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第7章 呪われた血筋
閑話:これまでのあらすじっぽい話(1)
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地球の大神様には12人の上級神と言われる部下がいて、リーデン様はその第3席。
いつか独立して地球みたいに大きな世界の創造神となるための修行、訓練、特訓……言い方はいろいろだけど、将来のための練習として存在しているのが12人の上級神が自ら育てている箱庭だ。
一人一つとは決まっていなくて、リーデン様も二つの世界を育てている。
元々は一つくらい創れと同僚に言われて仕方なく持つことになった『リーデンズガーデン』一つきり。あらゆるものに興味がなかったリーデン様によって始まった世界は完璧に統制されていて、いうなれば無味無臭。大きな変化など皆無。歴史は、まるで一本の直線を引いたかの如く単調なものだそうだ。
だけどある時、第7席の箱庭が崩壊した。
原因は獣人を迫害する人間の残虐性、悪意に共感した獄鬼が猛威を奮ったからだ。
獄鬼っていうのは罪を犯した人や神様が罪を償うために堕とされる獄界から吹き出す毒素が意思を持ったもので、悪意にとても敏感。しかもものすごい破壊衝動を孕んでいる。
放って置いたら天界、更には地球まで飲み込みかねなかったこれが、遥か昔――といっても神々の箱庭はその一つ一つが異なる時間の流れ方をしているからあくまで此処「ロテュス」基準になるけれど、唐突に大神様に交渉を持ち掛けてきた。
天界と地球に被害を齎したくないのなら、上級神たちの箱庭を好きにさせろ。
天界の神々がその行為を阻害することは禁止。
しかし箱庭の住人達が自ら力を得て獄鬼に対処するならそれは受け入れる。
この契約が守られる限りは天界と地球に手は出さない、と。
天界と地球に比べれば箱庭の優先度が低かったのは当然だ。
大神様はこの条件を受け入れた。
依頼、獄鬼によって滅びる世界は後を絶たなかったが、リーデン様の『リーデンズガーデン』だけはそんな獄鬼でさえ寄り付かなかった。
感情のない世界には何の面白味もなかったからだ。
そんな過程があって、第7席の箱庭もいよいよ崩壊するに至ったのだけど、第7席は人間に迫害されていた獣人たちだけでも生き延びさせて欲しいと願った。
そこで白羽の矢が立ったのが獄鬼に見向きもされない『リーデンズガーデン』を創ったリーデン様だ。
管理中の箱庭が獄鬼の脅威に晒されていないから他の上級神に比べて暇だろう、とか。
そろそろ変化を来す世界も創ってみろとか、同僚たちから何を言われたのか正確なところは判らないけど、結果としてリーデン様は新たに『ロテュス』を創造して第7席の世界から獣人たちを移住させた。
獣人を迫害するのではなく必死に守ろうとしていた数少ない人間も一緒だった。
だけど人間ってだけで一纏めにして受け入れられない獣人も多かったから、リーデン様は人間の魂に「獣人を決して害さない」という楔を打った。同時に獣人たちが人間に報復しないよう、人間だけが使える貴重な魔法を与えた。
それが治癒魔法だ。
念のため、楔を打つ前に獄界には「人間が決して獣人を害さないよう神力で縛る。獣人が報復しないよう治癒魔法を与えるのだがこれは有効か」と確認してある。
これに是と答えたのた向こうなので、まさか僧侶が獄鬼への対抗手段になるとは誰も想像してなくて、そうと判明した時には後の祭り。
契約違反ではないから天界と地球に害は及ばず。
しかし『ロテュス』は逆恨みされてしまった。
獣人と人が交わり、世界には獣人族、人族、地人族、水人族、森人族という5つの種族が定まった。
人にはなりたいが翼を失うことが恐ろしかった鳥の獣人たちはリーデン様と契約して二つの生を持つことになった。若く美しいまま人としての生を終えたら森に還り、羽をもつものたちの中で残りの生を全うする。
祖先にとっては誇りだった翼を、千年が経った現在、森人族がどう考えているかは判らない。この歴史が一部の上層部にしか語り継がれていないという現状が、その答えなのかもしれない。
で、話を聞いてて「ん?」と思ったのがキクノ大陸には鳥が祖先だって判ってる獣人族がいるってこと。
リーデン様に聞いたら、人間と恋仲だった鳥の獣人が翼じゃなくて腕で相手を抱きしめたいから翼を捨てるって言い切ったんだって。他の種族にも様々なやりとりがあって実はかなり枝分かれしてるみたいだった。
もともと別の世界で生きていた獣人たちは、自らの身体能力と魔力を駆使し『ロテュス』という箱庭に用意されたものを巧く活用してリーデン様の予想を遥かに超えた速度で進化していった。
その一方で獣人たちは考えることが不得意なので与えられたものをそのまま活用する。
結果として文明や文化の発達が大神様が管理する地球に比べてちぐはぐなものになってしまったが、それはそれで『ロテュス』の個性になったとも言えるだろう。
管理者は同じなのに、まったく違った進化を遂げた『ロテュス』は、逆恨みの件もあって獄鬼に虎視眈々と狙われている。
人間にあれほど酷い迫害を受けておきながら人間と交わり獣人族、地人族、水人族、森人族という新たな種族を名乗り幸福を享受する者たちをひどく憎む同族は、特に獄鬼に好まれた。
マーヘ大陸が獄鬼に支配されつつあったのは、当然といえば当然の流れだったんだろう。
マーヘ大陸には14の国がある。
大陸中央、カエル科が玉座に就くカンヨンを大陸の代表国としていて、北から時計回りにウノ、トレス、セイス、オンセ、キンセ、カトルセ、ヌエヴェ、スィエテ、クワトロ、ドスの10か国が海に面している。
内陸4か国は大陸の中心部に縦に並んでいて、カンヨンの北にスィンコ。南にディエス、更に南にトレセとなる。
誰にとっても想定外な理由で地球から箱庭に転移することになった木ノ下蓮が、心のままに行動して約3年。
『ロテュス』の人たちは獄鬼の今以上の侵攻を止めるために手を組んでマーヘ大陸を制圧することに決めた。
獄鬼以外の犠牲を出すことは極力控える。
これを合言葉に14の国を獄鬼除けで囲むというのが、マーヘ大陸に上陸した各国の最初の任務だ。
いつか独立して地球みたいに大きな世界の創造神となるための修行、訓練、特訓……言い方はいろいろだけど、将来のための練習として存在しているのが12人の上級神が自ら育てている箱庭だ。
一人一つとは決まっていなくて、リーデン様も二つの世界を育てている。
元々は一つくらい創れと同僚に言われて仕方なく持つことになった『リーデンズガーデン』一つきり。あらゆるものに興味がなかったリーデン様によって始まった世界は完璧に統制されていて、いうなれば無味無臭。大きな変化など皆無。歴史は、まるで一本の直線を引いたかの如く単調なものだそうだ。
だけどある時、第7席の箱庭が崩壊した。
原因は獣人を迫害する人間の残虐性、悪意に共感した獄鬼が猛威を奮ったからだ。
獄鬼っていうのは罪を犯した人や神様が罪を償うために堕とされる獄界から吹き出す毒素が意思を持ったもので、悪意にとても敏感。しかもものすごい破壊衝動を孕んでいる。
放って置いたら天界、更には地球まで飲み込みかねなかったこれが、遥か昔――といっても神々の箱庭はその一つ一つが異なる時間の流れ方をしているからあくまで此処「ロテュス」基準になるけれど、唐突に大神様に交渉を持ち掛けてきた。
天界と地球に被害を齎したくないのなら、上級神たちの箱庭を好きにさせろ。
天界の神々がその行為を阻害することは禁止。
しかし箱庭の住人達が自ら力を得て獄鬼に対処するならそれは受け入れる。
この契約が守られる限りは天界と地球に手は出さない、と。
天界と地球に比べれば箱庭の優先度が低かったのは当然だ。
大神様はこの条件を受け入れた。
依頼、獄鬼によって滅びる世界は後を絶たなかったが、リーデン様の『リーデンズガーデン』だけはそんな獄鬼でさえ寄り付かなかった。
感情のない世界には何の面白味もなかったからだ。
そんな過程があって、第7席の箱庭もいよいよ崩壊するに至ったのだけど、第7席は人間に迫害されていた獣人たちだけでも生き延びさせて欲しいと願った。
そこで白羽の矢が立ったのが獄鬼に見向きもされない『リーデンズガーデン』を創ったリーデン様だ。
管理中の箱庭が獄鬼の脅威に晒されていないから他の上級神に比べて暇だろう、とか。
そろそろ変化を来す世界も創ってみろとか、同僚たちから何を言われたのか正確なところは判らないけど、結果としてリーデン様は新たに『ロテュス』を創造して第7席の世界から獣人たちを移住させた。
獣人を迫害するのではなく必死に守ろうとしていた数少ない人間も一緒だった。
だけど人間ってだけで一纏めにして受け入れられない獣人も多かったから、リーデン様は人間の魂に「獣人を決して害さない」という楔を打った。同時に獣人たちが人間に報復しないよう、人間だけが使える貴重な魔法を与えた。
それが治癒魔法だ。
念のため、楔を打つ前に獄界には「人間が決して獣人を害さないよう神力で縛る。獣人が報復しないよう治癒魔法を与えるのだがこれは有効か」と確認してある。
これに是と答えたのた向こうなので、まさか僧侶が獄鬼への対抗手段になるとは誰も想像してなくて、そうと判明した時には後の祭り。
契約違反ではないから天界と地球に害は及ばず。
しかし『ロテュス』は逆恨みされてしまった。
獣人と人が交わり、世界には獣人族、人族、地人族、水人族、森人族という5つの種族が定まった。
人にはなりたいが翼を失うことが恐ろしかった鳥の獣人たちはリーデン様と契約して二つの生を持つことになった。若く美しいまま人としての生を終えたら森に還り、羽をもつものたちの中で残りの生を全うする。
祖先にとっては誇りだった翼を、千年が経った現在、森人族がどう考えているかは判らない。この歴史が一部の上層部にしか語り継がれていないという現状が、その答えなのかもしれない。
で、話を聞いてて「ん?」と思ったのがキクノ大陸には鳥が祖先だって判ってる獣人族がいるってこと。
リーデン様に聞いたら、人間と恋仲だった鳥の獣人が翼じゃなくて腕で相手を抱きしめたいから翼を捨てるって言い切ったんだって。他の種族にも様々なやりとりがあって実はかなり枝分かれしてるみたいだった。
もともと別の世界で生きていた獣人たちは、自らの身体能力と魔力を駆使し『ロテュス』という箱庭に用意されたものを巧く活用してリーデン様の予想を遥かに超えた速度で進化していった。
その一方で獣人たちは考えることが不得意なので与えられたものをそのまま活用する。
結果として文明や文化の発達が大神様が管理する地球に比べてちぐはぐなものになってしまったが、それはそれで『ロテュス』の個性になったとも言えるだろう。
管理者は同じなのに、まったく違った進化を遂げた『ロテュス』は、逆恨みの件もあって獄鬼に虎視眈々と狙われている。
人間にあれほど酷い迫害を受けておきながら人間と交わり獣人族、地人族、水人族、森人族という新たな種族を名乗り幸福を享受する者たちをひどく憎む同族は、特に獄鬼に好まれた。
マーヘ大陸が獄鬼に支配されつつあったのは、当然といえば当然の流れだったんだろう。
マーヘ大陸には14の国がある。
大陸中央、カエル科が玉座に就くカンヨンを大陸の代表国としていて、北から時計回りにウノ、トレス、セイス、オンセ、キンセ、カトルセ、ヌエヴェ、スィエテ、クワトロ、ドスの10か国が海に面している。
内陸4か国は大陸の中心部に縦に並んでいて、カンヨンの北にスィンコ。南にディエス、更に南にトレセとなる。
誰にとっても想定外な理由で地球から箱庭に転移することになった木ノ下蓮が、心のままに行動して約3年。
『ロテュス』の人たちは獄鬼の今以上の侵攻を止めるために手を組んでマーヘ大陸を制圧することに決めた。
獄鬼以外の犠牲を出すことは極力控える。
これを合言葉に14の国を獄鬼除けで囲むというのが、マーヘ大陸に上陸した各国の最初の任務だ。
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