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第7章 呪われた血筋

227.事後処理(3)

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「マーヘ大陸のダンジョンはどういう扱いになる? 特に金級オーァル以上のだが」
「あー……まぁ今後の協議次第だが、プラーントゥ大陸とオセアン大陸はマーヘ大陸から慰謝料その他もらえるもんはもらう。ただ、他の大陸も協力した見返りは求めて来るだろう」
「ギァリック大陸は未踏破の白金級プラティヌダンジョンを欲しがるだろうな」
「自分のところの精鋭が攻略を進めていたんだから当然ね」
「ダンジョンつったら、マーヘには他にも未踏破があるだろ。もう一つの白金級プラティヌもそうだし、確か金級オーァルも3つある内の2つが未踏破だったはずだ」

 ゲンジャルさんからの新情報。

「最初に踏破するまではどこが独占しても構わないが、その後はすべての大陸で共有する形に持っていけないか」

 グランツェさん。

「それが妥当だろうな。どの大陸も自分の所の強者が冒険者ランクを上げることを望んでる。マーヘ大陸が自滅して金級オーァル3、白金級プラティヌ2がフリーになったら、少なくとも白金級プラティヌに上がれる冒険者は一気に増えるだろう」

 レイナルドさん。
 それより上に行くのは相変わらずの難易度でも、白金級プラティヌ冒険者の資格を得れば白金級プラティヌダンジョンへの入場資格を得る。ギァリック大陸以外はどの大陸にも未踏破の白金級プラティヌダンジョンがあって、そこにはまだ誰も知らないお宝が眠っている。
 自国の利益を考えるならマーヘ大陸のダンジョンは共有するのが良いって、きっと皆が考えている。

「ダンジョン初踏破の栄誉なら、俺たちはこれからプラーントゥ大陸で確実に手に入る。マーヘ大陸で欲を掻く必要はない、だろ?」

 そう。
 プラーントゥ大陸には未踏破の金級オーァルが一つ、白金級プラティヌが一つ、そして神銀級ヴレィ・アルジョンが一つある。
 俺たちに必要なのは、無条件で挑める10ヵ所の金級オーァルダンジョンと5か所の白金級プラティヌダンジョンだ。
 レイナルドさんも、グランツェさんも、そして俺たちも目指している場所は同じ。

「なら、俺たちがここで事後処理に当たっている間、おまえたちは踏破済みの金級オーァルダンジョンに行くか? あそこならすぐに入れるよう交渉出来る」
「あの」

 レイナルドさんからの問い掛けに手を挙げたのはクルトさんだ。

「踏破済みの金級オーァルダンジョンって、セイス国ですよね?」
「そうだ」

 セイスといえばプラーントゥ大陸の船が着いた場所だ。

「レイナルドさんたちがどれくらいの期間、事後処理にあたるかは判りませんが此処からセイス国まで移動するだけでも数日掛かります。しかもその後でレンくんはマーヘ大陸の浄化ピュリフィカシオン作業があります」
「ああ」

 クルトさんは、金級オーァルダンジョンは60階層まである上に難易度も銀級アルジョンに比べると格段に上がること、攻略に相当の時間が掛かることなどを理由に挙げて、待機中――レイナルドさんたちの仕事が終わるまで待って浄化ピュリフィカシオン作業を開始するまでの間に始めるべきではないと主張した。

「それならスィンコの銀級アルジョンダンジョンで待つのはどうですか。ここから近くて、クリアする必要はない。マーヘ大陸のダンジョンでは他の大陸にいない魔物との戦闘経験も積めます」

 みんながそれぞれに顔を見合わせる。

「いいんじゃないか?」
「マーヘ大陸の金級オーァルダンジョンなら俺らも未攻略だ。落ち着いてから一緒に行った方が数を稼げるしさ」

 モーガンさんと、ゲンジャルさん。

「育てたい魔物が見つかるかもしれないね」

 魔力豊富なオクティバさん。

「マーヘ大陸のダンジョンは果物や木の実が豊富だって聞いたことがある」
「植生もきっと違いますよね。セルリーさんへのお土産が採れるかも」

 ディゼルさんとヒユナさん。
 師匠へのお土産なら俺も採取したい!

「いまなら低レベルな冒険者もいない、か」

 レイナルドさんもそこを指摘する。
 マーヘ大陸の各国が制圧されて、もともと微妙な運営だった冒険者ギルドも大陸連合に抑えられた。ダンジョンの入場許可も出せなくなっているから、いまこの大陸のダンジョンはすべて無人と言って良いと思う。

「……事後処理だって、レンの浄化ピュリフィカシオンの旅に付き合うといって適当なところで他の連中に任せればいいのでは」

 ぽつりと呟くウォーカーさん。
 横でアッシュさんも頷いている。

「重要度なら浄化ピュリフィカシオンが最優先だものね」

 ミッシェルさん。
 というかこの人たちの本音は「神具『野営用テント』から離れたくない」のような気がする。
 違う?

「俺たちはもちろん賛成だ」

 他の人たちに比べるとどうしても経験が足りないことを気にしているバルドルさんが言えば、エニスさん、ウーガさん、ドーガさんも否はない。俺ももちろん賛成。
 レイナルドさんは全員の意見を纏めて結論を出す。

「なら、グランツェパーティとバルドルパーティはスィンコの銀級アルジョンダンジョンで経験積みながら待機。俺たちと合流後に大陸を浄化ピュリフィカシオンして回り、プラーントゥ大陸に戻る前にセイス国の金級オーァルダンジョンに挑む――この予定でいいか?」
「はい!」
「おう」
「異議なし」

 全員の意見が一致した。
 もしセイス国のダンジョンを攻略した後にもう二つの金級オーァルダンジョンが解放されていたら、その時に改めて予定を立てることにして話合いは終わった。




 ◇◆◇

 その後――

 事後処理を終えたレイナルドさんたちが俺たちと合流して、マーヘ大陸全域を浄化ピュリフィカシオンするための移動が終わるまでに掛かった期間は1ヵ月以上。
 北側はほぼ街が壊滅していたが、南側はそれなりに保っていて、でも自分の住んでいる大陸がこんな状態じゃ落ち着けるはずがなく、立ち寄った街や村で毎回足止めされたのも時間が掛かった理由の一つだ。
 ともあれ大陸全域の浄化ピュリフィカシオンが終わる頃にはレイナルドさんたちが他の人に押し付け……じゃなく、代わってもらった事後処理も終わった。
 マーヘ大陸の北半分は、国の消えた土地を国境も新たに5つに分けてプラーントゥ、オセアン、キクノ、ギァリック、グロットから王族、または王族に準ずる者が派遣されて新しい国を興すそうだ。
 レイナルドさんも「どうだ?」って冗談半分に打診されて「絶対にお断りだ」と一蹴していた。
 で、南半分は現状維持。
 ただし悪質な奴隷制度に関しては全面禁止。
 冒険者ギルドの運営や国境を越える際の手続きなどは大陸連合の決定に従うこと、などなど新しい決まりが拡声魔法で大陸全土に布告された。
 これまでの生活とは大きく変化するが、旧体制についていけなかった国にとってはむしろ住みやすくなるのではないだろうか。


 そして、カンヨンの王様は処刑された。
 獄鬼ヘルネルに憑かれた各国の重鎮たちや、自主的に獄鬼ヘルネルに協力した人々と共に。
 その一部始終は魔道具と投影魔法で、他の大陸の王侯貴族にも映像で届けられたという。


 ダンジョンに関しては、カンヨン北の白金級プラティヌダンジョンはギァリック大陸に。
 オンセの白金級プラティヌダンジョンはオセアン大陸に。
 未踏破のカンヨン国内の金級オーァルダンジョンはグロッド大陸に。
 同じく未踏破でスィンコ国内にある金級オーァルダンジョンはキクノ大陸の所有になった。
 で、プラーントゥ大陸はというと、どのダンジョンも初踏破を各大陸が達成したらフリーパスで入場出来る権利をもぎ取った。攻略済みのセイス国のダンジョンも入場できる。
 と言ってもフリーパスなのは俺たちだけで、他のプラーントゥ大陸出身者は若干の費用が掛かるし、今回の制圧戦に参加しなかった人は入場料が跳ね上がる。
 もちろん白金級プラティヌに入場するには白金級プラティヌ冒険者にならないとダメだけど、お金さえ払えば誰でも入場できるというのは今までになかったこと。
 挑戦者たちの期待は高まるばかりだ。


 それから個人的な件での報告といえば!
 途中で出逢った森人族エルフの少年ルークは、レイナルドさんから細い植木を預けられて一足先にプラーントゥ大陸へ移動した。トゥルヌソルの森人族エルフの森に植樹した後はレイナルドさんのお兄さんの邸宅で使用人として雇われる予定だという。


 そうこうして迎えた4月半ば。
 俺たちは家に帰る前にクリアしようと決めていたセイス国の金級オーァルダンジョンの入り口前にいる。
 セイス国の金級オーァルダンジョンは「トラントゥトロワ」という名前だった。




 ◇◆◇

 いつもありがとうございます。
 連載再開から何とか一月更新を続けることが出来ました。今後も精進してまいります。明日から閑話をいくつか。リーデン、ウーガ、カンヨンの王様、後は思い付いたら増えるかも。
 その後金級オーァルダンジョン攻略に入ります。

 よろしくお願いいたします。
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