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4 どうなってんだ、ほんとマジで。

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 焦る。
 どうなってんだ、ほんとマジで。
 何でもっと早くに気付かないかな俺! この疑問を問いただせる相手なんて正直ミリィしか思い当たらないし、あのタイミングで情報が降って来たんだから巧く誤魔化して話しする方向に持っていったら良かったんじゃん?

「あああっ、ユージィンに浮かれてる場合じゃなかった!」

 いや、浮かれないのは無理だ。
 ずっと本気で抱きたいと想ってきた相手なんだよ!
 馬鹿にされても変態だと後ろ指を差されても構わない! 俺は原作を読んでいる内に本気でユージィンに恋していた。
 叶わないのは判っていてもユージィンの描写に一喜一憂したし、あいつが苦しんでいたら側にいてやりたいと思った。
 助けてやりたいと思った。
 性癖を神経すり減らしながら隠して来た俺にとって、ユージィンは間違いなく俺の精神を支えてくれていたんだ。
 そんな相手が急に! いきなり! 目の前に現れたらっ!!

「そりゃ浮かれるってもんだろうよ……」

 ルークレア嬢の冤罪は情報のおかげで確信したし、妹が罪人になればユージィンが苦しむ。
 あれはあれで良かったのだ。

 良かった、んだが。

「下手を打ったのも否めないよな、これじゃあ……」

 その場に膝をついてしまいたいほど落ち込むも、何とか帰宅して使用人たちの出迎えを受ける。
 あ、俺も貴族で侯爵家の一員です。
 こうこうはくしだん。
 基本的に身分のない日本育ちの俺が、爵位を覚えるために念じたのがそれだ。
 公侯伯子男。
 この国には三公、八侯がいて、伯爵以下はその他大勢的な扱いである。

「あー……そうだよ、今回はヒロインである『六花の神子』がこの国に現れて、『六花の戦士』もこの国出身じゃん。結界の強化がされなかったら他国からも責められるんじゃねーの? まさかダンジョンの攻略は順調とかって嘘言って誤魔化してたり……?」

 うわぁ。
 想像で鳥肌再び。
 結界が弱まり始める明日以降の展開が怖すぎる。

「『六花の戦士』達だって、自分の役目は認識してるだろうに……よく判らんなぁ……」

 頭を悩ませながら部屋で礼服を脱いでいた俺は、廊下が騒がしくなったことに気付いた。
 と思ったら家令のハワードが来客を伝えにくる。

「坊ちゃま。婚約者のセレナ・ラベリック伯爵令嬢が、緊急でお会いしたいといらしているのですが、如何致しますか?」
「——」

 まさかの婚約者殿。
 会うには約束取り付けて三日後じゃなかったのか。
 とはいえ、すぐにでも会って話したかった相手である。

「会うよ」

 俺が応じると、ハワードはお手本みたいな綺麗な一例をして面会の支度を整えに行った。
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