

「初恋のお兄ちゃんに会いたくて現れた」

「初恋?」

「あなたのお兄ちゃんへの思いが神様に届き人間になった」

弘子がじっと見つめると黒猫のゴーストは弘子の目の前で黒い髪に黒い瞳、黒い私服姿の人間のゴーストに変身した。
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