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第6章 変遷する世界
194.大陸奪還戦(10)
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最初の町を解放して以降から四日。
俺たちが移動しているスィンコ国はもちろん、マーヘ大陸は明らかに悪い方向へ変わっていった。それは不定期に届く各国に上陸中の他大陸連合軍からのメッセンジャーでも伝わって来る。
『セイス国は獄鬼除けの設置が完了、オセアンからはキンセ国の設置完了の知らせが届いたが他はまだだ。苦戦している』
大臣さんからレイナルドさんに届いたメッセンジャーが沈痛な声で告げる。
俺達が担当しているセイスは設置が完了、必然的にそちらと国境を接しているスィンコ国の東側も完了したことになるが、俺たちがいま移動中の、カンヨン国と接している国境線上ではこちらの侵略を察した敵対勢力による妨害行為が頻発し、思うように進めずにいた。
それでも明日にはキクノ大陸が攻略中のクワトロ国との国境に到着し、共にギァリッグ大陸の応援に向かう手筈になっている。
キクノ大陸側とはメッセンジャーを直接やり取りしており、あちらも苦戦が続き進行に遅れは出ているが足並みは揃えていけそうだ。
うちがそうしたように、他の大陸も担当国数に戦力を分けて、中央のカンヨン国を除く14の国を同時進行で獄鬼除けで囲っている。
その全てが完了さえすれば打つ手があるのに……。
主神様の角を素材に、今回の獄鬼除けは全部俺の神力を注ぎ込んでいる。
それはつまり、大陸中に俺の神力が満ちるということ。
いつもみたいに力尽きて気を失うことがないよう小刻みに浄化を掛けていくにしても、俺自身が15カ国全てを廻るのはさすがに時間が掛かり過ぎるだろう。
だから考えたんだ。
獄鬼をロテュスから追い払いたい。
そう言い出したのは俺なんだから、俺自身が出来ることを。
その準備に難航しているのが現実だが。
この一週間で判明した事と言えば、セイス国のようにカンヨン国から何の知らせも無かった国と、しっかりと通達があり上陸を阻止すべく戦闘態勢を整えていた国があったこと。
カンヨン国の味方をしていた国の中央は荒れておらず奴隷が豊富にいること。
それ以外は味方の国であっても荒廃していて、魔獣被害が頻発していること。
その被害のほとんどが獄鬼が嫌悪する穏やかな気性の人々だったこと。
「支配に都合が悪い人は魔獣に殺させた……?」
「これだけ土地が荒れて、エサがなくなれば、多少の小細工で簡単に人里を襲わせられるだろうな」
「獄鬼に大陸を好き勝手させて、……それで、カンヨン国の王はどうしたかったんでしょう」
「見据える未来が異なる相手の考えることなんかさっぱり分らんが、……あれだけ人間の血と混じり合うのを嫌がっていたんだ。これだけ見た目が人間に寄った獣人が溢れた世界なんか壊れちまえと思ったのかもな」
すべては想像でしかない。
けれど。
……それでも。
「世界を壊すなんて、絶対にダメです」
だから、俺たちは諦めないんだ。
俺たちが移動しているスィンコ国はもちろん、マーヘ大陸は明らかに悪い方向へ変わっていった。それは不定期に届く各国に上陸中の他大陸連合軍からのメッセンジャーでも伝わって来る。
『セイス国は獄鬼除けの設置が完了、オセアンからはキンセ国の設置完了の知らせが届いたが他はまだだ。苦戦している』
大臣さんからレイナルドさんに届いたメッセンジャーが沈痛な声で告げる。
俺達が担当しているセイスは設置が完了、必然的にそちらと国境を接しているスィンコ国の東側も完了したことになるが、俺たちがいま移動中の、カンヨン国と接している国境線上ではこちらの侵略を察した敵対勢力による妨害行為が頻発し、思うように進めずにいた。
それでも明日にはキクノ大陸が攻略中のクワトロ国との国境に到着し、共にギァリッグ大陸の応援に向かう手筈になっている。
キクノ大陸側とはメッセンジャーを直接やり取りしており、あちらも苦戦が続き進行に遅れは出ているが足並みは揃えていけそうだ。
うちがそうしたように、他の大陸も担当国数に戦力を分けて、中央のカンヨン国を除く14の国を同時進行で獄鬼除けで囲っている。
その全てが完了さえすれば打つ手があるのに……。
主神様の角を素材に、今回の獄鬼除けは全部俺の神力を注ぎ込んでいる。
それはつまり、大陸中に俺の神力が満ちるということ。
いつもみたいに力尽きて気を失うことがないよう小刻みに浄化を掛けていくにしても、俺自身が15カ国全てを廻るのはさすがに時間が掛かり過ぎるだろう。
だから考えたんだ。
獄鬼をロテュスから追い払いたい。
そう言い出したのは俺なんだから、俺自身が出来ることを。
その準備に難航しているのが現実だが。
この一週間で判明した事と言えば、セイス国のようにカンヨン国から何の知らせも無かった国と、しっかりと通達があり上陸を阻止すべく戦闘態勢を整えていた国があったこと。
カンヨン国の味方をしていた国の中央は荒れておらず奴隷が豊富にいること。
それ以外は味方の国であっても荒廃していて、魔獣被害が頻発していること。
その被害のほとんどが獄鬼が嫌悪する穏やかな気性の人々だったこと。
「支配に都合が悪い人は魔獣に殺させた……?」
「これだけ土地が荒れて、エサがなくなれば、多少の小細工で簡単に人里を襲わせられるだろうな」
「獄鬼に大陸を好き勝手させて、……それで、カンヨン国の王はどうしたかったんでしょう」
「見据える未来が異なる相手の考えることなんかさっぱり分らんが、……あれだけ人間の血と混じり合うのを嫌がっていたんだ。これだけ見た目が人間に寄った獣人が溢れた世界なんか壊れちまえと思ったのかもな」
すべては想像でしかない。
けれど。
……それでも。
「世界を壊すなんて、絶対にダメです」
だから、俺たちは諦めないんだ。
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