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第8章 金級ダンジョン攻略
234.最寄りの町へ(3)
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町に着いて、まずは全員で冒険者ギルドに向かった。
よく考えたらマーヘ大陸に着いてから冒険者ギルドに立ち寄ったのは初めてのことで、トゥルヌソルやオセアン大陸で立ち寄った時に比べると建物の中が閑散としていてるのを実際に見てようやく此処では冒険者の活動も停滞していたのだろうことが想像出来た。
ダンジョンへの入退場を監視する係が新たに5大陸から派遣されているように、各地の冒険者ギルドの職員も顔触れが変わっている。ここの職員さんがダンジョン前の当番も兼任しているんだから当然といえば当然だね。
大勢で受付カウンターに陣取るのも申し訳ないので、コテージが借りられるとして実際に滞在するメンバー、レイナルドさん、ヒユナさん、ウーガさん、ドーガさん、エニスさんの5人がそちらに向かい、俺たちは外で待機することにした。
ギルドは町で一番広い大通りに面していて、右側の箱型の建物はたぶん解体場。
右側には酒場があって、数軒の宿屋が同じ通りに点在している。
それからお店。
食べ物や衣服、雑貨、武器屋、防具屋、鍛冶屋。
通路を一本中に入ると居住区だ。
そんなに広い町じゃないし、人口は200人くらい。たぶん30分もあれば一周出来るだろう。
「コテージって、俺のイメージだと森や湖畔、自然が豊かな場所にあるんですけど、この町だとどの辺りにあるんですか?」
「そのイメージっておまえの世界でってことか?」
バルドルさんに確認されたので頷く。
他の人たちが驚いたような顔をした。
「ところ変わればって言うのかしら」
「ギルドで紹介してくれるコテージは、あの居住区のどこかだと思うわよ」
アッシュさんとミッシェルさんが大通りの奥を指差す。
なるほど、それだと借家って言われた方が俺的には判り易いかもしれない。いや、数日のレンタルだからやっぱりコテージでいいのかな。
どんな建物があるのかその場で爪先立ちしたり体を傾けて見てみると、……うん、マーヘ大陸の状況を鑑みれば屋根があるだけありがたいのかもしれない。
浄化の旅で環境はすっかり良くなっているけど、生き延びた人たちの暮らしが上向くにはまだいろんなものが足りていない。大通りだけは宿屋も含めてきちんと整えて見えるのは、大陸連合による補助のおかげかな。
借りるコテージの状態次第では全員でトゥルヌソルの家で寝起きするのもアリかもしれない。
そんなことを考えて15分くらい待っていたら、渋い顔をしたレイナルドさんたちが戻って来た。
「待たせた」
「いや。コテージはあったか?」
「ああ……条件付きだが格安で貴族の別荘を借りられることになった」
「は?」
思わず全員で聞き返した。
貴族って、なんで?
件の別荘までの道すがら、レイナルドさんはその事情と条件を説明してくれた。さすがに庶民の居住区には建っていないみたいで現地までは15分ほど歩くらしい。
「大陸連合が制圧した関係でマーヘのほとんどの国は消失。新たに国境を引き直して5大陸が5分割して統治するって話は以前にしただろ」
つまり国が無くなったと同時に貴族もいなくなるわけで、この町にあった貴族の別荘とやらも所有者不在になったんだ。
で、未攻略ダンジョンの所有権を得たギァリック・オセアン・キクノ・グロッド大陸はそれぞれ自分たちのダンジョンがある地域を統治したから、未攻略ダンジョンが無いこの辺りを得ることになったのはプラーントゥ大陸――つまり俺たち。
「建物なんて人が住まないとあっという間に朽ちる。金目のものは既に徴収して連合で処理済みだが邸をどうするか結論は保留されているんだと」
「解体するにも金が掛かるからな」
「それに人手も必要だ。かと言って手付かずで放置しておくのも良くないってんで、維持か、解体かを俺たちに判断して欲しいらしい」
レイナルドさんも貴族だから、かな?
っていうかゲンジャルさんたちももしかして……。
「おお、さすが貴族の別荘」
連休中は一緒に行動しないにしても、場所は確認しておくため同行していたディゼルさんが前方を指差した。
川の向こう、橋を渡った先に建っていたのは洋館だ。オレンジ色のレンガ造りで左右対称の3階建て。長方形の奥に三角屋根の建物が2つ並んでいるようにも見える。奥行きはかなりあって、窓の数からしても全員で泊ったって余るくらい部屋数がありそうだ。
「……おまえたちも此処でいんじゃね?」
ゲンジャルさんが言うと、バルドルさんとクルトさん、ディゼルさんとオクティバさんがそれぞれ顔を見合わせて、最終的にバルドルさん。
「中を見てから決める」だって。
よく考えたらマーヘ大陸に着いてから冒険者ギルドに立ち寄ったのは初めてのことで、トゥルヌソルやオセアン大陸で立ち寄った時に比べると建物の中が閑散としていてるのを実際に見てようやく此処では冒険者の活動も停滞していたのだろうことが想像出来た。
ダンジョンへの入退場を監視する係が新たに5大陸から派遣されているように、各地の冒険者ギルドの職員も顔触れが変わっている。ここの職員さんがダンジョン前の当番も兼任しているんだから当然といえば当然だね。
大勢で受付カウンターに陣取るのも申し訳ないので、コテージが借りられるとして実際に滞在するメンバー、レイナルドさん、ヒユナさん、ウーガさん、ドーガさん、エニスさんの5人がそちらに向かい、俺たちは外で待機することにした。
ギルドは町で一番広い大通りに面していて、右側の箱型の建物はたぶん解体場。
右側には酒場があって、数軒の宿屋が同じ通りに点在している。
それからお店。
食べ物や衣服、雑貨、武器屋、防具屋、鍛冶屋。
通路を一本中に入ると居住区だ。
そんなに広い町じゃないし、人口は200人くらい。たぶん30分もあれば一周出来るだろう。
「コテージって、俺のイメージだと森や湖畔、自然が豊かな場所にあるんですけど、この町だとどの辺りにあるんですか?」
「そのイメージっておまえの世界でってことか?」
バルドルさんに確認されたので頷く。
他の人たちが驚いたような顔をした。
「ところ変わればって言うのかしら」
「ギルドで紹介してくれるコテージは、あの居住区のどこかだと思うわよ」
アッシュさんとミッシェルさんが大通りの奥を指差す。
なるほど、それだと借家って言われた方が俺的には判り易いかもしれない。いや、数日のレンタルだからやっぱりコテージでいいのかな。
どんな建物があるのかその場で爪先立ちしたり体を傾けて見てみると、……うん、マーヘ大陸の状況を鑑みれば屋根があるだけありがたいのかもしれない。
浄化の旅で環境はすっかり良くなっているけど、生き延びた人たちの暮らしが上向くにはまだいろんなものが足りていない。大通りだけは宿屋も含めてきちんと整えて見えるのは、大陸連合による補助のおかげかな。
借りるコテージの状態次第では全員でトゥルヌソルの家で寝起きするのもアリかもしれない。
そんなことを考えて15分くらい待っていたら、渋い顔をしたレイナルドさんたちが戻って来た。
「待たせた」
「いや。コテージはあったか?」
「ああ……条件付きだが格安で貴族の別荘を借りられることになった」
「は?」
思わず全員で聞き返した。
貴族って、なんで?
件の別荘までの道すがら、レイナルドさんはその事情と条件を説明してくれた。さすがに庶民の居住区には建っていないみたいで現地までは15分ほど歩くらしい。
「大陸連合が制圧した関係でマーヘのほとんどの国は消失。新たに国境を引き直して5大陸が5分割して統治するって話は以前にしただろ」
つまり国が無くなったと同時に貴族もいなくなるわけで、この町にあった貴族の別荘とやらも所有者不在になったんだ。
で、未攻略ダンジョンの所有権を得たギァリック・オセアン・キクノ・グロッド大陸はそれぞれ自分たちのダンジョンがある地域を統治したから、未攻略ダンジョンが無いこの辺りを得ることになったのはプラーントゥ大陸――つまり俺たち。
「建物なんて人が住まないとあっという間に朽ちる。金目のものは既に徴収して連合で処理済みだが邸をどうするか結論は保留されているんだと」
「解体するにも金が掛かるからな」
「それに人手も必要だ。かと言って手付かずで放置しておくのも良くないってんで、維持か、解体かを俺たちに判断して欲しいらしい」
レイナルドさんも貴族だから、かな?
っていうかゲンジャルさんたちももしかして……。
「おお、さすが貴族の別荘」
連休中は一緒に行動しないにしても、場所は確認しておくため同行していたディゼルさんが前方を指差した。
川の向こう、橋を渡った先に建っていたのは洋館だ。オレンジ色のレンガ造りで左右対称の3階建て。長方形の奥に三角屋根の建物が2つ並んでいるようにも見える。奥行きはかなりあって、窓の数からしても全員で泊ったって余るくらい部屋数がありそうだ。
「……おまえたちも此処でいんじゃね?」
ゲンジャルさんが言うと、バルドルさんとクルトさん、ディゼルさんとオクティバさんがそれぞれ顔を見合わせて、最終的にバルドルさん。
「中を見てから決める」だって。
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