258 / 335
第8章 金級ダンジョン攻略
閑話:ダンジョン近くの町で(3) side:バルドル*
しおりを挟む
クルトと繋がった温かくも潤ったその場所を更なる熱で追い上げた。
早く俺の匂いだけしか香らないようにしたくて激しく穿つ。
最愛の、我慢しようとして抑えきれていない喘ぎも良いが、何とか理性を保とうとして快楽から逃げようとする歪んだ顔も、必死にこっち側に留まろうとするようにシーツを鷲掴む柔い手も、堪らなく愛しい。
「ぁ……イっ……――!」
「っ……」
急な締め付けに慌てて動きを止めた。
種族特有の事情があって「気持ち良くなること」への忌避感をいまだ拭いきれないクルトだから、快楽を素直に受け入れられるようになるまでは毎回それなりの時間が必要だ。
こんな序盤で最初の一発目を使いたくない。
けど、はやく俺の匂いで満たしたい。
俺だけのクルトにしたい。
反応を見ながら律動を再開する。
弱いところなら既に把握済みだ。
攻めて、攻めて、退いて、攻めて。
駆け引きじゃないが相手の理性を試すように繰り返す。
そうしている内にだんだんクルトの喘ぎに甘さが滲んでくるのを確認して、俺も中で達した。途端にクルトから余計な匂いが薄らいで気にならなくなった。
「ふっ……」
これで、やっと俺のだ。
俺だけの最愛の人。
「バル……」
伸ばされた腕を迎えにいくと抱き締められた。
入ったままの俺も深いところで締め付けられる。
「……バル、怒ってる……?」
「怒ってはいない。おまえから俺以外の匂いがするから、……少しイラッとしただけだ」
「ああ……ごめん」
答える代わりにキスした。
謝らせたいわけじゃない。
イヌ科の悪癖というか、匂いに敏感なのがイヌ科の愛情は重いと言われる所以なわけで、他の種と番うと決めた以上は俺が許容しないといけないし、理解しないといけないことだ。
婚姻の儀を受けて正式に番えば、もしかしたらもう少し自信が付くのかもしれないがこんな形で言い出したくはないし。
「ん……っ」
「……苦しくないか?」
「平気……ふ……ぁっ」
「好きだ」
「ぁ……んっ。好き、俺も……っ」
耳に口づけ、頬に触れ、首筋をなぞる。
鎖骨。
脇。
胸の尖り。
俺の手が移動する都度、体を強張らせて吐息を震わせる。
怖いのに。
それでもこうして触れさせてくれる健気さを、愛情を、俺は守らないとならない。
「好き……」
好きだよ。
おまえだけだ。
ありったけの想いを込めて抱き締めた。
一度中に出したことで安心を得た後はクルトを気持ちよくさせるために尽くす。
声が漏れないよう閉ざしがちな口をキスでこじ開け、全身を丁寧に愛撫する。その間ずっと繋がったままでいるとさすがに焦れて来るのかクルトの方からねだるような動作が見え始める。俺たちの本番はそれからだ。
快楽に翻弄されて潤んだ目で「意地悪」と睨まれたら、それだけで達しそうになるくらい俺も余裕など無いが「気持ちいい」が長く続くほどクルトが乱れるんだ。いくらでも耐えられる。
数時間掛けて蕩けるほど愛し合い、大半はクルトが意識を飛ばして終わる。
今日もそのパターンだった。
浅かった呼吸がだんだんと落ち着いていくのを確かめながら、俺自身も呼吸を整えてベッドを降りた。
シャワー室から湯とタオルを運んで、クルトの体を拭くためだ。……そういえば雌体に変わって残念なことが一つだけあったな。中に出したものを掻き出すときの反応を見られなくなった。
あれ、可愛かったんだが……なんて想像したらまた昂りそうになる。
慌ててシャツを羽織らせ、布団を掛けて、シャワー室に駆け込んだ。
頭を冷やせ俺。
◇◆◇
翌朝8時半――。
レンが調薬してくれるあれこれのおかげでダンジョン内でもコトに及べるわけだが、休みの日まで世話になることは無い。本人が「大丈夫」と言うなら多少の筋肉痛と違和感を余韻として楽しめるのも休日の良いところだと思う。
「まぁでも無理はするな」
「うん」
俺の部屋で身支度を整えてテントのリビングダイニングに転移すると、途端に美味しそうなスープの匂いと楽し気な僧侶たちの声がした。
「さすがダンジョンに近いだけありますね、庭でも薬草が採れるなんて」
「金級ダンジョンだけあって薬草の品質も良いし嬉しくなります。あ、その素材は使いますか?」
「ううん、まだ初級も失敗するんだもの。私には必要ないからどうぞ」
「じゃあ遠慮なく頂きます」
しかも食卓の一つに多種多様な植物が積み上がっていた。
どっから持って来たんだ……って、庭か。
「おまえたち二人で外に出たのか?」
「え。あ、クルトさん、バルドルさん、おはようございます!」
声を掛けたらようやくこっちに気付いたレンが笑顔になる。
「おはよう」
「はよ」
「おはようございます」
ヒユナも朝からご機嫌だ。
「朝ごはん食べますか? 今日はコーンスープと、トースト、ポテトサラダ、ソーセージ。卵料理はお好みで」
「ああ、もらうけど……昼頃に来るんだと思ってた」
「俺が休みでも主神様はお休みじゃないですから。家事が終わったら寂しくなっちゃったんで、こっちで皆のご飯作ろうかな、と」
「その時たまたま私がキッチンをお借りしてて、お庭散歩しようって話に」
レンとヒユナが交互に言う。
「そっか。あ、卵料理は俺も手伝う。バルは何にする? スクランブルエッグ? 目玉焼き?」
「あー……目玉焼きで」
「ん」
レンとクルトがキッチンに移動し、ヒユナは嬉々として薬草の仕分け中。
自分はどうしたものかと考えていたら「あ、レンだ!」ってウーガが転移して来た。その後に誰も続かないのは昨夜は酒のおかげで一人で寝れたからだろうか。
「朝飯があるー! 俺も食べるっ、目玉焼きがいい!」
一気に騒がしくなるリビングダイニング。
今日も賑やかな一日になりそうだ。
早く俺の匂いだけしか香らないようにしたくて激しく穿つ。
最愛の、我慢しようとして抑えきれていない喘ぎも良いが、何とか理性を保とうとして快楽から逃げようとする歪んだ顔も、必死にこっち側に留まろうとするようにシーツを鷲掴む柔い手も、堪らなく愛しい。
「ぁ……イっ……――!」
「っ……」
急な締め付けに慌てて動きを止めた。
種族特有の事情があって「気持ち良くなること」への忌避感をいまだ拭いきれないクルトだから、快楽を素直に受け入れられるようになるまでは毎回それなりの時間が必要だ。
こんな序盤で最初の一発目を使いたくない。
けど、はやく俺の匂いで満たしたい。
俺だけのクルトにしたい。
反応を見ながら律動を再開する。
弱いところなら既に把握済みだ。
攻めて、攻めて、退いて、攻めて。
駆け引きじゃないが相手の理性を試すように繰り返す。
そうしている内にだんだんクルトの喘ぎに甘さが滲んでくるのを確認して、俺も中で達した。途端にクルトから余計な匂いが薄らいで気にならなくなった。
「ふっ……」
これで、やっと俺のだ。
俺だけの最愛の人。
「バル……」
伸ばされた腕を迎えにいくと抱き締められた。
入ったままの俺も深いところで締め付けられる。
「……バル、怒ってる……?」
「怒ってはいない。おまえから俺以外の匂いがするから、……少しイラッとしただけだ」
「ああ……ごめん」
答える代わりにキスした。
謝らせたいわけじゃない。
イヌ科の悪癖というか、匂いに敏感なのがイヌ科の愛情は重いと言われる所以なわけで、他の種と番うと決めた以上は俺が許容しないといけないし、理解しないといけないことだ。
婚姻の儀を受けて正式に番えば、もしかしたらもう少し自信が付くのかもしれないがこんな形で言い出したくはないし。
「ん……っ」
「……苦しくないか?」
「平気……ふ……ぁっ」
「好きだ」
「ぁ……んっ。好き、俺も……っ」
耳に口づけ、頬に触れ、首筋をなぞる。
鎖骨。
脇。
胸の尖り。
俺の手が移動する都度、体を強張らせて吐息を震わせる。
怖いのに。
それでもこうして触れさせてくれる健気さを、愛情を、俺は守らないとならない。
「好き……」
好きだよ。
おまえだけだ。
ありったけの想いを込めて抱き締めた。
一度中に出したことで安心を得た後はクルトを気持ちよくさせるために尽くす。
声が漏れないよう閉ざしがちな口をキスでこじ開け、全身を丁寧に愛撫する。その間ずっと繋がったままでいるとさすがに焦れて来るのかクルトの方からねだるような動作が見え始める。俺たちの本番はそれからだ。
快楽に翻弄されて潤んだ目で「意地悪」と睨まれたら、それだけで達しそうになるくらい俺も余裕など無いが「気持ちいい」が長く続くほどクルトが乱れるんだ。いくらでも耐えられる。
数時間掛けて蕩けるほど愛し合い、大半はクルトが意識を飛ばして終わる。
今日もそのパターンだった。
浅かった呼吸がだんだんと落ち着いていくのを確かめながら、俺自身も呼吸を整えてベッドを降りた。
シャワー室から湯とタオルを運んで、クルトの体を拭くためだ。……そういえば雌体に変わって残念なことが一つだけあったな。中に出したものを掻き出すときの反応を見られなくなった。
あれ、可愛かったんだが……なんて想像したらまた昂りそうになる。
慌ててシャツを羽織らせ、布団を掛けて、シャワー室に駆け込んだ。
頭を冷やせ俺。
◇◆◇
翌朝8時半――。
レンが調薬してくれるあれこれのおかげでダンジョン内でもコトに及べるわけだが、休みの日まで世話になることは無い。本人が「大丈夫」と言うなら多少の筋肉痛と違和感を余韻として楽しめるのも休日の良いところだと思う。
「まぁでも無理はするな」
「うん」
俺の部屋で身支度を整えてテントのリビングダイニングに転移すると、途端に美味しそうなスープの匂いと楽し気な僧侶たちの声がした。
「さすがダンジョンに近いだけありますね、庭でも薬草が採れるなんて」
「金級ダンジョンだけあって薬草の品質も良いし嬉しくなります。あ、その素材は使いますか?」
「ううん、まだ初級も失敗するんだもの。私には必要ないからどうぞ」
「じゃあ遠慮なく頂きます」
しかも食卓の一つに多種多様な植物が積み上がっていた。
どっから持って来たんだ……って、庭か。
「おまえたち二人で外に出たのか?」
「え。あ、クルトさん、バルドルさん、おはようございます!」
声を掛けたらようやくこっちに気付いたレンが笑顔になる。
「おはよう」
「はよ」
「おはようございます」
ヒユナも朝からご機嫌だ。
「朝ごはん食べますか? 今日はコーンスープと、トースト、ポテトサラダ、ソーセージ。卵料理はお好みで」
「ああ、もらうけど……昼頃に来るんだと思ってた」
「俺が休みでも主神様はお休みじゃないですから。家事が終わったら寂しくなっちゃったんで、こっちで皆のご飯作ろうかな、と」
「その時たまたま私がキッチンをお借りしてて、お庭散歩しようって話に」
レンとヒユナが交互に言う。
「そっか。あ、卵料理は俺も手伝う。バルは何にする? スクランブルエッグ? 目玉焼き?」
「あー……目玉焼きで」
「ん」
レンとクルトがキッチンに移動し、ヒユナは嬉々として薬草の仕分け中。
自分はどうしたものかと考えていたら「あ、レンだ!」ってウーガが転移して来た。その後に誰も続かないのは昨夜は酒のおかげで一人で寝れたからだろうか。
「朝飯があるー! 俺も食べるっ、目玉焼きがいい!」
一気に騒がしくなるリビングダイニング。
今日も賑やかな一日になりそうだ。
58
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる