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第7章 呪われた血筋

213.その後の数日

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 俺たちがウノの国で行動を開始すると同時に、海岸沿いでも状況が大きく変わった。
 ぶっちゃけてしまうとギァリッグ大陸の連合軍は独力で問題なくウノを制圧出来たと思う。
 ただ、彼らは自国の白金級プラティヌの騎士30名を人質に取られているも同然で、彼らが攻略に挑んでいる白金級プラティヌダンジョンは最大の敵カンヨン国の北。
 俺たちがそのダンジョン周辺の安全を確保するまでは海側に北方三国の戦力を幾らかでも引き付けておくという任務があったから、苦戦しているように見せかけていただけだ。
 メッセンジャーで常に双方の情報は共有してある。
 プラーントゥとキクノの連合軍でウノ国の王都に進軍すると同時、ギァリッグ大陸の連合軍も満を持してマーヘ大陸に上陸した。
 これによってウノ国の全域がその日の内に大陸連合軍によって落ちた。
 ウノの西側ドスは翌日。
 東のトレスはその半日後。
 メッセンジャーによって、海上に待機していたプラーントゥ大陸、キクノ大陸双方の戦士たちが海側から。内側からは俺たちが進軍したことであっという間だった。
 生きている人が完全にゼロだったのも大きい。
 国がそもそも狭かったのもある。
 もう一つあえて理由を挙げるとすれば……レイナルドさんたちはあの臭いに耐えられないから俺を連れて回りたかったみたいだけど、俺がいるかいないかでどう違うのかを実感していたのは一緒に行動している人たちだけで、他の人にはいまいちピンとこなかったらしい。
 結局お偉いさんたちの多数決で時間を優先させることに決まったんだ。
 そんなこんなで誰が俺と一緒に行動するのかを賭けて一部の人たちが真剣に力比べしていたらしいけど、それで怪我人が出ても誰も叱るに叱れなかったそうだ。
 ごめんね。
 教えて出来ることなら幾らでも教えたんだけどさ……。
 ちなみに一番激しかったのはゲンジャルさん対ウォーカーさんでした。
 偉い人が一つに固まるな、って。
 いやほんと、大変だよね。
 ちなみに森人族エルフの少年・クールはプラーントゥ大陸の船に保護されている。




 それから更に一日を経て、俺たち5大陸の連合軍はカンヨン国の外周を囲み、タイミングを合わせながら王都に向けて進軍した。
 白金級プラティヌダンジョンに入れる人たちは人質になっている30人の騎士を迎えに行って、かなり無茶をしたみたいだけど、難易度があまりにも高いせいで救出対象がまだ低階層にいたのが幸いし、わずか4日でダンジョンから撤収完了。
 事情を話し、合流すると決めた騎士はこちらに。
 休息が必要なメンバーは船へ。
 そして各国で捕虜にした獄鬼ヘルネル憑きの代表者は罪人を護送するための馬車に乗せて、俺たちと同じくカンヨン国へ移動する。
 大陸連合の偉い人たちも其処に集まる。
 マーヘ大陸の代表国カンヨンの城で大陸裁判が開かれ最終的にマーヘ大陸がどうなるか決まることになるからだ。

「偉い人たちが集まる……」

 それがどんなに危険なことか、俺が気付くくらいなんだから各大陸の上層部も判っているに決まってる。
 更に言えばこれだけ大陸に余所者が集まって各国を制圧しているのにカンヨン国は不気味なほど動いていない。

「まぁ、おびき寄せられているんだろうな」

 勝負に勝って一緒に行動することになったゲンジャルさんが好物のパンを口に放りながら言ったのは、もう間もなくカンヨンの王都が見えて来るっていう距離に、以前はあったんだろう森の残骸が広がる荒地でのキャンプ中だ。
 バルドルさん、クルトさん、エニスさん、ウーガさん、ドーガさんは俺の専任護衛みたいな感じなので当然一緒だし、僧侶の人数的にヒユナさんと、彼女のパーティメンバーだからグランツェさんたちもこっち。
 それから勝負に勝ったゲンジャルさんとミッシェルさん兄妹。
 プラーントゥ大陸の騎士団は第1、3、4、7、8班が一緒で、キクノ大陸は梟領隊ほか3つの部隊が同行している。
 ちなみにレイナルドさんはギァリッグ大陸の人たちと一緒にいて、アッシュさんとウォーカーさんはキクノ大陸の連合軍と一緒。
 明日にはカンヨンの王都で合流できる予定だ。

「罠だって判ってても行くんですか?」
「まぁな。出来るだけ危険を減らすために周りから攻略していったんだ。多少の被害は出るのは想定内だ」
「……だから明日は俺も待機組なんですね」
「僧侶に怪我されちゃ堪らんだろ」

 ゲンジャルさんの言うことには一理ある。
 一応魔力感知でカンヨン国には人の気配がそれなりにあること、獣人族ビーストの鼻や耳でゾンビがいること、ゾンビの臭いに交じって何か嗅いだことのない不快な臭いがするのは確認している。
 嗅いだことのない臭いっていうのが怖いよね。
 体に異変がないから毒ではなさそうって話だけど。
 そんなふうに思っていることが顔に出ていたみたいで、ゲンジャルさんに後頭部を叩かれた。

獄鬼ヘルネル憑きの連中から聞き出せる情報はほぼ聞き取った。連中が何かしら奥の手を持っていると仮定した上で明日一日は王都の偵察に割くし情報共有も徹底する。まだ何も始まっていないのに不安がってたら保たないぞ」
「はい」

 確かにその通りだと思う。
 でも、とても嫌な予感がする。天啓による危険信号は対象が目の前に現れないと反応しないから、現状、近くにいる人は安全ってことくらいしか判らないのがもどかしい。
 しかもレイナルドさんからは「おまえこそが獄鬼ヘルネルの天敵なんだから勝手をするな、一人になるな」と耳にタコが出来るくらい言い聞かされていて、当然のようにバルドルさんにはしっかりと見張るよう言っていた。もう無茶はしないって言っているのにね。

「とりあえず明日一日は此処から動けないんだし、おまえは主神様とまったりしてりゃいい」
「この状況でですか」
「偵察要員以外は全員休みだ」

 そう。
 最後の情報収集にしっかりと時間を取るために俺たちは休みで、もちろん交代で見張りは立つのだけど、しっかりと体調を整えて武器や防具の点検をしておく日だ。

「……ゲンジャルさんも奥さんと娘さんたちに会いに行きますか?」
「……それはマジでウォーカーに殺されるだろ」

 ですよねー。
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