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第8章 金級ダンジョン攻略

閑話:ダンジョン近くの町で(5) side:ウーガ

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 ギルドにあまり人がいないこともあって、注目はされてない。
 けど、身内の視線ほど痛いものもないわけで。

「なんでオレ?」
「好みだから」

 聞いたら即答された。
 うん、打てば響く感じは悪くない。

「んー……お誘いは嬉しいけど付き合うのはナシかなぁ」
「特定の相手いないだろ?」
「いないのは別に要らないからだし」

 正直に言ったら目を丸くされた。
 冒険者なんて命張って戦って稼いで飲んで食べて性欲発散してよく眠ったら、また命張った金稼ぎ。銀級アルジョン冒険者は大半がそんなんばっかりだし、オレたちだってダンジョン攻略を諦めかけてた頃は似たようなもんだったよ。まぁ俺の場合は弟を抱き枕にしてたし、バルドルは片想いでウジウジしてたから、うちでそれっぽかったのはエニスくらいだけど。
 でもっていまは、環境が一変して満足しかない。
 毎日三食美味しいもの食べて、堅実で厳しい金級オーァル冒険者たちにしごかれている内に自分まで金級オーァルに昇格して、仲間と一緒に更に上を目指している。
 夜眠れないのは悩みといえば悩みなんだけど、んー……一か月以内にはもふもふの枕が手に入ると信じてる。

「ってわけで、ごめんね?」

 にこりと笑い返したら、固まっているルドルフの横でケヴィンが吹き出した。

「ぶはっ。ははは! 完敗じゃんルディっ痛!」
「黙れ」

 後頭部に拳骨を食らって唸るケヴィンを一睨みしたルドルフは、改めてこっちを見て苦笑い。

「久々に好みの子に会えたのに残念」
「人の出入りなさそうだもんね、ここ」
「ああ。いくらダンジョンの所有者が変わったからって、な」

 少し声を潜めるあたり、やっぱりエラい人たちには既に情報が回ってるって感じかな。

「いろいろ片付いて繁盛し出すといいね」
「ははは……はー。やっぱり惜しいな。飲みの誘いくらないなら受けてくれる? 下心アリで」
「ナシならいいけど?」
「じゃあ飯で」

 ふむ。
 まぁご飯くらいなら付き合うのも吝かじゃないんだけど、レンにすっかり餌付けされている身としてはレンの作るご飯より美味しいものがこの町にあるとは思えない。
 それで返答に時間が掛かっていたんだけど、何を思ったのか急にレンが前に出て来る。

「あのっ、ご飯なら、レイナルドさんが許可したらですけど、うちの庭でバーベキューなんてどうですかっ」
「ばーべきゅ?」
「外で肉や野菜を焼いて食べるんです。それなら、少しならお酒も出せますし。俺たちも安心なのでっ」

 安心、を強調するレンの本音を察すると同時そういえばすぐ後ろに仲間が皆いたんだって思い出した。ドーガがめっちゃ不安そうにしていたし、スッと俺の前を阻むみたいに伸びて来た腕はバルドルとエニスのだ。
 ケヴィンとルドルフはきょとんとして。
 で、笑った。

「すっかり警戒されたな」
「良い仲間だ」

 うん。
 俺もそう思う。ちょっと過保護かもだけどね。

「じゃあ、レイナルドが許可くれたら改めて誘ってくれ」
「邪魔して悪かったな」
「いえいえー」

 そう言って二人が見えなくなると、途端に身内の空気が緩んだのが判った。ほんと、過保護が過ぎるわ。




 ギルドには俺たちが受けたいと思うような依頼はなく、薬草や木の実なんかを採取する常設依頼の内容だけを確認して邸に戻ることにした。
 その道すがらレンが言う。

「ギルドの職員さんってああいうノリの人が多いんですか?」
「ん?」
「ナンパというか……あ、でも人が少ない場所でお相手を探そうって思ったら冒険者相手に期間限定も……」
「なに言ってんの?」

 ぶつぶつ言い出したレンに「判り易い説明」を要求したら、昨日ダンジョンを出た時に紹介されたギァリッグ大陸から派遣されていた職員も妙な目でこっちのことを見ていたらしい。

「誰を見ていたかまでは判らなくて、昨日の内にレイナルドパーティの皆には伝えたんですけど、3日間は会うことないからまずは連休を楽しめって言われて」
「どっち?」
「ゼスさんの方です」
「長髪の方かな」
「そうです」

 ふーん、全然気付かなかった。
 やっと寒さから解放されたのと、期限内に15階層まで到達した安心感で、テンション上がってたしなぁ。

「ギルドの職員に限らず、こういうところに単身で仕事に来たら、そりゃあ番でなくてもいろいろ発散する相手は欲しくなるだろう」
「やっぱりそう言うことなんですよね……」
「目の前に好みの子がいて、番がいないのが明らかなら声を掛けないって選択肢は無いし、……そのゼスって職員、たぶん人族ヒューロンだろ。人族ヒューロンは匂いに鈍感だから番がいても気にしないだろう」

 バルドルとエニスが順に説明してる。
 なるほど人族ヒューロンなら納得だ。それ以外なら目当ては俺かドーガ、エニス、ヒユナの誰かで間違いなかったろうに。

「まずはってレイナルドが言ったんなら後で注意してくれるだろうが……おまえたち全員、気を付けろよ」
「はーい」
「はい」

 心配そうなバルドルの視線がクルトに止まる。
 だよね、ちょっかい出されたら堪んないもん。
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