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第8章 金級ダンジョン攻略
231.トラントゥトロワ(4)
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「さっぶい!」
15階層に入った途端に景色が一変した。
それまでも気温は氷点下に近くて寒い思いをしていたが、階層が変わった途端に一面が雪景色になった。
降り積もる新雪で先人が踏み固めた道なんてどこにも無い。それでも情報があるから進路に迷うことはないけど、初踏破を果たした冒険者への尊敬度は爆上がりだ。
だって事前情報ゼロでこの雪原に踏み出すんだよ?
間違いなく勇者だ。
「全員、転移陣に魔力登録し終わったか?」
「おう」
「はーい」
レイナルドさんの確認に全員が終わったことを伝える。
「なら、一度出るか。結局ギリギリになったしな」
「踏破済みだからってナメ過ぎたわ」
ゲンジャルさんが腰を叩きながら反省している。
そう、最初に14日間で申請したからには最低でも15階層の転移陣までは辿り着いておかなければならず、全員で進むことを最優先にしていたにも関わらず、振り返ってみれば1日1階層が限界だった。
「14日で申請するのは危険かもな。次回は20日間で申請したらどうだ」
「賛成」
「その方が私たちも精神的に余裕が持てるわ」
うんうん、心の余裕って大事だと思う。
レイナルドさんも同感だったみたいで「そうするか」と。
ダンジョンから出ながら次回の相談をしていることに少ならからず驚くが、それが彼らの普通らしい。
転移陣に乗って、一瞬。
入口を指定しただけで1階入り口の転移陣に戻り、そこからウォーカーさんが最初に出入り口を通って外へ出た。入って来る人がいないかを確認し終えたウォーカーさんが再び戻って来る。
「大丈夫だ、順番に出よう」
「おう」
順番にダンジョンから退場し、俺も真ん中くらいで外へ。
洞に戻った途端に周辺の空気が今までと全然違うことを実感し「帰って来た」という気持ちになった。
しかも温かい。
5月半ばの季節は春だ。
洞を出てすぐに防寒着を脱ぎ、拡張されているバックパックに仕舞い込む。
「あーなんか体が軽い!」
「寒いとそれだけでこう……手足が固まるっていうか、動きにくいですよね」
ウーガさんと、ヒユナさん。
「よし、全員出たな」
レイナルドさんがそれを確認し終えたのと、待機小屋の職員が声を掛けて来たのがほぼ同時だった。しかも話しかけてきたのは入場した時にもあったケヴィンさんだが、その後ろにはルドルフさん以外にも2人いた。
「お疲れさん、申請通りだな」
「ああ何とかな」
「問題はなかったか?」
「全員無事だ。だが少し甘く見積もり過ぎた」
「そうなのか?」
「一日1階層が限界だったからな。……此処に挑戦したことは?」
「まだだ。もうすぐここ担当の職員が各大陸から集まるんで、揃ったら分担して挑戦する予定ではいる」
「それなら」――。
こちらとあちらの代表者が真面目な顔をして話し合っている一方、こちらは久々の町で今夜はどう過ごそうかって盛り上がっている。
何せゲンジャルさんたちは俺の神具の扉で番に会えるし。
休みの日数にもよるけど、少なくとも明日は間違いなく休みだ。羽目を外し過ぎなければ、ほら、……いろいろ出来るし。
もちろんギルド職員の彼らに話が漏れないよう声量には気を付けているんだけど、ふと妙な気配を感じてしまった。
「……?」
なんだろう。
初めて見るギルド職員の一人が、とても嫌な視線をこちらで盛り上がっている誰かに向けていた。
15階層に入った途端に景色が一変した。
それまでも気温は氷点下に近くて寒い思いをしていたが、階層が変わった途端に一面が雪景色になった。
降り積もる新雪で先人が踏み固めた道なんてどこにも無い。それでも情報があるから進路に迷うことはないけど、初踏破を果たした冒険者への尊敬度は爆上がりだ。
だって事前情報ゼロでこの雪原に踏み出すんだよ?
間違いなく勇者だ。
「全員、転移陣に魔力登録し終わったか?」
「おう」
「はーい」
レイナルドさんの確認に全員が終わったことを伝える。
「なら、一度出るか。結局ギリギリになったしな」
「踏破済みだからってナメ過ぎたわ」
ゲンジャルさんが腰を叩きながら反省している。
そう、最初に14日間で申請したからには最低でも15階層の転移陣までは辿り着いておかなければならず、全員で進むことを最優先にしていたにも関わらず、振り返ってみれば1日1階層が限界だった。
「14日で申請するのは危険かもな。次回は20日間で申請したらどうだ」
「賛成」
「その方が私たちも精神的に余裕が持てるわ」
うんうん、心の余裕って大事だと思う。
レイナルドさんも同感だったみたいで「そうするか」と。
ダンジョンから出ながら次回の相談をしていることに少ならからず驚くが、それが彼らの普通らしい。
転移陣に乗って、一瞬。
入口を指定しただけで1階入り口の転移陣に戻り、そこからウォーカーさんが最初に出入り口を通って外へ出た。入って来る人がいないかを確認し終えたウォーカーさんが再び戻って来る。
「大丈夫だ、順番に出よう」
「おう」
順番にダンジョンから退場し、俺も真ん中くらいで外へ。
洞に戻った途端に周辺の空気が今までと全然違うことを実感し「帰って来た」という気持ちになった。
しかも温かい。
5月半ばの季節は春だ。
洞を出てすぐに防寒着を脱ぎ、拡張されているバックパックに仕舞い込む。
「あーなんか体が軽い!」
「寒いとそれだけでこう……手足が固まるっていうか、動きにくいですよね」
ウーガさんと、ヒユナさん。
「よし、全員出たな」
レイナルドさんがそれを確認し終えたのと、待機小屋の職員が声を掛けて来たのがほぼ同時だった。しかも話しかけてきたのは入場した時にもあったケヴィンさんだが、その後ろにはルドルフさん以外にも2人いた。
「お疲れさん、申請通りだな」
「ああ何とかな」
「問題はなかったか?」
「全員無事だ。だが少し甘く見積もり過ぎた」
「そうなのか?」
「一日1階層が限界だったからな。……此処に挑戦したことは?」
「まだだ。もうすぐここ担当の職員が各大陸から集まるんで、揃ったら分担して挑戦する予定ではいる」
「それなら」――。
こちらとあちらの代表者が真面目な顔をして話し合っている一方、こちらは久々の町で今夜はどう過ごそうかって盛り上がっている。
何せゲンジャルさんたちは俺の神具の扉で番に会えるし。
休みの日数にもよるけど、少なくとも明日は間違いなく休みだ。羽目を外し過ぎなければ、ほら、……いろいろ出来るし。
もちろんギルド職員の彼らに話が漏れないよう声量には気を付けているんだけど、ふと妙な気配を感じてしまった。
「……?」
なんだろう。
初めて見るギルド職員の一人が、とても嫌な視線をこちらで盛り上がっている誰かに向けていた。
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