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第8章 金級ダンジョン攻略
235.最寄りの町へ(4)
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川に掛かっている橋を渡って約30メートル。
林道の先にそれはあった。
さすが貴族の別荘というべきか、物が運び出されてガランとしている邸内は少し肌寒く感じられるが中はとても広かった。俺たちが暮らしているトゥルヌソルの家と比べても数倍はあると思う。
玄関ホールは高い吹き抜け。
真正面には大きな階段。
「1階に厨房、食堂、応接室。2階に主人や家族の寝室や執務室、図書室。右側の別棟が使用人の寮で左側が客室として使われていたらしい」
「ほー」
貴族の別荘というからには水回り関係は全部それぞれの部屋についているんだろう。
「ただし貴族が使うような家具は一切合切運び出されているんで、家具が残っているのは使用人の部屋くらいだそうだ」
「水回りは」
「使用人の寮は共用の風呂場が残ってる」
「ふうん」
「とりあえず見てみないと判らないわ」
アッシュさんの一言で、分担して一通り見て回ることにした。
全員が玄関ホールに戻って来たのはそれから30分くらいが経った頃だ。
それぞれが見たものを報告したところ、レイナルドさんが聞いて来た通り家具が残っていたのは使用人用の部屋くらいで、あとは図書室の壁に備え付けられている本棚に数冊放置されているのと、日焼けしたカーテンとか、汚れた絨毯が目についたくらい。
「キッチンにあるべき魔道具も全部持ち出されたみたいなので食事の支度は出来ませんね」
「使用人が使っていた共用の風呂場やトイレは水の魔石を設置すれば使えると思う。在庫あるか?」
「えっと……ありますけど、この玄関ホールでも良いし、応接室とか、食堂なら神具のテントを設置出来ますよ?」
思わず言ってしまった。
だって使用人用の部屋に家具があるって言ったって、本当に家具があるだけで、例えばベッド。木枠の寝台は確かにそこにあったけど、シーツどころかマットレスもないんだよ。
「このお屋敷を借りるにしてもすぐに寝泊まりする環境を整えるのは難しいですよね?」
「まあ……そうだな」
それに、ほら。
うちのテントの個室は防音もバッチリですし。
「ギルドもよくこれをコテージ代わりに推薦して来たな」
「推薦というより、プラーントゥ大陸の担当地域なんだから何とかしろってとこだろう」
「それだ」
間違いないと断言する面々。
つまり悪い言い方をするなら「押し付けられた」ってわけだ。
「今すぐ寝泊まり出来るかって言ったら無理だが、建物自体はまだまだ使えるよな」
「雨が降れば判らんが、屋根や壁に雨漏りしてるような染みは見当たらなかったし」
「取り壊すのは勿体ないかなぁ」
みんなであれこれ言い合って、結果、此処に寝泊まりすることに決まった。
応接室にテントを設置して寝泊まりはダンジョンにいた時と同様に個室で。ちなみに別行動するつもりだった4人も今日の所は此処に残ることにしていた。
トゥルヌソルの家に帰る人は、予定通り。
コテージで寝泊まりするって言っていた面々も、とりあえず予定通りかな。
「一先ず今日はもう休もう。レンはテントを頼む。明日以降、此処に残る奴には声を掛けるかもしれないんで、手が空いている時は手伝ってくれ」
「はい」
「りょーかい」
エニスさんとウーガさんが即答。
ヒユナさんとドーガさんも頷いている。
「俺は食事の支度だとかで一日一回は顔出しますね」
「えっ、いいの?」
俺が行ったら、ウーガさんの顔がパッと輝いた。
エニスさんとレイナルドさんは似た顔で「無理するな」と。
「少し歩けば食堂も酒場も、屋台だってあるんだ。主神様に恨まれるのは御免だぞ」
「心配しなくてもリ……主神様はそれくらいで怒ったりしませんよ」
「そうか?」
ものすごく不可解そうな顔をされた。
何故。
◇◆◇
読んでいただきありがとうございます。最近短くて済みません、熱さに参り気味です。
明日からは閑話です。そしてサブタイトルの修正を入れるかもしれません。予めご了承ください。
林道の先にそれはあった。
さすが貴族の別荘というべきか、物が運び出されてガランとしている邸内は少し肌寒く感じられるが中はとても広かった。俺たちが暮らしているトゥルヌソルの家と比べても数倍はあると思う。
玄関ホールは高い吹き抜け。
真正面には大きな階段。
「1階に厨房、食堂、応接室。2階に主人や家族の寝室や執務室、図書室。右側の別棟が使用人の寮で左側が客室として使われていたらしい」
「ほー」
貴族の別荘というからには水回り関係は全部それぞれの部屋についているんだろう。
「ただし貴族が使うような家具は一切合切運び出されているんで、家具が残っているのは使用人の部屋くらいだそうだ」
「水回りは」
「使用人の寮は共用の風呂場が残ってる」
「ふうん」
「とりあえず見てみないと判らないわ」
アッシュさんの一言で、分担して一通り見て回ることにした。
全員が玄関ホールに戻って来たのはそれから30分くらいが経った頃だ。
それぞれが見たものを報告したところ、レイナルドさんが聞いて来た通り家具が残っていたのは使用人用の部屋くらいで、あとは図書室の壁に備え付けられている本棚に数冊放置されているのと、日焼けしたカーテンとか、汚れた絨毯が目についたくらい。
「キッチンにあるべき魔道具も全部持ち出されたみたいなので食事の支度は出来ませんね」
「使用人が使っていた共用の風呂場やトイレは水の魔石を設置すれば使えると思う。在庫あるか?」
「えっと……ありますけど、この玄関ホールでも良いし、応接室とか、食堂なら神具のテントを設置出来ますよ?」
思わず言ってしまった。
だって使用人用の部屋に家具があるって言ったって、本当に家具があるだけで、例えばベッド。木枠の寝台は確かにそこにあったけど、シーツどころかマットレスもないんだよ。
「このお屋敷を借りるにしてもすぐに寝泊まりする環境を整えるのは難しいですよね?」
「まあ……そうだな」
それに、ほら。
うちのテントの個室は防音もバッチリですし。
「ギルドもよくこれをコテージ代わりに推薦して来たな」
「推薦というより、プラーントゥ大陸の担当地域なんだから何とかしろってとこだろう」
「それだ」
間違いないと断言する面々。
つまり悪い言い方をするなら「押し付けられた」ってわけだ。
「今すぐ寝泊まり出来るかって言ったら無理だが、建物自体はまだまだ使えるよな」
「雨が降れば判らんが、屋根や壁に雨漏りしてるような染みは見当たらなかったし」
「取り壊すのは勿体ないかなぁ」
みんなであれこれ言い合って、結果、此処に寝泊まりすることに決まった。
応接室にテントを設置して寝泊まりはダンジョンにいた時と同様に個室で。ちなみに別行動するつもりだった4人も今日の所は此処に残ることにしていた。
トゥルヌソルの家に帰る人は、予定通り。
コテージで寝泊まりするって言っていた面々も、とりあえず予定通りかな。
「一先ず今日はもう休もう。レンはテントを頼む。明日以降、此処に残る奴には声を掛けるかもしれないんで、手が空いている時は手伝ってくれ」
「はい」
「りょーかい」
エニスさんとウーガさんが即答。
ヒユナさんとドーガさんも頷いている。
「俺は食事の支度だとかで一日一回は顔出しますね」
「えっ、いいの?」
俺が行ったら、ウーガさんの顔がパッと輝いた。
エニスさんとレイナルドさんは似た顔で「無理するな」と。
「少し歩けば食堂も酒場も、屋台だってあるんだ。主神様に恨まれるのは御免だぞ」
「心配しなくてもリ……主神様はそれくらいで怒ったりしませんよ」
「そうか?」
ものすごく不可解そうな顔をされた。
何故。
◇◆◇
読んでいただきありがとうございます。最近短くて済みません、熱さに参り気味です。
明日からは閑話です。そしてサブタイトルの修正を入れるかもしれません。予めご了承ください。
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