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第9章 未来のために
閑話:サンコティオン(8)
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side:バルドル
一度外に出て、第4階層の仲間のところへ戻るまで結局3日掛かった。
が、外に出て良かったこともある。
2週間程度で「セーズ」に戻るという予定は大幅な変更を余儀なくされたため「セーズ」の監視小屋にはレンたちへ、トゥルヌソルの冒険者ギルドにはレイナルド宛に手紙を届けてもらえるよう手配出来たことだ。おかげで、今の時点ではいつ戻れると確約できないことも伝えられた。
家族には収穫の手伝いは気にしなくて良いから無事に戻るようにと励まされ、ウーガの家族にも「絶対に無事に帰って来てよね!」と泣きそうな顔で激励されて胸が痛んだ。
既に乱暴されて負傷したことは、たぶんいずれバレるので、その際は本人に白状させて欲しい。
ギルドの建物内にある救護所で治療を受けたマリーと薬師3名は、俺が町を出る頃にはまだ意識不明のままだったが命に別状はなく、4人だけとはいえ救助が叶ったことに改めてホッとした。出来れば彼らからも情報を得てダンジョンに戻りたいが信頼できる仲間が少ない中であいつらと離れているのは精神的にしんどい。
情報を持っていくのは後続に任せるという考えに変更はなく、俺は討伐隊と一緒にダンジョンに戻ったんだ。
大量の食料と、飲料、それから傷薬などの追加を持って到着した討伐隊を、第4階層で待機していた面々は大歓迎してくれた。
もちろんうちのメンバーもで、ウーガの傷はすっかり癒えていた。
「無事だったな」
「バルドルこそ」
名言こそしないが抱えている不安は同じだ。
互いに相手の体を確認するように見渡して無事を喜ぶ。討伐隊のリーダーとして同行したギルドマスターとの再会にも嬉しそうだったが積もる話は落ち着いてからだ。
「食料は足りたか?」
「量はね。でももういい加減にレンのご飯が食べたい! 美味しいご飯が食べたい!」
「それな」
ウーガの要求にドーガが大きく頷く。
それも同意見だ。
「レンたちと、それからレイナルド宛にも手紙を手配した」
「ああ、それがいい。話しても心配させるだろうが」
「レンくんならこっちまで来そうだよ」
クルトが楽し気に笑う。
……笑えているんだな、良かった。
「ウーガ、おまえの狂えるカラスは」
「一日に一回、一羽ずつ魔力を補給してる。相変わらず第4階層に潜伏中」
「襲われたパーティがあったりは?」
「ないよ」
「第5階層への道は封鎖しているし、第3階層への道もそうだ。第4階層にいるのは此処にいる俺たちと、潜伏中のあいつらだけだ」
ざっと周りを見渡せば冒険者と警備隊員が合わせて200名近くいる。今日一緒に着いた討伐隊だけでなく、何も知らずにダンジョンに稼ぎに来るも事情を知って協力を申し出て来たパーティが複数加わったからだ。
連中の腕前が相当なのは確かだったが、この人数相手に6人で攻め込んでくるほど無謀でもないだろう。
とはいえ……。
「このままいつまでも隠れていられるとは思わないだろう」
「魔物もいるしな」
「……今回の討伐隊の中にだって連中の仲間がいたりね?」
ウーガが声を潜める。
その懸念は尤もで、だが内部で不信感が広がるのは決して良い傾向ではない。
「ギルドマスターがそんなことのないよう目を光らせたそうだ。一先ず信用していいと思うぞ」
「ふぅん」
そんな話をしつつ俺自身も警戒は解かない。
クルト、エニス、ウーガ、ドーガ。
こいつらと無事にレンやグランツェパーティ、レイナルドパーティと合流するために。
状況が動いたのは翌日だった。
討伐隊にも休息が必要だったのでタイミング的には上々。ウマ科のギルド職員が、自慢の足で、新たな情報を運んで来たのだ。
どうやら救護室で治療された薬師の一人が話が出来るくらい回復したらしい。
「――つまり連中の狙いは魔法武器だったんだな」
討伐隊のリーダーとして同行しているギルドマスターが渋い顔で連中の目的を確信する。
護衛依頼を引き受けた6人の銀級冒険者のうち、2名が裏切った。
もう2名はテルアとマリー。
そして亡くなった2人が、運良く此処の踏破報酬として手に入れた魔法武器を所持していて、帰還すべくテントを片付けている最中に味方だと思っていた二人に襲われたのだそうだ。
他にも名前や特徴。
戦い方。
癖。
好き嫌いなど、意識を取り戻した薬師は知り得た情報を少しでも思い出して伝えようと頑張ってくれたらしい。
「連中も魔法武器を持っているそうです」
「まぁそうだろうな……」
「魔法武器は昔から狙われるが、こんな……逃げ道がなくなるような事件を起こすか?」
「獄鬼が憑いてる可能性は……」
「いまのプラーントゥ大陸でソレはない」
「ないな」
俺も即座に同意する。
ただ、マーヘ大陸で魔法武器を扱っていると思しき連中と接触した情報は共有しておく。
「いまはあっちもかなり浄化されたんだろ?」
「インセクツ大陸以外の各国の共有財産になりましたからね。うちが目を光らせている地域では悪どい真似が出来ないかもしれませんが……いや、ヤツが接触して来たのはうちの管轄地域か」
あの後、レイナルドたちが調査して今頃は対処している真っ最中かもしれない。
結局ああいう悪い連中はどこにでも現れるってことなんだろう。
「もう少し入手率が上がれば他人から強奪してませ稼ごうなんて思わないんだろうけどな」
「それはどうしようもないです」
個人的にはあの規格外の発想でレンに魔法武器を開発してもらえたらと日々願っているが。
と、そんなことを考えていたらウーガが報告に来る。
「狂えるカラスが動いたよ!」
「そうか……」
ギルドマスターは討伐隊の面々を見渡し、そして宣言する。
「ならこっちも作戦通りに始めよう。――討つぞ」
「「「「「おう!」」」」
一度外に出て、第4階層の仲間のところへ戻るまで結局3日掛かった。
が、外に出て良かったこともある。
2週間程度で「セーズ」に戻るという予定は大幅な変更を余儀なくされたため「セーズ」の監視小屋にはレンたちへ、トゥルヌソルの冒険者ギルドにはレイナルド宛に手紙を届けてもらえるよう手配出来たことだ。おかげで、今の時点ではいつ戻れると確約できないことも伝えられた。
家族には収穫の手伝いは気にしなくて良いから無事に戻るようにと励まされ、ウーガの家族にも「絶対に無事に帰って来てよね!」と泣きそうな顔で激励されて胸が痛んだ。
既に乱暴されて負傷したことは、たぶんいずれバレるので、その際は本人に白状させて欲しい。
ギルドの建物内にある救護所で治療を受けたマリーと薬師3名は、俺が町を出る頃にはまだ意識不明のままだったが命に別状はなく、4人だけとはいえ救助が叶ったことに改めてホッとした。出来れば彼らからも情報を得てダンジョンに戻りたいが信頼できる仲間が少ない中であいつらと離れているのは精神的にしんどい。
情報を持っていくのは後続に任せるという考えに変更はなく、俺は討伐隊と一緒にダンジョンに戻ったんだ。
大量の食料と、飲料、それから傷薬などの追加を持って到着した討伐隊を、第4階層で待機していた面々は大歓迎してくれた。
もちろんうちのメンバーもで、ウーガの傷はすっかり癒えていた。
「無事だったな」
「バルドルこそ」
名言こそしないが抱えている不安は同じだ。
互いに相手の体を確認するように見渡して無事を喜ぶ。討伐隊のリーダーとして同行したギルドマスターとの再会にも嬉しそうだったが積もる話は落ち着いてからだ。
「食料は足りたか?」
「量はね。でももういい加減にレンのご飯が食べたい! 美味しいご飯が食べたい!」
「それな」
ウーガの要求にドーガが大きく頷く。
それも同意見だ。
「レンたちと、それからレイナルド宛にも手紙を手配した」
「ああ、それがいい。話しても心配させるだろうが」
「レンくんならこっちまで来そうだよ」
クルトが楽し気に笑う。
……笑えているんだな、良かった。
「ウーガ、おまえの狂えるカラスは」
「一日に一回、一羽ずつ魔力を補給してる。相変わらず第4階層に潜伏中」
「襲われたパーティがあったりは?」
「ないよ」
「第5階層への道は封鎖しているし、第3階層への道もそうだ。第4階層にいるのは此処にいる俺たちと、潜伏中のあいつらだけだ」
ざっと周りを見渡せば冒険者と警備隊員が合わせて200名近くいる。今日一緒に着いた討伐隊だけでなく、何も知らずにダンジョンに稼ぎに来るも事情を知って協力を申し出て来たパーティが複数加わったからだ。
連中の腕前が相当なのは確かだったが、この人数相手に6人で攻め込んでくるほど無謀でもないだろう。
とはいえ……。
「このままいつまでも隠れていられるとは思わないだろう」
「魔物もいるしな」
「……今回の討伐隊の中にだって連中の仲間がいたりね?」
ウーガが声を潜める。
その懸念は尤もで、だが内部で不信感が広がるのは決して良い傾向ではない。
「ギルドマスターがそんなことのないよう目を光らせたそうだ。一先ず信用していいと思うぞ」
「ふぅん」
そんな話をしつつ俺自身も警戒は解かない。
クルト、エニス、ウーガ、ドーガ。
こいつらと無事にレンやグランツェパーティ、レイナルドパーティと合流するために。
状況が動いたのは翌日だった。
討伐隊にも休息が必要だったのでタイミング的には上々。ウマ科のギルド職員が、自慢の足で、新たな情報を運んで来たのだ。
どうやら救護室で治療された薬師の一人が話が出来るくらい回復したらしい。
「――つまり連中の狙いは魔法武器だったんだな」
討伐隊のリーダーとして同行しているギルドマスターが渋い顔で連中の目的を確信する。
護衛依頼を引き受けた6人の銀級冒険者のうち、2名が裏切った。
もう2名はテルアとマリー。
そして亡くなった2人が、運良く此処の踏破報酬として手に入れた魔法武器を所持していて、帰還すべくテントを片付けている最中に味方だと思っていた二人に襲われたのだそうだ。
他にも名前や特徴。
戦い方。
癖。
好き嫌いなど、意識を取り戻した薬師は知り得た情報を少しでも思い出して伝えようと頑張ってくれたらしい。
「連中も魔法武器を持っているそうです」
「まぁそうだろうな……」
「魔法武器は昔から狙われるが、こんな……逃げ道がなくなるような事件を起こすか?」
「獄鬼が憑いてる可能性は……」
「いまのプラーントゥ大陸でソレはない」
「ないな」
俺も即座に同意する。
ただ、マーヘ大陸で魔法武器を扱っていると思しき連中と接触した情報は共有しておく。
「いまはあっちもかなり浄化されたんだろ?」
「インセクツ大陸以外の各国の共有財産になりましたからね。うちが目を光らせている地域では悪どい真似が出来ないかもしれませんが……いや、ヤツが接触して来たのはうちの管轄地域か」
あの後、レイナルドたちが調査して今頃は対処している真っ最中かもしれない。
結局ああいう悪い連中はどこにでも現れるってことなんだろう。
「もう少し入手率が上がれば他人から強奪してませ稼ごうなんて思わないんだろうけどな」
「それはどうしようもないです」
個人的にはあの規格外の発想でレンに魔法武器を開発してもらえたらと日々願っているが。
と、そんなことを考えていたらウーガが報告に来る。
「狂えるカラスが動いたよ!」
「そうか……」
ギルドマスターは討伐隊の面々を見渡し、そして宣言する。
「ならこっちも作戦通りに始めよう。――討つぞ」
「「「「「おう!」」」」
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