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第8章 金級ダンジョン攻略
245.そうじゃない
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「いや、待て。今はそんな気色悪い誘いを受けなくて良かったと安心するところだろう」
「そうだよ。僕の大事なアッシュが他人にヤラシイ目で見られなくてホッとした」
ウォーカーさんとヴァンさんに宥められて一先ずは怒りを鎮めてくれたけど、本人を前にしたらまた怒り出しそうだ。その場合はゼスっていう人の自業自得だから甘んじてお仕置きされれば良いと思う。
女性二人の迫力に話を続けるのを躊躇う様子だったレイナルドさんは「んんっ」とわざとらしく咳払いした後で、彼女たちを見ないようにしながら話を続けた。
「ダンジョン以外にも魔法武器の入手方法はいろいろある。表も裏も、な。ゼスという男の言い方からして表とは考え難いが、同時に、裏に関わっている人物をこのタイミングでギルド職員として派遣して来るのは解せない」
「ギァリッグ大陸には割と潔癖なイメージがあるんだが」
モーガンさんがぽつりと呟いた内容にレイナルドパーティとグランツェパーティの面々が頷き合う。
「あそこは良くも悪くも実力主義だ。陰でコソコソと陰謀を張り巡らせるより、国が欲しいなら王に直接決闘を申し込むのが当たり前。臣は勝った者を王と仰ぐと決まっている」
「え。でもものすごく悪い人が王様になったらどうするんですか」
「それを良しとしない者が王に決闘を申し込む。ギァリック大陸には6つの国があるが、すべてそうだ」
「脳筋……?」
思わず呟いたら隣のクルトさんが首を傾げる。
「のーきんて?」
「頭が筋肉で出来ている人の事です」
「ぶふっ」
吹いたのはクルトさんだけじゃなかった。
レイナルドさんはまた咳で誤魔化しながらこっちを睨んでくる。ごめんなさい、黙ります。
「ともかく、そういう意味ではゼスという男はギァリッグ大陸の出身者らしくない」
「その辺も確認した方が良いかもな。大陸を一つ落とすためにかなり無茶をした。混乱のどさくさに紛れて何かしら企むのがいてもおかしくはない」
「だな……」
溜息に近い吐息の後、部屋には沈黙がしばらく続いた。
皆がそれぞれに考え込んでいたからだ。
どさくさに紛れて企むことって何だろう。俺の頭ではすぐに思い付かないけど皆は思うところがありそうに見えた。
と、ミッシェルさん。
「レイナルドたちが今日調べて来たのは?」
「ああ。トラントゥトロワから此処とは反対の方向にもう一つ村があった。いや、村とも呼べないような小規模な集落で、当然、地図にも載っていないし、人気もなし。数組の冒険者パーティが休むには充分な環境だったはずだ。最近になって急速に寂れたようだが」
「最近ねぇ」
つまり大陸連合が制圧し始めた頃、かな。
「あれなら人数を連れて行っても支障はなさそうだから調査に協力してくれ」
「おう、任せろ」
「俺たちにも手伝えることがあるなら」
そう言って手を挙げたのはエニスさんだった。
「おまえたちも?」
「このままだとアイツに遭遇したくないと言う理由で此処に籠もりそうだからな」
「確かに」
ウーガさんたちも大きく頷いている。
レイナルドさんが少し考えた後でこちらに視線を向けて来た。
「……そうなると、レンも来るか?」
「そう、ですね。一人で出歩くなって言われてますし、仕事の邪魔にならないなら」
「邪魔にはならん。……が、参加させるとおまえの直感を頼ることがあるかもしれん」
「え。なら先に言ってくださいよ。いつでも行くのに」
真顔で返したら全員が黙ってしまった。
少しの沈黙の後で最初に笑ったのはゲンジャルさん。
ミッシェルさんとアッシュさんも楽しそう。
「なんつーか……敵わんな」
「??」
「大した事じゃないわ、気にしないで」
「皆で一緒に行ったら調査も楽しいよ、きっと」
終いにはクルトさんに頭を撫でられてしまった。
何故。
その夜21時頃にトゥルヌソルの家に帰る人たちを送って、俺は神具『住居兼用移動車両』Ex.に。
翌朝はいつも通りに起きて朝食の準備をして、8時頃にトゥルヌソルの家からこっちへ皆に移動してもらった。で、9時前には16人全員で件の人気が無いと言う村へ移動することになった。
幸い町を出る途中でゼスに遭遇するなんてこともなく、ダンジョンに向かう道からは少し逸れて歩き進めること1時間半くらい。
そこは、予め村だと聞いていなければすぐにそうとは判らなかったと思う。
なんせ俺の目には森の入口にしか見えなかったからだ。
「そうだよ。僕の大事なアッシュが他人にヤラシイ目で見られなくてホッとした」
ウォーカーさんとヴァンさんに宥められて一先ずは怒りを鎮めてくれたけど、本人を前にしたらまた怒り出しそうだ。その場合はゼスっていう人の自業自得だから甘んじてお仕置きされれば良いと思う。
女性二人の迫力に話を続けるのを躊躇う様子だったレイナルドさんは「んんっ」とわざとらしく咳払いした後で、彼女たちを見ないようにしながら話を続けた。
「ダンジョン以外にも魔法武器の入手方法はいろいろある。表も裏も、な。ゼスという男の言い方からして表とは考え難いが、同時に、裏に関わっている人物をこのタイミングでギルド職員として派遣して来るのは解せない」
「ギァリッグ大陸には割と潔癖なイメージがあるんだが」
モーガンさんがぽつりと呟いた内容にレイナルドパーティとグランツェパーティの面々が頷き合う。
「あそこは良くも悪くも実力主義だ。陰でコソコソと陰謀を張り巡らせるより、国が欲しいなら王に直接決闘を申し込むのが当たり前。臣は勝った者を王と仰ぐと決まっている」
「え。でもものすごく悪い人が王様になったらどうするんですか」
「それを良しとしない者が王に決闘を申し込む。ギァリック大陸には6つの国があるが、すべてそうだ」
「脳筋……?」
思わず呟いたら隣のクルトさんが首を傾げる。
「のーきんて?」
「頭が筋肉で出来ている人の事です」
「ぶふっ」
吹いたのはクルトさんだけじゃなかった。
レイナルドさんはまた咳で誤魔化しながらこっちを睨んでくる。ごめんなさい、黙ります。
「ともかく、そういう意味ではゼスという男はギァリッグ大陸の出身者らしくない」
「その辺も確認した方が良いかもな。大陸を一つ落とすためにかなり無茶をした。混乱のどさくさに紛れて何かしら企むのがいてもおかしくはない」
「だな……」
溜息に近い吐息の後、部屋には沈黙がしばらく続いた。
皆がそれぞれに考え込んでいたからだ。
どさくさに紛れて企むことって何だろう。俺の頭ではすぐに思い付かないけど皆は思うところがありそうに見えた。
と、ミッシェルさん。
「レイナルドたちが今日調べて来たのは?」
「ああ。トラントゥトロワから此処とは反対の方向にもう一つ村があった。いや、村とも呼べないような小規模な集落で、当然、地図にも載っていないし、人気もなし。数組の冒険者パーティが休むには充分な環境だったはずだ。最近になって急速に寂れたようだが」
「最近ねぇ」
つまり大陸連合が制圧し始めた頃、かな。
「あれなら人数を連れて行っても支障はなさそうだから調査に協力してくれ」
「おう、任せろ」
「俺たちにも手伝えることがあるなら」
そう言って手を挙げたのはエニスさんだった。
「おまえたちも?」
「このままだとアイツに遭遇したくないと言う理由で此処に籠もりそうだからな」
「確かに」
ウーガさんたちも大きく頷いている。
レイナルドさんが少し考えた後でこちらに視線を向けて来た。
「……そうなると、レンも来るか?」
「そう、ですね。一人で出歩くなって言われてますし、仕事の邪魔にならないなら」
「邪魔にはならん。……が、参加させるとおまえの直感を頼ることがあるかもしれん」
「え。なら先に言ってくださいよ。いつでも行くのに」
真顔で返したら全員が黙ってしまった。
少しの沈黙の後で最初に笑ったのはゲンジャルさん。
ミッシェルさんとアッシュさんも楽しそう。
「なんつーか……敵わんな」
「??」
「大した事じゃないわ、気にしないで」
「皆で一緒に行ったら調査も楽しいよ、きっと」
終いにはクルトさんに頭を撫でられてしまった。
何故。
その夜21時頃にトゥルヌソルの家に帰る人たちを送って、俺は神具『住居兼用移動車両』Ex.に。
翌朝はいつも通りに起きて朝食の準備をして、8時頃にトゥルヌソルの家からこっちへ皆に移動してもらった。で、9時前には16人全員で件の人気が無いと言う村へ移動することになった。
幸い町を出る途中でゼスに遭遇するなんてこともなく、ダンジョンに向かう道からは少し逸れて歩き進めること1時間半くらい。
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なんせ俺の目には森の入口にしか見えなかったからだ。
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