259 / 335
第8章 金級ダンジョン攻略
閑話:ダンジョン近くの町で(4) side:ウーガ
しおりを挟む
朝からレンが来てくれたおかげで朝ごはんはとても美味しかった。
食べながら話を聞いていたらレンは朝早くからヒユナと庭で薬草採取デートをしていたらしく、弟の間の悪さには苦笑するしかない。まぁ相手がレンなら何の心配もないけど。
「今日の予定はー?」
「お昼にレイナルドさんをあっちに送ります!」
それ以外はフリーだっていうレンに、昨日の町散策の話をする。
果実水の専門店。
衣料や食材、雑貨の店。
武器や防具。
町の外での薬草採取――。
「どれも気になります」
「町の外で採取するなら、ついでにギルドで依頼があるかどうかも見て来ない? なんとなく冒険者の数そのものが少ない気がするし、薬草関係は不足してるかも」
「あ」
いま気付いたという顔を見合わせるレンとヒユナ。
「ダンジョンに近いんだから病院はありますよね? そこの様子も知りたいです」
レンの言葉に、エニス。
「ならレイナルドを送った後はレンを連れてもう一度町を回ったらいいんじゃないか。気になるもの全部見て回っても2~3時間で済む」
「ああ確かに。町自体そこまで大きくないしね」
俺も賛成しておく。
金級ダンジョンに挑んでいるのは俺たちだけって事前情報もあるし、病院に寄るにしたって僧侶が忙殺される心配はないはず。
「つーか、昼までだってまだ2時間以上あるんだから今の内にギルドだけ行って来よう。依頼や、町に不足しているものを先に確認しておけば今後の予定も立てやすくなるだろうし」
バルドルがリーダーらしく纏める。
色ボケしてるように見えてこういうところはちゃんとしてるから敵わないよね。
「じゃあ早速行こか」
「おう」
みんなが装備を整えている間に、レンが「みんなで町に行ってきます。お昼までには戻ります」とレイナルドに書き置きを残した。
装備と言っても散策用の簡易的なもの。
俺もいつもの弓じゃなく上着の下に投擲用の小型ナイフを仕込んでいて、あとは財布。冒険者のタグに刻んだ証紋で買い物出来るのが一般的だけど土地によっては現金だけって場合もあるからね。
邸からギルドまでは歩いて15分。
バルドルパーティ6人プラスヒユナで移動した。
最近は他所の冒険者が入って来ること自体珍しいのか道行く人たちからの視線が集まって何となく居心地が悪い。別に悪意を向けられているわけではないんだけど。
あー……でもまぁ大陸を制圧した余所者には違いないからジロジロ見られるくらいは仕方ないか。
「あそこがさっき言った果実水の店で、向こうが雑貨屋」
「おー……趣のある店構えですね」
ぼろいって言わないのがレンの良いところだ。
内心で苦笑しつつ、いざギルドへ。
昨日は外で待機していた面々も今日は中に入って、何とも言えない顔で辺りを見渡している。大通りの店構えだけじゃなく此処もそう。人気はそれなりにあるし汚いとかじゃないんだけど、金級ダンジョンの最寄りの町とは思えないくらい寂れているんだよね。
「トゥルヌソルと比べるべきでないのは理解しているが……此処まで違うものか?」
トゥルヌソルは街の中に鉄級と銅級ダンジョンがあって、外には銀級が2か所、更に未踏破の金級ダンジョン最寄りの街でもあるから賑わいが他の比にならないのは当然なんだけど、それにしたって閑散とし過ぎなんだよ。
「……何かおかしくないですか?」
「んー……レイナルドさんも昨日から一人でいろいろ調べてるっぽいし、アッシュさんの旦那さんたちも何か気になるみたいだったし……」
レンとヒユナが小声で囁く。
ふーん。
上の人たちは何かしら察してて動き始めてるってことかな。
「それならそれでいいんじゃない? 正式に任務として言い渡されるまでは邪魔しないのが一番だもん。指示があるまでは休暇楽しも!」
「……ですね」
というわけで依頼書が張り出された掲示板を見てみるけど、こっちも閑散としていた。
薬草関係はいつでも持ち込み歓迎、報酬に些少の上乗せありという表記から、不足しているけど資金にはそれほど余裕が無いのが見て取れる。
依頼が少ないのは、何かを必要とする人がいない。
つまり助けを必要とするほど求められるものがないってことだ。……金級ダンジョン最寄りの町なのに?
皆で顔を見合わせた。
うん、これオカシイわ。
「あれ?」
ふと背後から声が掛かる。
「君らレイナルドパーティの子たちだよな」
「え……」
振り返ったら若い男の二人組。
しかも顔見知りだったので一気に高まった警戒心は霧散する。
「ケヴィンさんとルドルフさん」
金級ダンジョンの入退場を監視しているギルド職員たちだ。出身はグロッド大陸だったっけ。
「せっかくの休みなのに依頼か?」
「家で寝てばっかいるわけにもいかないだろ」
バルドルが前に出て対話役を買って出た。
「あんま楽しい依頼はないぞ」
「そうらしい。此処はいつもこんなか?」
「まぁそうだな。今後はどうか判らんが」
ニヤッて意味深に笑われた。
これは、あれかな。
とっくにレイナルドとは情報共有済みって感じ?
となると何かしらまた厄介ごとに巻き込まれるかなぁ……なんて思ってたら。
「君、名前は?」
「へ?」
ルドルフに声を掛けられて少し驚いた。こっちだけ名前知っているのもなんだから教えるのは構わないんだが。
「ウーガ、です」
「ウーガか。じゃあウーガ、この町に滞在している間だけ俺と付き合わない?」
「は?」
「えっ」
声は背後から、しかも複数。
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。
食べながら話を聞いていたらレンは朝早くからヒユナと庭で薬草採取デートをしていたらしく、弟の間の悪さには苦笑するしかない。まぁ相手がレンなら何の心配もないけど。
「今日の予定はー?」
「お昼にレイナルドさんをあっちに送ります!」
それ以外はフリーだっていうレンに、昨日の町散策の話をする。
果実水の専門店。
衣料や食材、雑貨の店。
武器や防具。
町の外での薬草採取――。
「どれも気になります」
「町の外で採取するなら、ついでにギルドで依頼があるかどうかも見て来ない? なんとなく冒険者の数そのものが少ない気がするし、薬草関係は不足してるかも」
「あ」
いま気付いたという顔を見合わせるレンとヒユナ。
「ダンジョンに近いんだから病院はありますよね? そこの様子も知りたいです」
レンの言葉に、エニス。
「ならレイナルドを送った後はレンを連れてもう一度町を回ったらいいんじゃないか。気になるもの全部見て回っても2~3時間で済む」
「ああ確かに。町自体そこまで大きくないしね」
俺も賛成しておく。
金級ダンジョンに挑んでいるのは俺たちだけって事前情報もあるし、病院に寄るにしたって僧侶が忙殺される心配はないはず。
「つーか、昼までだってまだ2時間以上あるんだから今の内にギルドだけ行って来よう。依頼や、町に不足しているものを先に確認しておけば今後の予定も立てやすくなるだろうし」
バルドルがリーダーらしく纏める。
色ボケしてるように見えてこういうところはちゃんとしてるから敵わないよね。
「じゃあ早速行こか」
「おう」
みんなが装備を整えている間に、レンが「みんなで町に行ってきます。お昼までには戻ります」とレイナルドに書き置きを残した。
装備と言っても散策用の簡易的なもの。
俺もいつもの弓じゃなく上着の下に投擲用の小型ナイフを仕込んでいて、あとは財布。冒険者のタグに刻んだ証紋で買い物出来るのが一般的だけど土地によっては現金だけって場合もあるからね。
邸からギルドまでは歩いて15分。
バルドルパーティ6人プラスヒユナで移動した。
最近は他所の冒険者が入って来ること自体珍しいのか道行く人たちからの視線が集まって何となく居心地が悪い。別に悪意を向けられているわけではないんだけど。
あー……でもまぁ大陸を制圧した余所者には違いないからジロジロ見られるくらいは仕方ないか。
「あそこがさっき言った果実水の店で、向こうが雑貨屋」
「おー……趣のある店構えですね」
ぼろいって言わないのがレンの良いところだ。
内心で苦笑しつつ、いざギルドへ。
昨日は外で待機していた面々も今日は中に入って、何とも言えない顔で辺りを見渡している。大通りの店構えだけじゃなく此処もそう。人気はそれなりにあるし汚いとかじゃないんだけど、金級ダンジョンの最寄りの町とは思えないくらい寂れているんだよね。
「トゥルヌソルと比べるべきでないのは理解しているが……此処まで違うものか?」
トゥルヌソルは街の中に鉄級と銅級ダンジョンがあって、外には銀級が2か所、更に未踏破の金級ダンジョン最寄りの街でもあるから賑わいが他の比にならないのは当然なんだけど、それにしたって閑散とし過ぎなんだよ。
「……何かおかしくないですか?」
「んー……レイナルドさんも昨日から一人でいろいろ調べてるっぽいし、アッシュさんの旦那さんたちも何か気になるみたいだったし……」
レンとヒユナが小声で囁く。
ふーん。
上の人たちは何かしら察してて動き始めてるってことかな。
「それならそれでいいんじゃない? 正式に任務として言い渡されるまでは邪魔しないのが一番だもん。指示があるまでは休暇楽しも!」
「……ですね」
というわけで依頼書が張り出された掲示板を見てみるけど、こっちも閑散としていた。
薬草関係はいつでも持ち込み歓迎、報酬に些少の上乗せありという表記から、不足しているけど資金にはそれほど余裕が無いのが見て取れる。
依頼が少ないのは、何かを必要とする人がいない。
つまり助けを必要とするほど求められるものがないってことだ。……金級ダンジョン最寄りの町なのに?
皆で顔を見合わせた。
うん、これオカシイわ。
「あれ?」
ふと背後から声が掛かる。
「君らレイナルドパーティの子たちだよな」
「え……」
振り返ったら若い男の二人組。
しかも顔見知りだったので一気に高まった警戒心は霧散する。
「ケヴィンさんとルドルフさん」
金級ダンジョンの入退場を監視しているギルド職員たちだ。出身はグロッド大陸だったっけ。
「せっかくの休みなのに依頼か?」
「家で寝てばっかいるわけにもいかないだろ」
バルドルが前に出て対話役を買って出た。
「あんま楽しい依頼はないぞ」
「そうらしい。此処はいつもこんなか?」
「まぁそうだな。今後はどうか判らんが」
ニヤッて意味深に笑われた。
これは、あれかな。
とっくにレイナルドとは情報共有済みって感じ?
となると何かしらまた厄介ごとに巻き込まれるかなぁ……なんて思ってたら。
「君、名前は?」
「へ?」
ルドルフに声を掛けられて少し驚いた。こっちだけ名前知っているのもなんだから教えるのは構わないんだが。
「ウーガ、です」
「ウーガか。じゃあウーガ、この町に滞在している間だけ俺と付き合わない?」
「は?」
「えっ」
声は背後から、しかも複数。
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。
58
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる