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第7章 呪われた血筋
210.ウノ国※戦闘有り
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※残酷なシーンが出てきます。ご注意ください。
ウノ国内に入った直後はまだ良かった。
人も、獄鬼も、魔獣も気配すらなく、多少の不快感を我慢していれば問題なく先に進めたのだ。だが国境に尤も近い、いわゆるウノの辺境の街を目前にしてみんなの表情が歪んだ。
(どうかみんなが傷つきませんように……っ)
応援領域が展開され、俺の祈りは相手との心の距離が近いほどその人を強化する。
俺とヒユナさんを含め5人の僧侶がリーデン様への祝詞を紡ぐ。
「天におわします我らが父よ」
願わくは御名が尊ばれるこの地に永き平穏と幸福が齎されんことを。
我らは父の子。
父の代理人。
この地を永きに渡り守るため。
傷つきし命の安らかなるを祈るため――。
「主よ、降り立ち給え」
応援領域内のバフとの相乗効果で僧侶の結界が味方全体を包み込む。これで味方が獄鬼に憑かれることは阻止出来るし相手の戦力を削ぐことにもなる。
ネイナルドさんたち指揮官の指示で斥候4名が街へ。
だけどほとんど間を置くことなく俺たち全員が突入することになった。
何故なら……。
「ひぃっ」
情けない悲鳴を上げてしまったけど、目の前に何十、何百っていうゾンビが現れたら仕方がないはずだ。
そう、辺境の街で俺たちを待っていたのはゾンビだ。
きっと去年まではここで暮らしていた人たちなんだと思う。
だけどいまは魔獣に食い散らかされた体を獄鬼に乗っ取られて俺たちの行く手を阻んでいる。人の姿で襲ってくるより、視覚的な意味でこちらのダメージが大きくなるんだから、戦争中ということを考えれば有効な手段なんだろう。
でも、ムカつく。
こんな真似は絶対に許されちゃダメだ。
「レン、無茶するな!」
こっちの怒りを感じ取ったらしいバルドルさんから注意が飛んでくる。
でも大丈夫。
広範囲の浄化は意識飛ばす危険があるけど、範囲を単体に絞れば100や200は余裕でおとなしくさせられる。
「それより北側800メートル先、逃げようとしてる獄鬼が5体います!」
魔力感知に引っ掛かった情報を叫べばレイナルドさんと騎士団が反応する。
「僧侶を守れ! 僧侶はなるべく魔力と体力を温存しろっ、此処で終わりではないからな!」
「はい!」
そこからは152人のこちらと、1,000に近いゾンビとの乱戦だった。
俺の周りにはクルトさんとバルドルさん、エニスさん、ウーガさん、ドーガさん。
「はあああああ!」
クルトさんの魔剣が低い位置から斬り込んでゾンビの動きを阻害、鈍ったそれの首をバルドルさんとエニスさんの剣が片っ端から飛ばしていく。
そうして動けなくなったら俺が浄化。
首を斬られても形を保っているゾンビだけど、浄化されれば一瞬にして灰だ。
後衛のウーガさんとドーガさんは魔豹の背中の上だ。前衛3人に負担が集中しないよう弓矢と魔法で敵を攪乱。
獄鬼相手に決定打を与えたいと思ったら僧侶が行動するか、圧倒的な強さでねじ伏せるしかない。魔剣を持っていても獄鬼相手ではあまり意味がない。
「浄化!」
範囲指定で目の前の10体近くを灰にする。
ボロボロと崩れて消えていく姿に何かを思う余裕なんてなかった。
鼻だけでなく目も痛くなる悪臭。
首が飛ぶのも、目玉が落ちるのも、ゾンビが手足を振り回すたび腐った肉片が飛び散るのもしんどいけど、とにかく数が多い。
「一気に浄化してしまいたい……!」
「絶対にダメだからね!」
今度はクルトさんから声が掛かる。
しませんよ、しませんけどでも大分しんどいですよコレ!
「ヴァアアアアア!」
「ヴォオオオオ!」
離れたところからゾンビたちの絶叫が上がる。
驚いて振り返ったら終焉の炎檻が何十体ものゾンビを炎の海に溺れさせていた。ミッシェルさんだ。
ゲンジャルさんが怒っている声もする。
ネズミや虫系が嫌いな彼女はゾンビも生理的に受け付けなかったんだろうね。気持ちは判る。
「拘禁!」
「拘禁!」
「治癒!!」
ヒユナさんや、他の僧侶たちの声もする。
「吹っ飛ばせ!!」
「火球!」
「火槍!」
グランツェさんの合図にはオクティバさんだけでなくドーガさんも応戦する。相乗効果の大爆発に周りのゾンビも吹っ飛んだ。
ウォーカーさんがヘイトを集めて、ゲンジャルさんとアッシュさんが同じ場所にぶっ飛ばしたゾンビをミッシェルさんの魔法で丸焼き。
グランツェパーティも、ディゼルさんがヘイトを集めた対象をグランツェさんとモーガンさんが叩き切り、オクティバさんが焼き、ヒユナさんが浄化する。
冒険者はキクノ大陸の彼らも同じだったけど、騎士団は違った。
一列に並んだ盾騎士が足並みを揃えてゾンビを押し返す。
魔法騎士が盾の向こう側に絶え間なく魔法を打ち込んでいる。
剣や槍、弓を手にした騎士たちは盾騎士の列からはみ出たゾンビを個別に対処。僧侶は怪我人を見るなり治癒を飛ばしているけど、統制の取れた戦いを続けていることもあって負傷者はとても少なかった。
魔力はともかく、精神力をごりごり削られた戦闘は1時間ほどで終結した。
形としては獄鬼から辺境の街を取り返したことになるのだろうけど生存者はゼロ。家屋はすっかり廃墟と化していてお化け屋敷の様相を呈しているし、土地に染み付いた死臭はしばらく消えることはないだろう。
逃げようとしていた獄鬼も、もちろん情報を聞き出した上で処断済み。
今回も獄鬼除けが拷問アイテムとして大活躍だったのだが、……聞き出した情報の通り、このあと更に3つの街で対ゾンビ戦が続いたのだった。
ウノ国内に入った直後はまだ良かった。
人も、獄鬼も、魔獣も気配すらなく、多少の不快感を我慢していれば問題なく先に進めたのだ。だが国境に尤も近い、いわゆるウノの辺境の街を目前にしてみんなの表情が歪んだ。
(どうかみんなが傷つきませんように……っ)
応援領域が展開され、俺の祈りは相手との心の距離が近いほどその人を強化する。
俺とヒユナさんを含め5人の僧侶がリーデン様への祝詞を紡ぐ。
「天におわします我らが父よ」
願わくは御名が尊ばれるこの地に永き平穏と幸福が齎されんことを。
我らは父の子。
父の代理人。
この地を永きに渡り守るため。
傷つきし命の安らかなるを祈るため――。
「主よ、降り立ち給え」
応援領域内のバフとの相乗効果で僧侶の結界が味方全体を包み込む。これで味方が獄鬼に憑かれることは阻止出来るし相手の戦力を削ぐことにもなる。
ネイナルドさんたち指揮官の指示で斥候4名が街へ。
だけどほとんど間を置くことなく俺たち全員が突入することになった。
何故なら……。
「ひぃっ」
情けない悲鳴を上げてしまったけど、目の前に何十、何百っていうゾンビが現れたら仕方がないはずだ。
そう、辺境の街で俺たちを待っていたのはゾンビだ。
きっと去年まではここで暮らしていた人たちなんだと思う。
だけどいまは魔獣に食い散らかされた体を獄鬼に乗っ取られて俺たちの行く手を阻んでいる。人の姿で襲ってくるより、視覚的な意味でこちらのダメージが大きくなるんだから、戦争中ということを考えれば有効な手段なんだろう。
でも、ムカつく。
こんな真似は絶対に許されちゃダメだ。
「レン、無茶するな!」
こっちの怒りを感じ取ったらしいバルドルさんから注意が飛んでくる。
でも大丈夫。
広範囲の浄化は意識飛ばす危険があるけど、範囲を単体に絞れば100や200は余裕でおとなしくさせられる。
「それより北側800メートル先、逃げようとしてる獄鬼が5体います!」
魔力感知に引っ掛かった情報を叫べばレイナルドさんと騎士団が反応する。
「僧侶を守れ! 僧侶はなるべく魔力と体力を温存しろっ、此処で終わりではないからな!」
「はい!」
そこからは152人のこちらと、1,000に近いゾンビとの乱戦だった。
俺の周りにはクルトさんとバルドルさん、エニスさん、ウーガさん、ドーガさん。
「はあああああ!」
クルトさんの魔剣が低い位置から斬り込んでゾンビの動きを阻害、鈍ったそれの首をバルドルさんとエニスさんの剣が片っ端から飛ばしていく。
そうして動けなくなったら俺が浄化。
首を斬られても形を保っているゾンビだけど、浄化されれば一瞬にして灰だ。
後衛のウーガさんとドーガさんは魔豹の背中の上だ。前衛3人に負担が集中しないよう弓矢と魔法で敵を攪乱。
獄鬼相手に決定打を与えたいと思ったら僧侶が行動するか、圧倒的な強さでねじ伏せるしかない。魔剣を持っていても獄鬼相手ではあまり意味がない。
「浄化!」
範囲指定で目の前の10体近くを灰にする。
ボロボロと崩れて消えていく姿に何かを思う余裕なんてなかった。
鼻だけでなく目も痛くなる悪臭。
首が飛ぶのも、目玉が落ちるのも、ゾンビが手足を振り回すたび腐った肉片が飛び散るのもしんどいけど、とにかく数が多い。
「一気に浄化してしまいたい……!」
「絶対にダメだからね!」
今度はクルトさんから声が掛かる。
しませんよ、しませんけどでも大分しんどいですよコレ!
「ヴァアアアアア!」
「ヴォオオオオ!」
離れたところからゾンビたちの絶叫が上がる。
驚いて振り返ったら終焉の炎檻が何十体ものゾンビを炎の海に溺れさせていた。ミッシェルさんだ。
ゲンジャルさんが怒っている声もする。
ネズミや虫系が嫌いな彼女はゾンビも生理的に受け付けなかったんだろうね。気持ちは判る。
「拘禁!」
「拘禁!」
「治癒!!」
ヒユナさんや、他の僧侶たちの声もする。
「吹っ飛ばせ!!」
「火球!」
「火槍!」
グランツェさんの合図にはオクティバさんだけでなくドーガさんも応戦する。相乗効果の大爆発に周りのゾンビも吹っ飛んだ。
ウォーカーさんがヘイトを集めて、ゲンジャルさんとアッシュさんが同じ場所にぶっ飛ばしたゾンビをミッシェルさんの魔法で丸焼き。
グランツェパーティも、ディゼルさんがヘイトを集めた対象をグランツェさんとモーガンさんが叩き切り、オクティバさんが焼き、ヒユナさんが浄化する。
冒険者はキクノ大陸の彼らも同じだったけど、騎士団は違った。
一列に並んだ盾騎士が足並みを揃えてゾンビを押し返す。
魔法騎士が盾の向こう側に絶え間なく魔法を打ち込んでいる。
剣や槍、弓を手にした騎士たちは盾騎士の列からはみ出たゾンビを個別に対処。僧侶は怪我人を見るなり治癒を飛ばしているけど、統制の取れた戦いを続けていることもあって負傷者はとても少なかった。
魔力はともかく、精神力をごりごり削られた戦闘は1時間ほどで終結した。
形としては獄鬼から辺境の街を取り返したことになるのだろうけど生存者はゼロ。家屋はすっかり廃墟と化していてお化け屋敷の様相を呈しているし、土地に染み付いた死臭はしばらく消えることはないだろう。
逃げようとしていた獄鬼も、もちろん情報を聞き出した上で処断済み。
今回も獄鬼除けが拷問アイテムとして大活躍だったのだが、……聞き出した情報の通り、このあと更に3つの街で対ゾンビ戦が続いたのだった。
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