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闇狩の血を継ぐ者
二
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それから三十分もしない内に河夕の部屋はいっそうの賑わいを見せ始めた。
河夕が洗ったばかりの髪に滴る水気をふき取りながら浴室を出てくると、もはや岬の私室と化した一室には、通常では考えられない、複数の楽しげな声が行き交っていて、声から判断するに白鳥と黒炎が来ているのは間違いなさそうだ。
浴室から出てその部屋に戻ってきた河夕に最初に気付いたのは最年長の蒼月。
「河夕様…、勝手に失礼しました」
「あぁ。それは気にしなくていいが…、それより何だあれは」
「それが…」
蒼月が言葉を濁すと同時に、今まで河夕の存在になどまったく気付かなかった薄紅が振り返る。
来ていたのは蒼月と薄紅、それに黒炎と白鳥の姿があった。
「河夕様、勝手に失礼させていただいてます」
「…、何をやってるんだ?」
なんだか嫌な予感がして聞き返すと、それに応えたわけではないのだろうが、岬の隣を陣取っていた黒炎の声が大きくなって河夕の耳に飛び込んでくる。
「でさ、この時の影主ときたら全然手加減てものがないんだぜ? ひでーと思わねぇ? 俺ってまだ十二のガキだったのにさ」
「河夕様が何をしたら本気で怒るのか判断できずに喧嘩を吹っかけた君がオバカなんだよ」
「だって俺、生真にちょっとイタズラしただけなんだぜ? それであんな大怪我させられたらたまんねーじゃん」
「河夕、実は兄馬鹿ってやつなんだ」
「それはいい表現だよ、岬君。そう、河夕様は昔から生真様と有葉様を溺愛してらしたからね。例えば河夕様に報告なしで有葉様とどこかに出かけるとするだろう? そうすると後で怖いんだよ、嫉妬されて」
「そこまでいったらただのシスコンじゃない」
雪子の辛辣な台詞に、黒炎が声を立てて笑い、白鳥はうんうんと感心するように頷く。
「さすが河夕様に一言の反論も許さずに叱り付けられる方だね。そんなキッパリ言い切れる人物は他にいないよ」
「ねぇ岬ちゃん。シスコンてなに?」
「えっと…、河夕は有葉ちゃんが大好き…、ってことかな」
「お兄ちゃんが有葉を? うふふ、有葉もお兄ちゃん大好き!」
「――可愛いなぁもう!」
満面の笑顔で雪子と岬の間に座っている有葉を、雪子の方がギュッと抱き締めた。
こんなに可愛い妹なら自分もシスコンになるだろうと岬や白鳥が言うのを聞きながら、端でその一部始終を聞いていた河夕は眉間の縦皺をいっそう深くして蒼月に問う。
「――で、あれは何なんだ?」
先刻よりもかなり低い声音には明らかに怒りが含まれていて、蒼月は背中に冷たいものが走り抜けるのを実感しながら恐々と口を開く。
「何と言われましても、答えようがないんですが…」
「薄紅」
蒼月がまだ言葉を濁すのに引きつり、今度は逆位置に立つ薄紅に答えを求める。
忠誠心厚く無口で、けれど親しみやすい蒼月とは逆に、薄紅は言いずらいことでも遠慮なくずばずばと言ってしまえる強心の持ち主だ。
「白鳥と黒炎が河夕様の過去を暴露してるだけですわ」と、あっさり平然と答えられて、今度こそ河夕は額に血管が浮かぶのではないかと思うくらいに顔を引きつらせた。
「ったく…ろくなことしないのは誰だ?!」
凄みを効かせた声を上げれば、和気藹々と談笑していた面々がハッと彼の方を振り返る。
「河夕様、一体いつからそこに?」
最初に口を開いたのは白鳥。
うろたえているならまだしも、実に楽しげにそんなことを言われれば河夕の怒りも治まり様がない。
「おまえらな…、岬と松橋に妙なこと吹き込むな!」
「妙なことなんて何一つ。僕達がずっと見守ってきた河夕様の可愛らしい思い出を語っていただけですよ」
「それをやめろって言ってるんだ!」
「おぉ、影主が照れてンぜ! 岬、これはなかなか見られない代物だ」
「へー。影見君がああいう顔して怒る時って照れてるんだ」
「そう、河夕様は昔から照れ隠しに怒ることの方が多いんだよ」
「だからおまえらぁ……っ」
「おっと、ここまでくるとマジでやばくなってきてるから、少し気を引き締めた方が間違いないぜ。影主怒らせると、それこそマジで怖いから」
「えー? 岬ちゃん、なんでお兄ちゃん怒るの? お兄ちゃんは有葉が大好きって話してただけだよね?」
「うーん…そうなんだけどね……」
有葉のまったく悪気のない台詞に、しかし岬は苦し紛れの返答しか出来なかった。
河夕が有葉を好きだという話だけなら確かに問題ないが、シスコンとまで言われた以上、ただ笑って聞き過ごすのは難しい話だろう。
「えーっと河夕…? 俺達、別に変な話なんか何も聞いてないよ?」
「そうそう。影見君が相当の兄馬鹿だって判っただけよ」
「ゆ、雪子!」
「だってそうでしょ? ね、有葉ちゃん」
「うん、お兄ちゃんはシスコン!」
「――――」
「…っあははははははは!!」
有葉の、本当の本当に悪気のない発言に河夕が絶句し、黒炎と白鳥が爆笑する。
こちらでは薄紅と、そして蒼月が必死で笑いをこらえていて、岬と雪子ももはや笑わずにはいられない。
「おまえら~…っ」
河夕の額に青筋が浮かび上がり、こめかみがピクピクと引きつっている。
「これ以上妙なこと口にするつもりなら金輪際この部屋には立ち入り禁止だ!!」
「そんな殺生な。こんな可愛らしい二人を独り占めなさる気ですか?」
「し、白鳥っ」
これ以上は影主を刺激するなと言外に含ませた口調で呼びつける蒼月。
しかしそれより早く河夕が白鳥に歩み寄り、顔面の前で手の平を不穏な色に輝かせる。
「強制的に黒焦げになって追い出されるのと自主的に出てくのとどっちが好みだ?」
「…か、河夕様、もしかしなくても本気ですね?」
「解ったら…」
さっさと出ていけと続くはずの河夕の言葉は、しかし幸か不幸かそこで途切れた。
慌ただしい足音とともに開かれた部屋の扉は、開けた緑光の心情を如実に語るかのような切羽詰った勢いを見せ、顔色は彼らしくなく落ち着きをなくしていた。
「河夕さん大変です!!」
声色にもかなりの焦りが見え、蒼月や薄紅は表情を曇らせた。
だがそんな光の状態も、怒りが頂点に達しようとしていた河夕には区別がつかない。
「おまえまで何だっ、ふざけたこと言うつもりなら今すぐ出て行けよ!!」
有無を言わさない迫力で言い放たれて、光は一瞬何事かと目を見張った。
好かれていないのはずっと以前から自覚しているが、出逢い頭にそんな言い方をされる覚えはないのだから当然だ。
だがそんなことに戸惑って時間をとるわけにはいかない。
「河夕さんっ、とにかくこっちに!」
「おい!」
「貴方が僕の話を聞いて下さればすぐに出て行きますよ!!」
光も負けじと言い返し、強引に河夕の腕を引いて扉の陰に連れ込む。
「おまえっ」
「何に怒ってるのか存じませんが今回に限って僕は無関係でしょう! 話を聞いてから追い出してもらえませんか?!」
「っ…」
それきり、扉の奥に潜んだ二人の声は岬や雪子に聞こえなくなる。
次に聞こえたのは「馬鹿な!!」という、河夕の驚愕の声だった。
蒼月、薄紅、白鳥と黒炎も厳しい顔つきになり、有葉の小刻みに震えた手が岬と雪子の腕を掴む。
「そんなことをして是羅になんの得がある?! あいつは……っ」
「河夕さん!」
「っ…悪い、だが……っ」
「僕達も変だとは思いました。けれど事実です。紅葉殿が数人の狩人を連れて既に向かいましたが無事かどうかは…」
「…いや、きっと無事だ。俺も何かあってはまずいと思って何人か監視をつけておいたからな…、しかし……」
「予想外の事態で副総帥も困惑しておられます。すぐに会議室に集まるよう言付かって来たんですが…」
「解った」
応えた河夕が部屋に戻ってきたとき、蒼月、薄紅、白鳥、黒炎、そして有葉までが立ち上がり、姿勢を正して河夕の言葉を待っていた。否、河夕ではなく、一族の総帥・影主の言葉を。
彼らの王の指示を。
「今の話、聞こえていたな?」
闇狩の狩人として五感が普通の人間の何倍も発達している彼らは、岬と雪子には聞こえなかった河夕と光の内緒話もしっかりと耳に入ってきていた。
無駄な言葉は一切ない返答に、河夕は小さく頷いて一人一人の顔を順に見ていく。
「蒼月、白鳥、おまえ達二人は紅葉の後を追って闇の討伐に向かえ」
「はっ」
「黒炎と有葉は俺と光と一緒に会議室だ」
「了解」
「薄紅、おまえは生真を……、黄金を探して会議室に連れてこい」
「承知しました」
王の指示に答えるや、すぐさま動き出して部屋を出て行く彼らの姿に、今までの陽気な雰囲気は欠片も見当たらない。
岬と雪子も緊張した面持ちで、まだそこに立つ河夕の姿を見つめるしかない。
「…岬」
「っ、な、なに…?」
急に呼ばれて焦る岬の側に近づいて膝を折る河夕に、光が心配そうな声を掛ける。
だが現実に起こってしまったことを隠すことは出来ない。
隠す方が傷つけてしまうことを、彼らは知ったばかりだから。
「岬…、今、四城寺が襲撃された」
「――!」
河夕が洗ったばかりの髪に滴る水気をふき取りながら浴室を出てくると、もはや岬の私室と化した一室には、通常では考えられない、複数の楽しげな声が行き交っていて、声から判断するに白鳥と黒炎が来ているのは間違いなさそうだ。
浴室から出てその部屋に戻ってきた河夕に最初に気付いたのは最年長の蒼月。
「河夕様…、勝手に失礼しました」
「あぁ。それは気にしなくていいが…、それより何だあれは」
「それが…」
蒼月が言葉を濁すと同時に、今まで河夕の存在になどまったく気付かなかった薄紅が振り返る。
来ていたのは蒼月と薄紅、それに黒炎と白鳥の姿があった。
「河夕様、勝手に失礼させていただいてます」
「…、何をやってるんだ?」
なんだか嫌な予感がして聞き返すと、それに応えたわけではないのだろうが、岬の隣を陣取っていた黒炎の声が大きくなって河夕の耳に飛び込んでくる。
「でさ、この時の影主ときたら全然手加減てものがないんだぜ? ひでーと思わねぇ? 俺ってまだ十二のガキだったのにさ」
「河夕様が何をしたら本気で怒るのか判断できずに喧嘩を吹っかけた君がオバカなんだよ」
「だって俺、生真にちょっとイタズラしただけなんだぜ? それであんな大怪我させられたらたまんねーじゃん」
「河夕、実は兄馬鹿ってやつなんだ」
「それはいい表現だよ、岬君。そう、河夕様は昔から生真様と有葉様を溺愛してらしたからね。例えば河夕様に報告なしで有葉様とどこかに出かけるとするだろう? そうすると後で怖いんだよ、嫉妬されて」
「そこまでいったらただのシスコンじゃない」
雪子の辛辣な台詞に、黒炎が声を立てて笑い、白鳥はうんうんと感心するように頷く。
「さすが河夕様に一言の反論も許さずに叱り付けられる方だね。そんなキッパリ言い切れる人物は他にいないよ」
「ねぇ岬ちゃん。シスコンてなに?」
「えっと…、河夕は有葉ちゃんが大好き…、ってことかな」
「お兄ちゃんが有葉を? うふふ、有葉もお兄ちゃん大好き!」
「――可愛いなぁもう!」
満面の笑顔で雪子と岬の間に座っている有葉を、雪子の方がギュッと抱き締めた。
こんなに可愛い妹なら自分もシスコンになるだろうと岬や白鳥が言うのを聞きながら、端でその一部始終を聞いていた河夕は眉間の縦皺をいっそう深くして蒼月に問う。
「――で、あれは何なんだ?」
先刻よりもかなり低い声音には明らかに怒りが含まれていて、蒼月は背中に冷たいものが走り抜けるのを実感しながら恐々と口を開く。
「何と言われましても、答えようがないんですが…」
「薄紅」
蒼月がまだ言葉を濁すのに引きつり、今度は逆位置に立つ薄紅に答えを求める。
忠誠心厚く無口で、けれど親しみやすい蒼月とは逆に、薄紅は言いずらいことでも遠慮なくずばずばと言ってしまえる強心の持ち主だ。
「白鳥と黒炎が河夕様の過去を暴露してるだけですわ」と、あっさり平然と答えられて、今度こそ河夕は額に血管が浮かぶのではないかと思うくらいに顔を引きつらせた。
「ったく…ろくなことしないのは誰だ?!」
凄みを効かせた声を上げれば、和気藹々と談笑していた面々がハッと彼の方を振り返る。
「河夕様、一体いつからそこに?」
最初に口を開いたのは白鳥。
うろたえているならまだしも、実に楽しげにそんなことを言われれば河夕の怒りも治まり様がない。
「おまえらな…、岬と松橋に妙なこと吹き込むな!」
「妙なことなんて何一つ。僕達がずっと見守ってきた河夕様の可愛らしい思い出を語っていただけですよ」
「それをやめろって言ってるんだ!」
「おぉ、影主が照れてンぜ! 岬、これはなかなか見られない代物だ」
「へー。影見君がああいう顔して怒る時って照れてるんだ」
「そう、河夕様は昔から照れ隠しに怒ることの方が多いんだよ」
「だからおまえらぁ……っ」
「おっと、ここまでくるとマジでやばくなってきてるから、少し気を引き締めた方が間違いないぜ。影主怒らせると、それこそマジで怖いから」
「えー? 岬ちゃん、なんでお兄ちゃん怒るの? お兄ちゃんは有葉が大好きって話してただけだよね?」
「うーん…そうなんだけどね……」
有葉のまったく悪気のない台詞に、しかし岬は苦し紛れの返答しか出来なかった。
河夕が有葉を好きだという話だけなら確かに問題ないが、シスコンとまで言われた以上、ただ笑って聞き過ごすのは難しい話だろう。
「えーっと河夕…? 俺達、別に変な話なんか何も聞いてないよ?」
「そうそう。影見君が相当の兄馬鹿だって判っただけよ」
「ゆ、雪子!」
「だってそうでしょ? ね、有葉ちゃん」
「うん、お兄ちゃんはシスコン!」
「――――」
「…っあははははははは!!」
有葉の、本当の本当に悪気のない発言に河夕が絶句し、黒炎と白鳥が爆笑する。
こちらでは薄紅と、そして蒼月が必死で笑いをこらえていて、岬と雪子ももはや笑わずにはいられない。
「おまえら~…っ」
河夕の額に青筋が浮かび上がり、こめかみがピクピクと引きつっている。
「これ以上妙なこと口にするつもりなら金輪際この部屋には立ち入り禁止だ!!」
「そんな殺生な。こんな可愛らしい二人を独り占めなさる気ですか?」
「し、白鳥っ」
これ以上は影主を刺激するなと言外に含ませた口調で呼びつける蒼月。
しかしそれより早く河夕が白鳥に歩み寄り、顔面の前で手の平を不穏な色に輝かせる。
「強制的に黒焦げになって追い出されるのと自主的に出てくのとどっちが好みだ?」
「…か、河夕様、もしかしなくても本気ですね?」
「解ったら…」
さっさと出ていけと続くはずの河夕の言葉は、しかし幸か不幸かそこで途切れた。
慌ただしい足音とともに開かれた部屋の扉は、開けた緑光の心情を如実に語るかのような切羽詰った勢いを見せ、顔色は彼らしくなく落ち着きをなくしていた。
「河夕さん大変です!!」
声色にもかなりの焦りが見え、蒼月や薄紅は表情を曇らせた。
だがそんな光の状態も、怒りが頂点に達しようとしていた河夕には区別がつかない。
「おまえまで何だっ、ふざけたこと言うつもりなら今すぐ出て行けよ!!」
有無を言わさない迫力で言い放たれて、光は一瞬何事かと目を見張った。
好かれていないのはずっと以前から自覚しているが、出逢い頭にそんな言い方をされる覚えはないのだから当然だ。
だがそんなことに戸惑って時間をとるわけにはいかない。
「河夕さんっ、とにかくこっちに!」
「おい!」
「貴方が僕の話を聞いて下さればすぐに出て行きますよ!!」
光も負けじと言い返し、強引に河夕の腕を引いて扉の陰に連れ込む。
「おまえっ」
「何に怒ってるのか存じませんが今回に限って僕は無関係でしょう! 話を聞いてから追い出してもらえませんか?!」
「っ…」
それきり、扉の奥に潜んだ二人の声は岬や雪子に聞こえなくなる。
次に聞こえたのは「馬鹿な!!」という、河夕の驚愕の声だった。
蒼月、薄紅、白鳥と黒炎も厳しい顔つきになり、有葉の小刻みに震えた手が岬と雪子の腕を掴む。
「そんなことをして是羅になんの得がある?! あいつは……っ」
「河夕さん!」
「っ…悪い、だが……っ」
「僕達も変だとは思いました。けれど事実です。紅葉殿が数人の狩人を連れて既に向かいましたが無事かどうかは…」
「…いや、きっと無事だ。俺も何かあってはまずいと思って何人か監視をつけておいたからな…、しかし……」
「予想外の事態で副総帥も困惑しておられます。すぐに会議室に集まるよう言付かって来たんですが…」
「解った」
応えた河夕が部屋に戻ってきたとき、蒼月、薄紅、白鳥、黒炎、そして有葉までが立ち上がり、姿勢を正して河夕の言葉を待っていた。否、河夕ではなく、一族の総帥・影主の言葉を。
彼らの王の指示を。
「今の話、聞こえていたな?」
闇狩の狩人として五感が普通の人間の何倍も発達している彼らは、岬と雪子には聞こえなかった河夕と光の内緒話もしっかりと耳に入ってきていた。
無駄な言葉は一切ない返答に、河夕は小さく頷いて一人一人の顔を順に見ていく。
「蒼月、白鳥、おまえ達二人は紅葉の後を追って闇の討伐に向かえ」
「はっ」
「黒炎と有葉は俺と光と一緒に会議室だ」
「了解」
「薄紅、おまえは生真を……、黄金を探して会議室に連れてこい」
「承知しました」
王の指示に答えるや、すぐさま動き出して部屋を出て行く彼らの姿に、今までの陽気な雰囲気は欠片も見当たらない。
岬と雪子も緊張した面持ちで、まだそこに立つ河夕の姿を見つめるしかない。
「…岬」
「っ、な、なに…?」
急に呼ばれて焦る岬の側に近づいて膝を折る河夕に、光が心配そうな声を掛ける。
だが現実に起こってしまったことを隠すことは出来ない。
隠す方が傷つけてしまうことを、彼らは知ったばかりだから。
「岬…、今、四城寺が襲撃された」
「――!」
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