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第6章 変遷する世界
181.一時帰還(2)side レイナルド
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空がすっかり暗くなり、ギルドの酒場の賑やかさも一段落という時分になってようやく事務所から移動するハーマイトシュシューの気配を感じ取り、対話していた相手に辞去する。用件はとっくに終わっていて、時間潰しに付き合ってもらった礼はマーヘ大陸の件が落ち着いてから酒に付き合うことで合意済みだ。
「無事の御帰還を」
これから大陸間で起こることを危惧し同胞の身を案じてくれるのには、片手を上げて応えるしかなかったが。
冒険者ギルドの建物から出て来るハーマイトシュシューを、その壁に寄り掛かって待っていれば本人は特に表情を変えることもなく横を通り過ぎていく。
一言の声掛けもなし。
理由は判らないが、……いや、幾つか考え得る理由はあれど、実際にどれなのか判断出来ない。
全部か、と。
それが正解な予感を覚えつつも怒っているらしいその背に話しかける。
「忙しそうだな」
「……随分と君らしくないことをする」
どうやら無視するつもりはないらしい。
その事に安堵しながら隣に並ぶ。
「こちらにその気がないと示せばそれきりになると思っていたけど」
「お節介が多くてな」
言ったら、冷えた視線を向けられる。
最後に会った記憶の中の彼よりもずいぶんと細く――否、やつれたと表現した方が適切か。顎のラインが変わり、そこだけは変わらずに艶めいている長い銀色の髪に隠れる首筋、衣服の下の体付き、もっと言えは骨ばった手指。
顔色は化粧で誤魔化しているのか。
目の奥には、今まで見る事のなかった疲労感が滲んている。
「……相当辛いんじゃないのか」
毎日見ていればそうとは気付かない変化。
誤魔化し方にも本気が伺える。
しかし最後に直接会ったのが1年以上前の自分の目には、ハーマイトシュシューの変化が哀れなほど明確だった。70年~80年ある獣人族の寿命に比べて半分以下になる場合も多い森人族。
40を過ぎている彼は、もういつ目覚めぬ眠りについても不思議はない。
「……心配しなくてもギルドマスターの業務は引継ぎを始めているよ」
「そうじゃない」
「君が気になるのはトゥルヌソルの治安が揺るがないかどうかだろう」
「当然だ」
「だったら」
「だが」
声量は小さくともはっきりと拒絶を示すハーマイトシュシューに、だが、退けない。
嘘は吐かない。
最初にそう約束した。
「10年以上も国のために尽くして来た同志を心配しないほど無情ではない」
「……っ」
そこで初めてハーマイトシュシューの表情が歪んだ。
「どうして、いま、帰って来たの……あの時、これが最後だって言ったのに」
「そのつもりだった」
解放してあげるよ――ハーマイトシュシューはそう言った。
年単位でトゥルヌソルに戻れなくなるだろうと話したあの夜に、これが最後だ、と。
森人族が長く生きられないのはどうしようもない事実で、心機能が衰えている自覚は、その日が近いことを嫌でも実感させる。
次はいつ会えるか、なんて。
そんな女々しい質問も、期待も、したくないと彼は言い切った。
だから最初の約束ごと破棄した。
「もう二度と会いたくなかった」
「すまん」
「声も聞きたくなかった」
「判ってる」
「だったらどうしてここにいるの……!」
荒げる声は弱々しい。
少し感情が乱れるだけで呼吸が整わなくなっているのが判る。
もう、本当に、長くないのだ。
それが判ったところで明日の出発を無しに出来るはずもなく、傍にいられないなら会うべきではなかった。判っていた。
……判ってはいた、けれど。
「シュー」
ビクリと震える体を引き寄せれば抵抗はなかった。
しても無駄だと思っているのか。
抵抗するだけの体力が、そもそも無いのか。
腕の中に納まるそれが記憶より随分と細く、脆くなっているのを直に感じたことで胸の奥に針で刺されたような痛みが走る。
後悔……違う。
罪悪感でもない。
同情と言われたらそれが最もしっくりくるがそれだけでもなかった。愛情が欠片もないわけじゃない。しかしハーマイトシュシューが『特別』ではない以上、彼が望んでいるものとは違い過ぎる。
「シュー。俺はおまえに嘘は吐かないと約束した。だから愛しているとも、好きだとも、言ってやれない」
「……今更だよ」
「あぁ、今更だ……だが、おまえが恋人ごっこを止めても、最初の約束を破棄しても、……おまえが死ぬまで俺は俺の約束を果たす」
「……っ」
「嘘は吐かない。おまえ以外は抱かない。おまえを一人で死なせはしない」
「明日にはいなくなって、またいつ帰って来るかも判らないなら、それは、嘘だよ」
「ここに俺を置いておけ」
薄い胸元に手と共に置くそれは、見事に等分された赤い魔石。
証紋を押すだけで完成する術式を刻んだ特別紙と一緒にレンに持たせられたものだ。魔力量によって通話距離が変わるなら、俺と、ハーマイトシュシューならかなりの長距離でも可能なはずだと。
……根拠もないくせに、なぜか自信満々に。
「独りだと思ったらこの魔石に魔力を流せ。そうしたら俺と会話が出来る……ように、これから加工するから」
「……?」
意味が解らないと言いたげなハーマイトシュシューの顔に、今日初めて笑いが込み上げて来た。
そうだろう、判らないだろう。
本当に、レンの発想には理解が追い付かない。
だが、声の一つも届けられないならハーマイトシュシューの言う通りにあの日で終わりにするつもりだった。全部に片が付いてトゥルヌソルに戻った時に「マスターは亡くなられました」とララあたりから聞かされて終わるだろうと思っていた。
だが。
……なんだろうな。
声、だけでも。
この魔石一つでハーマイトシュシューを孤独に死なせずに済むなら、もう一度会うことに意味を見い出せると思えたから。
「この魔石の件も含めて、いろいろ説明したいんだが……部屋に上がっても?」
問うと、ハーマイトシュシューは目を瞠り。
それから俯いて俺の袖を掴んだ。
「……嘘かどうかは確かめた方がよさそうだからね」――。
「無事の御帰還を」
これから大陸間で起こることを危惧し同胞の身を案じてくれるのには、片手を上げて応えるしかなかったが。
冒険者ギルドの建物から出て来るハーマイトシュシューを、その壁に寄り掛かって待っていれば本人は特に表情を変えることもなく横を通り過ぎていく。
一言の声掛けもなし。
理由は判らないが、……いや、幾つか考え得る理由はあれど、実際にどれなのか判断出来ない。
全部か、と。
それが正解な予感を覚えつつも怒っているらしいその背に話しかける。
「忙しそうだな」
「……随分と君らしくないことをする」
どうやら無視するつもりはないらしい。
その事に安堵しながら隣に並ぶ。
「こちらにその気がないと示せばそれきりになると思っていたけど」
「お節介が多くてな」
言ったら、冷えた視線を向けられる。
最後に会った記憶の中の彼よりもずいぶんと細く――否、やつれたと表現した方が適切か。顎のラインが変わり、そこだけは変わらずに艶めいている長い銀色の髪に隠れる首筋、衣服の下の体付き、もっと言えは骨ばった手指。
顔色は化粧で誤魔化しているのか。
目の奥には、今まで見る事のなかった疲労感が滲んている。
「……相当辛いんじゃないのか」
毎日見ていればそうとは気付かない変化。
誤魔化し方にも本気が伺える。
しかし最後に直接会ったのが1年以上前の自分の目には、ハーマイトシュシューの変化が哀れなほど明確だった。70年~80年ある獣人族の寿命に比べて半分以下になる場合も多い森人族。
40を過ぎている彼は、もういつ目覚めぬ眠りについても不思議はない。
「……心配しなくてもギルドマスターの業務は引継ぎを始めているよ」
「そうじゃない」
「君が気になるのはトゥルヌソルの治安が揺るがないかどうかだろう」
「当然だ」
「だったら」
「だが」
声量は小さくともはっきりと拒絶を示すハーマイトシュシューに、だが、退けない。
嘘は吐かない。
最初にそう約束した。
「10年以上も国のために尽くして来た同志を心配しないほど無情ではない」
「……っ」
そこで初めてハーマイトシュシューの表情が歪んだ。
「どうして、いま、帰って来たの……あの時、これが最後だって言ったのに」
「そのつもりだった」
解放してあげるよ――ハーマイトシュシューはそう言った。
年単位でトゥルヌソルに戻れなくなるだろうと話したあの夜に、これが最後だ、と。
森人族が長く生きられないのはどうしようもない事実で、心機能が衰えている自覚は、その日が近いことを嫌でも実感させる。
次はいつ会えるか、なんて。
そんな女々しい質問も、期待も、したくないと彼は言い切った。
だから最初の約束ごと破棄した。
「もう二度と会いたくなかった」
「すまん」
「声も聞きたくなかった」
「判ってる」
「だったらどうしてここにいるの……!」
荒げる声は弱々しい。
少し感情が乱れるだけで呼吸が整わなくなっているのが判る。
もう、本当に、長くないのだ。
それが判ったところで明日の出発を無しに出来るはずもなく、傍にいられないなら会うべきではなかった。判っていた。
……判ってはいた、けれど。
「シュー」
ビクリと震える体を引き寄せれば抵抗はなかった。
しても無駄だと思っているのか。
抵抗するだけの体力が、そもそも無いのか。
腕の中に納まるそれが記憶より随分と細く、脆くなっているのを直に感じたことで胸の奥に針で刺されたような痛みが走る。
後悔……違う。
罪悪感でもない。
同情と言われたらそれが最もしっくりくるがそれだけでもなかった。愛情が欠片もないわけじゃない。しかしハーマイトシュシューが『特別』ではない以上、彼が望んでいるものとは違い過ぎる。
「シュー。俺はおまえに嘘は吐かないと約束した。だから愛しているとも、好きだとも、言ってやれない」
「……今更だよ」
「あぁ、今更だ……だが、おまえが恋人ごっこを止めても、最初の約束を破棄しても、……おまえが死ぬまで俺は俺の約束を果たす」
「……っ」
「嘘は吐かない。おまえ以外は抱かない。おまえを一人で死なせはしない」
「明日にはいなくなって、またいつ帰って来るかも判らないなら、それは、嘘だよ」
「ここに俺を置いておけ」
薄い胸元に手と共に置くそれは、見事に等分された赤い魔石。
証紋を押すだけで完成する術式を刻んだ特別紙と一緒にレンに持たせられたものだ。魔力量によって通話距離が変わるなら、俺と、ハーマイトシュシューならかなりの長距離でも可能なはずだと。
……根拠もないくせに、なぜか自信満々に。
「独りだと思ったらこの魔石に魔力を流せ。そうしたら俺と会話が出来る……ように、これから加工するから」
「……?」
意味が解らないと言いたげなハーマイトシュシューの顔に、今日初めて笑いが込み上げて来た。
そうだろう、判らないだろう。
本当に、レンの発想には理解が追い付かない。
だが、声の一つも届けられないならハーマイトシュシューの言う通りにあの日で終わりにするつもりだった。全部に片が付いてトゥルヌソルに戻った時に「マスターは亡くなられました」とララあたりから聞かされて終わるだろうと思っていた。
だが。
……なんだろうな。
声、だけでも。
この魔石一つでハーマイトシュシューを孤独に死なせずに済むなら、もう一度会うことに意味を見い出せると思えたから。
「この魔石の件も含めて、いろいろ説明したいんだが……部屋に上がっても?」
問うと、ハーマイトシュシューは目を瞠り。
それから俯いて俺の袖を掴んだ。
「……嘘かどうかは確かめた方がよさそうだからね」――。
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