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第8章 金級ダンジョン攻略
閑話:会いに行く(1) side:レイナルド
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ギルドホールで大勢から祝いの言葉を投げかけられながら昇級手続きを終え、レイナルドパーティ5人が揃って白金級冒険者になった。
レンたちからも口々に祝われた。
確かにめでたいことだろう。
世界に冒険者は何十万人といても、白金級冒険者はせいぜい1%。
最上の神銀級に至ってはたった4人しかいないのだ。
だが俺が――俺たちが目指しているのはプラーントゥ大陸に存在する金級ダンジョンの踏破。そして同じく此処にある未踏破の白金級、神銀級ダンジョンの踏破。
そのためには一緒に神銀級まで昇級してくれる仲間が必要であり、それがグランツェパーティ、バルドルパーティであって欲しい。
移動費はどうにでもなる。
他大陸の金級以上のダンジョンへの入場許可も俺なら取れる。
「次はおまえたちの番だぞ」
言ってやったらグランツェたちは一様に驚いた顔をしたが、すぐに強気な笑みを浮かべて見せた。
任せておけ。
そう言っているようにも見えた。
バルドルたちは自分が金級になったこともいまだ自覚が薄そうだが、こうしてトゥルヌソルに戻って他にも大勢の冒険者がいるギルドに出入りするようになれば嫌でも自覚するだろう。
「さ。船でも言ったがこれから2カ月弱はそれぞれ自由だ。9の月の一日から「セーズ」に挑むとして、その3日前にクランハウス集合。時間は追って知らせる」
「はい!」
「了解」
「それから、俺たちは「セーズ」の31階層までは攻略済みなんで、おまえたちも腕試しがしたいなら行って来い。ただし絶対に無理はせず、常識の範囲でな」
セリフの最後はレンに視線を向ける。
本人も理解しているらしく少し後ろめたそうな表情で苦笑いしている。
「じゃあここで解散だ。長旅お疲れさん」
「お疲れさまでした!」
「お疲れ」
「くーっ!」
両腕を思いっきり頭上に伸ばしてくぐもった声を漏らしたのはウーガだ。
「久々のトゥルヌソル! 遊ぶぞーっ」
「遊ぶのはとりあえず二日間な。その後はパーティで今後の予定を決めるぞ」
「はいはい判ってるって」
「俺たちは帰ろう。エレインが待ってる」
「だね」
「たぶん頻繁に会うだろうけど、とりあえずは「来月末に、また」?」
「ははっ。ああ、またな」
「俺は師匠に会いに行ってきます」
「私も行く!」
「あ、じゃあ、俺が護衛でついていくよ」
「え……ドーガさん、良いんですか?」
「もちろん!」
それぞれがこの後の予定を確認し合う。
「俺はクランハウス帰る。嫁に会いてぇ」
ゲンジャルが言い、ウォーカーとミッシェルが頷く。
「私たちも少し休みたいし一緒に戻るわ」
アッシュとヴァンもか。
となると、俺は。
「……俺は用があるんで少し出て来る。明日はギルドの連中と話し合いがあるから、王都への移動は明後日以降だな」
「おう」
「ならまた後でな」
仲間をギルドホールで見送った俺は、最後に建物を出て町の北西――教会の更に奥に広がる森へ足を運んだ。
滅多に人が近付かない深い森の更に奥。
通称「森人族の森」。
「あ……あ、レイナルド様?」
「よ」
樹上から此方に気付いた森人族の男が微かにしか音を立てず傍に降り立った。
彼の名前はラファエラーノ。
この森の番人の一人だ。
「お戻りになっていたんですね!」
「ああ。ついさっきな」
「2カ月くらい前だったか、クールという少年が森に森人族の木を植えていきましたよ。本人はその後で王都に旅立ってしまいましたが」
「ああ、兄の邸で働いている」
「そうでしたか」
応じながらラファエラーノが移動する先についていくと、しばらくして土地に根付いたばかりだろう細い木の側で立ち止まった。
さすがに木の見分けまではつかないがクールに持たせ、ここに植えさせたエトワールの木だと思う。
「あまりにも弱弱しくて根付くか心配でしたが、さすが主神様の伴侶殿に愛された土地ですね。どんどん元気になっていって、いまではこの通りですよ」
「そうか」
マーヘ大陸で木へ変化した光景を見ていた身として、大地にきちんと根付くか心配していたが此処に植えさせたのは正解だったらしい。
さすがというべきか、レン様様だ。
本人は気にするだろうから言わないが。
「……少し森を歩いてもいいか?」
「構いません。見廻りの最中なのでご案内は出来ず恐縮ですが」
「ああ、問題ない」
ラファエラーノは軽く、しかし丁寧に一礼すると音もなく消えた。跳躍で樹上に移動したからだ。……まぁ気を遣わせたんだろうな。
彼の気配が遠ざかるのを感じつつ、上着の内ポケットから握ればすっかり隠れてしまう魔道具を取り出した。
通信用だと、レンから渡された一対の魔石の片割れ。
最後に会った時にハーマイトシュシューに渡し、最期の日に互いの言葉を届けたもの。
「さて……」
それに魔力を流すと離れた場所にある片割れが反応する。
通信の魔道具なのだから当然だ。
そして最期の瞬間まで彼の手元にあったもの。例え地面に転がっていたとしてもその近くには彼の木があるはずだ。
「……花でも持って来るべきだったな」
ぽつりと零し、魔道具の反応を追うように再び森を歩き始めた。
レンたちからも口々に祝われた。
確かにめでたいことだろう。
世界に冒険者は何十万人といても、白金級冒険者はせいぜい1%。
最上の神銀級に至ってはたった4人しかいないのだ。
だが俺が――俺たちが目指しているのはプラーントゥ大陸に存在する金級ダンジョンの踏破。そして同じく此処にある未踏破の白金級、神銀級ダンジョンの踏破。
そのためには一緒に神銀級まで昇級してくれる仲間が必要であり、それがグランツェパーティ、バルドルパーティであって欲しい。
移動費はどうにでもなる。
他大陸の金級以上のダンジョンへの入場許可も俺なら取れる。
「次はおまえたちの番だぞ」
言ってやったらグランツェたちは一様に驚いた顔をしたが、すぐに強気な笑みを浮かべて見せた。
任せておけ。
そう言っているようにも見えた。
バルドルたちは自分が金級になったこともいまだ自覚が薄そうだが、こうしてトゥルヌソルに戻って他にも大勢の冒険者がいるギルドに出入りするようになれば嫌でも自覚するだろう。
「さ。船でも言ったがこれから2カ月弱はそれぞれ自由だ。9の月の一日から「セーズ」に挑むとして、その3日前にクランハウス集合。時間は追って知らせる」
「はい!」
「了解」
「それから、俺たちは「セーズ」の31階層までは攻略済みなんで、おまえたちも腕試しがしたいなら行って来い。ただし絶対に無理はせず、常識の範囲でな」
セリフの最後はレンに視線を向ける。
本人も理解しているらしく少し後ろめたそうな表情で苦笑いしている。
「じゃあここで解散だ。長旅お疲れさん」
「お疲れさまでした!」
「お疲れ」
「くーっ!」
両腕を思いっきり頭上に伸ばしてくぐもった声を漏らしたのはウーガだ。
「久々のトゥルヌソル! 遊ぶぞーっ」
「遊ぶのはとりあえず二日間な。その後はパーティで今後の予定を決めるぞ」
「はいはい判ってるって」
「俺たちは帰ろう。エレインが待ってる」
「だね」
「たぶん頻繁に会うだろうけど、とりあえずは「来月末に、また」?」
「ははっ。ああ、またな」
「俺は師匠に会いに行ってきます」
「私も行く!」
「あ、じゃあ、俺が護衛でついていくよ」
「え……ドーガさん、良いんですか?」
「もちろん!」
それぞれがこの後の予定を確認し合う。
「俺はクランハウス帰る。嫁に会いてぇ」
ゲンジャルが言い、ウォーカーとミッシェルが頷く。
「私たちも少し休みたいし一緒に戻るわ」
アッシュとヴァンもか。
となると、俺は。
「……俺は用があるんで少し出て来る。明日はギルドの連中と話し合いがあるから、王都への移動は明後日以降だな」
「おう」
「ならまた後でな」
仲間をギルドホールで見送った俺は、最後に建物を出て町の北西――教会の更に奥に広がる森へ足を運んだ。
滅多に人が近付かない深い森の更に奥。
通称「森人族の森」。
「あ……あ、レイナルド様?」
「よ」
樹上から此方に気付いた森人族の男が微かにしか音を立てず傍に降り立った。
彼の名前はラファエラーノ。
この森の番人の一人だ。
「お戻りになっていたんですね!」
「ああ。ついさっきな」
「2カ月くらい前だったか、クールという少年が森に森人族の木を植えていきましたよ。本人はその後で王都に旅立ってしまいましたが」
「ああ、兄の邸で働いている」
「そうでしたか」
応じながらラファエラーノが移動する先についていくと、しばらくして土地に根付いたばかりだろう細い木の側で立ち止まった。
さすがに木の見分けまではつかないがクールに持たせ、ここに植えさせたエトワールの木だと思う。
「あまりにも弱弱しくて根付くか心配でしたが、さすが主神様の伴侶殿に愛された土地ですね。どんどん元気になっていって、いまではこの通りですよ」
「そうか」
マーヘ大陸で木へ変化した光景を見ていた身として、大地にきちんと根付くか心配していたが此処に植えさせたのは正解だったらしい。
さすがというべきか、レン様様だ。
本人は気にするだろうから言わないが。
「……少し森を歩いてもいいか?」
「構いません。見廻りの最中なのでご案内は出来ず恐縮ですが」
「ああ、問題ない」
ラファエラーノは軽く、しかし丁寧に一礼すると音もなく消えた。跳躍で樹上に移動したからだ。……まぁ気を遣わせたんだろうな。
彼の気配が遠ざかるのを感じつつ、上着の内ポケットから握ればすっかり隠れてしまう魔道具を取り出した。
通信用だと、レンから渡された一対の魔石の片割れ。
最後に会った時にハーマイトシュシューに渡し、最期の日に互いの言葉を届けたもの。
「さて……」
それに魔力を流すと離れた場所にある片割れが反応する。
通信の魔道具なのだから当然だ。
そして最期の瞬間まで彼の手元にあったもの。例え地面に転がっていたとしてもその近くには彼の木があるはずだ。
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