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第9章 未来のために
261.気付いてしまった
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俺が師匠の言葉に感動している間に、皆も互いに顔を見合わせて意思確認。
あれこれ揶揄われたり、嫌がらせされるのが面倒だから実力を見せつけようって動機でダンジョンに挑むのもどうかなと思うけど、皆がダンジョンに挑みたい理由はそれだけじゃなかった。
もう30階層に到達しているレイナルドさん達と、入場すらしたことがない自分たち。
それはつまり一緒に挑むならレイナルドさんたちをまた第1階層からスタートさせないとならないってことになる。
「2カ月弱でどこまで行けるかは判らないが、何もしないままレイナルドパーティの足を引っ張るだけになるのは嫌だな」
バルドルさんの言葉に皆が頷く。
「自力で進めるところまで進んでおくのは賛成だが、グランツェパーティはどうすると思う?」
その問い掛けに応じたのはミッシェルさん。
「私たちがマーヘ大陸で潜入捜査している間に挑戦はしたはずだけど、どうなってるかしらね。銀級のヒユナも同行させていたでしょうし」
どこまで進めたかは本人たちに確認しなければ判らないが、クルトさんもレイナルドパーティの一員として銀級のうちに一度挑戦しているし、ギルドが参加を認めれば銀級でも入場可能なのは周知の事実だ。
「メッセンジャー飛ばしましょうか? グランツェさんとの遣り取りなら出来る……」
ウェストポーチの中を探ると、残念なことにグランツェさんとのメッセンジャーは入っていなかった。向こうに行きっ放しのようだ。これだから行き来する連絡方法は困る……と思っていたら。
「あ、ヒユナさんとのがあった」
「えっ。ヒユナとのがあるのか? なんで?」
「――」
近い。
ドーガさんが驚いた顔を近づけて来て、びっくりする。
「そりゃヒユナさんと師匠と、持ってますよ。僧侶同士で相談が必要なこともありますし」
「あ……そっか」
納得したような、でも困惑するような……よく判らない顔付で退いたドーガさんに、周りの皆は微妙な顔。なんなの一体。
「……あ。ヒユナさん可愛いですけど、俺は主神様一筋ですよ?」
「え」
「ぶはっ」
ウーガさんが吹き出す。
「そっちじゃないし!」
「へ?」
「もうその話はいいから、レンはヒユナに聞いてくれ。グランツェパーティはどこまで進んでるかって」
「あ、はい」
「セルリーさんはいつからなら時間取れるんだ?」
「そうね……5日くらいもらえれば「花火」の開発は他のメンバーに任せられるようになると思うわ」
「じゃあ若干の余裕と準備期間を入れて7日後から、どうだ?」
「うん、それくらいが妥当かな」
ヒユナさんへのメッセンジャーを送っている間にもどんどん話は進み、7日後から「セーズ」に挑むことが決まった。金級より上のダンジョンは国の財産という面が強く、しかも今回挑む「セーズ」はいまだ攻略者がいない未踏破ダンジョンだ。
いつから、誰がリーダーのパーティで、何人で入場するのか。
初回はいつ帰還予定なのか。
それを事前に最寄りの冒険者ギルドに申請しなければならない。
「セーズ」の最寄りはもちろんここ、トゥルヌソルだ。
「申請は俺がして来るが、当日……いや、五日以内に各自ギルドで申告するように」
パーティリーダーの独断ではないよ、という証明も兼ねてパーティメンバーがそれぞれ自分で申告するのもルールの一つ。
もちろん各々が了解した。
「あ、でもグランツェパーティと一緒に行くことになったら結局は金級の威を借りただけだと思われる?」
「どうだろうな。言わせたい奴には言わせておけばいいと思うが」
ウーガさんとバルドルさんの言い合いに周りの皆が頷いてる。
あれこれ言われるより仲間に迷惑を掛けないことが優先だ。
「とりあえず俺はいつも通りに食材の下拵えをして、ダンジョン攻略中でも食事を楽しんでもらえるように準備しますね」
「手伝うよ」
「俺もー」
「ありがとうございます!」
「じゃあ俺らは食材の買い出しを手伝うか」
「おう」
そうして次々と予定を決めている最中、ヒユナさんからのメッセンジャーが窓から飛び込んできた。
俺の腕に止まって、再生。
ヒユナさんの柔らかな声が聞こえて来る。
『連絡ありがとう。グランツェさんに聞いたら、ギルドからの指名依頼が来ているからすぐには合流できないのだけど、お邪魔じゃなければ、私だけ連れて行ってもらうことは出来るかな?』
再生が終わって、しばらく誰も何も言わなかったのはヒユナから送られて来たメッセージの中身を飲み込むの時間が掛かったからだ。
「そういえば指名依頼があるって帰って来た日に言われてたな」とエニスさん。
「結局グランツェパーティは何階層まで到達してんだ?」とバルドルさん。
「指名依頼が来てるのにヒユナさんがこっちに合流するってことかな」とクルトさん。
「! ヒユナが合流するのかっ」と急に顔色が輝いたドーガさん。
ん?
あ、もしかして。
「ドーガさんってヒユナさんが好きなんですか?」
思わず声に出ていた。
しまったと気付いた時には後の祭り。顔を真っ赤にしたドーガさんと大笑いし始めたウーガさんがケンカっぽくなってしまうのはそれからすぐの事だった。
ごめんなさい。
あれこれ揶揄われたり、嫌がらせされるのが面倒だから実力を見せつけようって動機でダンジョンに挑むのもどうかなと思うけど、皆がダンジョンに挑みたい理由はそれだけじゃなかった。
もう30階層に到達しているレイナルドさん達と、入場すらしたことがない自分たち。
それはつまり一緒に挑むならレイナルドさんたちをまた第1階層からスタートさせないとならないってことになる。
「2カ月弱でどこまで行けるかは判らないが、何もしないままレイナルドパーティの足を引っ張るだけになるのは嫌だな」
バルドルさんの言葉に皆が頷く。
「自力で進めるところまで進んでおくのは賛成だが、グランツェパーティはどうすると思う?」
その問い掛けに応じたのはミッシェルさん。
「私たちがマーヘ大陸で潜入捜査している間に挑戦はしたはずだけど、どうなってるかしらね。銀級のヒユナも同行させていたでしょうし」
どこまで進めたかは本人たちに確認しなければ判らないが、クルトさんもレイナルドパーティの一員として銀級のうちに一度挑戦しているし、ギルドが参加を認めれば銀級でも入場可能なのは周知の事実だ。
「メッセンジャー飛ばしましょうか? グランツェさんとの遣り取りなら出来る……」
ウェストポーチの中を探ると、残念なことにグランツェさんとのメッセンジャーは入っていなかった。向こうに行きっ放しのようだ。これだから行き来する連絡方法は困る……と思っていたら。
「あ、ヒユナさんとのがあった」
「えっ。ヒユナとのがあるのか? なんで?」
「――」
近い。
ドーガさんが驚いた顔を近づけて来て、びっくりする。
「そりゃヒユナさんと師匠と、持ってますよ。僧侶同士で相談が必要なこともありますし」
「あ……そっか」
納得したような、でも困惑するような……よく判らない顔付で退いたドーガさんに、周りの皆は微妙な顔。なんなの一体。
「……あ。ヒユナさん可愛いですけど、俺は主神様一筋ですよ?」
「え」
「ぶはっ」
ウーガさんが吹き出す。
「そっちじゃないし!」
「へ?」
「もうその話はいいから、レンはヒユナに聞いてくれ。グランツェパーティはどこまで進んでるかって」
「あ、はい」
「セルリーさんはいつからなら時間取れるんだ?」
「そうね……5日くらいもらえれば「花火」の開発は他のメンバーに任せられるようになると思うわ」
「じゃあ若干の余裕と準備期間を入れて7日後から、どうだ?」
「うん、それくらいが妥当かな」
ヒユナさんへのメッセンジャーを送っている間にもどんどん話は進み、7日後から「セーズ」に挑むことが決まった。金級より上のダンジョンは国の財産という面が強く、しかも今回挑む「セーズ」はいまだ攻略者がいない未踏破ダンジョンだ。
いつから、誰がリーダーのパーティで、何人で入場するのか。
初回はいつ帰還予定なのか。
それを事前に最寄りの冒険者ギルドに申請しなければならない。
「セーズ」の最寄りはもちろんここ、トゥルヌソルだ。
「申請は俺がして来るが、当日……いや、五日以内に各自ギルドで申告するように」
パーティリーダーの独断ではないよ、という証明も兼ねてパーティメンバーがそれぞれ自分で申告するのもルールの一つ。
もちろん各々が了解した。
「あ、でもグランツェパーティと一緒に行くことになったら結局は金級の威を借りただけだと思われる?」
「どうだろうな。言わせたい奴には言わせておけばいいと思うが」
ウーガさんとバルドルさんの言い合いに周りの皆が頷いてる。
あれこれ言われるより仲間に迷惑を掛けないことが優先だ。
「とりあえず俺はいつも通りに食材の下拵えをして、ダンジョン攻略中でも食事を楽しんでもらえるように準備しますね」
「手伝うよ」
「俺もー」
「ありがとうございます!」
「じゃあ俺らは食材の買い出しを手伝うか」
「おう」
そうして次々と予定を決めている最中、ヒユナさんからのメッセンジャーが窓から飛び込んできた。
俺の腕に止まって、再生。
ヒユナさんの柔らかな声が聞こえて来る。
『連絡ありがとう。グランツェさんに聞いたら、ギルドからの指名依頼が来ているからすぐには合流できないのだけど、お邪魔じゃなければ、私だけ連れて行ってもらうことは出来るかな?』
再生が終わって、しばらく誰も何も言わなかったのはヒユナから送られて来たメッセージの中身を飲み込むの時間が掛かったからだ。
「そういえば指名依頼があるって帰って来た日に言われてたな」とエニスさん。
「結局グランツェパーティは何階層まで到達してんだ?」とバルドルさん。
「指名依頼が来てるのにヒユナさんがこっちに合流するってことかな」とクルトさん。
「! ヒユナが合流するのかっ」と急に顔色が輝いたドーガさん。
ん?
あ、もしかして。
「ドーガさんってヒユナさんが好きなんですか?」
思わず声に出ていた。
しまったと気付いた時には後の祭り。顔を真っ赤にしたドーガさんと大笑いし始めたウーガさんがケンカっぽくなってしまうのはそれからすぐの事だった。
ごめんなさい。
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