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福猫

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第4話

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「……」

うつ向きながら黙り込む三毛猫のみっちゃんに悠人が口を開いた。

「お前が恋してる人に会わせてくれないかな」

「幸雄に!」

「直接、会ってお前のこと聞いてみるよ」

「……」

「どうした?」

「わかった、幸雄に会わせるよ」

「明日、会いに行こうか」

「わかった」

「ここでゆっくり休め」

そう言って悠人が発明室を出ていくと三毛猫のみっちゃんは椅子の上で眠りについた。

ー翌日ー

私服姿の悠人が発明室に現れた。

「おはよう」

「おはよう…」

「元気ないな」

「そんなことないよ」

そう言って三毛猫のみっちゃんが椅子から飛びおりると悠人が口を開いた。

「それじゃあ行こうか」

そう言って悠人と三毛猫のみっちゃんは別荘を出ていき悠人の運転で幸雄の家に向かった。

それから時間が過ぎ悠人が運転する車は幸雄の家の前に止まった。

悠人と三毛猫のみっちゃんは車からおりドアに近づいた。

悠人はインターホンを3回、鳴らした。

「いないみたいだな」

「仕事に行ったのかも」

「どこに勤めてるのかわからないよな」

「幸雄の匂いを辿ればわかるかも」

「車はここに置かせて貰って歩いて探そうか」

「わかった」

返事をすると三毛猫のみっちゃんは幸雄の匂いを嗅ぎながら歩きだし悠人も歩きだした。

ーコンビニー

コンビニ服で仕事をしていても幸雄の頭はみっちゃんのことを考えていた。

そこへ店長が近づいてきた。

「悩みでもあるんじゃないのかね」

「悩みとかありません」

「本当かね」

「はい」

「悩みがあるならゆっくり聞くよ」

客がいない間に店長は幸雄の肩に触れながら求愛してきた。

その姿を見て女性の先輩店員が近づき声をかけた。

「店長、仕事をしてください」

「あ、はい」

慌てて店長は幸雄から離れ奥に向かった。

「普通なら店長の求愛なんてかわすのに今日はどうしたの?」

「すみません、休憩に入ってもいいですか?」

「仕事ができないなら今日は帰りなさい」

「七菜(なな)さん」

「店長には私から言っておくから」

「すみません」

七菜にお辞儀をすると幸雄は着替えに向かった。

「すみません」

「いらっしゃいませ」

七菜は悠人に目線を向けた。

「幸山幸雄さんはいますか?」

「幸雄君なら着替えに向かってます、少々お待ちください」

「わかりました」

「……」

イケメンの悠人をチラチラ七菜が見ていると悠人が口を開いた。

「何か?」

「何でもないです」

頬を赤らめながら七菜が顔をそらすと私服姿の幸雄が現れた。

「七菜さん、今日はすみませんでした」

幸雄が口にすると七菜が口を開いた。

「幸雄君、お客様よ」

そう言って七菜が仕事に戻ると幸雄は悠人に目線を向け口を開いた。

「どちら様ですか?」

「あなたが幸山幸雄さん」

「そうですが」

「三毛猫のみっちゃんのことで少し話をしませんか?」

「間違ってたらすみません、猫のみっちゃんを人間にしたのはあなたですか?」

「別荘で発明をしてます」

「みっちゃんに伝えてください、俺に告白するなら猫のみっちゃんで告白してほしかったと」

そう言って幸雄は悠人にお辞儀をしコンビニを出た。

その後、幸雄は家に向かって歩きだした。

その姿を三毛猫のみっちゃんは声をかけずじっと見つめた。

「……」

「声をかけなくて良いのか?」

「2人の話を聞いた」

「……」

「幸雄は人間のみっちゃんより三毛猫のみっちゃんに告白してほしかった」

「みっちゃん」

「悠人、先に別荘に戻るよ」

そう言って三毛猫のみっちゃんは元気なさげに歩いていった。

悠人は三毛猫のみっちゃんの姿を見つめながら何とかしてあげたいそう思った。

そして悠人は幸雄の家に向かった。

ー幸雄の家ー

悠人はドアに近づきインターホンを鳴らした。

ドアが開き幸雄が現れた。

「まだ何か」

「コンビニで話せなかった話をしよう」

そう言って悠人は中に入りドアを閉めた。

「コンビニで話せなかった話って何ですか?」

「みっちゃんはあなたを本気で恋してるだから俺に頼んだ人間になる物を作ってくれと」

「……」

「あなたの言葉でみっちゃんは落ち込んでる」

「……」

「猫のみっちゃん、人間のみっちゃん、両方のみっちゃんを好きになってほしい、頼む」

そう言って悠人は幸雄に向かってお辞儀をした。

「なぜそこまで」

「大事な友達だから」

そう言って悠人が顔をあげると幸雄が口を開いた。

「みっちゃんにゴメンなさいと伝えてください」

「幸雄さん」

「お帰りください」

そう言って幸雄が背を向けると悠人は幸雄を振り向かせ名刺を渡した。

「ここに書いてある住所に行けばみっちゃんがいる」

「……」

「ゆっくり話して」

そう言って悠人は家を出ていった。

「あの、待ってください」

名刺を持ったまま幸雄は外に出た。

悠人は車と共に消えていた。

「車がない、あの人の車だったんだ」

そう言って幸雄は家の前で名刺を見つめた。

ー悠人の別荘ー

別荘の前で三毛猫のみっちゃんは空を見つめていた。

「幸雄…幸雄…幸雄」

空を見つめながら何度も口にすると幸雄が現れた。

「みっちゃん」

「……」

真正面に目線を向けた三毛猫のみっちゃんは幸雄の姿に驚いた。

「幸雄!」

「……」

幸雄は三毛猫のみっちゃんに近づき口を開いた。

「広瀬悠人さんが教えてくれたんです、みっちゃんは別荘にいるってそれと会って話せって」

「悠人が…」

「突然、人間のみっちゃんに告白されて…驚いてあんなことを口に…」

「幸雄」

「人間のみっちゃんと話がしたいな」

「わかった」

そう言って三毛猫のみっちゃんは白、茶、黒の髪に白、茶、黒の上服にジーパンのズボンを穿いた人間に変身した。

「……」

「……」

人間姿のみっちゃんと幸雄は無言で見つめ合った。
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