オタクの我とあいつ

鴨乃マキヤ

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#5 散々なスタート

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 昼休みの開始のチャイムと共に我は作戦を開始した。
 まず、ロッカーにしまってある弁当を持って自席に戻る。
 なるべく人にぶつからないようにかつズケズケといくのがポイントだ。
 小学校時代の特訓は無駄じゃなかった。
 かかった時間は3秒42。自己最高記録を更新した。
 机の前まで行くと手をバンっと置き休息をとる。
 帰宅部の肺は弱い。すぐに息があがる。
 こんなことなら中学校からやっていた吹奏楽部を続けるべきだったのだろうか。
 そんな思考が頭を巡ったが、今はそんなことに気を取られているわけにはいかない。
 もう1度軽く深呼吸をしてゆったりと席に座る。
 田中はさっき教室の前を通って行ったばかりだから数分だらしなくても怒られることはないだろう。
 7メートル先の時計を見る。
 ここまでの経過時間は5分、上出来だった。
 残るミッションはただ一つ。
 もうすぐ購買から戻ってくるであろうリンに話しかけ『拘束魔法~言霊の円舞(ロンド)』をかまし、ずっと春アニメについて語り始めるだけだ。
 後ろでリンの声がした。
 姿勢を整え、右足を机の外に出しフォームのイメージを浮かべる。
(よし、そろそろだ。)
 3からカウントダウンを始める。
(3・2・1)
 振り向こうとしたその時、肩をパンっと叩かれた。
 後ろをゆっくりと振り向くとやたらニヤニヤしているリンがいた。
 いや、正しくはリンとおまけ(数名)がいる。
(ナニガアッタナニガアッタナニガアッタno?)
 そうバグっている間にもことは進む。 
 リンと愉快な仲間たちはいっせーので息を吸い、卒業式のごとく群読し始めた。
 
「「「ゆー→さぁー↓ん↑、屋上に飯食いにいくz」」」
 そんなこと言われても発せられる言葉は一つのみ。
「ヌァぁぁぁ↓ぁぁぁぁ↑?!」
 普段、静かな我が起こしたエラーに空気は凍りつく。
 クラス全員から白い目が向けられる。
 目の下のクマさえも真っ赤になっていくようであった。
(あぁ、終わった。人生、ホント、オワッタワ。)
「aha、アハ、あはははは」
 誰かが俺を担ぐ感覚がする。
 ほんとにすまんのリン氏(?)
 

 
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